公開日 2005/10/08 19:52
≪ハイエンド2005:特別インタビュー≫ C.E.C.新製品の秘密をカルロス・カンダイアス氏に聞く
ハイエンドショウトウキョウのレポートでもお伝えしたとおり、C.E.C.はこの秋から冬にかけて、新製品の発売ラッシュを迎える。
新世代ヘッドホンアンプ「HD53R」やその上位機である「HD53R Ver8.0」は既に出荷を開始した。この2モデルに関しては、こちらでご紹介している。
CDプレーヤーの新モデル「CD5300」も10月中旬より出荷が開始される。また、ベルトドライブCDトランスポート「TL0X」についても、近日発売される見込み。
年末にはCDプレーヤー「CD3300R」やプリメインアンプ「AMP3300R」が控えている。ベルトドライブCDプレーヤー「TL-51R」も年末発売を予定する。さらに、2006年の春には、横幅がHD53やDAC53と同等の、非常にコンパクトなアンプ「AMP53」も登場する予定だ。
今回、ハイエンドショウトウキョウの開催に合わせて来日したC.E.C.のチーフエンジニア、カルロス・カンダイアス氏に、新製品の詳細を聞くことができた。カンダイアス氏のプロフィールについては、昨年のインタビュー記事で紹介しているので参照されたい。
−−−まず、HD53RとHD53R Ver8.0について、特長を教えてください。
カンダイアス氏:HD53Rでは、広範囲なインピーダンスのヘッドホンに対応させました。世界的に見てヘッドホンは非常に多様化しており、例えばロシアなどではインピーダンスが非常に高く、逆に日本は低いなど、国や地域でまったく異なります。これに対応する必要性を感じ、+6dB/0dB/-12dBの3段階のゲインスイッチを搭載しました。
また、感度を上げると外来ノイズの影響を受けやすくなりますが、これについては回路の設計を全面的に変えることで対応しています。ただ、回路を変えたことで従来のHD53からのバージョンアップは行えません。
入力はXLRとRCAをそれぞれ1系統用意します。両方を同時に使うことはありませんから、片方を使っているときには、もう片方の回路を切る設計にし、これによりノイズを低減します。また、ヘッドホン出力は2系統ありますが、この音質の差を無くしたのも今回の特長です。
−−−デザインは前モデルのHD53と同様ですか?
カンダイアス氏:デザインは基本的には同じですが、筐体のシャーシは従来の曲げ加工から押し出し加工に変え、機械的な精度が非常に高まりました。また、ボリュームノブなどは従来のプラスチック製からアルミ製に変更するなど、細部にもこだわっています。
−−−通常バージョンとVer8.0の価格差が2万円以上ありますが?
カンダイアス氏:HD53R Ver8.0には、より厳選されたパーツを使用しており、音場の広がりや透明感・臨場感が向上します。価格の差以上のクオリティの違いがあると確信しており、これまでのHD53でも、Ver8.0は非常に高い評価をいただいています。
−−−次に、同じ「53シリーズ」のアンプ、「AMP53」について教えて下さい。
カンダイアス氏:これは、HD53RやDAC53と幅が同じで、高さは2倍程度の、非常にコンパクトなアンプです。AMP5300の機能のほぼすべてをこのサイズに凝縮しました。出力は、AMP5300と同等の100W+100W(8Ω)は出せると考えており、できれば120W程度にしたいと思います。
このサイズでこれだけのパワーを与えると、発熱対策が重要になってきます。音を良くするためにはある程度の熱が必要になりますが、過度の熱はマイナスだからです。AMP53では、ヒートシンクをトップカバーに一体化したほか、世界でもほとんど使用例のない、電磁駆動によるファンを採用しました。このファンは温度に応じて回転速度をコントロールさせます。これらの工夫により、騒音がほとんど発生しない冷却機構を持たせることができました。
さらに、LEF(Load Effect Free)回路やIGM(Intelligent Gain Management)など、C.E.C.独自の機能もさらにパワーアップさせ、新たな世代のものを搭載します。
−−−発売日と価格は?
カンダイアス氏:来年1月には発売したいと思います。価格は135,000円程度を予定しています。
−−−次に「CD5300」について。これは電源回路が特徴的だと聞いています。
カンダイアス氏:その通りです。日本は電圧が100Vで、国際的に電圧が一番低い。オームの法則で、そのぶん電流が強くなくてはならないわけで、そうなると電源の品質によって音の善し悪しがかなり変わってきます。だから、電源ケーブルの特性によって音が相当変わってくるわけです。
CD5300ではまず、ACラインフィルターで汚染された商用電源回路をクリーンな直流に変換します。この段階でもまだノイズが残りますから、さらに一時側の高周波スイッチングレギュレーターで浄化します。さらに、二次側低電圧用にはPWM方式による高性能なスイッチングレギュレーターと高周波絶縁トランスをサーボ系とオーディオ信号系にそれぞれ独立して配置し、相互干渉を排除します。一次と二次のスイッチング・レギュレーター出力はともに複数段のラインフィルターに通すことで、電源の安定化とクリーン化を徹底して行います。
−−−この電源クリーン化システムは、ほかのコンポーネントにも応用できるのでは?
カンダイアス氏:その通りです。いまのところ、70Wまでならアンプなどにも応用が可能です。様々な機器に搭載するため、今後も研究を続けます。
−−−CD5300のそのほかの特長は?
カンダイアス氏:C.E.C.独自のカレント・インジェクション回路やLEF回路はもちろん搭載しています。信号処理は完全バランス化され、ハイスピードで超低歪みな伝送を実現しています。DACは192kHz/24bitに対応しているバーブラウン社製の「PCM1796」を2基搭載。また、DAC回路のオプション機能として、「FLAT」と「SOFT」を切り替えられるフィルター選択機能、極微少レベルの信号の歪みを低減する「DITHER」スイッチ、オーバーサンプリングレートを32fs、64fs、128fsから選択できる「ΔΣ-FS」機能も装備しています。
−−−年末に発売する「AMP3300R」と「CD3300R」についてはいかがですか?
カンダイアス氏:「AMP3300R」は、現在の「AMP3300」の1グレード上の製品で、「AMP3300」と並行して販売します。出力ターミナルやボリュームなどを変更し、IGM機能なども装備しています。
「CD3300R」は、電源にトロイダル・トランスを採用。新しいカレント・インジェクション回路を装備し、DACにはバーブラウンのPCM1796を搭載しています。また、回路基板はすべてエポキシ素材にしました。また、基板を鉛フリーにしたり、プラスチック素材の多くをアルミに置き換えるなど、リサイクルのしやすさにも気を配っています。
−−−昨年、ホームネットワーク機能を備えたオーディオシステムの開発をされているとお話ししていましたが、進行状況はいかがですか?
カンダイアス氏:順調に進んでいます。来年中には、IEEE1394を使ったマルチルームオーディオシステムをお見せできると思います。もちろん、ピュアオーディオシステムの開発も並行して行います。これからもいい音をお届けするためにチャレンジを続けたいと思います。
−−−本日はありがとうございました。
(Phile-web編集部)
hiend2005
新世代ヘッドホンアンプ「HD53R」やその上位機である「HD53R Ver8.0」は既に出荷を開始した。この2モデルに関しては、こちらでご紹介している。
CDプレーヤーの新モデル「CD5300」も10月中旬より出荷が開始される。また、ベルトドライブCDトランスポート「TL0X」についても、近日発売される見込み。
年末にはCDプレーヤー「CD3300R」やプリメインアンプ「AMP3300R」が控えている。ベルトドライブCDプレーヤー「TL-51R」も年末発売を予定する。さらに、2006年の春には、横幅がHD53やDAC53と同等の、非常にコンパクトなアンプ「AMP53」も登場する予定だ。
今回、ハイエンドショウトウキョウの開催に合わせて来日したC.E.C.のチーフエンジニア、カルロス・カンダイアス氏に、新製品の詳細を聞くことができた。カンダイアス氏のプロフィールについては、昨年のインタビュー記事で紹介しているので参照されたい。
−−−まず、HD53RとHD53R Ver8.0について、特長を教えてください。
カンダイアス氏:HD53Rでは、広範囲なインピーダンスのヘッドホンに対応させました。世界的に見てヘッドホンは非常に多様化しており、例えばロシアなどではインピーダンスが非常に高く、逆に日本は低いなど、国や地域でまったく異なります。これに対応する必要性を感じ、+6dB/0dB/-12dBの3段階のゲインスイッチを搭載しました。
また、感度を上げると外来ノイズの影響を受けやすくなりますが、これについては回路の設計を全面的に変えることで対応しています。ただ、回路を変えたことで従来のHD53からのバージョンアップは行えません。
入力はXLRとRCAをそれぞれ1系統用意します。両方を同時に使うことはありませんから、片方を使っているときには、もう片方の回路を切る設計にし、これによりノイズを低減します。また、ヘッドホン出力は2系統ありますが、この音質の差を無くしたのも今回の特長です。
−−−デザインは前モデルのHD53と同様ですか?
カンダイアス氏:デザインは基本的には同じですが、筐体のシャーシは従来の曲げ加工から押し出し加工に変え、機械的な精度が非常に高まりました。また、ボリュームノブなどは従来のプラスチック製からアルミ製に変更するなど、細部にもこだわっています。
−−−通常バージョンとVer8.0の価格差が2万円以上ありますが?
カンダイアス氏:HD53R Ver8.0には、より厳選されたパーツを使用しており、音場の広がりや透明感・臨場感が向上します。価格の差以上のクオリティの違いがあると確信しており、これまでのHD53でも、Ver8.0は非常に高い評価をいただいています。
−−−次に、同じ「53シリーズ」のアンプ、「AMP53」について教えて下さい。
カンダイアス氏:これは、HD53RやDAC53と幅が同じで、高さは2倍程度の、非常にコンパクトなアンプです。AMP5300の機能のほぼすべてをこのサイズに凝縮しました。出力は、AMP5300と同等の100W+100W(8Ω)は出せると考えており、できれば120W程度にしたいと思います。
このサイズでこれだけのパワーを与えると、発熱対策が重要になってきます。音を良くするためにはある程度の熱が必要になりますが、過度の熱はマイナスだからです。AMP53では、ヒートシンクをトップカバーに一体化したほか、世界でもほとんど使用例のない、電磁駆動によるファンを採用しました。このファンは温度に応じて回転速度をコントロールさせます。これらの工夫により、騒音がほとんど発生しない冷却機構を持たせることができました。
さらに、LEF(Load Effect Free)回路やIGM(Intelligent Gain Management)など、C.E.C.独自の機能もさらにパワーアップさせ、新たな世代のものを搭載します。
−−−発売日と価格は?
カンダイアス氏:来年1月には発売したいと思います。価格は135,000円程度を予定しています。
−−−次に「CD5300」について。これは電源回路が特徴的だと聞いています。
カンダイアス氏:その通りです。日本は電圧が100Vで、国際的に電圧が一番低い。オームの法則で、そのぶん電流が強くなくてはならないわけで、そうなると電源の品質によって音の善し悪しがかなり変わってきます。だから、電源ケーブルの特性によって音が相当変わってくるわけです。
CD5300ではまず、ACラインフィルターで汚染された商用電源回路をクリーンな直流に変換します。この段階でもまだノイズが残りますから、さらに一時側の高周波スイッチングレギュレーターで浄化します。さらに、二次側低電圧用にはPWM方式による高性能なスイッチングレギュレーターと高周波絶縁トランスをサーボ系とオーディオ信号系にそれぞれ独立して配置し、相互干渉を排除します。一次と二次のスイッチング・レギュレーター出力はともに複数段のラインフィルターに通すことで、電源の安定化とクリーン化を徹底して行います。
−−−この電源クリーン化システムは、ほかのコンポーネントにも応用できるのでは?
カンダイアス氏:その通りです。いまのところ、70Wまでならアンプなどにも応用が可能です。様々な機器に搭載するため、今後も研究を続けます。
−−−CD5300のそのほかの特長は?
カンダイアス氏:C.E.C.独自のカレント・インジェクション回路やLEF回路はもちろん搭載しています。信号処理は完全バランス化され、ハイスピードで超低歪みな伝送を実現しています。DACは192kHz/24bitに対応しているバーブラウン社製の「PCM1796」を2基搭載。また、DAC回路のオプション機能として、「FLAT」と「SOFT」を切り替えられるフィルター選択機能、極微少レベルの信号の歪みを低減する「DITHER」スイッチ、オーバーサンプリングレートを32fs、64fs、128fsから選択できる「ΔΣ-FS」機能も装備しています。
−−−年末に発売する「AMP3300R」と「CD3300R」についてはいかがですか?
カンダイアス氏:「AMP3300R」は、現在の「AMP3300」の1グレード上の製品で、「AMP3300」と並行して販売します。出力ターミナルやボリュームなどを変更し、IGM機能なども装備しています。
「CD3300R」は、電源にトロイダル・トランスを採用。新しいカレント・インジェクション回路を装備し、DACにはバーブラウンのPCM1796を搭載しています。また、回路基板はすべてエポキシ素材にしました。また、基板を鉛フリーにしたり、プラスチック素材の多くをアルミに置き換えるなど、リサイクルのしやすさにも気を配っています。
−−−昨年、ホームネットワーク機能を備えたオーディオシステムの開発をされているとお話ししていましたが、進行状況はいかがですか?
カンダイアス氏:順調に進んでいます。来年中には、IEEE1394を使ったマルチルームオーディオシステムをお見せできると思います。もちろん、ピュアオーディオシステムの開発も並行して行います。これからもいい音をお届けするためにチャレンジを続けたいと思います。
−−−本日はありがとうございました。
(Phile-web編集部)
hiend2005