スマホのNFC機能普及への取り組みも
第3のスマホ向けOS、Tizen/Firefox OS へ高まる期待 − MWC2013を振り返る
インテルやサムスンなどは、これまでモバイル向けOSの提供を目指しながら失敗してきた過去を持っているだけに、MWC会場では関係者から反省の弁も聞かれた。TizenではOSの開発自体はオープンソース陣営に任せ、ビジネスモデルやエコシステムを構築することだけに専念するという方針を示しており、同様の失敗は避けたい考えだ。
全体的には、まずはボリュームゾーンに向け低価格スマートフォンが計画されているが、ドコモやKDDIとしては、国内向けにハイスペックモデルも検討しており、高価格帯モデルも登場する見込みだ。
国内メーカーでは、Tizen参加企業に加え、ソニーモバイルがFirefox OS向け端末の開発を検討しており、実際の技術検証も進めている。同社の鈴木国正社長は、「あくまで検証」という表現にとどめており、すぐに端末開発に取りかかる方針ではないようだ。ただ、Android1本という選択肢は、端末メーカーにとってもリスク要因であり、各社とも検討は行っていくだろう。今後、Tizen、Firefox OSがどのような進展を見せるかが注目される。
■スマホのNFC機能普及への取り組みも
もう1つの注目がNFCだ。NFCは非接触通信規格の名称で、国内の「おサイフケータイ」で使われているFeliCaもNFCの1つだが、日本では一般的にFeliCa以外のNFC(Type A、Type Bの2種類)を「NFC」と呼ぶことが多い。本稿でも以下はNFC Type A/Bを「NFC」と表現する。
国内では普及したおサイフケータイだが、海外ではあまり普及していない。NFC自体はプリペイドカードや一部クレジットカードなどで使われており、対応POSレジをはじめ、米国や韓国などで利用環境は整ってきているが、スマートフォンを含む携帯電話での利用はほとんど進んでいないのだ。
しかし携帯業界ではNFCへの期待度が高く、今回のMWCでは、NFC Experienceと題した専用ブースが設置されていたほか、NFC対応スマートフォンを使ったMWC会場への入場管理、バルセロナのショップやタクシーなどを使ったNFCクーポン配布、おサイフケータイのような料金支払いへの対応といった取り組みが行われていた。
対して日本には8年のおサイフケータイのキャリアがある。特にJR東日本の高い要求に応じた高速な反応と処理を実現しており、MWCの実験はまだまだ比較にならないレベルだ。この辺りはキャリアが主導できた当時の日本の状況も功を奏したのだろう。遅々として進まないNFCの進捗に対して、国内ではNFC対応スマートフォンやサービスも増え始めている。
恐らく、NFCの普及にはiPhoneの対応が鍵になるが、一時期高まった採用の観測が、現時点では遠のいたとも言われており、判然としない。もともとアップルは規格の趨勢が決まった時点で取り組む慎重な企業のため、現時点ではNFCへの対応は時期尚早と考えているのかもしれない。
NFCは、携帯端末、サービス、POSなどのインフラが一体となって提供されるため、普及のハードルは高い。MWCを主催する欧州携帯業界を中心とした業界団体GSMAは、これまでもNFC関連イベントの開催を行ってきたが、最大イベントであるMWCで実施したのは今回が初めてだ。世界各国から業界の人間が集まるイベントだけに、アピールとしての効果はあったと思われる。NFC普及の1つの契機になることが期待される。
(小山安博)