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DSからオーディオNAS、Roonまでを総括

“あの製品”が全てを変えた − ネットワークオーディオ、10年の歴史をふり返る<黎明/拡大編>

公開日 2019/02/21 06:00 逆木 一
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▶2007年6月29日
米アップル、初代「iPhone」を発売。同年9月5日にはiPod Touchも発表
※日本国内への導入は第二世代「iPhone 3G」(2008年7月)から

iPhoneは「再生機器からコントロールを独立させる」というアイデアを現実にし、さらに飛躍させた端末となった。高度な処理能力と表示能力を持ち、携帯可能な「スマートフォン」と、そこで動くアプリによって、「居ながらにしてすべてを見、すべてを操る」可能性が開かれたのである。

なお、サードパーティー製アプリを提供するApp Storeは、第二世代「iPhone 3G」のリリースと同じ2008年7月からサービスインした。<関連ニュース

「iPhone 3G」


▶2007年11月
LINN、ネットワークオーディオプレーヤー「KLIMAX DS」を発売

世界初の「真にクオリティ志向」に徹したネットワークオーディオプレーヤーの誕生。「コントロール」を外部に任せ、プレーヤー本体に操作ボタンを搭載しない研ぎ澄まされたデザインは、はじめからネットワークオーディオプレーヤーの理想を体現していた。なお、LINNはプラットフォームにDLNAを採用せず、UPnPをベースに独自にシステムを作り込む道を選択した。なお、DSはUPnPをベースにしていたため、サーバーについてはDLNA対応の製品と問題なく組み合わせが可能だった。 (関連ニュース

発表当時に弊社試聴室に持ち込まれた「KLIMAX DS」(2007年撮影)。発売発売当初の価格は294万円だった


LINN、DSに関連するソフトウェア・ライブラリを公開

「オープンであること」の重要性を掲げたLINNの方針は、iPhoneの誕生とその後のApp Storeの開設という歴史的なタイミングの良さもあり、後述の優れたサードパーティー製コントロールアプリの誕生に繋がった。また、公開されたソフトウェア・ライブラリはネットワークオーディオのプラットフォーム「OpenHome」の土台となり、2013年から2014年にかけて大きく花開く。


▶2008年2月
LINN、ネットワークオーディオプレーヤー「AKURATE DS」を発売

KLIMAX DSを派手な花火で終わらせず順当にDSのラインナップを拡大したことで、「ネットワークオーディオプレーヤー」というジャンルに対するLINNの本気が示されたといえる。 (関連ニュース

「KLIMAX DS」(最上段)と「AKURATE DS」(最下段、いずれも2008年撮影)


▶2008年7月
QNAP、NAS「TS-119」を発売

長らくネットワークオーディオを支えたNAS/サーバー。TS-119はPC周辺機器としての汎用NASでありながら、動作の安定性、サーバーソフトにTwonky Serverを搭載したこと、金属筐体、ファンレス仕様など様々な要素が奇跡的に備わっていた。LINNが組み合わせるNASとして推奨したこともあり、TS-119は「ネットワークオーディオに用いるNAS」の定番となった。

TS-119によってTwonky Server(当時はTwonky Media Server)は「ネットワークオーディオに用いるサーバーソフト」の事実上の標準となったが、一方で「トンキー病」が長らく猛威を振るうことになる。

「TS-119」


▶2008年8月
LINN、ネットワークオーディオプレーヤー「MAJIK DS」を発売

KLIMAX・AKURATE・MAJIKの3ラインが完成。ベーシックな「SNEAKY」ラインも含め、製品グレードによって機能に差はなく、アップデートで世代を越えた機能拡張が行われる「LINN DSというプラットフォーム」が構築され、激しい進化に晒されるネットワークオーディオプレーヤーの「製品としての在り方」という点でも完成を見せる。 (関連ニュース



黎明期に登場した特に重要なコントロールアプリ

PlugPlayer
「再生操作」「プレイリスト」「ブラウズ」の三要素を備えた、「すべてのコントロールアプリの母」とでもいうべきUPnPベースのアプリ。DLNAとOpenHomeの両方に対応する。

PlugPlayer

SongBook DS
「LINN DS専用」アプリ。PlugPlayerよりもずっと高額ながら完成度に歴然たる違いがあり、多くのDSユーザーに愛用された。

SongBook DS

ChorusDS
SongBook DSに続く「LINN DS専用」アプリ。SongBook DSとChorusDSが登場した時点で、「コントロールアプリのあるべき姿」は99%完成されていたと言っても過言ではない。

ChorusDS

アップルのApp Storeがスタートしてからそれほど間を置かずに、「サーバー」「プレーヤー」「コントロール」の役割を完全に担い得るハード&ソフトが勢揃いした。つまり、この時点で「居ながらにしてすべてを見、すべてを操ることで得られる、音楽再生における筆舌に尽くしがたい快適さ」というネットワークオーディオの真のメリットは完成していた。まさに奇跡のような時代である。


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