【特別企画】アコースティックラボによる試聴会を編集部記者が取材
“石井式”での『良い音の3大要素』を徹底解説 − 「Acoustic Audio Forum」潜入レポート
イベントでは、定在波が偏在しやすい比率として、8畳間のような平面もしくは断面が正方形になる部屋、または、縦幅に対して横幅が2倍になるなど、ある辺が2倍になるような長方形の部屋は避けるべきだと紹介。「10畳間はだいたいいい寸法比にできることが多い」(鈴木氏)という。
鈴木氏はまた「寸法比が決定的に部屋の音の性格を決めてしまう」と述べ、「部屋を構築する際に、比率のことを言わないで吸音材のことばかりを言う人はヤブ医者のようなもの」とも続けた。
なお、会場となった同社ショールームの寸法比は1:1.15:1.61。石井式の理想値とは異なるが、それ以外にもオーディオ的に適した比率があることが過去の研究で分かっており、その理論に基づいて設計されている。
また、イベントではこのショールームの伝送特性の計測データも紹介。「計測ポイントによって数値が結構違っているが、では、聞く場所で音が違ってくるかというとそうでもない。手前味噌だがどんな場所でもなめらかな音で聞けるようになっている」とし、「部屋づくりに伝送特性データを活用するのはたしかに有効だが、それがすべてではないことがわかるだろう」と語った。
■オーディオ機器同様に壁や天井も剛性が重要
さて、当たり前だが我々が音を聴くときにはスピーカー等から発せられた直接音と、壁や床などで反射した間接音の両方を聴いている。壁などの材質、部屋の広さによって反射音が自分の耳に届くまでの時間が変わってくるのは分かるだろう。3大要素の2点目である「部屋の響き」を考えるとは、つまりこうした間接音について考えるということだ。
イベントでは、現代建築で一般的に用いられている構造の壁の模型も用意。鈴木氏は「昔は土壁だったため音が反射しなかったが、今の日本の建築では壁がビビって音が濁ることが多い。いくら美しい直接音が出ていたとしても間接音で音がディスターブされる」と、間接音を意識する重要性を説く。
そこでとるべき対策が振動対策だ。同社ショールームでは通常は1枚だけで済ませる石膏ボードを3枚以上重ねて剛性を高めた壁や天井にするなどしている。また、床もオーディオ機器を設置するスペースとリスニングスペースで縁を切って振動が伝わらないようにするなど、様々な対策を施している。オーディオ機器同様に、高剛性、振動対策は部屋でも重要なキーワードなのだ。