公開日 2009/09/11 14:25
制作者に訊く:ブルーレイ「プラネテス」の魅力 − 新収録の5.1ch音声が描く生き生きとした世界
幸村誠氏の同名漫画をアニメ化した「プラネテス」。舞台は少し未来の2070年代。人間は月や火星、木星に進出し、宇宙ステーションと地球の間は旅客機がつないでいる。主人公の星野八郎太(ハチマキ)、田名部 愛(タナベ)たちは、廃棄された衛星の残骸などの宇宙空間のゴミ「スペースデブリ」を回収する業者。人間の活動とともに問題になるデブリの処理、宇宙開発をめぐる国際紛争……宇宙を舞台に展開される、リアルな人間のドラマが多くの人の共感を呼んだ。
9月25日に発売される「プラネテス」のブルーレイディスクボックスは、従来の2ch音声に加え、一部新たなアフレコなどを行って作られた5.1ch音声を収録。作品の世界をより生き生きと感じることができる。
BD-BOXの発売にともない、サンライズの河口氏、バンダイビジュアルの小池氏、キュー・テックの平野氏にお話をうかがった。
【お話を伺った方々】
■(株)サンライズ 河口佳高 氏
「プラネテス」プロデューサー。(株)サンライズに入社後、設定制作、制作デスクを経て、劇場版『∀(ターンエー)ガンダム』〜「I.地球光」「II.月光蝶」(2002)でプロデューサーに。以降、『オーバーマン キングゲイナー』(2002)、『コードギアス 反逆のルルーシュ』(2006)などのプロデュースにも活躍する。
■バンダイビジュアル(株)小池経利 氏
バンダイビジュアル作品のBD/DVDマスタリングを担当。
■(株)キュー・テック 平野則之 氏
BD版「プラネテス」のポストプロBD制作進行を担当。レーザーディスク(株)制作技術部(現:キュー・テック)に入社後、編集、MAミキサーを経てパイオニアグループのDVD制作エンジニアとして立ち上げに参加。主にバンダイビジュアル作品のエンコード・オーサリングを手がける。「機動戦士ガンダム0083」、「機動戦士ガンダム劇場版」、「AKIRA」、「メトロポリス」 他。2006年よりBlu-ray制作をスタートし、3カ国語対応「FREEDOM BD-BOX」他、BD制作進行を担当、現在に至る。
【アニメ版プラネテスのあらすじ】
西暦2075年 ── 宇宙は人が生活する場となっていた。しかし、衛星軌道上に浮遊する宇宙のゴミ"デブリ"は、シャトルやロケットの大事故を引き起こす原因となり、新時代を開くための障害となっていた。命をかけてデブリ回収の任務に挑む宇宙飛行士たち。だが、彼らは同時にサラリーマンでもあったのだ…。
■「プラネテス」という作品の魅力
河口氏:漫画版「プラネテス」が素晴らしい作品だったので、「原作ファンの思い入れに応えられるか」「原作を理解して、そこからアニメの魅力を作り上げられるか」というのは、アニメ化にあたっての大きな課題でした。
原作では「宇宙」と「主人公のインナースペース」が近く、主人公の内面に関する哲学的な問いかけも多いのですが、アニメは少し視点を変えて「宇宙を舞台にしたサラリーマンもの」にしようということにしたんです。より多くの方々に楽しんでもらえる作品にしたいなということで。
_ 確かにアニメ版は、宇宙開発に関わる国際的な環境や、主人公たちが勤める「テクノーラ」という企業の構造などもハッキリと描かれていますよね。そのなかでハチマキ、タナベなどさまざまな登場キャラクターの物語が交差する群像劇だなと感じました。
「宇宙」という空間を表現するための、音の演出もすごく凝っていますよね。例えば宇宙空間でロケットが飛び立つときに音がしないですし、宇宙遊泳中のシーンでは、宇宙服のなかの息づかいと通信音しかしない。とてもリアリティがあるなと感じました。
河口氏:宇宙空間は音がありませんから、アニメも基本的に宇宙は無音で表現しようという方針でいたんです。それと今回音楽を担当した中川幸太郎さんが、尺八や笙、三味線などの和楽器、テルミンといった珍しい楽器を使って、宇宙の深淵を感じられる音楽を作ってくださいました。
■ブルーレイで新たに収録した5.1ch音声について
_ 今回のBD化されるにあたって、新たに製作した5.1ch音声を収録しているのがひとつの大きなポイントになっていますよね。
河口氏:元々音響監督の浦上さんが5.1chに興味があって、テレビシリーズの放映中もやりたいと言っていたんです。それが実現できた感じですね。
ただし、前から後ろから音が回り込むような、ことさらなサラウンドを目指したわけではありません。作品の世界をより生き生きと感じていただけるようにしたいという思いが込められています。
_ 効果音などはかなり大幅に録りなおしたそうですが。
河口氏:テレビシリーズ制作時もサラウンド化を視野に入れていたので、音声素材を残してもらっていたんですよ。5.1ch化が実現するということになったときは、それに少し手を入れればいいのかと思っていたら、そうは行かなかった(笑)。チャンネルの割り振りが変わると、画面と音の出る場所の相関関係が変わってしまうなどの問題があったので、結局効果音はほとんど録りなおすことになりました。
セリフに関しても新しく収録しなおした部分があります。これは「芝居をつけなおす」という意味合いが強いです。キャラクターの心情などを、よりきめ細かく表現したいと考えたので。そのほかは、音がかぶってどうしてもチャンネル割り振りができない部分も、再録音しました。
効果音やセリフのほかに、音楽が入るタイミングなども見直しています。全話トータルで観てまとまりあるものになったと思います。
_ オーサリング作業的には、2chと5.1chの作業量はやはり相当違うのでしょうか。
平野氏:違いますね。5.1ch音声のオーサリングは、検証作業にとても時間がかかりました。マスターが表現していたものから乖離していないかはもちろん、ユーザーと同じ視聴環境で聴いたときにもマスターに忠実な音で聴けるかどうか綿密に検証しました。
映像の面では、圧縮してもマスターテープのニュアンスをきちんと表現できるよう、エンコーダーをきめ細かくコントロールして調整しました。谷口監督をはじめとした方々にチェックしていただきました。特に小池様とは、事前にエンコードした映像と音声をご確認頂いた上で画質・音質改善の打ち合わせを5回も6回も繰り返し、ハイクオリティになるよう努めました。
小池氏:DVDもBDも、使用している大元のマスターテープは同じものです。ただテレビシリーズを制作していた2003年当時は、まだフルHDのディスプレイが普及していなかったですよね。ところが今はそれが当たり前になってきている。視聴環境が変わったことによって見えてしまうようになった問題点 − 例えば解像度が上がったことで目立つようになったゴミを取ったりする作業を行いました。
_ 実際にブルーレイをご覧になって、どのようにお感じになりましたか?
河口氏:本来このBDに収録したくらいの画質で作っていましたし、こういう画をみなさんに届けたいと思ってHDで制作を行っていたので、ようやく私たちが観ていたのと同じものを、みなさんにも観ていただけるなと思うと嬉しいですね。
9月25日発売
プラネテス Blu-ray Box 5.1ch Surround Edition
品番:BCXA-0181
BD6枚組 52,500円(税込)
収録音声:ドルビーTrueHD(5.1ch)、リニアPCM(2ch)
*新規映像特典
■田中一成 presents 筑波宇宙センター音響取材リポート
■新規オーディオコメンタリーをピクチャーinピクチャーにて2話分を収録!(出演:ハチマキ役・田中一成、タナベ役・雪野五月、監督・谷口悟朗、脚本・大河内一楼)
●DVDの特典はブックレット含め全て再録
BD-Javaによるメニューを採用し、ピクチャー・イン・ピクチャーによるオーディオコメンタリーを収録。また、本編のどの辺りを再生しているか分かるプログレスバーの表示が可能。お気に入りのシーンにインデックスが付けられる「ブックマーク機能」。自分だけの名場面を集めて楽しむこともできる。メインメニュー・ポップアップメニュー上では、ボタンを選択・決定すると、実際に本編で使用していた効果音が流れる。
9月25日に発売される「プラネテス」のブルーレイディスクボックスは、従来の2ch音声に加え、一部新たなアフレコなどを行って作られた5.1ch音声を収録。作品の世界をより生き生きと感じることができる。
BD-BOXの発売にともない、サンライズの河口氏、バンダイビジュアルの小池氏、キュー・テックの平野氏にお話をうかがった。
【お話を伺った方々】
■(株)サンライズ 河口佳高 氏
「プラネテス」プロデューサー。(株)サンライズに入社後、設定制作、制作デスクを経て、劇場版『∀(ターンエー)ガンダム』〜「I.地球光」「II.月光蝶」(2002)でプロデューサーに。以降、『オーバーマン キングゲイナー』(2002)、『コードギアス 反逆のルルーシュ』(2006)などのプロデュースにも活躍する。
■バンダイビジュアル(株)小池経利 氏
バンダイビジュアル作品のBD/DVDマスタリングを担当。
■(株)キュー・テック 平野則之 氏
BD版「プラネテス」のポストプロBD制作進行を担当。レーザーディスク(株)制作技術部(現:キュー・テック)に入社後、編集、MAミキサーを経てパイオニアグループのDVD制作エンジニアとして立ち上げに参加。主にバンダイビジュアル作品のエンコード・オーサリングを手がける。「機動戦士ガンダム0083」、「機動戦士ガンダム劇場版」、「AKIRA」、「メトロポリス」 他。2006年よりBlu-ray制作をスタートし、3カ国語対応「FREEDOM BD-BOX」他、BD制作進行を担当、現在に至る。
【アニメ版プラネテスのあらすじ】
西暦2075年 ── 宇宙は人が生活する場となっていた。しかし、衛星軌道上に浮遊する宇宙のゴミ"デブリ"は、シャトルやロケットの大事故を引き起こす原因となり、新時代を開くための障害となっていた。命をかけてデブリ回収の任務に挑む宇宙飛行士たち。だが、彼らは同時にサラリーマンでもあったのだ…。
■「プラネテス」という作品の魅力
河口氏:漫画版「プラネテス」が素晴らしい作品だったので、「原作ファンの思い入れに応えられるか」「原作を理解して、そこからアニメの魅力を作り上げられるか」というのは、アニメ化にあたっての大きな課題でした。
原作では「宇宙」と「主人公のインナースペース」が近く、主人公の内面に関する哲学的な問いかけも多いのですが、アニメは少し視点を変えて「宇宙を舞台にしたサラリーマンもの」にしようということにしたんです。より多くの方々に楽しんでもらえる作品にしたいなということで。
_ 確かにアニメ版は、宇宙開発に関わる国際的な環境や、主人公たちが勤める「テクノーラ」という企業の構造などもハッキリと描かれていますよね。そのなかでハチマキ、タナベなどさまざまな登場キャラクターの物語が交差する群像劇だなと感じました。
「宇宙」という空間を表現するための、音の演出もすごく凝っていますよね。例えば宇宙空間でロケットが飛び立つときに音がしないですし、宇宙遊泳中のシーンでは、宇宙服のなかの息づかいと通信音しかしない。とてもリアリティがあるなと感じました。
河口氏:宇宙空間は音がありませんから、アニメも基本的に宇宙は無音で表現しようという方針でいたんです。それと今回音楽を担当した中川幸太郎さんが、尺八や笙、三味線などの和楽器、テルミンといった珍しい楽器を使って、宇宙の深淵を感じられる音楽を作ってくださいました。
■ブルーレイで新たに収録した5.1ch音声について
_ 今回のBD化されるにあたって、新たに製作した5.1ch音声を収録しているのがひとつの大きなポイントになっていますよね。
河口氏:元々音響監督の浦上さんが5.1chに興味があって、テレビシリーズの放映中もやりたいと言っていたんです。それが実現できた感じですね。
ただし、前から後ろから音が回り込むような、ことさらなサラウンドを目指したわけではありません。作品の世界をより生き生きと感じていただけるようにしたいという思いが込められています。
_ 効果音などはかなり大幅に録りなおしたそうですが。
河口氏:テレビシリーズ制作時もサラウンド化を視野に入れていたので、音声素材を残してもらっていたんですよ。5.1ch化が実現するということになったときは、それに少し手を入れればいいのかと思っていたら、そうは行かなかった(笑)。チャンネルの割り振りが変わると、画面と音の出る場所の相関関係が変わってしまうなどの問題があったので、結局効果音はほとんど録りなおすことになりました。
セリフに関しても新しく収録しなおした部分があります。これは「芝居をつけなおす」という意味合いが強いです。キャラクターの心情などを、よりきめ細かく表現したいと考えたので。そのほかは、音がかぶってどうしてもチャンネル割り振りができない部分も、再録音しました。
効果音やセリフのほかに、音楽が入るタイミングなども見直しています。全話トータルで観てまとまりあるものになったと思います。
_ オーサリング作業的には、2chと5.1chの作業量はやはり相当違うのでしょうか。
平野氏:違いますね。5.1ch音声のオーサリングは、検証作業にとても時間がかかりました。マスターが表現していたものから乖離していないかはもちろん、ユーザーと同じ視聴環境で聴いたときにもマスターに忠実な音で聴けるかどうか綿密に検証しました。
映像の面では、圧縮してもマスターテープのニュアンスをきちんと表現できるよう、エンコーダーをきめ細かくコントロールして調整しました。谷口監督をはじめとした方々にチェックしていただきました。特に小池様とは、事前にエンコードした映像と音声をご確認頂いた上で画質・音質改善の打ち合わせを5回も6回も繰り返し、ハイクオリティになるよう努めました。
小池氏:DVDもBDも、使用している大元のマスターテープは同じものです。ただテレビシリーズを制作していた2003年当時は、まだフルHDのディスプレイが普及していなかったですよね。ところが今はそれが当たり前になってきている。視聴環境が変わったことによって見えてしまうようになった問題点 − 例えば解像度が上がったことで目立つようになったゴミを取ったりする作業を行いました。
_ 実際にブルーレイをご覧になって、どのようにお感じになりましたか?
河口氏:本来このBDに収録したくらいの画質で作っていましたし、こういう画をみなさんに届けたいと思ってHDで制作を行っていたので、ようやく私たちが観ていたのと同じものを、みなさんにも観ていただけるなと思うと嬉しいですね。
9月25日発売
プラネテス Blu-ray Box 5.1ch Surround Edition
品番:BCXA-0181
BD6枚組 52,500円(税込)
収録音声:ドルビーTrueHD(5.1ch)、リニアPCM(2ch)
*新規映像特典
■田中一成 presents 筑波宇宙センター音響取材リポート
■新規オーディオコメンタリーをピクチャーinピクチャーにて2話分を収録!(出演:ハチマキ役・田中一成、タナベ役・雪野五月、監督・谷口悟朗、脚本・大河内一楼)
●DVDの特典はブックレット含め全て再録
BD-Javaによるメニューを採用し、ピクチャー・イン・ピクチャーによるオーディオコメンタリーを収録。また、本編のどの辺りを再生しているか分かるプログレスバーの表示が可能。お気に入りのシーンにインデックスが付けられる「ブックマーク機能」。自分だけの名場面を集めて楽しむこともできる。メインメニュー・ポップアップメニュー上では、ボタンを選択・決定すると、実際に本編で使用していた効果音が流れる。
トピック
-
10万円台でハイコスパなAVアンプ/HDMIプリメインをガチ比較!デノン/マランツの厳選機種を一斉レビュー
-
銅製ボディには “確かな音質の違い” がある!「A&ultima SP3000T Copper」を聴き比べ
-
使いやすくて、歌声なめらか。カジュアルDAP「ACTIVO P1」をボーカル中心に聴き込んだ
-
“ビッグサイズ・4K Mini LED液晶レグザ”、「Z990R」「Z770N」のプロも認める高画質を堪能
-
ハーマンカードン「Enchant 1100」の魅力をリビングで検証! 音もデザインも“洗練”されたサウンドバー
-
ダイナミック&BA&骨伝導の“トライブリッド・サウンド”!Empire Ears TRITONレビュー
-
新開発ユニットを巧みに操る懐深いサウンド。ELAC「Debut 3.0」フロア型/ブックシェルフ型を聴く
-
天井投写もラクラクのボトル型モバイルプロジェクターJMGO「PicoFlix」を使いこなす
-
高音質と機能性を両立する新たなスタンダード機!AVIOT完全ワイヤレス「TE-V1R」レビュー
クローズアップCLOSEUP
-
10万円台でハイコスパなAVアンプ/HDMIプリメインをガチ比較!デノン/マランツの厳選機種を一斉レビュー
-
銅製ボディには “確かな音質の違い” がある!「A&ultima SP3000T Copper」を聴き比べ
-
使いやすくて、歌声なめらか。カジュアルDAP「ACTIVO P1」をボーカル中心に聴き込んだ
-
“ビッグサイズ・4K Mini LED液晶レグザ”、「Z990R」「Z770N」のプロも認める高画質を堪能
-
ダイナミック&BA&骨伝導の“トライブリッド・サウンド”!Empire Ears TRITONレビュー
-
新開発ユニットを巧みに操る懐深いサウンド。ELAC「Debut 3.0」フロア型/ブックシェルフ型を聴く
-
天井投写もラクラクのボトル型モバイルプロジェクターJMGO「PicoFlix」を使いこなす
-
高音質と機能性を両立する新たなスタンダード機!AVIOT完全ワイヤレス「TE-V1R」レビュー
アクセスランキング
RANKING
12/20 10:05 更新