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ハイエンドオーディオショップ、エス・アイ・エスで聴く

世界最“狂”のRoonサーバー!? 1300万円超、タイコ・オーディオの頂「オリンパス」の実力を聴く!

公開日 2025/04/04 06:35 土方久明
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エス・アイ・エスにて世界最高のRoonの音を聴く

昨年秋、僕は期待に胸を膨らませながら、東京都内のとあるハイエンド・オーディオショップの扉を叩いた。いまや全国のオーディオファンから高い信頼を集めるエス・アイ・エス。そこで、世界最高峰のRoonサーバー、TAIKO AUDIO(タイコ・オーディオ)の「Extreme Server」、そして「Olympus Server/XDMI」が聴くことができる機会に恵まれたのだ。

東京のハイエンド・オーディオショップ エス・アイ・エスにて。土方久明氏(左)とエス・アイ・エスの中谷功一さん(右)

この記事に関心を持っているオーディオファンにはいまさら説明不要かもしれないが、タイコ・オーディオの「Extreme Server」と「Olympus Server/XDMI」は、統合型再生ソリューションRoonの“頭脳”、その機能と音質を司るRoonサーバーである。価格は前者が約650万円、後者が約1,360万円。まさに常識はずれの金額である。

だが、その音質が“ヤバすぎる”とオーディオファンの間で話題になっていた。昨年のインターナショナルオーディオショウの太陽インターナショナルブースでもデモが行われており、その音質的クオリティに驚いた方も少なくないだろう。現場で聴いた僕も、「Roonでここまでの音質が実現できるのか!」と、全身が総毛立つ思いをしたことを思い出す。

世界中のブランドから発売されているRoonサーバーを見ても、ここまでの最先端かつ斬新な技術と徹底的な物量対策が施されているものは僕の知る限り、ほとんど存在しない。今回はその実力を徹底的に検証するべく、エス・アイ・エスを訪問したという次第である。

PCとオーディオの双方の知見を高度に融合

改めてタイコ・オーディオについて解説しよう。同社は、オランダのオルデンザールに本拠地を構えるオーディオブランド。創業者はエミール・ボック氏である。Roonサーバーのラインナップは2種類で、先述の「Extreme Server」と「Olympus Server/XDMI」。それに、後で詳しく解説するが、スイッチングハブ「Extreme Switch」や、ルーター「Extreme Router」、それにハブやルーターに電源を供給する「Extreme Power Distributor」をラインナップする。

TAIKO AUDIOの「Extreme Server」(6,402,000円)※以下全て税込

このラインナップからも分かるように、いわゆるアンプやプレーヤー等を開発するトラディショナルな意味での“オーディオメーカー”ではない。ネットワーク、そしてPCオーディオに関する並々ならぬ知見を持った、特異な出自を持つオーディオメーカーなのだ。

タイコ・オーディオが展開しているRoonサーバーも、基本的には一般的なパソコン/サーバーと構成は一緒だ。CPU、メモリ、マザーボード、電源、LANやUSB等のインターフェイスで構成される。だが決定的な違いは、音質的観点で選定されたパーツを投入し、超高速なデータの通信を可能としながら、負荷を最小限に抑えた動作を実現していること、さらにそれらのパーツを使った独創性あるデータ通信を含む、ソフトウェアレベルでの音質対策を行なっていることだ。

Extreme Serverの内部。大型コンデンサや電源部など、普通のPCではありえない豪奢なパーツが活用されている

まずはExtreme Serverから紹介しよう。アルミニウムによるシャーシは迫力満点かつ美しい。サイズは483W×455D×180Hmm、重量は45kgもある。基本となるCPU/メモリについては、CPUはIntel社のXeonをデュアルで搭載した10コア構成で、メモリ容量は48GB。PCというより業務用ワークステーションレベルで、Roonが要求する膨大な処理能力を満たすとともに、負荷を分散させることで音質面にも配慮されている。

また処理能力の高いCPUおよびメモリに対応すべく、筐体の内部および外部に徹底した放熱対策が取られていることも特徴である。放熱ファンを搭載しない、徹底した静音設計であり、脚部には振動特性に優れた合板「パンツァーホルツ」のフットが採用されている。

また大型のリニア電源が搭載されていることも大きな特徴で、聴感にて選び抜かれたムンドルフとデュエルンドの最高峰コンデンサーとルンダール社のトランスによって構成。この辺りのパーツ選定が一般的なパソコンと決定的に異なる点で、価格やサイズを度外視して、あくまでオーディオ的な観点からすべてのパーツが選定されていることに、タイコ・オーディオの独自性がある。

Extreme Serverの電源部

あえてパソコンらしい点を挙げるとすると、“拡張性の高さ”だろう。背面にはUSBやLANボードが備わっているが、オプションボードを挿入できるドックも用意されており、今後の発展性にも対応する。オーディオにPCを持ち込むことは、規格がすぐに陳腐化してしまう、古くなってしまうという危険性と隣り合わせである。タイコ・オーディオはその点、内部パーツはそのままに「バージョンアップできる設計」とすることで、長く愛用できる「オーディオ製品」としての設計理念をはっきりと示しているのだ。

Extreme Serverの背面端子。モジュールを挿入しカスタマイズすることもできる
 

独自のデジタル伝送システムや電源部を新開発

そして、その上位グレードとなる「Olympus Server/XDMI」。Extreme Serverの世界的な成功を経て、さらに音質を追求したい、と考えたエミール・ボック氏が次に送り出してきたモデルである。サイズは480W×480D×190HmmとExtreme Serverより一回り大きく、質量も60kgとさらに重量を増している。CPUやメモリについても、32コア、128GBとExtreme Serverより強化されている。

TAIKO AUDIO「Olympus Server/XDMI」(13,673,000円)→4/7より価格改定17,578,000円)

それに加えて2点重要な新技術が搭載されている。それが、BPS(Battery Power Supply)というバッテリー管理システムと、XDMI(Extreme Direct Music Interface)と呼ぶオーディオのためのデジタル伝送システムである。

BPSは3基の独立したバッテリーと、それらに電源を供給する2基のリニア電源にて構成される。バッテリーのひとつはCPUやマザーボードなどの基板、もうひとつが上述のXDMI、もうひとつは周辺デバイスに供給される。オーディオ信号にデジタル由来のノイズが紛れ込まないよう、それぞれ独立して供給されているのだ。

「Olympus Server/XDMI」の内部構造。

リニア電源は、最新のGaN(窒化ガリウム)FET技術を独自に応用しているそうだ。またバッテリーをベストな環境で利用するため、専用のスマートフォンアプリ(iOS/Android)でバッテリー状態を確認できるという。ちょっと面白いシステムだ。

もうひとつのXDMIについては、コンピューター的に非常に難易度の高いアイデアとなるため、かいつまんで説明すると「Roonに特化した、PC内のオーディオ信号をできる限り低ノイズで伝送する規格」と言えるだろう。デジタルトランスポート、ASIOドライバー、処理ソフトウェアがその中には含まれており、Roonから送り出されたデジタルデータを、I2SにてDACに送り出す役割を果たしている。I2Sはジッターやノイズの影響を受けにくいという利点があり、音質を追求するハイエンドブランドでは以前から注目されていた。

まさにXDMIは、タイコ・オーディオのPCとオーディオ、その双方への深い知見によって生み出された技術だと言えるだろう。

Olympus Server/XDMIの背面端子。USBによるデジタル出力(中央)のほか、アナログ出力ボード(右)も搭載できる

ちなみにこのXDMIは、Extreme Serverにもオプションとして追加することもできる。新技術が出たから旧機種が陳腐化するのではなく、しっかりアップデートの余地を残しているところも好感が持てる。

Extreme Server、ハイレベルな音質を体験!

それでは試聴に入りたい。スピーカーはMAJICOの「S3 Mk3」、パワーアンプはPILIUM「HERCULES」、プリアンプ「ALEXANDER」で、DAコンバーターはCH Precisionの「C1.2」。DAコンバーターに、タイコの2台のサーバーをそれぞれUSBケーブルで出力している。また再生にはTIDAL+Roonを利用する。

メインスピーカーはMAJICO「S3 Mk3」(9,240,000円/ペア)、パワーアンプはギリシャのPILIUMのモノラルアンプ「HERCULES」(17,600,000円/ペア)

まずはExtreme Serverから。アデルのアルバム『30』より「To Be Loved」「Easy on me」(44.1kHz/24bit)を再生すると、一聴してとんでもない音が出ていることに気が付く。オーディオ的な音質表現をするならば、上下の帯域レンジ、SN比、ダイナミックレンジも広い。特に印象的なのは聴感上のノイズフロアの低さで、ピアノの余韻成分が扇型に展開し、ピンポイントかつ手に触れられそうなボーカルが眼前に現れる。

グスターボ・ドゥダメルとロサンジェルス・フィルハーモニックによる「トーマス・アデス:バレエ音楽『ダンテ』」も圧巻だ。オーケストラのスケール感と各楽器の実体感を両立し、緻密な楽器のニュアンスもよく出る上に、低音域のボリュームの豊かさにも驚かされる、しっかりとしたダンピングでシェイプされており、コントラバスなどの低音楽器が緩んだ表現にならないことが快い。

中高域の描写に対して低域が遅れをとらず、音楽のリズムが崩れない。スピーカー、アンプの能力の高さを差し引いても、「ストリーミングサービス&Roonでここまでの音を出せるのか?」と思えるほど、音が良い。

アデルのリアルな実体が再現するOlympusの衝撃

すでにこのExtreme Serverのサウンドに驚かされたところだが、続いてRoonサーバーをOlympus Server/XDMIに切り替えた。価格はおよそ1,360万円、正直に話せば、ここまでの金額が本当に必要なのかと、少々懐疑的な気持ちがあったのも事実だ。だが、改めてアデルを再生した瞬間…心配はまったく杞憂に終わった!

一聴して、イントロのボーカルの位相表現が向上、音像や空間がしっかりと像を結んで手に取るように鮮明なサウンドステージを実現する。いままで聴いたことがないレベルで、アデルのリアルな実体が目の前に誕生した。

続いてダンテは、聴き手に猛烈に訴えかけてくるサウンドである。押し出しの良いエネルギーが、スピーカーの存在を超えてどこまでも広がっていく。ピアノタッチに芯があり、その周りに空気感が漂うさまには、時間を忘れて聴き惚れてしまう。金管楽器や、弦楽器の位置関係を奥行きとともに明瞭に提示し、録音会場の背響条件までも明瞭に再現される。ここまでの音が、録音ソースには入っていたのか!

Olympus Server/XDMIは単に情報量が多いだとか、解像度が高いといった次元を超えて、聴き手の心の内にまっすぐにアピールする音が出てくるのだ。アーティストや作り手の感性が、ここまで伝わってきたのは初めてのことだ。この音を聴いてしまえば、この価格には納得せざるを得ないと正直に伝えたい。圧巻のサウンドである。

ルーターやハブによるノイズ対策効果も重要

最後に、タイコ・オーディオやルーターやハブの周辺機器にも尽力している。エス・アイ・エスの中谷さんにお願いして、「Extreme Router」(ルーター)と「Extreme Switch」(スイッチングハブ)の有無の聴き比べも行ってみた。

左上がスイッチングハブ「Extreme Switch」(1,108,000円)、右上がルーター「Extreme Router」(1,617,000円)、右下の少し小さいのが電源部「Extreme Power Distributor」(620,400円)

この音質変化も、無視できないレベルである。特に微小レベルの音のリニアリティによる空気感の表現や、演奏の強弱の描き分け、複数の楽器が同時に音を出した時のダイナミクスの描き分けなどに決定的な違いを感じられた。

クロームの美しい仕上げもハイエンドオーディオの喜びをさらに高めてくれる

試聴してから数カ月経った今も、僕の耳からはOlympus Server/XDMIの圧倒的な音が耳から離れない。それくらいに感動的な体験であった。そして、Roonの音質を決定づけるのは、やはり良質なRoonサーバーの存在である、という確信はさらに強固なものとなった。

上流で失われたデータは、決して下流で再現することはできない。そしてデジタル再生は常にノイズとの戦いである。PC的観点とオーディオ的観点、双方の知見を高度に融合し、音質を追求しうるブランドは、世界中を見渡してもタイコ・オーディオの他にないだろう。

デジタル再生の最先端を10年以上追いかけ続けてきた僕の耳からしても、このRoonサーバーの到達点には圧倒された。購入には、相当思い切った勇気がいるプロダクトである。だが、ぜひ機会を見つけて聴いてほしい。間違いなくそれは、現代のデジタル再生の最高峰と言える音だからだ。

編集部注:「Olympus Server/XDMI」は、4/7より価格改定となり、新定価は17,578,000円/税込となる。ご興味のある方はいますぐショップにご連絡を。

■エス・アイ・エス SHOP INFORMATION
場所:〒113-0022 東京都文京区千駄木5-42-5
定休日:日曜日、祝日
営業時間:12:00 - 19:00
TEL:03-3824-1139

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