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PR110周年機をベースに現フラグシップの技術を多数投入

妥協なきデノン “もうひとつの旗艦AVアンプ”。「AVC-A10H」がデノンサラウンドアンプのあらたな一章を告げる

公開日 2024/11/15 07:00 大橋伸太郎
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■日本映画の繊細な音声も美しく表現。アップミックスの音質も見事



「ボリュームを上げて大きな音にしないと、映画の音にならないのでしょうか?」しばしば訊かれるがそんなことはない。静寂と弱音も映画の本領だ。『PERFECT DAYS』はあいにくイマーシブサウンドではない。クライテリオン盤のDTS-HD 5.1ch(国内盤はリニアPCM5.1ch)をNeural Xの11.1chにアップミックスして視聴した。

AVC-A10Hはこのアップミックスの音質が非常に優れている。一般にDirect→Neural X (ドルビーサラウンド)で全chのスピーカーをアクティブ化した場合、音質がにじんで歪みっぽくなるが、A10Hは音質クオリティの変化がきわめて少ない。32bit対応プレミアムステレオD/Aコンバーターを9基搭載したS/Nの高さを背景に、32bitフローティングポイントDSPの高い処理能力が映画の背景を担う音の表現でものをいう。

公園や神社の木立を騒がす風、突然の雷鳴と夕立、アスファルトを叩く雨脚といった東京の環境音、自然音、ノイズが主人公平山(イコール聴き手)をときに遠巻きにときに頭上で見下ろし、ときによそよそしく、ときに近しく寄り添う。日本の伝統書画を思わせるノイズの表情や遠近法がA10Hのきめ細やかな描写力でサラウンド音場にいきいきと現れ主人公の心象風景になっていく。

本作の劇伴はオリジナルスコアがなく、平山の愛好するR&Bや’60〜’70年代ポップスが流れ、シーンによって主人公の心もようを反映して響きを変えている。アンプの「音楽力」が試されるわけだが、疎遠だった「妹」ケイコと再会して抱擁しラストに流れるニーナ・シモンは心のわだかまりが溶けた晴れやかな鳴り方である。映画の重要な要素、劇伴の再現でもAVC-A10Hは打てば響く鋭敏さを発揮する。


ハイレゾ音楽ファイルとSACDの再生は骨太だが、雑味のないスムーズな質感の音を聴かせた。ステレオHi-Fiアンプに比べパワーアンプを多数内蔵し大規模なデジタル部の搭載という点で不利なわけだが、AVC-A10Hはアンプの基礎部分への技術と資材の傾注で77万の価格に見合った音質クオリティを達成している。

HDMI始めとしたデジタル入力装備、HEOS搭載によるネットワークオーディオ機能等々、価格対性能・機能比で総合的にHi-Fiアンプに勝るといっていい。妥協なきもうひとつの旗艦アンプAVC-A10H。デノンサラウンドアンプのあらたな一章が始まった。

(協力:ディーアンドエムホールディングス)

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