CAVIN大阪屋×ダイナミックオーディオ×マックスオーディオによる貴重な対談
【特別対談】コロナ禍以降の専門店の役割。北海道・東京・福岡の老舗ショップに訊く新たな価値創造の取り組み
オーディオをより深く楽しみたい、と考えた時に心強いパートナーになってくれるのが、全国各地にある「専門店」の存在である。専門的な知識を持ったスタッフが、納品やセットアップ、お困り解決まで含めてしっかりサポートしてくれる。インターネット通販の存在が高まった昨今においても、さまざまなノウハウや専門知識の伝達、地域コミュニティの活性化という意味でも、専門店の果たす役割は大きい。
今回は、北海道のCAVIN大阪屋、東京のダイナミックオーディオ、そして九州のマックスオーディオと、それぞれの商圏を代表するオーディオ専門店3店舗にお越しいただき、「コロナ禍以降の専門店の役割」というテーマで対談をしてもらった。
ーーオーディオ市場は、コロナ禍では“巣篭もり需要”の後押しを受けて多少盛り上がったところがありましたが、ここ1年はその影響もだいぶ薄れて、以前の状態に戻ってきました。そんな社会情勢の中で、改めてオーディオ専門店の役割とは何かを考えたいと思いまして、全国の影響力のある専門店3店の方にお越しいただきました。まずはみなさまの自己紹介をお願いいたします。まずは北海道のCAVIN大阪屋さんからお願いします。
森田 CAVIN大阪屋の森田洋之と申します。CAVIN大阪屋というお店は、1928年に創業しまして、今年で96年目を迎えます。曽祖父が始めた会社で、私は4代目の社長になります。最初はラジオの輸入・販売をしていたそうで、その後徐々にオーディオや家電の販売と商売を広げてきました。いまはオーディオとホームシアターに特化してやっています。札幌市内をなんどか移転してきて、いまの札幌のビルに移ってきて33年目になります。私は入社して16年目で、2018年から社長に就任しています。
ーー続いては東京から、ダイナミックオーディオ5555 H.A.L.IIIの島 健悟さんお願いします。
島 ダイナミックオーディオの創業は1955年です。昔は六本木や新橋、新宿など都内にたくさんの店舗がありました。オーディオが非常に良かった時代ですね。ただそのあと市場が難しくなってきたために、2001年に現在の秋葉原の「5555」(フォーファイブ)と「トレードセンター」に集約しました。「5555」オープン時からのこだわりとして、「お客さんにちゃんと試聴していただく環境を作る」ということをモットーにやってきました。
ーー島さんは入社して何年目になるのでしょう?
島 秋葉原のビルができる数年前、1997年でしょうか。当時は店舗数も多く、異動も多かったのでいろんな経験を積めたのも良かったです。新宿ではホームシアターを売っていたこともありました。三管式プロジェクターなど、インストールの技術が必要だったんですね。ただその後家電量販店の存在感が増して、価格競争ではなかなか戦えなくなってしまい、シアターからは撤退しました。そしてより専門性の高いオーディオに特化したお店となっています。
ーーマックスオーディオさんもお願いいたします。
早見 マックスオーディオの早見 直です。うちの会社は1982年創業、今年で42年目になります。先代の社長、いまは会長職にある大原晴三が立ち上げた会社となります。大原はもともと北九無線という福岡の専門店で働いていて、独立して始めたのがマックスオーディオになります。私はお店がオープンして1年くらいの時から働き始めて、2021年に社長に就任しました。
ーーマックスオーディオさんは小倉と福岡、二つのお店をやっていますね。
早見 そうです。最初は小倉からスタートして、その後福岡店もオープンしました。どちらのお店もオーディオとホームシアター、両方手掛けています。
創業当初は、家電も含めてもっと幅広い製品を扱っていました。エアコンやBSアンテナの取り付けなどもやりましたし、電気に関わるあらゆることをやる“何でも屋”でした。先ほどのお話にもありましたが、量販店が出てきた頃から、オーディオやホームシアターにより特化した形に変わっていきました。
島 ダイナミックオーディオも、以前は冷蔵庫や洗濯機などもお得意様に頼まれたら販売していましたよ。パナソニックさんやソニーさんとの取引があると、そういった製品も仕⼊れられたんですよね。
森田 うちもそうでしたね。お客さんから「欲しい」って言われればなんでも取り扱いました。
ーー量販店の力が強くなってきたからこそ、専門店ならではの知見が活かせるところに特化してきたのですね。コロナの期間、とても厳しい時代だったと思いますが、みなさまはどう過ごされてきたのでしょう?
森田 コロナ禍の1年前に社長に就任し、なんとか1年間を乗り切ったぞ、と思ったらコロナになってしまいましてそれは大変な時期でした。90年を超える営業期間で、初めて1ヶ月完全に休業しました。その決断もとても厳しいものがありました。
1ヶ月休むと、売り上げゼロじゃないですか。ゼロですよ。でも従業員のお給料は払わないといけない、出るものは出ていく、通帳を見るたびに気が滅入りました。でも、再開した時に、2ヶ月分とまではいかないですが、通常の1ヶ月以上の売り上げがでて、お客さんが待っててくれたんだ、と感じました。なんとか救われたと思います。
ーー消費喚起として、国から10万円配布キャンペーンなどもありました。10万円くらいのコンポがよく売れたとも聞きましたが…。
島 通販をやっていたショップはすごく助かった、って聞きましたよね。お店にいけないから、その代わりに通販で10万円くらいのセットを買おう、と思った⼈が多かったようです。でも私たちのような専門店ではその恩恵は言うほど多くはなかったんじゃないかな…。
森田 そうねぇ。少しはありましたが、そんなに大きくはなかったですねぇ。あ、むしろオーディオより家電が売れましたね。炊飯器とか冷蔵庫とか。そのときは家電も続けてて良かったな、って思いましたよ(笑)。
島 お客さんとしても、何か買ってお店をフォローしたい、って気持ちがあったのかもしれないですね。そうそう、あの時海外製の10万円台のスピーカーが人気で、FYNE AUDIOやSonus faberなどがよく売れたと聞いております。
ーーそう、旅行に行けないから自宅で楽しめるオーディオを、という雰囲気はありましたよね。
森田 でも、GoToキャンペーンが始まったら如実に落ちましたよ、本当に来店数下がりました。
島 わかりますー!
森田 そう考えると、コロナ禍においても比較的恵まれていた業界だと思いますが、最終的にならすと一緒かな、という気もします。ただ、それまで培ってきた信頼、オーディオをいつかやろう、と思ってくれた人が取り組んでくださった方もいるように思います。また改めて振り返ると、お客さんの層が若返った気もします。コロナで来店されなくなったご高齢の方も多くて、いまもそういえば見てないな、という方がいらっしゃいます。それでも売り上げが下がっていないということは、新しいお客さんが来られているのですね。
ーー九州はいかがですか?
早見 お二人のお話と一緒で、実際のところ、あんまり特需的なものは感じてないですね。大きくも下がらず、大きくも上がらず。結局はずっとお付き合いをしていただいているお客さんが多いですから、コロナだから家にこもってオーディオをやる、というより「いつもやってる」人たちですよね。ただ、久しぶりにオーディオに電源を入れてみたら、なんだか調子悪いからちょっと買い替えましょうか、という人は少なからずいましたね。
ーー修理の問い合わせがすごく増えたというお話もありましたね
早見 そう、久しぶりに電源入れたら音が出ない、とかね。
島 普段のお得意さんではなく、新規のお客さんがきてくれた感じはありました。ただ、そういう方達はGoToが始まると途端に減ってしまう。その分お得意さんたちがもどってきてくれたので、結局トントンかなと。新規の方は、納品のご相談をしても、ご本人はウェルカムでも奥様が来て欲しくないって言われてしまうことが多くありました。配送して、って言われるのもね、専門店としてはとても歯がゆいというか。
ーーそれこそ専門店の役割とは、ということですよね。納品やセットアップまで含めてトータルで面倒見れますよ、ということが専門店の大きな役割でもありますよね。
今回は、北海道のCAVIN大阪屋、東京のダイナミックオーディオ、そして九州のマックスオーディオと、それぞれの商圏を代表するオーディオ専門店3店舗にお越しいただき、「コロナ禍以降の専門店の役割」というテーマで対談をしてもらった。
電気関連を扱う“何でも屋”から、趣味性の高い専門店に特化
ーーオーディオ市場は、コロナ禍では“巣篭もり需要”の後押しを受けて多少盛り上がったところがありましたが、ここ1年はその影響もだいぶ薄れて、以前の状態に戻ってきました。そんな社会情勢の中で、改めてオーディオ専門店の役割とは何かを考えたいと思いまして、全国の影響力のある専門店3店の方にお越しいただきました。まずはみなさまの自己紹介をお願いいたします。まずは北海道のCAVIN大阪屋さんからお願いします。
森田 CAVIN大阪屋の森田洋之と申します。CAVIN大阪屋というお店は、1928年に創業しまして、今年で96年目を迎えます。曽祖父が始めた会社で、私は4代目の社長になります。最初はラジオの輸入・販売をしていたそうで、その後徐々にオーディオや家電の販売と商売を広げてきました。いまはオーディオとホームシアターに特化してやっています。札幌市内をなんどか移転してきて、いまの札幌のビルに移ってきて33年目になります。私は入社して16年目で、2018年から社長に就任しています。
ーー続いては東京から、ダイナミックオーディオ5555 H.A.L.IIIの島 健悟さんお願いします。
島 ダイナミックオーディオの創業は1955年です。昔は六本木や新橋、新宿など都内にたくさんの店舗がありました。オーディオが非常に良かった時代ですね。ただそのあと市場が難しくなってきたために、2001年に現在の秋葉原の「5555」(フォーファイブ)と「トレードセンター」に集約しました。「5555」オープン時からのこだわりとして、「お客さんにちゃんと試聴していただく環境を作る」ということをモットーにやってきました。
ーー島さんは入社して何年目になるのでしょう?
島 秋葉原のビルができる数年前、1997年でしょうか。当時は店舗数も多く、異動も多かったのでいろんな経験を積めたのも良かったです。新宿ではホームシアターを売っていたこともありました。三管式プロジェクターなど、インストールの技術が必要だったんですね。ただその後家電量販店の存在感が増して、価格競争ではなかなか戦えなくなってしまい、シアターからは撤退しました。そしてより専門性の高いオーディオに特化したお店となっています。
ーーマックスオーディオさんもお願いいたします。
早見 マックスオーディオの早見 直です。うちの会社は1982年創業、今年で42年目になります。先代の社長、いまは会長職にある大原晴三が立ち上げた会社となります。大原はもともと北九無線という福岡の専門店で働いていて、独立して始めたのがマックスオーディオになります。私はお店がオープンして1年くらいの時から働き始めて、2021年に社長に就任しました。
ーーマックスオーディオさんは小倉と福岡、二つのお店をやっていますね。
早見 そうです。最初は小倉からスタートして、その後福岡店もオープンしました。どちらのお店もオーディオとホームシアター、両方手掛けています。
創業当初は、家電も含めてもっと幅広い製品を扱っていました。エアコンやBSアンテナの取り付けなどもやりましたし、電気に関わるあらゆることをやる“何でも屋”でした。先ほどのお話にもありましたが、量販店が出てきた頃から、オーディオやホームシアターにより特化した形に変わっていきました。
島 ダイナミックオーディオも、以前は冷蔵庫や洗濯機などもお得意様に頼まれたら販売していましたよ。パナソニックさんやソニーさんとの取引があると、そういった製品も仕⼊れられたんですよね。
森田 うちもそうでしたね。お客さんから「欲しい」って言われればなんでも取り扱いました。
巣篭もり需要の後押しも受けたコロナ禍
ーー量販店の力が強くなってきたからこそ、専門店ならではの知見が活かせるところに特化してきたのですね。コロナの期間、とても厳しい時代だったと思いますが、みなさまはどう過ごされてきたのでしょう?
森田 コロナ禍の1年前に社長に就任し、なんとか1年間を乗り切ったぞ、と思ったらコロナになってしまいましてそれは大変な時期でした。90年を超える営業期間で、初めて1ヶ月完全に休業しました。その決断もとても厳しいものがありました。
1ヶ月休むと、売り上げゼロじゃないですか。ゼロですよ。でも従業員のお給料は払わないといけない、出るものは出ていく、通帳を見るたびに気が滅入りました。でも、再開した時に、2ヶ月分とまではいかないですが、通常の1ヶ月以上の売り上げがでて、お客さんが待っててくれたんだ、と感じました。なんとか救われたと思います。
ーー消費喚起として、国から10万円配布キャンペーンなどもありました。10万円くらいのコンポがよく売れたとも聞きましたが…。
島 通販をやっていたショップはすごく助かった、って聞きましたよね。お店にいけないから、その代わりに通販で10万円くらいのセットを買おう、と思った⼈が多かったようです。でも私たちのような専門店ではその恩恵は言うほど多くはなかったんじゃないかな…。
森田 そうねぇ。少しはありましたが、そんなに大きくはなかったですねぇ。あ、むしろオーディオより家電が売れましたね。炊飯器とか冷蔵庫とか。そのときは家電も続けてて良かったな、って思いましたよ(笑)。
島 お客さんとしても、何か買ってお店をフォローしたい、って気持ちがあったのかもしれないですね。そうそう、あの時海外製の10万円台のスピーカーが人気で、FYNE AUDIOやSonus faberなどがよく売れたと聞いております。
ーーそう、旅行に行けないから自宅で楽しめるオーディオを、という雰囲気はありましたよね。
森田 でも、GoToキャンペーンが始まったら如実に落ちましたよ、本当に来店数下がりました。
島 わかりますー!
森田 そう考えると、コロナ禍においても比較的恵まれていた業界だと思いますが、最終的にならすと一緒かな、という気もします。ただ、それまで培ってきた信頼、オーディオをいつかやろう、と思ってくれた人が取り組んでくださった方もいるように思います。また改めて振り返ると、お客さんの層が若返った気もします。コロナで来店されなくなったご高齢の方も多くて、いまもそういえば見てないな、という方がいらっしゃいます。それでも売り上げが下がっていないということは、新しいお客さんが来られているのですね。
ーー九州はいかがですか?
早見 お二人のお話と一緒で、実際のところ、あんまり特需的なものは感じてないですね。大きくも下がらず、大きくも上がらず。結局はずっとお付き合いをしていただいているお客さんが多いですから、コロナだから家にこもってオーディオをやる、というより「いつもやってる」人たちですよね。ただ、久しぶりにオーディオに電源を入れてみたら、なんだか調子悪いからちょっと買い替えましょうか、という人は少なからずいましたね。
ーー修理の問い合わせがすごく増えたというお話もありましたね
早見 そう、久しぶりに電源入れたら音が出ない、とかね。
島 普段のお得意さんではなく、新規のお客さんがきてくれた感じはありました。ただ、そういう方達はGoToが始まると途端に減ってしまう。その分お得意さんたちがもどってきてくれたので、結局トントンかなと。新規の方は、納品のご相談をしても、ご本人はウェルカムでも奥様が来て欲しくないって言われてしまうことが多くありました。配送して、って言われるのもね、専門店としてはとても歯がゆいというか。
ーーそれこそ専門店の役割とは、ということですよね。納品やセットアップまで含めてトータルで面倒見れますよ、ということが専門店の大きな役割でもありますよね。