公開日 2010/12/15 17:41
KANKAWA×金野貴明 − 禁断のジャズ録音『ORGANIST』発売秘話<その3>
オーディオファン・音楽ファン必聴のソフトが登場
12月8日、CD(HQCD)、マスターCD-R、豪華アナログボックスという3種類で発売されたティートックレコーズのKANKAWA『ORGANIST』(関連ニュース)。
本作について、オーディオライター鈴木 裕氏がKANKAWA氏とティートックレコーズの金野貴明氏にインタビューした。先週からのレポート(その1/その2)の続きをお届けする。
なお、『ORGANIST』アナログボックスについては、本ファイル・ウェブでも受け付けている(ご注文はこちらから)。
■自分との戦いだと思って録音をやっている
具体的なことを書いておこう。ハモンド用のマイクにはノイマンのM149を使っている。一般的にはマットな質感の、暴れ馬的な特性を持っているが、うまく使えばガッツリした音が録れるということで、マイクケーブルにアコースティック・リヴァイブで特製のものを制作。マイクからは、プリアンプを通しただけですぐに音楽制作用PCのプロトゥールスにインプット。24bit/192kHzのフォーマットで収録している。そしてミックスダウンはプロトゥールスの中だけで完結させ、2chのCD-Rに焼き込む過程で、ケーブル類のチョイスやCDドライブの使いこなしによってマスタリング的な音作りをコントロールしているという。電源ケーブル、信号ケーブルもアコースティック・リヴァイブの製品が選択された(普段から金野氏は扱う音楽によってケーブルは換えることもある)。
オリジナルなものを作るのが大変だなと思うのは、ミックスダウンの行程だけでも10回近くやり直しており、時間のある限り、金野氏自身が納得するまでやっているという点からも窺われる。
「いつものは僕の作品だけど、今回は二人の作品ということなんだ。金野君にインスパイアされてできた音楽なんですよ。ここまでエンジニアが自分の世界を持っているのも珍しい。こういう風に共同作業をしたいと思ったのは初めてだよ」と語るカンカワ氏に対して、金野氏は、「自分との戦いだと思って、音楽と向き合ったり、録音をやっています。とにかく自分が納得ができれば、ある意味、周囲の評価は必要だとは思いますが気にはしていません」
■ジャズの歴史とは違う手法だが誇りに思う
カンカワ氏の言葉に筆者自身、勇気をもらった。「いつまでも同じ録音で、同じジャズのスタイルをやっていってもつまらんでしょ。やっぱり前向いて、生きていかないと。僕はジャズメンやから、カラダのどこをどう切ってもジャズなんやけれども、それがまったく違う手法で演奏できたことが、亡くなったジャズメンやミュージシャンの友達に対して、誇りに思う。亡くなった先輩たちは喜ぶよ。今までもマジメに音楽をやってきたつもりやけど、このアルバムを作ってからさらにマジメになったね。純粋になれた」
アルバム『オルガニスト』で聴ける、ディープな音と音楽の世界を、是非、体験していただきたい。パフォーマンスの高いオーディオほど、よりどっぷりとハマれる素晴らしい世界をそこに聴くことができる。(完)
【CD『KANKAWA/ORGANIST』の音を聴いて】by 鈴木 裕
音像は大きめでマイクがそれぞれの楽器に肉薄していることがわかる。肉薄どころか、楽器の内部にもいるのではないかと思える瞬間もある。主役のハモンドB3と並んでウッドベースの音も異常なほどのワイドレンジと情報量を持っている。平静な心の状態では聴いていられないような音と音楽で、内臓に頭を突っ込んでいるような閉塞感と安心感と、エロティックさとスリリングさえ呼び起こす。同時に特有の空間感もあるのだから不思議だ。執念さえ感じる。ある意味、アブナイ音だ。
本作について、オーディオライター鈴木 裕氏がKANKAWA氏とティートックレコーズの金野貴明氏にインタビューした。先週からのレポート(その1/その2)の続きをお届けする。
なお、『ORGANIST』アナログボックスについては、本ファイル・ウェブでも受け付けている(ご注文はこちらから)。
■自分との戦いだと思って録音をやっている
具体的なことを書いておこう。ハモンド用のマイクにはノイマンのM149を使っている。一般的にはマットな質感の、暴れ馬的な特性を持っているが、うまく使えばガッツリした音が録れるということで、マイクケーブルにアコースティック・リヴァイブで特製のものを制作。マイクからは、プリアンプを通しただけですぐに音楽制作用PCのプロトゥールスにインプット。24bit/192kHzのフォーマットで収録している。そしてミックスダウンはプロトゥールスの中だけで完結させ、2chのCD-Rに焼き込む過程で、ケーブル類のチョイスやCDドライブの使いこなしによってマスタリング的な音作りをコントロールしているという。電源ケーブル、信号ケーブルもアコースティック・リヴァイブの製品が選択された(普段から金野氏は扱う音楽によってケーブルは換えることもある)。
オリジナルなものを作るのが大変だなと思うのは、ミックスダウンの行程だけでも10回近くやり直しており、時間のある限り、金野氏自身が納得するまでやっているという点からも窺われる。
「いつものは僕の作品だけど、今回は二人の作品ということなんだ。金野君にインスパイアされてできた音楽なんですよ。ここまでエンジニアが自分の世界を持っているのも珍しい。こういう風に共同作業をしたいと思ったのは初めてだよ」と語るカンカワ氏に対して、金野氏は、「自分との戦いだと思って、音楽と向き合ったり、録音をやっています。とにかく自分が納得ができれば、ある意味、周囲の評価は必要だとは思いますが気にはしていません」
■ジャズの歴史とは違う手法だが誇りに思う
カンカワ氏の言葉に筆者自身、勇気をもらった。「いつまでも同じ録音で、同じジャズのスタイルをやっていってもつまらんでしょ。やっぱり前向いて、生きていかないと。僕はジャズメンやから、カラダのどこをどう切ってもジャズなんやけれども、それがまったく違う手法で演奏できたことが、亡くなったジャズメンやミュージシャンの友達に対して、誇りに思う。亡くなった先輩たちは喜ぶよ。今までもマジメに音楽をやってきたつもりやけど、このアルバムを作ってからさらにマジメになったね。純粋になれた」
アルバム『オルガニスト』で聴ける、ディープな音と音楽の世界を、是非、体験していただきたい。パフォーマンスの高いオーディオほど、よりどっぷりとハマれる素晴らしい世界をそこに聴くことができる。(完)
【CD『KANKAWA/ORGANIST』の音を聴いて】by 鈴木 裕
音像は大きめでマイクがそれぞれの楽器に肉薄していることがわかる。肉薄どころか、楽器の内部にもいるのではないかと思える瞬間もある。主役のハモンドB3と並んでウッドベースの音も異常なほどのワイドレンジと情報量を持っている。平静な心の状態では聴いていられないような音と音楽で、内臓に頭を突っ込んでいるような閉塞感と安心感と、エロティックさとスリリングさえ呼び起こす。同時に特有の空間感もあるのだから不思議だ。執念さえ感じる。ある意味、アブナイ音だ。