公開日 2006/01/20 18:30
B&Wの新ブックシェルフ「CM1」を山之内 正氏が緊急レポート!
B&Wから、ブックシェルフスピーカーの新モデル「CM1」が登場した(Phile-web関連記事)。既に発売され高い人気を誇る同社の「805S」と同時に開発をスタートさせたという本機は、上級機と比べても見劣りしない高度な技術が詰まっている。今回は特別企画として、山之内 正氏による本機の緊急レポートをお届けする。なお、本機の試聴レポートが掲載されるのはメディア初である。(編集部)
■コンパクトな筐体に最新技術を凝縮させた
スピーカーの性能はサイズで決まるわけではない。その事実を証明するような小型スピーカーの注目機が英国のB&Wから届いた。
シンプルなCM1という型番は「コンパクト・モニター」の略だろうか。とにかく小さい。13cmウーファーと2.5cmドーム型トゥイーターを組み合わせたシンプルな2ウェイだが、その構成でバッフル板面積をこれ以上小さくするのはおそらく不可能だろう。そう思わせるほど凝縮感のあるスピーカーである。
見かけは小さいが、CM1に盛り込んだ技術は上級機に比べても見劣りせず、B&Wが開発した最新の成果が導入されている。
まずユニットから見ていこう。ウーファーはおなじみのケブラーコーンをを採用し、磁気回路は700シリーズでもおなじみのバランスドライブ方式を取り入れて歪み感を抑えている。トゥイーターはノーチラスチューブを搭載したアルミニウムドーム型で、ウーファーユニットとの近接配置が目を引く。このトゥイーターは再生周波数帯域が50kHzまで伸びているという。
■800シリーズと共有したネットワーク回路のノウハウ
805Sとほぼ同時に開発が進められた本機には、ユニット以外にもいくつかの重要なノウハウを800シリーズと共有しているが、その代表的な例はネットワーク回路だろう。シンプルな2ウェイ構成の良さを最大限に発揮するためにフィルターを最も簡潔な1次構成の回路で設計したこと、そして、試聴を繰り返して選び抜いたパーツを採用していることがB&Wの自慢だ。ウーファー用には805Sと全く同じ大型の空芯コイルを、トゥイーター用のコンデンサーは800シリーズと同じドイツのムンドルフ社製のスペシャル品を奢っている。ペアで約12万円という価格帯のスピーカーとしてはほとんど例がないと思うが、設計陣が本機を本格的なハイファイスピーカーとして設計したことが、このこだわりからもうかがわれる。
■隅々まで行き届いたハイファイ仕様
キャビネットはシンプルな立方体形状だが、奥行きをやや深めに作り、十分な容積を確保した。背面のバスレフポートにはディンプル加工を施し、バイワイヤリング対応の大型ターミナルを装備するなど、隅々までまさにハイファイ仕様のきめ細かい配慮が行き届いている。仕上げは3色用意されるが、筆者は新たに加わった「ウェンジ」の落ち着いたトーンに好感を持った。なお、キャビネットは高硬度のMDFで表面仕上げはリアルウッド。他のB&W製品と同様、デンマークの自社工場で加工されているという。
■サイズからは想像できない余裕のある再現力
マランツのSA-11S1、PM-11S1を用意し、早速本機の音を聴いてみることにしよう。
オーケストラ曲を聴いて感心したのだが、本機の再生音からは、ミニサイズのスピーカーにありがちなエネルギーの偏りが感じられない。低音楽器の厚みと存在感はちょっとびっくりするほどで、このサイズのキャビネットからは想像できない余裕がある。さすがに本機よりもひと回り以上大きな805Sほど深い低音ではないが、反応が速いので聴いていて心地よい。
■抑制の利いた低音域のコントロール
本機の良さは、けっして無理をして低音の量感を欲張っていないことである。音色やスピード感を犠牲にせずに、良質の低音をバランスよく引き出す巧みさは、805Sをはじめとする小型ブックシェルスピーカーの開発で培ったものだ。付属する筒状のバスレフポートスリーブを取り外すとさらに低音の量感が増すが、よほど低音を吸収する部屋を除き、その必要はないと思う。
ボーカルはアコースティックな響きの美しさが際立っている。ベースやドラムスの低音が声の帯域にかぶらず、楽器の厚みが増すフレーズでも透明感と伸びやかなタッチを失わない。ぬくもりのある声のイメージがやや高めの位置にフワッと浮かび上がる様子は、805Sの立体的な音場再現に近く、奥行きのある空間表現力は小型スピーカーならではのものだ。バックコーラスのハーモニーが美しくなめらかなことから、倍音領域まで歪みを適切にコントロールしていることがわかる。
800シリーズが生まれ変わるプロセスと並行して、本機のような小型モニターのプロジェクトが進行していたことを、今回初めて知った。予期していなかった贈り物を突然受け取ったような嬉しい体験である。
(山之内 正)
山之内 正 プロフィール
神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。また年に数回、オペラ鑑賞のためドイツ、オーストリアへ渡航。音楽之友社刊の『グランドオペラ』にも執筆するなど、趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。
【CM1 SPEC】
●形式:2ウェイ2スピーカーバスレフ型 ●使用ユニット:25mmメタルドーム・トゥイーター×1、130mmケブラーコーン・ミッド/ウーファー×1 ●再生周波数帯域: 45Hz〜50kHz(-6dB) ●出力音圧レベル:84dB(2.83V/1m) ●公称インピーダンス:8Ω(最低5.1Ω) ●クロスオーバー周波数:4kHz ●外形寸法:165W×280H×276Dmm(グリル&ターミナルを含む) ●質量:6.7kg
■コンパクトな筐体に最新技術を凝縮させた
スピーカーの性能はサイズで決まるわけではない。その事実を証明するような小型スピーカーの注目機が英国のB&Wから届いた。
シンプルなCM1という型番は「コンパクト・モニター」の略だろうか。とにかく小さい。13cmウーファーと2.5cmドーム型トゥイーターを組み合わせたシンプルな2ウェイだが、その構成でバッフル板面積をこれ以上小さくするのはおそらく不可能だろう。そう思わせるほど凝縮感のあるスピーカーである。
見かけは小さいが、CM1に盛り込んだ技術は上級機に比べても見劣りせず、B&Wが開発した最新の成果が導入されている。
まずユニットから見ていこう。ウーファーはおなじみのケブラーコーンをを採用し、磁気回路は700シリーズでもおなじみのバランスドライブ方式を取り入れて歪み感を抑えている。トゥイーターはノーチラスチューブを搭載したアルミニウムドーム型で、ウーファーユニットとの近接配置が目を引く。このトゥイーターは再生周波数帯域が50kHzまで伸びているという。
■800シリーズと共有したネットワーク回路のノウハウ
805Sとほぼ同時に開発が進められた本機には、ユニット以外にもいくつかの重要なノウハウを800シリーズと共有しているが、その代表的な例はネットワーク回路だろう。シンプルな2ウェイ構成の良さを最大限に発揮するためにフィルターを最も簡潔な1次構成の回路で設計したこと、そして、試聴を繰り返して選び抜いたパーツを採用していることがB&Wの自慢だ。ウーファー用には805Sと全く同じ大型の空芯コイルを、トゥイーター用のコンデンサーは800シリーズと同じドイツのムンドルフ社製のスペシャル品を奢っている。ペアで約12万円という価格帯のスピーカーとしてはほとんど例がないと思うが、設計陣が本機を本格的なハイファイスピーカーとして設計したことが、このこだわりからもうかがわれる。
■隅々まで行き届いたハイファイ仕様
キャビネットはシンプルな立方体形状だが、奥行きをやや深めに作り、十分な容積を確保した。背面のバスレフポートにはディンプル加工を施し、バイワイヤリング対応の大型ターミナルを装備するなど、隅々までまさにハイファイ仕様のきめ細かい配慮が行き届いている。仕上げは3色用意されるが、筆者は新たに加わった「ウェンジ」の落ち着いたトーンに好感を持った。なお、キャビネットは高硬度のMDFで表面仕上げはリアルウッド。他のB&W製品と同様、デンマークの自社工場で加工されているという。
■サイズからは想像できない余裕のある再現力
マランツのSA-11S1、PM-11S1を用意し、早速本機の音を聴いてみることにしよう。
オーケストラ曲を聴いて感心したのだが、本機の再生音からは、ミニサイズのスピーカーにありがちなエネルギーの偏りが感じられない。低音楽器の厚みと存在感はちょっとびっくりするほどで、このサイズのキャビネットからは想像できない余裕がある。さすがに本機よりもひと回り以上大きな805Sほど深い低音ではないが、反応が速いので聴いていて心地よい。
■抑制の利いた低音域のコントロール
本機の良さは、けっして無理をして低音の量感を欲張っていないことである。音色やスピード感を犠牲にせずに、良質の低音をバランスよく引き出す巧みさは、805Sをはじめとする小型ブックシェルスピーカーの開発で培ったものだ。付属する筒状のバスレフポートスリーブを取り外すとさらに低音の量感が増すが、よほど低音を吸収する部屋を除き、その必要はないと思う。
ボーカルはアコースティックな響きの美しさが際立っている。ベースやドラムスの低音が声の帯域にかぶらず、楽器の厚みが増すフレーズでも透明感と伸びやかなタッチを失わない。ぬくもりのある声のイメージがやや高めの位置にフワッと浮かび上がる様子は、805Sの立体的な音場再現に近く、奥行きのある空間表現力は小型スピーカーならではのものだ。バックコーラスのハーモニーが美しくなめらかなことから、倍音領域まで歪みを適切にコントロールしていることがわかる。
800シリーズが生まれ変わるプロセスと並行して、本機のような小型モニターのプロジェクトが進行していたことを、今回初めて知った。予期していなかった贈り物を突然受け取ったような嬉しい体験である。
(山之内 正)
山之内 正 プロフィール
神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。また年に数回、オペラ鑑賞のためドイツ、オーストリアへ渡航。音楽之友社刊の『グランドオペラ』にも執筆するなど、趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。
【CM1 SPEC】
●形式:2ウェイ2スピーカーバスレフ型 ●使用ユニット:25mmメタルドーム・トゥイーター×1、130mmケブラーコーン・ミッド/ウーファー×1 ●再生周波数帯域: 45Hz〜50kHz(-6dB) ●出力音圧レベル:84dB(2.83V/1m) ●公称インピーダンス:8Ω(最低5.1Ω) ●クロスオーバー周波数:4kHz ●外形寸法:165W×280H×276Dmm(グリル&ターミナルを含む) ●質量:6.7kg