公開日 2023/03/02 11:55
iFi audio社長が語る新製品情報と開発哲学。「MEMS専用アンプ」など開発中モデルの存在も明らかに
「GO Pod」「LAN iSilencer」など新製品もいち早く紹介
ポータブルから据え置きまで、最先端のテクノロジーと音質へのこだわりを詰めこんだ様々なオーディオ機器を展開するイギリス・iFi audio。社長のVincent Luke(ヴィンセント・ルーク)氏が来日し、インタビューに答えてくれた。「世界の最先端をいく日本のオーディオ市場を調査しにきた」と日本市場の重要性を熱く語るルーク氏、今後のiFi audioのプロダクトや戦略も訪ねてみた。
ーーヴィンセントさんにお会いできて光栄です。久しぶりの日本を楽しんでいらっしゃいますか?
ヴィンセント 日本に3年ぶりに来ることができたことを本当に嬉しく思っています。オンラインミーティングなどはありましたが、直接対面でお話しできるのは大切な時間ですね。今回の来日の大きな目的は、将来のオーディオのトレンドを調査することにあります。お客さんはもちろん、ディーラーやメディアのみなさまとお話しすることもとても大切です。
車の市場は現在大きく変わりつつあります。以前はガソリン車、ディーゼル車が主流でしたが、いまは電気自動車やハイブリッドカー、水素カーも注目されつつあります。オーディオの市場も同じように、これからどのように変化していくのか研究し続けないといけません。
たとえば以前はUSB接続による再生が大きなテーマでしたが、いまやネットワーク再生が主流になりつつあります。CDプレーヤーだけではなく、ストリーマーの市場も盛り上がってきました。iFi audioは、そのトレンドの最先端を常に追い続けたいと考えています。
ーーすでにいくつかの専門ショップなどを回ったと聞きましたが、注目するトレンドはありましたか?
ヴィンセント ひとつはものすごくたくさんのヘッドホンが市場に出ていること、そしてポータブルではなく自宅で楽しむようなものが増えていると感じました。おそらく新型コロナの影響で、自宅で過ごす、また働く時間が増えたこともあるでしょうね。仕事に集中するために、ヘッドホンやスピーカーはとても大切なものです。
もうひとつはゲーミングカテゴリーが非常に大きくなってきていますね。また完全ワイヤレスイヤホンのマーケットも非常に広がっています。これらを踏まえて、次のプロダクトをどのように開発していくか考えていきます。
加えて、ストリーミングとの連携は間違いなく大切なテーマです。iFi audioでは「NEO Stream」などのネットワーク対応機器を出しています。私たちはハードウェアだけではなく非常に強力なソフトウェア開発チームも抱えています。これまではXMOSのファームウェアで動作していたところを、自前のコーディングで実現できることも我々の強みです。
ーー製品開発はどのように行われてるのでしょう?
ヴィンセント 本社はイギリスにあります。デザインやR&Dのチームはイギリスに拠点を置いていますが、ソフトウェア開発の主力はアジアにいます。世界中のチームの強みを「ミックス」することで、新しいプロダクトが生まれてくるのです。
iFi audioの製品も、アナログとデジタルのそれぞれの素晴らしいところを「ミックス」して作られています。フォノステージの技術、DC電源、真空管、Bluetooth、いろんな技術を混ぜ合わせることで、私たちならではのプロダクトを作ることができると考えています。
もちろん各国の市場の動向や、ディストリビューターのみなさまのアイデアもとても大切です。日本の文化、アメリカの文化、各国の素晴らしい文化やテクノロジーを少しずつピックアップして混ぜ合わせる、そのことが私たちの製品開発のフィソロフィーでもあります。
ーーいま市場として特に注目しているところはありますか?
ヴィンセント やはりアメリカ、そして日本、韓国がとても大きな市場です。ヨーロッパも全体として見るととても大きな市場ですが、特にドイツやフランスが熱いですね。今回私は韓国には行きませんが、同僚が行って調査してくることになっています。来月のアメリカのNAMMショーにも他のスタッフが行って調査してくる予定になっています。コンシューマー向けの市場だけではなく、プロ市場のトレンドも常にチェックしています。
ーー他の国と比べて、日本市場の特徴的なところはありますか?
ヴィンセント 日本の市場は、どこよりも世界の最先端を行っていると感じています。先ほども言った通りゲーミング、それからリモートワークが大きく発達したこともありますね。それに、日本のプロダクトは世界的にもとても高いレベルにありますよね。例えば文房具。ゼブラのペンやセーラーの万年筆、ノートブックなどは本当に素晴らしいデザインです。日本に来るとたくさん文房具を買ってしまいます。
ーーこれから発売になる新しいプロダクトについて教えてください。
ヴィンセント 「GO pod」という新製品をまもなく発売予定です。これは、お手持ちのIEMを完全ワイヤレス化できるプロダクトになります。本体をケーブルから取り外し、この「GO Pod」と接続します。端子はMMCXと2pin、Pentaconn earが用意されています。「GO Pod」とスマートフォンなどをBluetoothで接続すればOKです。
またBluetoothについても独自の技術で音質を追求しています。信号を受け取る際にはクアルコムのチップを使っていますが、データを変換し増幅するためには別のチップを使っています。そうすることで、Bluetooth由来によるジッターを大きく減らすことができます。それもすべて、自社でプログラムからデザイン、そして製造まで行っているからできることです。コーデックはaptX HD、aptX Adaptiveのほか、LDACやHWA/LHDCなどにも対応しています。専用の充電ボックスもあり、こちらはUSB Type-Cで充電できます。
ーーお気に入りのIEMの使い方がさらに広がりますね。
ヴィンセント もうひとつ、「LAN iSilencer」という製品も投入します。ネットワークオーディオ機器に接続するためのアクセサリーです。ネットワーク対応の機器が非常に増えてきていることからこちらのアイテムも作りました。私たちは独自のガルバニック・アイソレーション技術を持っており、そのテクノロジーを応用しています。ちょっとした投資で音質を改善できること、クレイジーな価格にはしないことも私たちの製品開発にとって大切なことです。
ーー現在、据え置きのラインナップには、ZEN Air、ZEN、NEO、Proと4種類ありますね。特にZENシリーズは独特の形も可愛くて私も大好きなシリーズです。この「ZEN」というのは、いわゆる日本の“禅”から取られたものでしょうか?
ヴィンセント その通りです。インダストリアルデザイナーのジュリアンが言っていました。「なぜみんな四角くて黒い箱を作ろうとするんだろう?」と。だから私たちはとにかく違うものを作ろうとしたのです。
現代に働く人々はみな本当に忙しいですから、家に帰った時はリラックスしたいものです。音楽は人々をリラックスさせることもできるし、また仕事など何かに集中したい時にも非常に役に立ちます。英語では何かに集中している状態のことを「ゾーンに入る」といいます。ZENを使うことで、皆様が「ゾーンに入る」お手伝いができればと思います。
私たちは、オーディオ機器をただ買って並べるだけ、というものにしたくありません。オーディオを通じて音楽そのものに没入してほしい、頭を集中した状態にしてほしい、と考えています。たとえばジムでエクササイズをしている時、あるいは仕事中にも、音楽があることによってより集中しやすくなりますよね。私たちはそういう楽しみを、手頃な値段で提供したいと考えているのです。
ーー音楽が身近にあることで、生活は間違いなく豊かなものになります。
ヴィンセント ある音響心理学の研究に以下のようなものがあります。人間がオーディオを聴く時に、半導体より真空管アンプの方が好ましい、と言われることはよくありますね。それは「2次高調波歪み」によるものと言われています。それは真空管アンプのほうにたくさん含まれているのです。ですから私たちの製品開発においても、この「2次高調波歪み」を重視しています。その方が人間の脳をリラックスさせて、音楽をより楽しむことができると考えているからです。
私たちはもちろん測定も行いますが、測定はあくまでノイズに関して重要と考えているだけです。たとえば電源部においては、静かな電源が絶対に良いです。しかしデジタル・アナログシステムにおいては、測定が必ずしも良い結果をもたらすとは限りません。測定よりも、人間の脳にとってより好ましいことの方が大切なのです。
ーー測定と聴感、その両方を大切にされているのですね。
ヴィンセント言うまでもありませんが、測定が良くても音がダメなものは絶対に作りません。それは私たちのフィロソフィーでもあります。測定数値よりもっと大切なのはあなたがどれだけ音楽を聴いているか、ということなんです。
ーーiFi audioはポータブル機器のラインナップも充実しています。
ヴィンセント 若い人たちにもオーディオを楽しんでもらいたいと思っていますから、100ドル以下で購入できるものも大切です。「GO link」もそのひとつです。たとえばコーヒーショップなどで若い人たちを見ていると、ソニーやオーディオテクニカのいいヘッドホンを持っているのですが、MacBookに直接接続している場合がほとんどです。そういう人たちにも、ぜひこの「GO link」を使ってほしいと思っているんです。そうすれば、ヘッドホンの実力をもっともっと引き出すことができるはずですし、もっと作業に集中することができるでしょう。
以前私たちは、ポータブルオーディオ機器とデスクトップオーディオの双方に使えるものとしてmicroというシリーズを展開してきました。今はポータブルと据え置きは別のラインで開発しています。ポータブル機器ではmicro iDSD Diablo、xDSD Gryphonなどがありますね。
私たちは毎回同じことを繰り返すことを望みません。トレンドに応じて違ったジャンルに挑戦していきたいと思っています。ただし、ヘッドホンを作ることは考えていません。世界には素晴らしいヘッドホンの会社がたくさんあります。そんな素晴らしいヘッドホンをより楽しむためのアイテムを作っていきたいと考えています。
ーー今年5月のミュンヘンのオーディオショウへの出展も予定していますか?
ヴィンセント もちろんです。そして一つとっておきの情報をお伝えしましょう。iFi audioの親会社がAMR(Abbingdon Music Research)という会社であることはご存知ですね。AMRの新製品もミュンヘンで発表予定になります! プリアンプ、DAコンバーター、パワーアンプの3モデルです。クレイジーなほどのスペックですので、きっと日本のオーディオファンにも驚いてもらえるんじゃないかと思いますよ。
ーー(写真を見せてもらう)戦闘機のようなデザインでめちゃくちゃかっこいいです! これは期待できます。そして、iFi audioの次の展開はどのようなことを考えていますか?
ヴィンセント 私たちはいつでも時代の最先端にいたいと考えています。私たちはMQAにもいち早く取り組みましたし、バランス回路の搭載にも取り組みました。そうすると他の会社も追いかけてきますよね。私たちはその競争を楽しんでいます。そして、次のトレンドをいつも探しているのです。
私たちがいま注目しているのはMEMSという技術です。xMEMSという会社が開発しているIEMのための新しいドライバーです。現在主流となるIEMのドライバーは、ダイナミック型かバランスドアーマチュア型(BA型)の2種類です。それに対して、MEMSはピエゾ素子(piezoelectric)を使ったドライバーで、ダイナミック型、BA型に次ぐ第3の選択肢になると考えています。
ピエゾ素子を使ったスピーカーもありこれは素晴らしい音がします。しかしこれまでは小型化することが非常に難しいものでした。xMEMSはそれを実現し、IEMのために使うことを考えたんです。xMEMSは私たちに「一緒に何かやらないか」と声をかけてきました。その時聴かせてもらったプロトタイプの音は非常に素晴らしかったですし、何より価格もクレイジーなものではなく、普通のオーディオファンにも手に取ってもらえるものにできそうでした。
しかしピエゾ素子は非常に高い電圧を必要としますので、専用のアンプが必要です。この専用アンプも、今年のミュンヘンではお披露目できそうです。スイッチが付いていて、ノーマルなイヤホン用、MEMSドライバー用と切り替えて使うことができます。電圧が高すぎるので、ピエゾ用のアンプを普通のイヤホンに使ったらイヤホンが壊れてしまいます!
ーー今年のiFi audioのラインナップがますます楽しみになってきました。
ヴィンセント 正直に言えば今のオーディオ機器の値段は本当に信じられないほど高いものもあります。ですが私たちはできるだけお求めやすい価格で楽しめるもの、そして多くの人々にオーディオを楽しんでもらうための製品開発をおこなっていきたいと考えています。
特にここ数年、現代生活にはあまりにもストレスが増えすぎているように感じます。ですが、そこにほんの少しオーディオが加わることで、生活はずっと豊かになるものと思います。そのお手伝いができればと考えています。
ーーたくさんのお話、ありがとうございました! ミュンヘンでお会いできるのも楽しみにしております。
ーーヴィンセントさんにお会いできて光栄です。久しぶりの日本を楽しんでいらっしゃいますか?
ヴィンセント 日本に3年ぶりに来ることができたことを本当に嬉しく思っています。オンラインミーティングなどはありましたが、直接対面でお話しできるのは大切な時間ですね。今回の来日の大きな目的は、将来のオーディオのトレンドを調査することにあります。お客さんはもちろん、ディーラーやメディアのみなさまとお話しすることもとても大切です。
車の市場は現在大きく変わりつつあります。以前はガソリン車、ディーゼル車が主流でしたが、いまは電気自動車やハイブリッドカー、水素カーも注目されつつあります。オーディオの市場も同じように、これからどのように変化していくのか研究し続けないといけません。
たとえば以前はUSB接続による再生が大きなテーマでしたが、いまやネットワーク再生が主流になりつつあります。CDプレーヤーだけではなく、ストリーマーの市場も盛り上がってきました。iFi audioは、そのトレンドの最先端を常に追い続けたいと考えています。
ーーすでにいくつかの専門ショップなどを回ったと聞きましたが、注目するトレンドはありましたか?
ヴィンセント ひとつはものすごくたくさんのヘッドホンが市場に出ていること、そしてポータブルではなく自宅で楽しむようなものが増えていると感じました。おそらく新型コロナの影響で、自宅で過ごす、また働く時間が増えたこともあるでしょうね。仕事に集中するために、ヘッドホンやスピーカーはとても大切なものです。
もうひとつはゲーミングカテゴリーが非常に大きくなってきていますね。また完全ワイヤレスイヤホンのマーケットも非常に広がっています。これらを踏まえて、次のプロダクトをどのように開発していくか考えていきます。
加えて、ストリーミングとの連携は間違いなく大切なテーマです。iFi audioでは「NEO Stream」などのネットワーク対応機器を出しています。私たちはハードウェアだけではなく非常に強力なソフトウェア開発チームも抱えています。これまではXMOSのファームウェアで動作していたところを、自前のコーディングで実現できることも我々の強みです。
ーー製品開発はどのように行われてるのでしょう?
ヴィンセント 本社はイギリスにあります。デザインやR&Dのチームはイギリスに拠点を置いていますが、ソフトウェア開発の主力はアジアにいます。世界中のチームの強みを「ミックス」することで、新しいプロダクトが生まれてくるのです。
iFi audioの製品も、アナログとデジタルのそれぞれの素晴らしいところを「ミックス」して作られています。フォノステージの技術、DC電源、真空管、Bluetooth、いろんな技術を混ぜ合わせることで、私たちならではのプロダクトを作ることができると考えています。
もちろん各国の市場の動向や、ディストリビューターのみなさまのアイデアもとても大切です。日本の文化、アメリカの文化、各国の素晴らしい文化やテクノロジーを少しずつピックアップして混ぜ合わせる、そのことが私たちの製品開発のフィソロフィーでもあります。
ーーいま市場として特に注目しているところはありますか?
ヴィンセント やはりアメリカ、そして日本、韓国がとても大きな市場です。ヨーロッパも全体として見るととても大きな市場ですが、特にドイツやフランスが熱いですね。今回私は韓国には行きませんが、同僚が行って調査してくることになっています。来月のアメリカのNAMMショーにも他のスタッフが行って調査してくる予定になっています。コンシューマー向けの市場だけではなく、プロ市場のトレンドも常にチェックしています。
ーー他の国と比べて、日本市場の特徴的なところはありますか?
ヴィンセント 日本の市場は、どこよりも世界の最先端を行っていると感じています。先ほども言った通りゲーミング、それからリモートワークが大きく発達したこともありますね。それに、日本のプロダクトは世界的にもとても高いレベルにありますよね。例えば文房具。ゼブラのペンやセーラーの万年筆、ノートブックなどは本当に素晴らしいデザインです。日本に来るとたくさん文房具を買ってしまいます。
ーーこれから発売になる新しいプロダクトについて教えてください。
ヴィンセント 「GO pod」という新製品をまもなく発売予定です。これは、お手持ちのIEMを完全ワイヤレス化できるプロダクトになります。本体をケーブルから取り外し、この「GO Pod」と接続します。端子はMMCXと2pin、Pentaconn earが用意されています。「GO Pod」とスマートフォンなどをBluetoothで接続すればOKです。
またBluetoothについても独自の技術で音質を追求しています。信号を受け取る際にはクアルコムのチップを使っていますが、データを変換し増幅するためには別のチップを使っています。そうすることで、Bluetooth由来によるジッターを大きく減らすことができます。それもすべて、自社でプログラムからデザイン、そして製造まで行っているからできることです。コーデックはaptX HD、aptX Adaptiveのほか、LDACやHWA/LHDCなどにも対応しています。専用の充電ボックスもあり、こちらはUSB Type-Cで充電できます。
ーーお気に入りのIEMの使い方がさらに広がりますね。
ヴィンセント もうひとつ、「LAN iSilencer」という製品も投入します。ネットワークオーディオ機器に接続するためのアクセサリーです。ネットワーク対応の機器が非常に増えてきていることからこちらのアイテムも作りました。私たちは独自のガルバニック・アイソレーション技術を持っており、そのテクノロジーを応用しています。ちょっとした投資で音質を改善できること、クレイジーな価格にはしないことも私たちの製品開発にとって大切なことです。
ーー現在、据え置きのラインナップには、ZEN Air、ZEN、NEO、Proと4種類ありますね。特にZENシリーズは独特の形も可愛くて私も大好きなシリーズです。この「ZEN」というのは、いわゆる日本の“禅”から取られたものでしょうか?
ヴィンセント その通りです。インダストリアルデザイナーのジュリアンが言っていました。「なぜみんな四角くて黒い箱を作ろうとするんだろう?」と。だから私たちはとにかく違うものを作ろうとしたのです。
現代に働く人々はみな本当に忙しいですから、家に帰った時はリラックスしたいものです。音楽は人々をリラックスさせることもできるし、また仕事など何かに集中したい時にも非常に役に立ちます。英語では何かに集中している状態のことを「ゾーンに入る」といいます。ZENを使うことで、皆様が「ゾーンに入る」お手伝いができればと思います。
私たちは、オーディオ機器をただ買って並べるだけ、というものにしたくありません。オーディオを通じて音楽そのものに没入してほしい、頭を集中した状態にしてほしい、と考えています。たとえばジムでエクササイズをしている時、あるいは仕事中にも、音楽があることによってより集中しやすくなりますよね。私たちはそういう楽しみを、手頃な値段で提供したいと考えているのです。
ーー音楽が身近にあることで、生活は間違いなく豊かなものになります。
ヴィンセント ある音響心理学の研究に以下のようなものがあります。人間がオーディオを聴く時に、半導体より真空管アンプの方が好ましい、と言われることはよくありますね。それは「2次高調波歪み」によるものと言われています。それは真空管アンプのほうにたくさん含まれているのです。ですから私たちの製品開発においても、この「2次高調波歪み」を重視しています。その方が人間の脳をリラックスさせて、音楽をより楽しむことができると考えているからです。
私たちはもちろん測定も行いますが、測定はあくまでノイズに関して重要と考えているだけです。たとえば電源部においては、静かな電源が絶対に良いです。しかしデジタル・アナログシステムにおいては、測定が必ずしも良い結果をもたらすとは限りません。測定よりも、人間の脳にとってより好ましいことの方が大切なのです。
ーー測定と聴感、その両方を大切にされているのですね。
ヴィンセント言うまでもありませんが、測定が良くても音がダメなものは絶対に作りません。それは私たちのフィロソフィーでもあります。測定数値よりもっと大切なのはあなたがどれだけ音楽を聴いているか、ということなんです。
ーーiFi audioはポータブル機器のラインナップも充実しています。
ヴィンセント 若い人たちにもオーディオを楽しんでもらいたいと思っていますから、100ドル以下で購入できるものも大切です。「GO link」もそのひとつです。たとえばコーヒーショップなどで若い人たちを見ていると、ソニーやオーディオテクニカのいいヘッドホンを持っているのですが、MacBookに直接接続している場合がほとんどです。そういう人たちにも、ぜひこの「GO link」を使ってほしいと思っているんです。そうすれば、ヘッドホンの実力をもっともっと引き出すことができるはずですし、もっと作業に集中することができるでしょう。
以前私たちは、ポータブルオーディオ機器とデスクトップオーディオの双方に使えるものとしてmicroというシリーズを展開してきました。今はポータブルと据え置きは別のラインで開発しています。ポータブル機器ではmicro iDSD Diablo、xDSD Gryphonなどがありますね。
私たちは毎回同じことを繰り返すことを望みません。トレンドに応じて違ったジャンルに挑戦していきたいと思っています。ただし、ヘッドホンを作ることは考えていません。世界には素晴らしいヘッドホンの会社がたくさんあります。そんな素晴らしいヘッドホンをより楽しむためのアイテムを作っていきたいと考えています。
ーー今年5月のミュンヘンのオーディオショウへの出展も予定していますか?
ヴィンセント もちろんです。そして一つとっておきの情報をお伝えしましょう。iFi audioの親会社がAMR(Abbingdon Music Research)という会社であることはご存知ですね。AMRの新製品もミュンヘンで発表予定になります! プリアンプ、DAコンバーター、パワーアンプの3モデルです。クレイジーなほどのスペックですので、きっと日本のオーディオファンにも驚いてもらえるんじゃないかと思いますよ。
ーー(写真を見せてもらう)戦闘機のようなデザインでめちゃくちゃかっこいいです! これは期待できます。そして、iFi audioの次の展開はどのようなことを考えていますか?
ヴィンセント 私たちはいつでも時代の最先端にいたいと考えています。私たちはMQAにもいち早く取り組みましたし、バランス回路の搭載にも取り組みました。そうすると他の会社も追いかけてきますよね。私たちはその競争を楽しんでいます。そして、次のトレンドをいつも探しているのです。
私たちがいま注目しているのはMEMSという技術です。xMEMSという会社が開発しているIEMのための新しいドライバーです。現在主流となるIEMのドライバーは、ダイナミック型かバランスドアーマチュア型(BA型)の2種類です。それに対して、MEMSはピエゾ素子(piezoelectric)を使ったドライバーで、ダイナミック型、BA型に次ぐ第3の選択肢になると考えています。
ピエゾ素子を使ったスピーカーもありこれは素晴らしい音がします。しかしこれまでは小型化することが非常に難しいものでした。xMEMSはそれを実現し、IEMのために使うことを考えたんです。xMEMSは私たちに「一緒に何かやらないか」と声をかけてきました。その時聴かせてもらったプロトタイプの音は非常に素晴らしかったですし、何より価格もクレイジーなものではなく、普通のオーディオファンにも手に取ってもらえるものにできそうでした。
しかしピエゾ素子は非常に高い電圧を必要としますので、専用のアンプが必要です。この専用アンプも、今年のミュンヘンではお披露目できそうです。スイッチが付いていて、ノーマルなイヤホン用、MEMSドライバー用と切り替えて使うことができます。電圧が高すぎるので、ピエゾ用のアンプを普通のイヤホンに使ったらイヤホンが壊れてしまいます!
ーー今年のiFi audioのラインナップがますます楽しみになってきました。
ヴィンセント 正直に言えば今のオーディオ機器の値段は本当に信じられないほど高いものもあります。ですが私たちはできるだけお求めやすい価格で楽しめるもの、そして多くの人々にオーディオを楽しんでもらうための製品開発をおこなっていきたいと考えています。
特にここ数年、現代生活にはあまりにもストレスが増えすぎているように感じます。ですが、そこにほんの少しオーディオが加わることで、生活はずっと豊かになるものと思います。そのお手伝いができればと考えています。
ーーたくさんのお話、ありがとうございました! ミュンヘンでお会いできるのも楽しみにしております。
関連リンク
トピック
-
ハーマンカードン「Enchant 1100」の魅力をリビングで検証! 音もデザインも“洗練”されたサウンドバー
-
轟く低音が洋楽ロックと相性バツグン!Empire Ears「TRITON Launch Edition」レビュー
-
Amazonと楽天ブラックフライデーで人気プロジェクターが最大8万円OFF!一躍人気になったDangbeiの実力とは
-
新開発ユニットを巧みに操る懐深いサウンド。ELAC「Debut 3.0」フロア型/ブックシェルフ型を聴く
-
丁寧な画質と快適な設置性!ボトル型モバイルプロジェクターJMGO「PicoFlix」を使いこなす
-
大人気のJBL最新TWS「LIVE BUDS 3」が30%オフ!楽天ブラックフライデーで安すぎる注目機
-
高音質と機能性を両立する新たなスタンダード機!AVIOT完全ワイヤレス「TE-V1R」レビュー
-
初めてのスクリーンなら シアターハウス「WCBシリーズ」が推し!高コスパで“王道シアター”
-
ファッション性と機能性のバランスが抜群なヘッドホンAVIOT「WA-Q1」レビュー
-
ソニーの新ながら聴きイヤホン「LinkBuds Fit」徹底レビュー!スピーカーとも連携
クローズアップCLOSEUP
-
ECOVACSロボット掃除機がブラックフライデーで大幅値下げ!
-
轟く低音が洋楽ロックと相性バツグン!Empire Ears「TRITON Launch Edition」レビュー
-
Amazonと楽天ブラックフライデーで人気プロジェクターが最大8万円OFF!一躍人気になったDangbeiの実力とは
-
新開発ユニットを巧みに操る懐深いサウンド。ELAC「Debut 3.0」フロア型/ブックシェルフ型を聴く
-
丁寧な画質と快適な設置性!ボトル型モバイルプロジェクターJMGO「PicoFlix」を使いこなす
-
大人気のJBL最新TWS「LIVE BUDS 3」が30%オフ!楽天ブラックフライデーで安すぎる注目機
-
高音質と機能性を両立する新たなスタンダード機!AVIOT完全ワイヤレス「TE-V1R」レビュー
-
初めてのスクリーンなら シアターハウス「WCBシリーズ」が推し!高コスパで“王道シアター”
-
ファッション性と機能性のバランスが抜群なヘッドホンAVIOT「WA-Q1」レビュー
-
ソニーの新ながら聴きイヤホン「LinkBuds Fit」徹底レビュー!スピーカーとも連携
アクセスランキング
RANKING
12/3 10:06 更新