DSからオーディオNAS、Roonまでを総括
“あの製品”が全てを変えた − ネットワークオーディオ、10年の歴史をふり返る<黎明/拡大編>
▶2008年
メリディアン、ネットワークオーディオのトータルシステム「Sooloos」を発売
メリディアンとSooloosは元々別会社で、Sooloos社が製品のソフトウェアを担当した。Sooloos社のCEOはかのEnno Vandermeer氏。「サーバー」・「プレーヤー」・「コントロール」を分離させる発想、大型タッチパネルによる操作、アルバムのタイル表示を全面的に採用するグラフィカルなUIなど、様々な面で傑出した先進性を持っていた。Enno Vandermeer氏は後にメリディアンを離れ、Roon Labsを立ち上げてSooloosの血を引く「Roon」を送り出す。 (関連ニュース)
▶2008年10月22日
HTCから世界初のAndroid搭載スマートフォン「HTC Dream」が登場
コントロールアプリ「BubbleUPnP」が登場するまで、ネットワークオーディオにおけるAndroidの存在感はほとんどなかったと言わざるを得ない。
▶2008年〜2009年
zigsowの「ZSS-1」やillustrateの「RipNAS」などの「オーディオ用サーバー」が登場
まずTS-119の存在が大きく、ストレージとして使うには当時のSSDは非常に高価、そして今ほど「サーバー」の重要性が認知されていなかったこともあり、これらの製品はあまり存在感を示せなかった。 (関連ニュース)
▶2010年4月
アップル、初代「iPad」を発売
9.7インチという大画面を持つiPadの登場により、コントロールアプリの基本要素である「再生操作」「プレイリスト」「ブラウズ」を一画面に表示してより高度な操作性を実現するために、やはりコントロール端末にはある程度の大きさが必要だということが実感できた。また、自分の音楽ライブラリを巡り、アルバムアートを愛でること自体の楽しみも増大した。 (関連ニュース)
「SongBook DS」がiPadに対応
「ChorusDS」のiPad版である「ChorusDS HD」が登場
LINN DSに傑出した操作性をもたらしていた二つのアプリが、あっという間にiPadに対応。この二つのアプリがiPad版に対応した時点で、「コントロールアプリのあるべき姿」は99.9%完成されていたと言っても過言ではない。iPadと対応アプリの登場で、音楽再生のユーザビリティはさらに洗練された。なお、2010年の後半にSongBook DSは「SongBook Lite」となり、DS以外のプレーヤーでも汎用的に使用可能になる。
第2期 ネットワークオーディオの拡大
LINN DSはネットワークオーディオを完成させた一方で、価格的な問題もあり、多くのオーディオファンにとって敷居が高かったことは事実。そんななか、2010年はマランツから登場したNA7004をはじめとして、国内外のメーカーから比較的安価な製品が立て続けに投入されたことで、「ネットワークオーディオ」という製品ジャンルが一気に拡大した。この時に初めてネットワークオーディオプレーヤーを購入したというユーザーも多いと思われる。
ただ、この時期に登場したネットワークオーディオプレーヤーの多くはプラットフォームにDLNAを採用していたが、同時に、DLNAの要領を得ない音楽再生の仕様もそのまま搭載しており、ユーザビリティの点で大きな問題を抱えていた製品も少なくなかった。
▶2010年10月
マランツ、ネットワークオーディオプレーヤー「NA7004」を発売
USB入力とネットワークの両方で96kHz/24bitまでのハイレゾ音源の再生に対応(発売当初)した、国産初の本格的なネットワークオーディオプレーヤー/USB-DAC。プラットフォームにはDLNAを採用し、純正コントロールアプリ「Wizz App」も用意された。10万円を切る定価はLINN DSのエントリーモデルと比べても大幅な安価を実現しており、ネットワークオーディオプレーヤーの敷居を一気に引き下げた記念碑的なモデルである。 (関連ニュース)
▶2010年10月22日
DiXiM、コントロールアプリ「DiXiM DMC」をリリース
DLNA準拠のコントロールアプリで、iPhone/iPad両対応。ブラウズ時の音源の「タイル表示」の先駆けとなった(SongBook LiteとChorusDSもその後タイル表示に対応)。しかし、当時はiPhone版・iPad版ともに処理能力の制約から高解像度のアルバムアートを扱うとよく落ちた。
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