公開日 2006/10/07 20:45
<炭山アキラのハイエンドショウレポート>KUZMAのアナログプレーヤーやammの試作スピーカーが目を引く
■Dルーム
GTサウンドの新作ユニット。ウーファー/ドライバーとも、巨大なアルニコマグネットが見える。
ウーファーはダブルダンパー、ドライバーは純銅製のスロートというのが珍しい
Dルームへ移ろう。今年から参入したGTサウンドで一番の注目点は、何といっても新開発の38cmウーファーと2インチスロートのドライバーだ。どちらも巨大なアルニコマグネットを背負ったユニットで、何より驚いたのはアルミ振動板で24kHzまでの再生に成功したというドライバーである。大口径ウーファー+ホーンという組み合わせとしては、音は幾分優しく穏やかな感じに聴こえたが、これは部屋の響きが大きいせいかもしれない。
KUZMAのアナログプレーヤー・モデルXL。
金属の塊のようなプレーヤーだが、不思議な優美さも漂っている。ツインモーターのベルトドライブで、アームはエアベアリングのリニアトラッキングだ
ザンデンオーディオシステムのブースでは、デモ用に回されていたアナログプレーヤー「KUZMA」のXLがすごい。同社は以前日本にも輸入されていたスタービと同系の会社で、精密切削技術には定評があるという。ただし、同社が輸入代理業務を行うわけではないそうで、「ただいま代理店募集中」とか。
クオードESL2905。もっとじっくり本機を聴きたい人は、すぐ近くのホテルに特別試聴室が設けられているから、ぜひ訪れてほしい
ロッキーインターナショナルでは、ぜひともクオードの70周年記念スピーカー「ESL2905」を聴いておきたい。本来ならばこういった会場を最も苦手とするタイプのスピーカーだが、それでも先祖譲りの繊細さ、温かさに現代的で骨格のしっかりしたアキュレートさが加わった、素晴らしい音を聴かせてくれている。
ammの試作スピーカー。これに加え、大村氏はさらにもう1作の構想があることを明かしてくれた。
まだ時間はかかりそうだが、楽しみにしたい
もう一つ、Dルームで見逃せないのは、ammのスピーカーだ。47研やパストラルシンフォニーなどのカタログによく「鬼才・大村孝則氏」と記載されているが、その大村氏が主催するメーカーがammである。会場では新たな試作品が鳴らされていたが、フルレンジならではの帯域のつながりと、フルレンジらしからぬ音の太さ、力感が印象的だ。
■Eルーム
セリカクリエーションズ「CC.GB25X」。表面の微細な穴に加え、側面にはバスレフポートも空いている。
ユニットは正面と背面に1個ずつ取り付けられており、ユニットのフランジと置き台はMDFに本漆仕上げとか
Eルームでは、まず入ってすぐ右側の東志のブースが面白い。中でもセリカクリエーションズ・ブランドの球形スピーカー「CC.GB25X」は、焼き物の土に泡状の樹脂を混ぜて成型することで、焼いた後に無数の穴をあけたキャビネット構造が独創的だ。これによって無指向的な鳴らし方が可能になるという。音は力強く艶やかな質感がいい。
また、取材には間に合わなかったのだが、どうやら東志オリジナルのユニバーサル型アームが登場するらしい。アナログファン必見といっていいだろう。
コニシスのプリアンプCL1は内部が公開されていた。大変几帳面で緻密な作りであることが分かる
コニシス研究所はスタジオ用のアンプ類などを主力とするメーカーだ。会場では、華奢なイメージのセパレートアンプから分厚く太いサウンドを奏でていたのが印象深い。
PSDのT2。バッフルは分厚い単板を削りだしたもので、その強度は圧倒的だ。
再生音の静けさは、やはり強度を取ったキャビからしか生まれないものだなと実感できる
PSD社は大変に緻密な作りのキャビネットが得意技だが、今年発表された「T2」は3ウェイ5スピーカーで高さ1.2mを超える堂々たるシステムである。音は聴感上のS/N比の高さが印象的で、静寂からスパッと大迫力の音像が定位するのが印象的である。
オンキヨーD−TK10のバージョン(試作モデル)。キャビネット材質をメイプルに、仕上げをクリア/ローズ/サンバースト(2種)に塗り上げたものだ。
市販モデルがアコースティックギター風だとしたら、こちらはエレキギター風である
オンキヨーは、ギターの高峰製作所とコラボレートしたスピーカー「D−TK10」のキャビネット材料をマホガニーからメープルに変更し、さまざまな仕上げを施した試作がお目見えしていた。音もかなり違うが、何よりこのデザインバリエーションは実に楽しい。ぜひ製品に加えてほしいものだ。
■Sルーム
携帯プレーヤー/ヘッドホン用のfoQ。仕上げ色が2色あるのもうれしい。
私は携帯プレーヤーを持っていないので、ひとつアナログ関係で使ってみたいと思う
Sルームはその名の通り音出しをしない部屋で、数多くのガレージやレコード工房などが軒を並べている。目に付いたものを挙げていくと、木曽工業がfoQの新作を出していた。スピーカー置き台用のボードと、もう一つは何と小型ヘッドホン、携帯プレーヤー用である。小さなものと侮るなかれ、これはかなり効くものと推測される。また、厚みが薄く単位面積当たりの質量が小さいので、カートリッジやシェルなどにも扱い勝手が良さそうだ。
ムンドルフのハイルドライバー型トゥイーター。素材の厚みやサイズなどの違いで計7種類のラインアップがそろっているという。
自宅リファレンスのオーラム・カンタス製リボントゥイーターとぜひ聴き比べてみたい
ディーフォースの扱うドイツ・ムンドルフのコンデンサーやコイルなどは世界中の高級スピーカーのネットワークに使われているが、コンデンサーの薄膜技術を生かしてこのたびハイルドライバー型のトゥイーターの開発に成功したそうだ。一番小さな「AMT2340」でも1本7万円を超える高級機である。
コンパクトなピュアオーディオ機器で有名なムジカからは新製品はなし。しかし、どうやら近いうちに新展開があるような口振りだった。これは追いかけねばなるまい。
インフラアコースティックスのインシュレーター、その名も「アナログベース」。
ベースの下を強力に加振しても、ベースの上のコップの水にはほとんど波が立たない。優れたインシュレーターだ
インフラアコースティックは、大変な高性能のインシュレーターを展示していた。アナログプレーヤーに好適な、振動をしっかりと遮断するタイプである。振動低減率20〜40dBというから大した性能である。
会期中にレポートをアップしたいので、ここまで駆け足で取材し、駆け足で執筆してきた。取材の網から漏れた社、文字数と時間の関係で紹介に至らなかった社には、伏してお詫び申し上げる。会期はまだあと1日残っている。皆さんもぜひ会場に足を運んでほしい。
(炭山アキラ プロフィール)
hiend2006report
ウーファーはダブルダンパー、ドライバーは純銅製のスロートというのが珍しい
Dルームへ移ろう。今年から参入したGTサウンドで一番の注目点は、何といっても新開発の38cmウーファーと2インチスロートのドライバーだ。どちらも巨大なアルニコマグネットを背負ったユニットで、何より驚いたのはアルミ振動板で24kHzまでの再生に成功したというドライバーである。大口径ウーファー+ホーンという組み合わせとしては、音は幾分優しく穏やかな感じに聴こえたが、これは部屋の響きが大きいせいかもしれない。
金属の塊のようなプレーヤーだが、不思議な優美さも漂っている。ツインモーターのベルトドライブで、アームはエアベアリングのリニアトラッキングだ
ザンデンオーディオシステムのブースでは、デモ用に回されていたアナログプレーヤー「KUZMA」のXLがすごい。同社は以前日本にも輸入されていたスタービと同系の会社で、精密切削技術には定評があるという。ただし、同社が輸入代理業務を行うわけではないそうで、「ただいま代理店募集中」とか。
ロッキーインターナショナルでは、ぜひともクオードの70周年記念スピーカー「ESL2905」を聴いておきたい。本来ならばこういった会場を最も苦手とするタイプのスピーカーだが、それでも先祖譲りの繊細さ、温かさに現代的で骨格のしっかりしたアキュレートさが加わった、素晴らしい音を聴かせてくれている。
まだ時間はかかりそうだが、楽しみにしたい
もう一つ、Dルームで見逃せないのは、ammのスピーカーだ。47研やパストラルシンフォニーなどのカタログによく「鬼才・大村孝則氏」と記載されているが、その大村氏が主催するメーカーがammである。会場では新たな試作品が鳴らされていたが、フルレンジならではの帯域のつながりと、フルレンジらしからぬ音の太さ、力感が印象的だ。
■Eルーム
ユニットは正面と背面に1個ずつ取り付けられており、ユニットのフランジと置き台はMDFに本漆仕上げとか
Eルームでは、まず入ってすぐ右側の東志のブースが面白い。中でもセリカクリエーションズ・ブランドの球形スピーカー「CC.GB25X」は、焼き物の土に泡状の樹脂を混ぜて成型することで、焼いた後に無数の穴をあけたキャビネット構造が独創的だ。これによって無指向的な鳴らし方が可能になるという。音は力強く艶やかな質感がいい。
また、取材には間に合わなかったのだが、どうやら東志オリジナルのユニバーサル型アームが登場するらしい。アナログファン必見といっていいだろう。
コニシス研究所はスタジオ用のアンプ類などを主力とするメーカーだ。会場では、華奢なイメージのセパレートアンプから分厚く太いサウンドを奏でていたのが印象深い。
再生音の静けさは、やはり強度を取ったキャビからしか生まれないものだなと実感できる
PSD社は大変に緻密な作りのキャビネットが得意技だが、今年発表された「T2」は3ウェイ5スピーカーで高さ1.2mを超える堂々たるシステムである。音は聴感上のS/N比の高さが印象的で、静寂からスパッと大迫力の音像が定位するのが印象的である。
市販モデルがアコースティックギター風だとしたら、こちらはエレキギター風である
オンキヨーは、ギターの高峰製作所とコラボレートしたスピーカー「D−TK10」のキャビネット材料をマホガニーからメープルに変更し、さまざまな仕上げを施した試作がお目見えしていた。音もかなり違うが、何よりこのデザインバリエーションは実に楽しい。ぜひ製品に加えてほしいものだ。
■Sルーム
私は携帯プレーヤーを持っていないので、ひとつアナログ関係で使ってみたいと思う
Sルームはその名の通り音出しをしない部屋で、数多くのガレージやレコード工房などが軒を並べている。目に付いたものを挙げていくと、木曽工業がfoQの新作を出していた。スピーカー置き台用のボードと、もう一つは何と小型ヘッドホン、携帯プレーヤー用である。小さなものと侮るなかれ、これはかなり効くものと推測される。また、厚みが薄く単位面積当たりの質量が小さいので、カートリッジやシェルなどにも扱い勝手が良さそうだ。
自宅リファレンスのオーラム・カンタス製リボントゥイーターとぜひ聴き比べてみたい
ディーフォースの扱うドイツ・ムンドルフのコンデンサーやコイルなどは世界中の高級スピーカーのネットワークに使われているが、コンデンサーの薄膜技術を生かしてこのたびハイルドライバー型のトゥイーターの開発に成功したそうだ。一番小さな「AMT2340」でも1本7万円を超える高級機である。
コンパクトなピュアオーディオ機器で有名なムジカからは新製品はなし。しかし、どうやら近いうちに新展開があるような口振りだった。これは追いかけねばなるまい。
ベースの下を強力に加振しても、ベースの上のコップの水にはほとんど波が立たない。優れたインシュレーターだ
インフラアコースティックは、大変な高性能のインシュレーターを展示していた。アナログプレーヤーに好適な、振動をしっかりと遮断するタイプである。振動低減率20〜40dBというから大した性能である。
会期中にレポートをアップしたいので、ここまで駆け足で取材し、駆け足で執筆してきた。取材の網から漏れた社、文字数と時間の関係で紹介に至らなかった社には、伏してお詫び申し上げる。会期はまだあと1日残っている。皆さんもぜひ会場に足を運んでほしい。
(炭山アキラ プロフィール)
hiend2006report