公開日 2004/09/29 17:41
C.E.C.の製品を支える開発エンジニア、カルロス・カンダイアス氏インタビュー
●C.E.C.の開発エンジニアとして、アンプなどの設計を手がけるカルロス・カンダイアス氏が、先日「ハイエンドショウ」のために来日した。Phile-webでは、同氏に独占インタビューを敢行。新製品の内容についてくわしく聞くことができた。
−−まずカルロスさんの経歴を教えて下さい。
カルロス氏:私は1965年ベルリンで生まれました。もともとはクラシックの教育を受けて、著名な合唱団のリード・ヴォーカルとしてのキャリアもあり、カラヤン指揮のベルリン・フィルとも数回コンサートを行っています。小さい頃からオーディオ機器に興味を持ち、スピーカーの製作などを行ってきましたが、本格的に開発を始めたのはベルリン工科大学に入ってからです。
−−初めに取り組んだのはどの分野ですか?
カルロス氏:まず、大学在学中に「Candeias Engineering」を設立し、ソニーやフィリップス、デノンなどのCDプレーヤーのDACを交換したりなど、アップグレードを行いました。その後、プリアンプやパワーアンプなどの開発を手がけました。
−−C.E.C.と出会ったのはいつ頃ですか?
カルロス氏:1993年のベルリンショーです。デモを行うため、C.E.C.のCDトランスポートを借りにいったのです。その後付き合いを深め、1996年からC.E.C.製品の開発に参加するようになりました。2001年には会社を中国の上海に移転し、その後は上海を拠点にして活動しています。
−−手がけられているのは設計・開発だけですか?
カルロス氏:上海に移転してから、生産まで行うようになりました。ドイツのブランドの業務用機器なども手がけていますが、主に開発を行っているのはC.E.C.ブランドの製品です。現在、C.E.C.のアンプは100%私が開発しています。
−−今回の目玉となる新製品は2機種ですね。まず、フォノプリアンプ「PH53」の特徴を教えて下さい。
カルロス氏:一番の特徴は、バランス型カレント・インジェクションMC入力端子を装備していることです。これにより、MCカートリッジ自体の電流出力を活かすことができます。通常は、入力した電流を電圧に変え、それを増幅するわけですが、「PH53」ではカレント・インジェクション方式を採用しているので、電流をそのまま音に変えます。外来ノイズに強く、高品位な再生が可能になっています。
−−LEF回路も搭載していますね。
カルロス氏:そうです。これには、カートリッジの特性に応じて負荷抵抗、容量を切り替える機能がついています。
−−フォノプリアンプを開発しようと思われた理由を教えて下さい。
カルロス氏:C.E.C.の50周年を記念し、アナログレコード関連の製品を作ろうという企画が持ち上がりました。カレント・インジェクション方式を使ったフォノプリアンプという、長年温めてきたアイデアを実現させました。
−−もう一つの新製品、DAコンバーター「DA53」について教えて下さい。
カルロス氏:DACはこれまで長年手がけてきた製品なので、何か新味を出さなければいけないと思いました。そこで、DACにもカレント・インジェクション方式を搭載し、ICからの電流をそのまま取り込むことで、音質を向上させました。
−−DACチップには何を使っていますか?
カルロス氏:バーブラウン社の「PCM1796」を2つ使用しています。これはステレオ用なので、1つでも用は足りるのですが、2つ使用することでチャンネルセパレーションが格段に良くなります。また、サンプリングレートコンバーターには旭化成のものを使っており、195kHzにアップサンプリングしています。192kHzでないことを奇異に思われるかもしれませんが、192kHzでは微少な誤差が出てしまうので、195kHzを使っています。これによりジッターが削減できます。
−−PCとの親和性も高いようですね。
カルロス氏:USB1.1端子を搭載し、パソコンとUSBケーブルでつなぐだけで、DA変換ができます。そのほか、マイク端子、ヘッドホン端子やAES/EBU、RCA、TOSの各入力端子、バランス1、アンバランス1の出力端子を備えています。
−−PH53、DA53ともコンパクトなサイズですが、これには何か理由があるのですか?
カルロス氏:まず、美しいということがポイントですね(笑)。ヘッドホンアンプ「HD53」と同じサイズにしてありますので、並べたときに綺麗に見えます。また、部品の実装密度も非常に高く仕上げていますから、コンパクトに作れるのです。
−−そのヘッドホンアンプ「HD53」では、アップグレードキャンペーンが行われると聞きました。
カルロス氏:そうです。アンプモジュール「CC75」を、次世代の「CC80」に変更することで、音場イメージが広がり、聴感上のS/Nも向上します。CC80は、スペースの都合やコストを度外視して、理想を追求しました。アップグレード費用は21,000円で、ご購入いただいた販売店に製品を持参し、アップグレード費用をお支払い下さい。また、これを機にHD53のアップグレードモデル「HD53 ver8.0」(65,100円/税込)を発売します。
−−今後、カルロスさんはどういう製品を開発されていく予定ですか?
カルロス氏:プランは非常にたくさん持っています。IEEE1394を使ったオーディオシステム、LANプレーヤー、HDDオーディオプレーヤー、マルチルームシステムなどです。ハイエンドハイファイはなくてはならないジャンルだと思いますが、「ハイエンド」の意味が変容してきているように感じています。最先端の流れを製品開発に取り込んでいきたいと考えています。
−−最後に、Phile-web読者へのメッセージをお願いします。
カルロス氏:お客さまがいなければ、我々は製品開発を続けることができません。ぜひ新しい製品にトライし、どんどんコメントをフィードバックしてほしいと思います。ハイエンドの灯を消さないため、今後も努力していきたいと考えています。
−−本日はどうもありがとうございました。
(構成:Phile-web編集部・風間)
−−まずカルロスさんの経歴を教えて下さい。
カルロス氏:私は1965年ベルリンで生まれました。もともとはクラシックの教育を受けて、著名な合唱団のリード・ヴォーカルとしてのキャリアもあり、カラヤン指揮のベルリン・フィルとも数回コンサートを行っています。小さい頃からオーディオ機器に興味を持ち、スピーカーの製作などを行ってきましたが、本格的に開発を始めたのはベルリン工科大学に入ってからです。
−−初めに取り組んだのはどの分野ですか?
カルロス氏:まず、大学在学中に「Candeias Engineering」を設立し、ソニーやフィリップス、デノンなどのCDプレーヤーのDACを交換したりなど、アップグレードを行いました。その後、プリアンプやパワーアンプなどの開発を手がけました。
−−C.E.C.と出会ったのはいつ頃ですか?
カルロス氏:1993年のベルリンショーです。デモを行うため、C.E.C.のCDトランスポートを借りにいったのです。その後付き合いを深め、1996年からC.E.C.製品の開発に参加するようになりました。2001年には会社を中国の上海に移転し、その後は上海を拠点にして活動しています。
−−手がけられているのは設計・開発だけですか?
カルロス氏:上海に移転してから、生産まで行うようになりました。ドイツのブランドの業務用機器なども手がけていますが、主に開発を行っているのはC.E.C.ブランドの製品です。現在、C.E.C.のアンプは100%私が開発しています。
−−今回の目玉となる新製品は2機種ですね。まず、フォノプリアンプ「PH53」の特徴を教えて下さい。
カルロス氏:一番の特徴は、バランス型カレント・インジェクションMC入力端子を装備していることです。これにより、MCカートリッジ自体の電流出力を活かすことができます。通常は、入力した電流を電圧に変え、それを増幅するわけですが、「PH53」ではカレント・インジェクション方式を採用しているので、電流をそのまま音に変えます。外来ノイズに強く、高品位な再生が可能になっています。
−−LEF回路も搭載していますね。
カルロス氏:そうです。これには、カートリッジの特性に応じて負荷抵抗、容量を切り替える機能がついています。
−−フォノプリアンプを開発しようと思われた理由を教えて下さい。
カルロス氏:C.E.C.の50周年を記念し、アナログレコード関連の製品を作ろうという企画が持ち上がりました。カレント・インジェクション方式を使ったフォノプリアンプという、長年温めてきたアイデアを実現させました。
−−もう一つの新製品、DAコンバーター「DA53」について教えて下さい。
カルロス氏:DACはこれまで長年手がけてきた製品なので、何か新味を出さなければいけないと思いました。そこで、DACにもカレント・インジェクション方式を搭載し、ICからの電流をそのまま取り込むことで、音質を向上させました。
−−DACチップには何を使っていますか?
カルロス氏:バーブラウン社の「PCM1796」を2つ使用しています。これはステレオ用なので、1つでも用は足りるのですが、2つ使用することでチャンネルセパレーションが格段に良くなります。また、サンプリングレートコンバーターには旭化成のものを使っており、195kHzにアップサンプリングしています。192kHzでないことを奇異に思われるかもしれませんが、192kHzでは微少な誤差が出てしまうので、195kHzを使っています。これによりジッターが削減できます。
−−PCとの親和性も高いようですね。
カルロス氏:USB1.1端子を搭載し、パソコンとUSBケーブルでつなぐだけで、DA変換ができます。そのほか、マイク端子、ヘッドホン端子やAES/EBU、RCA、TOSの各入力端子、バランス1、アンバランス1の出力端子を備えています。
−−PH53、DA53ともコンパクトなサイズですが、これには何か理由があるのですか?
カルロス氏:まず、美しいということがポイントですね(笑)。ヘッドホンアンプ「HD53」と同じサイズにしてありますので、並べたときに綺麗に見えます。また、部品の実装密度も非常に高く仕上げていますから、コンパクトに作れるのです。
−−そのヘッドホンアンプ「HD53」では、アップグレードキャンペーンが行われると聞きました。
カルロス氏:そうです。アンプモジュール「CC75」を、次世代の「CC80」に変更することで、音場イメージが広がり、聴感上のS/Nも向上します。CC80は、スペースの都合やコストを度外視して、理想を追求しました。アップグレード費用は21,000円で、ご購入いただいた販売店に製品を持参し、アップグレード費用をお支払い下さい。また、これを機にHD53のアップグレードモデル「HD53 ver8.0」(65,100円/税込)を発売します。
−−今後、カルロスさんはどういう製品を開発されていく予定ですか?
カルロス氏:プランは非常にたくさん持っています。IEEE1394を使ったオーディオシステム、LANプレーヤー、HDDオーディオプレーヤー、マルチルームシステムなどです。ハイエンドハイファイはなくてはならないジャンルだと思いますが、「ハイエンド」の意味が変容してきているように感じています。最先端の流れを製品開発に取り込んでいきたいと考えています。
−−最後に、Phile-web読者へのメッセージをお願いします。
カルロス氏:お客さまがいなければ、我々は製品開発を続けることができません。ぜひ新しい製品にトライし、どんどんコメントをフィードバックしてほしいと思います。ハイエンドの灯を消さないため、今後も努力していきたいと考えています。
−−本日はどうもありがとうございました。
(構成:Phile-web編集部・風間)