公開日 2023/01/30 06:30
ゼンハイザーは今後も日本市場に積極投入。Sonovaキーマンが語った戦略と可能性
「ゼンハイザーを育ててくれたのは厳しい日本のファン」
2022年春、Sonovaは読者にも馴染みの深いゼンハイザーのヘッドホン・イヤホン、ホームシアター製品などを展開するコンシューマーエレクトロニクス(CE)部門を買収し、Sonovaによるゼンハイザーのコンシューマーエレクトロニクスビジネスが本格的に展開されている。
今回、スイスのSonova Holding AGから来日したConsumer Hearingグループバイスプレジデント、Martin Grieder(マーティン グリーダー)氏に両社のコラボレーションについて今後の展望など詳しく聞く機会を得た。
ソノヴァはスイスに拠点を置く、補聴器や人工内耳などの聴覚ケアを事業の柱に据える聴覚ケアソリューションの企業だ。2021年5月に、同社がゼンハイザーのコンシューマーエレクトロニクス部門を買収するというニュースが大きく報じられた。ソノヴァがゼンハイザーのコンシューマーエレクトロニクス部門を買収、製品を展開することに決めた背景について、Grieder氏は次のように説明している。
「ソノヴァには店頭・オンラインでコンシューマーオーディオを販売するためのノウハウと販路がなかったので、ゼンハイザーとの協業が互いに良いシナジーを生むと考えました。ソノヴァとゼンハイザーが互いの技術資産を共有できれば、今までにない製品やサービスがつくれるという期待を両社が持てたことも大きな収穫です」
Grieder氏は、ソノヴァがゼンハイザーというブランドに感じた魅力は大きく3つあったと振り返る。ひとつは高いブランド力、もうひとつはソノヴァとの企業文化の親和性。そして最後がテレビリスニング用のワイヤレススピーカーなど、ゼンハイザーにもコンシューマーの「聞こえ」をサポートする製品とサービスのノウハウがあることだという。
ソノヴァによる買収によって、主にゼンハイザーの「ものづくり」をめぐる環境に大きな変化はあったのだろうか。Grieder氏は次のように答えている。
「ゼンハイザーのオーディオファイル向けプレミアム製品は、今後もブランドの成長を牽引するコアになると考えます。今後は戦略的に、オーディオファイル向けのプレミアムセグメントに注力します。ラインナップの価格にばらつきがある点については整理が必要と考えています。現在、オーディオファイル製品のR&Dはドイツのハノーファー、つまり従来のゼンハイザー本社と同じ場所にあります。製造の拠点はアイルランドに集約しました」
買収によるシナジー効果について、ゼンハイザーのプロダクトポートフォリオの拡張・強化を図る考えだ。一方ではソノヴァによる、補聴器のカスタムフィットに関するノウハウをゼンハイザーがつくる次世代のイヤホンに活かすこともできる。
「ゼンハイザーにはオーディオ製品の音質を高めるために欠かせない様々な技術とノウハウがあります。これをソノヴァのヒアリングエイド製品の高音質化にも活かせると考えています。もちろん企業としての事業をより円滑に運営するために必要な財務・人事関連の効率化、重要箇所への投資にもリソースを割く考えです」
Grieder氏は、今後両社の強みを効率よく最大化するために開発プラットフォームの共有も積極的に進めるべきという見解を示している。
「2023年以降、ゼンハイザーからヒアリングソリューション製品が展開していく予定です。ソノヴァが扱ってこなかったクアルコムのチップセットや、ソノヴァが保有しているアルゴリズムなどをヒアリングソリューション製品にも活かすことによって使い勝手をいっそう高められると考えます。ゼンハイザーはオーディオファイル向けプロダクトのマーケットリーダーです。そのポジションは今後さらに強化します。ソノヴァとゼンハイザーがそれぞれ、現在の拠点に構える研究開発部門の環境を変えることなく、各々の強みを伸ばせる体制を維持します」
ゼンハイザーのコンシューマーオーディオ製品については、現在もいくつかの国と地域でスマートフォンなど通信機器製品とのバンドル販売のようなコラボレーションを行っている。今後は他業種とのコラボレーションに展開する可能性はあるのだろうか。
Grieder氏は他社協業についてはオープンに構えたいとしたが、インタビューの時点で詳細を明かすことはなかった。だが、来年にはハイパフォーマンスなスポーツブランドとのコラボレーションを発表する予定だという。楽しみに待ちたい。
現在ゼンハイザーが注目するオーディオのトピックスについてGrieder氏に聞いた。やはり2023年からは、Bluetoothによるワイヤレスロスレス再生への対応には意欲的に挑戦する考えだという。またソノヴァが培ってきたカスタムフィッティングの技術も、早々にゼンハイザーのイヤホンに搭載されることになりそうだ。
Grieder氏は今後もゼンハイザーのコンシューマーオーディオを日本市場に向けて積極投入していく考えを次のように語っている。
「日本のチームによる頑張りと、ゼンハイザーの素晴らしい製品のおかげで世界各国の市場と比べてみても日本の成長は顕著です。何より、ゼンハイザーの製品を厳しい目で育ててくれたのは、オーディオの本質的な価値を理解する日本のオーディオファイルに他なりません。ソノヴァグループでは日本語の『KAIZEN(改善)』という言葉をチームのスローガンとして採り入れて、商品やサービスの品質向上と、無駄を徹底的に省くことに注力してきました。これからもその姿勢を大切にしながら、品質の高いオーディオ製品を日本のゼンハイザーファンの方々にお届けすることを約束します」
直近の数年間を振り返ってみても、ゼンハイザーのIEシリーズやMOMENTUMシリーズに代表されるプレミアムクラスの製品は立て続けにアップデートされ、その勢いは増すばかりだ。2023年もまたゼンハイザーからどんな製品が登場するのか目が離せない。
なお、ソノヴァグループの製品を体験できるストアには、ゼンハイザーブランドで展開する聴覚支援の製品も並べてラインナップの紹介にも力を入れている。2022年6月には都内に体験型の聴覚ケアセンター「リケン補聴器センター ワールド・オブ・ヒヤリング」をオープンした。ゼンハイザーのオーディオ製品を体験できる場としてぜひ活用したい。
今回、スイスのSonova Holding AGから来日したConsumer Hearingグループバイスプレジデント、Martin Grieder(マーティン グリーダー)氏に両社のコラボレーションについて今後の展望など詳しく聞く機会を得た。
各々の強みを伸ばせる体制で、今までにない製品やサービスをつくり出す
ソノヴァはスイスに拠点を置く、補聴器や人工内耳などの聴覚ケアを事業の柱に据える聴覚ケアソリューションの企業だ。2021年5月に、同社がゼンハイザーのコンシューマーエレクトロニクス部門を買収するというニュースが大きく報じられた。ソノヴァがゼンハイザーのコンシューマーエレクトロニクス部門を買収、製品を展開することに決めた背景について、Grieder氏は次のように説明している。
「ソノヴァには店頭・オンラインでコンシューマーオーディオを販売するためのノウハウと販路がなかったので、ゼンハイザーとの協業が互いに良いシナジーを生むと考えました。ソノヴァとゼンハイザーが互いの技術資産を共有できれば、今までにない製品やサービスがつくれるという期待を両社が持てたことも大きな収穫です」
Grieder氏は、ソノヴァがゼンハイザーというブランドに感じた魅力は大きく3つあったと振り返る。ひとつは高いブランド力、もうひとつはソノヴァとの企業文化の親和性。そして最後がテレビリスニング用のワイヤレススピーカーなど、ゼンハイザーにもコンシューマーの「聞こえ」をサポートする製品とサービスのノウハウがあることだという。
ソノヴァによる買収によって、主にゼンハイザーの「ものづくり」をめぐる環境に大きな変化はあったのだろうか。Grieder氏は次のように答えている。
「ゼンハイザーのオーディオファイル向けプレミアム製品は、今後もブランドの成長を牽引するコアになると考えます。今後は戦略的に、オーディオファイル向けのプレミアムセグメントに注力します。ラインナップの価格にばらつきがある点については整理が必要と考えています。現在、オーディオファイル製品のR&Dはドイツのハノーファー、つまり従来のゼンハイザー本社と同じ場所にあります。製造の拠点はアイルランドに集約しました」
買収によるシナジー効果について、ゼンハイザーのプロダクトポートフォリオの拡張・強化を図る考えだ。一方ではソノヴァによる、補聴器のカスタムフィットに関するノウハウをゼンハイザーがつくる次世代のイヤホンに活かすこともできる。
「ゼンハイザーにはオーディオ製品の音質を高めるために欠かせない様々な技術とノウハウがあります。これをソノヴァのヒアリングエイド製品の高音質化にも活かせると考えています。もちろん企業としての事業をより円滑に運営するために必要な財務・人事関連の効率化、重要箇所への投資にもリソースを割く考えです」
Grieder氏は、今後両社の強みを効率よく最大化するために開発プラットフォームの共有も積極的に進めるべきという見解を示している。
「2023年以降、ゼンハイザーからヒアリングソリューション製品が展開していく予定です。ソノヴァが扱ってこなかったクアルコムのチップセットや、ソノヴァが保有しているアルゴリズムなどをヒアリングソリューション製品にも活かすことによって使い勝手をいっそう高められると考えます。ゼンハイザーはオーディオファイル向けプロダクトのマーケットリーダーです。そのポジションは今後さらに強化します。ソノヴァとゼンハイザーがそれぞれ、現在の拠点に構える研究開発部門の環境を変えることなく、各々の強みを伸ばせる体制を維持します」
コンシューマーオーディオ/補聴器/ゲーミングデバイスの3本柱を目指す
ゼンハイザーのコンシューマーオーディオ製品については、現在もいくつかの国と地域でスマートフォンなど通信機器製品とのバンドル販売のようなコラボレーションを行っている。今後は他業種とのコラボレーションに展開する可能性はあるのだろうか。
Grieder氏は他社協業についてはオープンに構えたいとしたが、インタビューの時点で詳細を明かすことはなかった。だが、来年にはハイパフォーマンスなスポーツブランドとのコラボレーションを発表する予定だという。楽しみに待ちたい。
現在ゼンハイザーが注目するオーディオのトピックスについてGrieder氏に聞いた。やはり2023年からは、Bluetoothによるワイヤレスロスレス再生への対応には意欲的に挑戦する考えだという。またソノヴァが培ってきたカスタムフィッティングの技術も、早々にゼンハイザーのイヤホンに搭載されることになりそうだ。
Grieder氏は今後もゼンハイザーのコンシューマーオーディオを日本市場に向けて積極投入していく考えを次のように語っている。
「日本のチームによる頑張りと、ゼンハイザーの素晴らしい製品のおかげで世界各国の市場と比べてみても日本の成長は顕著です。何より、ゼンハイザーの製品を厳しい目で育ててくれたのは、オーディオの本質的な価値を理解する日本のオーディオファイルに他なりません。ソノヴァグループでは日本語の『KAIZEN(改善)』という言葉をチームのスローガンとして採り入れて、商品やサービスの品質向上と、無駄を徹底的に省くことに注力してきました。これからもその姿勢を大切にしながら、品質の高いオーディオ製品を日本のゼンハイザーファンの方々にお届けすることを約束します」
直近の数年間を振り返ってみても、ゼンハイザーのIEシリーズやMOMENTUMシリーズに代表されるプレミアムクラスの製品は立て続けにアップデートされ、その勢いは増すばかりだ。2023年もまたゼンハイザーからどんな製品が登場するのか目が離せない。
なお、ソノヴァグループの製品を体験できるストアには、ゼンハイザーブランドで展開する聴覚支援の製品も並べてラインナップの紹介にも力を入れている。2022年6月には都内に体験型の聴覚ケアセンター「リケン補聴器センター ワールド・オブ・ヒヤリング」をオープンした。ゼンハイザーのオーディオ製品を体験できる場としてぜひ活用したい。
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