OpenHome台頭からRoon登場、そして・・・
ネットワークオーディオはどこから来たのか、どこへ向かうのか − 10年の歴史をふり返る<発展/成熟編>
▶2018年2月
アイ・オー・データ、オーディオ用NAS/ミュージックサーバー「Soundgenic」を発売
「ネットワークオーディオを始めたい。最初に何を買えばいい?」と聞かれたら、「これを買おう」と答える、そんな製品の決定版の登場。価格帯や位置付け的にはRockDisk for Audioの後継機といえるが、fidataのソフトウェア資産(OpenHome対応のネットワークオーディオトランスポート機能を含む)により、「超一流の機能を驚くべき廉価で実現した」ミュージックサーバーとなった。年内には筐体に制振対策を施したハイグレードモデルも登場した。(関連ニュース)
▶2018年5月
LUMIN、ネットワークオーディオプレーヤー「X1」を発表
SOtM、オーディオ用ハブ「sNH-10G」を発表
2018年のミュンヘン High Endにて、SFPポートを搭載して光LAN接続に対応するネットワークオーディオプレーヤーとオーディオ用ハブが同時に発表された。偶然にしてはあまりにもタイミングが良すぎるが、本当に偶然なのだそうだ。今後ネットワークオーディオ関連製品に光LAN接続が浸透することになるのか、興味深い。(関連ニュース)
▶2018年夏
Roon Labs、純正Roon Server「Nucleus」を発売
※日本導入は2018年11月
発表から約一年を経て発売、先日日本にも導入された。Coreの動作に強力なCPUを必要とするRoonは「何でCoreを動かすか」という問題を常に抱えていたが、オーディオ機器として作られたNucleusの登場により、Roonをオーディオシステムに組み込む際のハードルは一気に下がった。(逆木氏によるRoon Labsマネージャーへのインタビュー記事)
▶2018年7月
スフォルツァートのネットワークオーディオプレーヤーが「Diretta」に対応
DirettaはネットワークオーディオプレーヤーをUSB-DACならぬ「LAN DAC」として動作させるためのプロトコル。Dante、Ravenna、RAATといった先行するプロトコルに対し、Direttaは「オーディオ用途に特化」しており、スフォルツァートのネットワークオーディオプレーヤーに驚くべき音質向上をもたらして「LAN DAC」の可能性を示した。
現状でDirettaの使用には再生機器としてPCが必要で、対応するネットワークオーディオプレーヤーもスフォルツァート製品に限られているが、今後他社製品でDirettaが採用・搭載されていく可能性もある。(関連ニュース/逆木氏によるLAN DACレポート)
▶2018年10月
LINN、ネットワークオーディオプレーヤー/プリアンプ「SELEKT DSM」を発売
単体プレーヤー「KLIMAX DS」と「AKURATE DS」の販売終了を発表
見て楽しく、触って楽しく、聴いて楽しい新たなDS「SELEKT DSM」。ファイル再生時代に希薄になってしまった「音楽に触れる感覚」を蘇らせるべく、聴覚はもちろんのこと、視覚と触覚にも訴えかけるデザインとなっている。(関連ニュース)
また、単体プレーヤーの「DS」は終了し、プリアンプ機能込みの「DSM」にラインナップが一本化された。既に売上の大半がDSMになっていたとのことで、オーディオマニア的には一抹の寂しさもあるが、これも時代の流れか。(関連ニュース)
▶2018年12月
SME、ロスレス音楽ストリーミングサービス「mora qualitas」を発表
日本発&初のロスレス音楽ストリーミングサービス。開始は2019年春を予定。今まで「日本の曲」をロスレス音楽ストリーミングサービスで聴く機会はあまりなかったが、mora qualitasにより状況が変わることを期待したい。
▶2019年1月
Roonがバージョン1.6でQobuzに対応
TIDALと同様、Qobuzの音源もRoonの「音楽の海」に統合可能に。今までTIDALは「Roonと連携できる」ことが大きな強みだったことは間違いないが、RoonのQobuz対応によってその強みも絶対的なものではなくなった。両サービスには音源のラインナップやハイレゾ音源ストリーミングに対する考え方など様々な違いがあるため、今まで「Roonと連携できるからTIDALを使ってきた」というユーザーも、この機会にTIDALとQobuzの比較をしてみると面白いだろう。(関連ニュース)
嚆矢となったLINNのKLIMAX DSの登場から既に10年以上の時が経ち、ネットワークオーディオは紆余曲折を経ながらも着実な進化を遂げてきた。
こんにちでは、Soundgenicの存在が端的に示すように、エントリークラスの製品であっても機能とユーザビリティは上位機と同等になり、製品の価格帯にかかわらずネットワークオーディオの真価たる「快適な音楽再生」が手に入る環境が現実のものとなった。これからネットワークオーディオを始めようという人は本当に幸いだ。
また、今後ネットワークオーディオがどのような進化を遂げるにしても、既に実現されている機能や快適さが価値を失うことはない。Roonが登場した後もOpenHomeが確固たる位置を保っているように、一線を越えて優れたプラットフォームは共存し得る。現在のネットワークオーディオがもたらす恩恵を、臆することなく存分に享受してほしい。
(逆木 一)