PR1グレード上の旧世代機「AVR-X4500H」と比較
AVアンプの“世代差”はどこに表れるのか。デノンの人気最新ミドル機「AVR-X3800H」で検証した
■「先進」と「蓄積」、相反する要素を持ち合わせるAVアンプ
AVアンプ(AVレシーバー)という製品は、大きく2つの要素で構成される。1つは「パワーアンプ」。音声信号の増幅およびスピーカーへの出力を担うところは一般的なオーディオアンプ同様だが、多チャンネル構成が必須となることがAVアンプならではのポイントだ。
もう1つは「プリアンプ」。Dolby AtmosやDTS:Xといったサラウンドフォーマットの処理を担う、高度な演算性能と先進機能が求められる部分だ。
かくしてAVアンプという製品は、長年培われたオーディオ技術をベースに音質を追求する一方、刻々と進化する技術をキャッチアップせねばならないというある意味相反する要素を持ち合わせることになる。AVプリとパワーアンプというセパレート構成を選択しないかぎり、AVアンプの宿命といえるだろう。
この点に着目すると、「プリアンプ部の新しさ」と「パワーアンプ部の力強さ」を備えたAVアンプが賢い選択ということになる。最新の製品であればあるほどベターともいえるが、価格とのバランスやパワーアンプにおける物量面での影響を考えると、そうともいえないところが興味深い。
デノンの「AVR-X3800H」は、前述した2要素を両立させたAVアンプだ。チャンネル数は最大9.4chでミドルクラスに位置付けられるが、DSPには「Griffin Lite XP」を採用。発売当時の最上位モデル「AVR-X8500H」に搭載のものより高性能として話題を集め、発売から2年を経た現在もAVプリとしての性能は第一級だ。
対応するサラウンドフォーマットはDolby AtmosとDTS:X、Auro-3DにくわえてMPEG-4 AACをサポート。Dolby SurroundとNeural:X、Auro-Maticという立体音響のアップミックス機能、さらにはDolby Atmos Height VirtualizerとDTS Virtual:Xもサポートするから、ハイトスピーカーやイネーブルドスピーカーなしでもバーチャル3Dサラウンドを楽しめる。
プロセッシングチャンネルは11.4chでチャンネル単位のオン/オフが可能、プリアンプモードにすればAVプリとしても活用できるという器用さも目を引く。
パワーアンプ部も抜かりない。9chすべて同一構成のディスクリートパワーアンプを2枚の基板に分けて実装、そこへ肉厚なアルミ押し出し材ヒートシンクを載せることで、放熱促進と振動抑制という一挙両得を図る。
指向性設定が可能な独立4系統サブウーファー出力のサポートも、イマーシブサウンドを追求するユーザーには魅力的に映るはず。デノンのサウンドマスター・山内慎一氏が開発初期から深く関わったモデルなだけに、パーツを含め細部まで吟味された設計は瞠目ものだ。
■AVR-X3800Hと旧モデル「AVR-X4500H」を比較
AVR-X3800HというAVアンプは、現在どういった立ち位置にあるのか。発売から1年半が経過した現在、より先進的なプリアンプ部を備えた製品も登場しているが、パワーアンプ部の設計は2年足らずの間に陳腐化するものなのか。その答えを見つけるべく、同価格帯の旧型機「AVR-X4500H」(生産終了)と比較試聴を実施した。
AVR-X4500Hは、型番からわかるとおりAVR-X3800Hの1つ上位のモデルだ。全チャンネル同一構成の9.4chディスクリートパワーアンプは最大出力235Wと、最大出力215WのX3800Hよりパワーで優るが、DSPは1世代前となる。マルチチャンネルのプロセッシングを担うDSPはプリアンプ部の要、イマーシブオーディオのデコードや自動音場補正の精度に直結するだけに、音の印象も変わろうというもの。