公開日 2010/08/17 12:38
米Wilson Audio創設者にきくスピーカー作りの精神と最新作「Sophia 3」
David A. Wilson氏来日インタビュー
日本でも多くのファンを抱えるハイエンドスピーカーブランドの雄、米Wilson Audio Specialties(以下、Wilson Audio)。新製品スピーカー「Sophia 3」の日本発売を控え、同社創設者でありプレジデントのDavid A. Wilson氏が来日した。Wilson氏のスピーカー制作にかける思いと「Sophia 3」について話を伺った。
■ハイエンドスピーカーブランド「Wilson Audio」の歴史
小社刊行誌analogのクラシックカメラが紹介されているページをめくりながら「昔のライカのひとつのものを突き詰める美しさはWilson Audioのものづくりにも通ずるものがある」と話すWilson氏。そのことば通り、Wilson Audioは「スピーカーは音の再生と所有欲を満たしてくれるものでなければならない」という同氏の理念から、音質だけでなく“モノ”としての美しさに一貫してこだわってきた。
Wilson Audioはレコーディングエンジニアとして活動していたWilson氏によって1973年に設立。80年代後半に制作したモニタースピーカー「WATT」で一躍その存在を知られるようになり、以降、Alexandria、MAXX、Sasha、Sophiaといったモデルを送り出し、ハイエンドスピーカーブランドとして確固たる地位を築いてきた。
その経歴からオーディオ業界一筋という印象を与えるが、意外にも元々は医療関係の仕事をしていたという。レコーディングを趣味で行っており、「自分でレコーディングした音源を再生するとどうしてもリアルな音がしないことに不満を持っていて、そんな中で1978年に行き着いたのがタイムドメイン。時間軸の調整を座って紐をつけてひっぱりながら行った」。これが後にスピーカーのアングルと各ドライバーを前後にずらすことができるという今のWilson Audio製品の特長的な構造へつながっていくことになる。
その後レコーディングエンジニアが本業になりアナログレコード制作に打ち込んでいたものの、80年代のCDの台頭で事業の継続が難しくなった際にスピーカー制作に乗り出したという。そこで初めて販売用として制作したスピーカーが「WATT」だった。
Wilson氏によると病気療養のために滞在していたメキシコでスピーカーの構想を思いつき「帰りの飛行機の中でナプキンにアイディアを記していった。そのときにプロダクト案はほぼ完成していた」という。このWATTをCESに持って行ったところペアで4,400ドルという値段にもかかわらず、いきなり多数のオーダーが入り出した。「その頃の販売台数は年間20ペア程度だったが、いまではWATTは15000番台になっている」と当時の様子を思い出し感慨深そうに話してくれた。
■Wiloson Audioが追求する音質とは
もともとレコーディングエンジニアということもあり、数々のマスター音源を所有している同氏。スピーカーのチューニングでは、その中のいくつかをリファレンスとして使用し、音決めをしているという。CDも使用するがジャンルにはこだわらないといい、「アコースティックな音源であること」が重要なのだと強調する。
「我々のスピーカーは必ずしも計測上、オーディオ的に優れた数値がでるとは限らない。スピーカーは音楽をいかに美しく再生できるか、感動を与えられるかが重要なのであり、我々はスペックだけでない再生音の美しさを追求している」。
「スピーカーの最終的な到着点は何か」という難しい質問に対しては、「ライブミュージックの再生」と回答。「(スピーカーの再生音と)相反するライブの音にどれだけ近づけるかということを考えてきた。私のゴールは初めから全く変わっていない」と話す。
■コストパフォーマンスと設置性が特長のSophiaが進化
これらのWilson氏の哲学によって誕生した最新スピーカーがSophia 3だ。Sophiaはシングルキャビネットを採用したラインで、初代モデルは2001年に完成、2005年に最新技術を反映してSeries 2を完成させた。
「SophiaはSashaとブックシェルフ型のDuetteとの間に位置するシリーズで、『簡単に誰でも楽しめる』がコンセプト。ハイエンドスピーカーはドライブするのが難しいというイメージがあるが、Sophiaは初めてWilson Audio製品を購入し、高価なアンプ等のオーディオ機器が揃っていないという方でもすぐに楽しめ、きちんとした結果が残せることを目指している」という。
Sophia 3ではあらゆる面を向上させたというが、特にダイナミクスの向上が特徴だという。「Sashaで使用したトゥイーターを採用した。ウーファーは外観上はSophia 2と同じだが、中のマグネットサイズが2倍になっている。これらの結果、音圧が1.0dB〜1.5dB程度向上し、どんなアンプでもドライブしやすくなっている。またバッフルのアングルも少し変えた。キャビネット素材はSashaで採用したS材を使用し、キャビネット全体を覆うX材も厚みを増した」とのことだ。
■クオリティに厳しい日本は非常に重要なマーケット
今年1月に日本の輸入代理店がアクシスに移行したWilson Audioブランド。日本のマーケットについては、「非常に重要なマーケットであることは変わらない」とし、「日本のマーケットにはいくつかユニークなところがあるが、第一にクオリティに対する厳しさが挙げられる。音質はもちろん、仕上げに関してもパーフェクトが求められる。その点、我々は真摯なものづくりを行っており、日本のオーディオファイルに喜ばれるような製品を提供できていると感じている。また音質面ではダイナミクス、ハーモニクスの再現が求められるが、我々もスピーカーにはこの2つが重要だと考えている」と日本のオーディオファイルと方向性が一致することを指摘する。
中国をはじめとして、インドネシア、タイ、台湾など日本以外のアジア諸国も好調。だが、Wilson Audioが求めるものは売上げではない。「ただ数字がいいから、大きなシステムが売れるからというのではなく、我々が重要だと感じるのは本当にブランドの理念や製品を理解してくれているマーケットであり、マーケットの大小はあまり関係ない」とも語ってくれた。
創業以来ライブミュージックの再生という究極的ともいえる目標に向かって走り続けてきたWilson Audio。Wilson氏の理念を具現化した「Sphia 3」はクオリティに厳しい日本のオーディオファイルの心をつかむことができるか、注目だ。
Sophia 3情報、Wilson氏のインタビューの模様は8月21日(土)発売の「季刊・オーディオアクセサリー 138号」で掲載します(バックナンバー)
■ハイエンドスピーカーブランド「Wilson Audio」の歴史
小社刊行誌analogのクラシックカメラが紹介されているページをめくりながら「昔のライカのひとつのものを突き詰める美しさはWilson Audioのものづくりにも通ずるものがある」と話すWilson氏。そのことば通り、Wilson Audioは「スピーカーは音の再生と所有欲を満たしてくれるものでなければならない」という同氏の理念から、音質だけでなく“モノ”としての美しさに一貫してこだわってきた。
Wilson Audioはレコーディングエンジニアとして活動していたWilson氏によって1973年に設立。80年代後半に制作したモニタースピーカー「WATT」で一躍その存在を知られるようになり、以降、Alexandria、MAXX、Sasha、Sophiaといったモデルを送り出し、ハイエンドスピーカーブランドとして確固たる地位を築いてきた。
その経歴からオーディオ業界一筋という印象を与えるが、意外にも元々は医療関係の仕事をしていたという。レコーディングを趣味で行っており、「自分でレコーディングした音源を再生するとどうしてもリアルな音がしないことに不満を持っていて、そんな中で1978年に行き着いたのがタイムドメイン。時間軸の調整を座って紐をつけてひっぱりながら行った」。これが後にスピーカーのアングルと各ドライバーを前後にずらすことができるという今のWilson Audio製品の特長的な構造へつながっていくことになる。
その後レコーディングエンジニアが本業になりアナログレコード制作に打ち込んでいたものの、80年代のCDの台頭で事業の継続が難しくなった際にスピーカー制作に乗り出したという。そこで初めて販売用として制作したスピーカーが「WATT」だった。
Wilson氏によると病気療養のために滞在していたメキシコでスピーカーの構想を思いつき「帰りの飛行機の中でナプキンにアイディアを記していった。そのときにプロダクト案はほぼ完成していた」という。このWATTをCESに持って行ったところペアで4,400ドルという値段にもかかわらず、いきなり多数のオーダーが入り出した。「その頃の販売台数は年間20ペア程度だったが、いまではWATTは15000番台になっている」と当時の様子を思い出し感慨深そうに話してくれた。
■Wiloson Audioが追求する音質とは
もともとレコーディングエンジニアということもあり、数々のマスター音源を所有している同氏。スピーカーのチューニングでは、その中のいくつかをリファレンスとして使用し、音決めをしているという。CDも使用するがジャンルにはこだわらないといい、「アコースティックな音源であること」が重要なのだと強調する。
「我々のスピーカーは必ずしも計測上、オーディオ的に優れた数値がでるとは限らない。スピーカーは音楽をいかに美しく再生できるか、感動を与えられるかが重要なのであり、我々はスペックだけでない再生音の美しさを追求している」。
「スピーカーの最終的な到着点は何か」という難しい質問に対しては、「ライブミュージックの再生」と回答。「(スピーカーの再生音と)相反するライブの音にどれだけ近づけるかということを考えてきた。私のゴールは初めから全く変わっていない」と話す。
■コストパフォーマンスと設置性が特長のSophiaが進化
これらのWilson氏の哲学によって誕生した最新スピーカーがSophia 3だ。Sophiaはシングルキャビネットを採用したラインで、初代モデルは2001年に完成、2005年に最新技術を反映してSeries 2を完成させた。
「SophiaはSashaとブックシェルフ型のDuetteとの間に位置するシリーズで、『簡単に誰でも楽しめる』がコンセプト。ハイエンドスピーカーはドライブするのが難しいというイメージがあるが、Sophiaは初めてWilson Audio製品を購入し、高価なアンプ等のオーディオ機器が揃っていないという方でもすぐに楽しめ、きちんとした結果が残せることを目指している」という。
Sophia 3ではあらゆる面を向上させたというが、特にダイナミクスの向上が特徴だという。「Sashaで使用したトゥイーターを採用した。ウーファーは外観上はSophia 2と同じだが、中のマグネットサイズが2倍になっている。これらの結果、音圧が1.0dB〜1.5dB程度向上し、どんなアンプでもドライブしやすくなっている。またバッフルのアングルも少し変えた。キャビネット素材はSashaで採用したS材を使用し、キャビネット全体を覆うX材も厚みを増した」とのことだ。
■クオリティに厳しい日本は非常に重要なマーケット
今年1月に日本の輸入代理店がアクシスに移行したWilson Audioブランド。日本のマーケットについては、「非常に重要なマーケットであることは変わらない」とし、「日本のマーケットにはいくつかユニークなところがあるが、第一にクオリティに対する厳しさが挙げられる。音質はもちろん、仕上げに関してもパーフェクトが求められる。その点、我々は真摯なものづくりを行っており、日本のオーディオファイルに喜ばれるような製品を提供できていると感じている。また音質面ではダイナミクス、ハーモニクスの再現が求められるが、我々もスピーカーにはこの2つが重要だと考えている」と日本のオーディオファイルと方向性が一致することを指摘する。
中国をはじめとして、インドネシア、タイ、台湾など日本以外のアジア諸国も好調。だが、Wilson Audioが求めるものは売上げではない。「ただ数字がいいから、大きなシステムが売れるからというのではなく、我々が重要だと感じるのは本当にブランドの理念や製品を理解してくれているマーケットであり、マーケットの大小はあまり関係ない」とも語ってくれた。
創業以来ライブミュージックの再生という究極的ともいえる目標に向かって走り続けてきたWilson Audio。Wilson氏の理念を具現化した「Sphia 3」はクオリティに厳しい日本のオーディオファイルの心をつかむことができるか、注目だ。
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