これぞアメリカン・ドリーム!キャデラック・エスカレード、AKGと目指す究極のラグジュアリー・オーディオ
アメリカの富と豊かさの象徴
快適さとラグジュアリーを突き詰めたショーファードリブン。各社様々な装備や仕立てで、極上の世界観を作り出している。その中でキャデラック・エスカレードは音にこだわったようだ。AKG Studio Referenceサラウンドサウンドシステムをご紹介する。

キャデラック・エスカレードは、米国ゼネラルモーターズの高級ブランド「キャデラック」の最上位モデルだ。全長5400mm、全幅2065mm、全高1930mm、車重約2.75トン(!)という立派な躯体は、アメリカの豊かさと夢の大きさそのもの。


「島国の駐車場に、そんなクルマは入らない」と思われるが、きちんと入ったのでご安心頂きたい。だが場所によってはドアが隣のクルマに当たり開かない可能性がある。

エンジンは6,156cc V型8気筒OHV。アメリカ産の高級車はV8 OHVを搭載するのがお約束だ。ちなみにキャデラックが初めてV8エンジンを搭載したのは、ディズニー初の長編アニメ「白雪姫」よりも古い112年前の1914年にまで遡る。

アメ車といえば燃費が気になるところ。実際に走らせてみると下道で6~7㎞/リットル、高速で10㎞/リットル程度と思ったよりは良好で、欧州の高級セダンとあまり変わらなかったりする。ガソリンは無鉛プレミアム推奨だが、レギュラーガソリンも使えるという。ガソリンタンク容量は90リットル。ちなみに毎年5月に徴収される自動車税は11万円……。
価格は1640万円から1800万円。7人乗りと8人乗りが用意されている。絶対的価格は高いが、欧州のショーファードリブンは2000万円以上が当たり前なので、少しだけお買い得といえるかもしれない。
数こそ力、36基のスピーカーを各所に配置
さて、そのようなキャデラック・エスカレードが搭載するカーオーディオシステムは、マイクやヘッドホンで知られるオーストリアのAKG。ご存じのとおりAKGは現在、サムスン電子傘下のハーマン・インターナショナルに属している。そのハーマン・インターナショナルは現在、カーオーディオの一大勢力で、ノウハウは十分。AKGのサウンドエンジニアがどのようにキャデラック・エスカレードに彩りを添えるかだ。

車内を見て驚いた。あちらこちらにスピーカーが配置されているのだ。ドアやピラーは言うに及ばず、ラゲッジスペースに天井に、さらにはヘッドレストにまでスピーカーが取り付けられ、その数なんと36基! 数こそ力、実にアメリカ的だ。

このスピーカーをもってAKG Studio Referenceサラウンドサウンドシステムを構築したのだ。AKGは大きなキャデラックをひとつのヘッドホン空間と見立てたのかもしれない。




まずは機能面をチェックしてみる。項目は3バンドのイコライジングとフェーダー/バランス機能、そして3Dサラウンド機能の調整のみ。

3Dサラウンドは前席側または後席側の排他利用で、変化量を12段階に調整可能。このグラフィックはわかりやすいと感じた。
エンターテインメントとしては、2列目シートにそれぞれ12.6インチタッチパネルディスプレイが用意されており、HDMIおよびUSB接続を介して映像や音楽が楽しめる。


さらにシボレーのロゴ入りブルートゥースヘッドホンまで用意され、2列目シートの専用ディスプレイの映像を愉しむことができた。クルマを買うと専用ヘッドホンがついてくるとは、誰も思わないだろう。

フラットバランスで知性を感じさせるサウンド
運転席に座り試聴を始めた。3Dサラウンド効果をオフにし、USBメモリを差し込んだものの、上手く認識することができず。試しにスマートフォンと車両をUSB接続すると、カープレイが起動したので壊れてはいない様子だ。何かしらの相性が悪かったのだろうと諦め、手持ちのハイレゾウォークマンとBluetooth接続をして試聴することにした。おそらく多くのユーザーは、そのようにして使われることだろう。

クリーンで爽やか。やや低域レベルを薄めたフラットバランスで知性を感じさせるサウンドと聴いた。高域がとても綺麗で、かつ情報量が多い。どこかAKGのオープンイヤー型ヘッドホンを想起させるのが面白い。
2021年、YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」にて代表曲「サウダージ」のアコースティックアレンジを披露したポルノグラフィティ。この時ヴォーカル岡野昭仁の歌声をAKGのC12 VRが捉えていた。くっきりとした芯に適度な厚みのある、真っ直ぐな声に一瞬にして耳が奪われた。音楽鑑賞において不要な耳障りな音を出さず、それでいて聴き込めば細かな音を出すオーディオ的な楽しみもある。実に高度な音だ。
オーストリア国籍の指揮者であるカルロス・クライバーの名盤であるヴェルディの歌劇「椿姫」は、ダイナミックな演奏をスポイルすることなく、音の機微を丁寧に描くのが印象的。なによりコルトバスの名唱に圧巻されっぱなしだ。サラウンド効果は最大レベルではやりすぎだが、半分位の量にすると、運転席がアリーナ席へと変化。自然な残響感が心地よい。

そのまま2列目シートへ移動。サラウンドも2列目モードに変更して再度試聴。こちらもサラウンド効果はやや弱めに設定してみると、没入(イマーシヴ)という言葉がピッタリの音世界。



ゼネラルモーターズでは今後、キャデラックの各車種にAKGのオーディオシステムを展開していく。事実マイナーチェンジしたばかりのコンパクトSUV「XT4」(790万円)には、「AKG14スピーカーオーディオシステム」を搭載している。キャデラックとAKGの共演に注目していきたい。
