【番外編】ミヤザキタケルの気軽にホームシネマ
クリスマスは、ひとり。そんなあなたの心に染みる、映画アドバイザーが選んだサブスク配信8作品
『勝手にふるえてろ』(2017年・日本)
(配信:Amazon Prime Video / hulu)
24歳のOLヨシカ(松岡茉優)は、中学の同級生 “イチ(北村匠海)” に10年間片想い中。脳内に思い出の中のイチを召喚しては堪能する日々を送っている。そんなヨシカの前に、会社の同期で熱烈にアプローチしてくる “二(渡辺大知)” が突如現れた!だが、ニとの関係に乗り切れず、 “脳内片思い” と “リアル恋愛” の狭間で揺れ動くヨシカは、同級生の名を騙り同窓会を計画。ついにイチとの再会を果たすのだが…。
■一歩踏み出す勇気がなければ、喜びも哀しみも得られない
多くを求めなければ、傷付かずに済む。理解されることを望まなければ、拒絶されることもない。そんな自分を誤魔化すような生き方に慣れてしまえば、何もかもどうってことない。クリスマスだって一人で平然とやり過ごせる。そんな風に、自分で自分を洗脳するかのような生き方をヨシカはしている。
しかし、いつだって予期せぬ事態は訪れるもの。その都度、期待だってしてしまう。誰かとどこかへ出かけたり、手を繋いだり、キスしたり、SEXしたりetc…。そうして押し殺していたはずの欲望が容易く顔を出してしまう。二人の男性を前に、自身の内に隠しておいたあらゆる感情が溢れ出て、自分という人間から目を背けられなくなっていくヨシカ。そんな彼女の姿に触れれば自ずと分かるはず。言葉にしなきゃ、行動に移さなきゃ、何も始まらないし何も変わらないということを。
本作を目にすれば、ヨシカの勇気に触発されて何でもできそうな気持ちになると思う。だが、それは自分という人間が生み出した勇気ではない。勇気を出さなきゃいけないのはいつだって自分自身。一歩踏み出すために必要な “キッカケ” をこの作品は与えてくれるのです。
『パンチドランク・ラブ』(2002年・アメリカ)
(配信:U-NEXT)
世界三大映画祭の全てで監督賞を受賞したポール・トーマス・アンダーソン監督作。普段は真面目で温厚な性格だが、何かと干渉してくる姉たちと育ってきたため女性不信で情緒不安定なバリー(アダム・サンドラー)。ある日、姉の同僚であるリナ(エミリー・ワトソン)と出会い恋に落ちたバリーは、不器用ながらもアプローチを続けていくが、以前利用していたテレフォン・セックスの悪徳業者に付き纏われ金を要求されてしまう。リナとの恋を成就させるべく、悪徳業者のボス・ディーン(フィリップ・シーモア・ホフマン)と話を付けようとするバリーであったが…。
■足枷を作っているのはいつだって自分自身
踏み出せない理由を作っているのは、いつだって自分自身。その呪縛から自らを解き放つことができるのもまた、自分自身。何かしらの問題を抱えているのなら、一つずつクリアにしていくしかない。譲れないモノがあるのなら、意地でも掴み取りに行くしかない。本編をご覧になれば納得いただけると思うが、おそらくあなたよりもバリーの方が何倍も不器用な人間だ。
そんな男が、姉たちの過剰な干渉、悪徳業者の卑劣なゆすり、良くも悪くも爆発してしまいそうな己の感情に蝕まれながらも、必死に恋していく。今年あなたが振り絞れなかった勇気を全身全霊で振り絞り、愛しいリナのために状況を打開しようと奮闘する。劇中のバリーと同等かそれ以上に必死にならなきゃ、おそらく現状は変えられない。彼が絞り出す勇気が、きっとあなたの心に最上級の刺激を与えてくれることだろう。
『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』(2018年・アメリカ)
(配信:U-NEXT)
ぽっちゃりでサエない容姿を気にして自分に自信が持てないレネー(エイミー・シューマー)。一念発起してジムに通い始めるが、トレーニング中にバイクから転落、頭を強打し失神してしまう。目が覚めると、なんとレネーは絶世の美女に変身していた!というのはレネーの思い込みであり、実際は何一つ変わっていなかったのだが...。
■ありのままの自分を肯定できることの素晴らしさ
クリスマスをひとりぼっちで過ごすのには、人それぞれに理由があると思うのだが、自らに対する自信のなさがトリガーになっているということはないだろうか。誰だって、コンプレックスの一つや二つ抱えながら生きている。他人からしたらどうでも良いことであっても、当人にとっては大問題。
自分の中で対処法を確立できている人もいれば、どうすることもできず苦しんでいる人もいる。そして、後者のような人にこそ、本作は大きな気付きを与えてくれる。それは、今抱えているものを拒むのではなく認めてしまうことの難しさと大切さ。そして、ありのままの自分を肯定できることの素晴らしさ。
加工アプリで自分をよりよく見せようとするかの如く、どれだけ表面を取り繕おうと、実際のところは何も変わっていない。他人は騙せても、自分自身は騙せない。が、自分の心をも騙してしまうのがこの物語の始まりであり面白いところ。とは言え、レネーが自身を絶世の美女になったと思い込んでしまう一点のみがファンタジーであるだけで、それ以外に関しては全てがリアル。周囲からすればいつも通りのレネーだが、思い込みによって大きくマインドが変化した彼女の一挙手一投足が、心持ち次第で日々の生活や対人関係が如何様にも変化していくことを垣間見させてくれることだろう。
そう、自分で気にしている程、他人は自分のことを気にしちゃいない。見知らぬ他人の視線や評価など気にするだけ時間の無駄。自信のなさから生じる不安や恐れは、多くの機会や出会いを潰すだけ。本当に大切にすべきは、かけがえのない相手に対して、如何にありのままの自分でいられるか。余計なことに囚われてしまいがちな己の心を見つめ直す最良の機会を得られるのと同時に、見終える頃には最高にポジティブな気持ちになれますよ♪
『オー・ルーシー!』(2018年・日本/アメリカ)
(配信:U-NEXT / hulu)
さえない日々を送る独身OL節子(寺島しのぶ)は、姪の代わりに受講した英会話教室のアメリカ人講師・ジョン(ジョシュ・ハートネット)に恋をする。“ルーシー”というアメリカンネームと金髪のウィッグを与えられ、戸惑いつつもジョンの親密なハグによって眠っていた感情が呼び起こされていく。そんなある日、ジョンが姪と付き合っていた上、姪と一緒に帰国してしまったことを知る。ジョンを忘れられない節子は二人を追って、一路カリフォルニアへ!人生に不器用なあまり暴走する節子の旅の結末とは…。
■人はそう簡単には変われない
今の自分に満足している人なんてそうはいない。より良き自分を、より良き人間関係を、より良き生活を、より良き人生を追い求めながら生きている。だが、人はそう簡単には変われない。10代でもあるまいし、ある程度の年齢に達してしまえば、価値観も趣味嗜好も凝り固まってくる。また、人生を変え得る程の大きな出来事もそう頻繁には訪れない。追い詰められて、どうにもならなくなって、後がなくなって、ドン底の一歩手前までいって、ようやくそのチャンスに巡り会えるものではないだろうか。
現状が良くないことは節子も重々承知していたものの、自分ではどうすることもできずにいた。繰り返しの毎日に耐え忍ぶのが精一杯で、現状維持か破滅的なドロップアウトを選ぶしか道はない。それならば前者を選ぶしかないし、打開策も容易には浮かばない。キッカケはいつだってこちらの思惑とは異なるタイミングでやってくる。万全の状態で臨めれば良いが、準備不足のまま決断を迫られることもある。そして、選択を誤れば、あっという間にキッカケは潰えてしまう。
■「変わる」のではなく、自分を「理解する」ということ
人はきっと「変わる」のではなく、より深く自分という人間を「理解」していくものなのだと僕は思う。自分の良き部分を伸ばすには、自分に何ができて何ができないのかを把握する必要がある。自分の汚い部分を抑え込むには、直視するのが嫌になる位まで自分の醜さや卑しさを把握する必要がある。そうしてやっと見えてくるものがある。
ただ漠然と「変わりたい」と願っているだけでは、限られた人生の時間を無駄にしていくだけ。たとえ打ちのめされようとも、挑戦をしなければ何が自分に合うのかを見極められない。見苦しい程がむしゃらに生きていく節子の姿に、あなたは一体何を思うだろう。クリスマスをひとりぼっちで過ごす人にとって、節子の生き方は大きな指針になるかもしれません。
いかがだったでしょうか? ここまで紹介した、いずれの作品もサブスクリプションサービスで家に居ながら気軽に見ることが出来ます。紹介した8本の内7本はU-NEXTで配信でされており、現在U-NEXTでは31日間、月額利用料が無料のキャンペーンも実施中! 1人につき1回限りの利用になりますが、この機会に登録してみてはいかがでしょうか?
どうかその胸に宿る “孤独” を自覚し、噛み締めてみて欲しい。とてもつらいかもしれないけれど、紹介した8本の作品は、きっとあなたの味方でいてくれる。それでは、実りあるクリスマスの時間をお過ごしください。メリークリスマス♪
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ミヤザキタケル 1986年生まれ、長野県出身。2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。 WOWOW・宝島社sweet・DOKUSOマガジンでの連載のほか、ラジオ・配信番組・雑誌などで映画を紹介。イベント登壇、MC、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジュ」など幅広く活動中。 |