【特別企画】現代住宅の“音響的限界”とは?
“高音質な家”作りの重要点を徹底解説 − 「第30回Acoustic Audio Forum」取材レポート
また、現代住宅で採用されている中空構造がオーディオ的な音質にも大きく影響していることに言及。中空構造の壁は振動しやすく、その振動によって音が歪む問題が発生する。壁や床に反射した音に歪みが加わるということはつまり、いくらスピーカーからの出音が良くても、その魅力が部屋によって減衰してしまっているというわけだ。
この問題をクリアするために必要なのは、重い素材を採用して振動しにくくすること。オーディオ機器も部屋づくりも根底にあるものは共通しているのだ。
■「中低音域が充実すると音楽的な満足度も変わってくる」
部屋の吸音率も音質に影響を及ぼす大きなポイント。特に中低音域の吸音具合が重要で、「中低音域が充実すると音楽的な満足度も変わってくる」という。
ここでイベントでは、過去に同社が手がけた物件のデータを開示。「この物件以外でも結構多い事例」だと、高音域よりも低音域のほうが多く吸音されていた部屋の改善を行った事例を紹介し、「一般的に壁は吸音材とは呼ばないが、それでも壁や床トータルだと結構吸音されている。現代の住宅はこういう吸音特性になることがほとんどだ」と解説した。
なお、この吸音も壁や床の共振が大きな原因のひとつ。「100Hz〜200Hzあたりが共振で吸われ、中低音域の残響時間が高音域より短くなってしまうことが音質的な不満につながる」とし、こうした点に配慮しながら防音工事を行うことが重要だとする。
また、これとは別に「家を建てようと決意したタイミングでこのイベントに参加し、『自分で使ってるB&W 800Dより(同社ショールームの)805Dのほうが朗々と鳴っている』ことに驚いて我々に発注してくれた」という物件事例も紹介。
この物件は軽量鉄骨づくりで、一通り完成後に防音工事の依頼があったとのこと。鉄骨であるため天井高を変えられないなどの制約があったが、「圧迫感なく作れて喜んでもらえた」という。