公開日 2014/02/08 22:22
<ポタ研>Astell&Kern「AK240」披露イベントを開催 − ハンドリングレポートやDSDネイティブ再生デモも
2月8日、中野サンプラザにて「ポタ研2014 冬」が開催された。当日の東京は朝から大雪。しかし会場には多くの来場者が詰めかけ、吹雪いて真っ白の窓の外とは対照的に熱気で溢れていた。
本稿では、Astell&Kernのハイレゾオーディオプレーヤー新製品「AK240」の新製品発表会についてお伝えしよう。
iriver社のAstell&Kern「AK240」(関連ニュース)(フォトレポート)は、ポータブルハイレゾオーディオプレーヤーの先鞭をつけた同シリーズの最上位モデル。最大192kHz/24bit、32bit(Float/Integer)、最大DSD128(5.6MHz/1bit)ネイティブ再生に対応し、2.5mm端子経由でのバランス出力にも対応。Wi-Fi機能を内蔵しており、ハイレゾ音源配信サイトからダイレクトにミュージックファイルの入手とWi-Fi経由でのストリーミング再生が可能な点も特徴だ。機能面・音質面での充実はもちろんのこと、税込285,000円という価格でも度肝を抜く、超ハイエンドポータブルプレーヤーである。年初のInternational CESで発表されて以来注目を集めていたが、日本国内でも2月21日に発売されることが先日明らかにされた(関連ニュース)。
12:30から開催された発表会には、会場がすし詰めになるほど人が集まり、同製品への注目度の高さがうかがえた。
発表会ではまず、販売代理店アユートの藤川氏から開発の経緯が説明された。
「AK100とAK120は非常に成功したプロダクトだったが、iriver社では『究極の音質とは何か』を求め、更なる追究を行っていた。“原音を忠実に再現する”という目的を一段飛躍させることが必要だった。また、『据え置きSACDプレーヤーを超えるクオリティを、ポータブルプレーヤーで実現する』こともコンセプトのひとつだった」と語る藤川氏。
AK100からAK120への開発移行では、新たにデュアルDACを採用。AK240でも当初はデュアルDAC方式で十分ではと考えていたが、開発のさなか、原音忠実再生のためには更に何か異なるものが必要であるということになり、出た答えが『デュアルDACを通じたバランス出力』と『ネイティブDSDの再生』だったのだという。「DSDをPCMに変換せずありのままに再生することが、Astell&Kernが考える“原音”に更に一歩近づくための方法だった」。
しかしその過程はとても困難なものであり、AK240にネイティブDSDをサポートさせるため、DAC選択から再び始めることに。「AK100/AK120での成功体験をいったん忘れ、ネイティブDSDと相性がいいか、デュアル構成で駆動できるか、DAC以外には何が必要なのか − この3つの条件を全て満たす構成として、今回採用されたシーラス・ロジック社製DAC-IC「CS4398」をL/R独立で搭載するという結論に至った」という。
ポータブル機器でネイティブDSD再生を実現する過程は簡単なものではなく、ネイティブDSD非対応であるメインCPUを補う専用チップを別搭載。この専用チップ自体をメインCPUと連動させる作業にもかなりの開発リソースをあてたという。長期間にわたる開発の結果、メインCPUがネイティブDSD信号を受けたあと専用チップにパスし、そこからDACを通すことで、ポータブル機器でネイティブDSD再生を実現することができたとのことだ。
「ネイティブDSD再生とDACからのフルバランスアナログ信号を出力できる端子を備えることで、AK240は原音再生にさらに一歩近づくことができたと確信しています」
■デザインコンセプトは“光と影”
AK240のジュラルミン製ボディのデザインは“光と影”からインスピレーションを得たとのこと。正面を基準にアシンメトリーな外観は、AK240のボディを光が照らしたとき表れる陰影を表しているという。「Astell&Kernらしい個性を持ちつつ、品格が生きたデザイン。アイデンティティーを持つだけでなく、ボリュームキーを保護する役割を持っている。芸術作品と言っても過言ではないほどにこだわりを持って製作した」と藤川氏も説明する。
■大容量メモリやWi-Fi機能などを備え、多彩な使い方を実現
内蔵メモリは256GBで、microSDの増設が可能で最大約384GBまで対応。高精細なタッチ操作対応有機ELディスプレイとなる。背面にはカーボンファイバーを採用し、デザイン的にも非常に美しい仕上げを実現している。
また、Wi-Fi機能も搭載。WI-Fiストリーミングに対応し、同一ネットワーク内にあるPCなどのなかにある音源を再生することができる。音源はAK240に保存することもできるという。また、ハイレゾ音源配信サイトからダイレクトに音源購入も可能。こちらの機能には現段階では対応していないが、現在e-onkyo musicとOTOTOYの音源が購入できるよう交渉を進めているとのことだ。
そのほか、USB-DAC機能ももちろん搭載。OTA(Over the Air)によるファームウェアアップデートや、Bluetooth機能にも対応する。
■佐々木喜洋氏がAK240を先行ハンドリングレポート
オーディオライターの佐々木喜洋氏が登場。発表会に先んじてAK240を1週間ほど使用し、使用感などをレポートした。
佐々木氏がAK240を見て一番最初に感じたのは『高級感』だという。「ボディの質感などは今までのAKシリーズにはなかったものだし、“光と影”をイメージしたというデザインは、見た目だけでなく指がかかって持ちやすいメリットもある。付属のバダラッシ カルロ社『MINERVA』レザーを使用したカバーも精巧なつくりで美しい」
また、音質についても「届いて取り急ぎ確認用に聴いてみたら、非常にすばらしくてそのまま聞き込んでしまったほど素晴らしい」と絶賛。
「AK100と120の差は確かに大きかったが、そのふたつは延長線上にあった。しかしAK240は別物で、非常に濃密で豊かな音表現を実現してくれる。たとえて言うなら、ポータブルヘッドホンアンプなしでも完結するくらいのクオリティだ。アンプ自体の性能が非常に向上しているからだろう。DAC部もシーラスロジックに変わったことで、よりワイドレンジで高解像度、重なりが明瞭になった優れた音を聴かせてくれる。バランス駆動も特筆ものだ。おまけで付けた機能ではなく実際に使用できるクオリティと言える。バランス駆動は4芯になるので空間の広がりが向上する。イヤホンの力を引き出し、同じイヤホンを聴いても別物かと思うような音の違いがあった」
操作感にも言及した。「まず256GB内蔵メモリは容量の大きさに驚き。PCからの転送に、mtp方式を採用した点も特徴だ。AK120などはUSBマスストレージ方式を使っていたので、転送中に接続を切ってしまうとOSや機器側にダメージを与える可能性があった。しかしMTP方式はPCとプレーヤーがサーバーでつながっているイメージなので、そういった心配がない。ただし、MTP転送を行う場合、Windowsは標準対応しているが、macの場合は『Android Data Transfer』というソフトを入れる必要がある」とのこと。
UIについては「AK240はAndroid OSを採用しているが、非常に高く作り込みがされているので、普通の人はこれがAndroidOSを使っているとは気づかないのではないか」と語っていた。
また、Wi-Fi機能についても説明。「ファームウェアアップデートも、新しいものが公開されたときはお知らせしてくれてそのままアップデートできるのは便利。Wi-Fiストリーミングにも対応している。この機能を使うには、まずPCに『MQS streaming server』(Windows/mac対応)というソフトをインストール。するとAK240内のプレイリストが表示されるので、そちらを選択して再生できる。Wi-Fiストリーミング再生は、ハイレゾ音源はもちろんDSD音源の再生も可能という話だ。PCオーディオの最先端を見ても、これに完全に対応しているものはない。それをこの小さな製品が実現していることは、AK240が単なるMP3プレーヤーとは違う製品であることを表していると言えるだろう」
Astell&Kern製のスピーカーと真空管アンプ(どちらも製品化は未定)を使ったデモが行われた。デモでは、「mac(再生ソフトはAudirvana Plus)→ラックスマンDA-06→真空管アンプ→スピーカー」という組み合わせと、「AK240→真空管アンプ→スピーカー」という2タイプのシステムを比較試聴。AK240のクオリティをアピールした。AK240と真空管アンプとの接続には、専用のクレードルとバランスケーブルを使用。スタンドは発売時期、価格未定。バランスケーブルは「製品化は予定しているが詳細は未定」(藤川氏)とのこと。本日会場に登場したものも最終版ではなく、ケーブルの導体などが変わる可能性があるという。
◇ ◇ ◇
また、DSD音源配信を行っているe-onkyo musicとOTOTOYから高橋氏と黒澤氏が登場。高橋氏は「OTOTOYでは2010年からDSD配信を始めた。当初は再生できる機器も限られていたが、最近は対応製品がどんどん増えてきて嬉しい。先日主催したイベントで、ライブ生録&リアルタイムミックスしてDSDで録音するという試みを行ったが、その際モニター機材に苦労した。AK240があればぴったりだったと思う」とコメント。それぞれのサイトからおすすめDSD音源として『Cello Bouquet/溝口肇』(e-onkyo music)、「POWDER SNOW/Suara」(OTOTOY)が再生された。
本稿では、Astell&Kernのハイレゾオーディオプレーヤー新製品「AK240」の新製品発表会についてお伝えしよう。
iriver社のAstell&Kern「AK240」(関連ニュース)(フォトレポート)は、ポータブルハイレゾオーディオプレーヤーの先鞭をつけた同シリーズの最上位モデル。最大192kHz/24bit、32bit(Float/Integer)、最大DSD128(5.6MHz/1bit)ネイティブ再生に対応し、2.5mm端子経由でのバランス出力にも対応。Wi-Fi機能を内蔵しており、ハイレゾ音源配信サイトからダイレクトにミュージックファイルの入手とWi-Fi経由でのストリーミング再生が可能な点も特徴だ。機能面・音質面での充実はもちろんのこと、税込285,000円という価格でも度肝を抜く、超ハイエンドポータブルプレーヤーである。年初のInternational CESで発表されて以来注目を集めていたが、日本国内でも2月21日に発売されることが先日明らかにされた(関連ニュース)。
12:30から開催された発表会には、会場がすし詰めになるほど人が集まり、同製品への注目度の高さがうかがえた。
発表会ではまず、販売代理店アユートの藤川氏から開発の経緯が説明された。
「AK100とAK120は非常に成功したプロダクトだったが、iriver社では『究極の音質とは何か』を求め、更なる追究を行っていた。“原音を忠実に再現する”という目的を一段飛躍させることが必要だった。また、『据え置きSACDプレーヤーを超えるクオリティを、ポータブルプレーヤーで実現する』こともコンセプトのひとつだった」と語る藤川氏。
AK100からAK120への開発移行では、新たにデュアルDACを採用。AK240でも当初はデュアルDAC方式で十分ではと考えていたが、開発のさなか、原音忠実再生のためには更に何か異なるものが必要であるということになり、出た答えが『デュアルDACを通じたバランス出力』と『ネイティブDSDの再生』だったのだという。「DSDをPCMに変換せずありのままに再生することが、Astell&Kernが考える“原音”に更に一歩近づくための方法だった」。
しかしその過程はとても困難なものであり、AK240にネイティブDSDをサポートさせるため、DAC選択から再び始めることに。「AK100/AK120での成功体験をいったん忘れ、ネイティブDSDと相性がいいか、デュアル構成で駆動できるか、DAC以外には何が必要なのか − この3つの条件を全て満たす構成として、今回採用されたシーラス・ロジック社製DAC-IC「CS4398」をL/R独立で搭載するという結論に至った」という。
ポータブル機器でネイティブDSD再生を実現する過程は簡単なものではなく、ネイティブDSD非対応であるメインCPUを補う専用チップを別搭載。この専用チップ自体をメインCPUと連動させる作業にもかなりの開発リソースをあてたという。長期間にわたる開発の結果、メインCPUがネイティブDSD信号を受けたあと専用チップにパスし、そこからDACを通すことで、ポータブル機器でネイティブDSD再生を実現することができたとのことだ。
「ネイティブDSD再生とDACからのフルバランスアナログ信号を出力できる端子を備えることで、AK240は原音再生にさらに一歩近づくことができたと確信しています」
■デザインコンセプトは“光と影”
AK240のジュラルミン製ボディのデザインは“光と影”からインスピレーションを得たとのこと。正面を基準にアシンメトリーな外観は、AK240のボディを光が照らしたとき表れる陰影を表しているという。「Astell&Kernらしい個性を持ちつつ、品格が生きたデザイン。アイデンティティーを持つだけでなく、ボリュームキーを保護する役割を持っている。芸術作品と言っても過言ではないほどにこだわりを持って製作した」と藤川氏も説明する。
■大容量メモリやWi-Fi機能などを備え、多彩な使い方を実現
内蔵メモリは256GBで、microSDの増設が可能で最大約384GBまで対応。高精細なタッチ操作対応有機ELディスプレイとなる。背面にはカーボンファイバーを採用し、デザイン的にも非常に美しい仕上げを実現している。
また、Wi-Fi機能も搭載。WI-Fiストリーミングに対応し、同一ネットワーク内にあるPCなどのなかにある音源を再生することができる。音源はAK240に保存することもできるという。また、ハイレゾ音源配信サイトからダイレクトに音源購入も可能。こちらの機能には現段階では対応していないが、現在e-onkyo musicとOTOTOYの音源が購入できるよう交渉を進めているとのことだ。
そのほか、USB-DAC機能ももちろん搭載。OTA(Over the Air)によるファームウェアアップデートや、Bluetooth機能にも対応する。
■佐々木喜洋氏がAK240を先行ハンドリングレポート
オーディオライターの佐々木喜洋氏が登場。発表会に先んじてAK240を1週間ほど使用し、使用感などをレポートした。
佐々木氏がAK240を見て一番最初に感じたのは『高級感』だという。「ボディの質感などは今までのAKシリーズにはなかったものだし、“光と影”をイメージしたというデザインは、見た目だけでなく指がかかって持ちやすいメリットもある。付属のバダラッシ カルロ社『MINERVA』レザーを使用したカバーも精巧なつくりで美しい」
また、音質についても「届いて取り急ぎ確認用に聴いてみたら、非常にすばらしくてそのまま聞き込んでしまったほど素晴らしい」と絶賛。
「AK100と120の差は確かに大きかったが、そのふたつは延長線上にあった。しかしAK240は別物で、非常に濃密で豊かな音表現を実現してくれる。たとえて言うなら、ポータブルヘッドホンアンプなしでも完結するくらいのクオリティだ。アンプ自体の性能が非常に向上しているからだろう。DAC部もシーラスロジックに変わったことで、よりワイドレンジで高解像度、重なりが明瞭になった優れた音を聴かせてくれる。バランス駆動も特筆ものだ。おまけで付けた機能ではなく実際に使用できるクオリティと言える。バランス駆動は4芯になるので空間の広がりが向上する。イヤホンの力を引き出し、同じイヤホンを聴いても別物かと思うような音の違いがあった」
操作感にも言及した。「まず256GB内蔵メモリは容量の大きさに驚き。PCからの転送に、mtp方式を採用した点も特徴だ。AK120などはUSBマスストレージ方式を使っていたので、転送中に接続を切ってしまうとOSや機器側にダメージを与える可能性があった。しかしMTP方式はPCとプレーヤーがサーバーでつながっているイメージなので、そういった心配がない。ただし、MTP転送を行う場合、Windowsは標準対応しているが、macの場合は『Android Data Transfer』というソフトを入れる必要がある」とのこと。
UIについては「AK240はAndroid OSを採用しているが、非常に高く作り込みがされているので、普通の人はこれがAndroidOSを使っているとは気づかないのではないか」と語っていた。
また、Wi-Fi機能についても説明。「ファームウェアアップデートも、新しいものが公開されたときはお知らせしてくれてそのままアップデートできるのは便利。Wi-Fiストリーミングにも対応している。この機能を使うには、まずPCに『MQS streaming server』(Windows/mac対応)というソフトをインストール。するとAK240内のプレイリストが表示されるので、そちらを選択して再生できる。Wi-Fiストリーミング再生は、ハイレゾ音源はもちろんDSD音源の再生も可能という話だ。PCオーディオの最先端を見ても、これに完全に対応しているものはない。それをこの小さな製品が実現していることは、AK240が単なるMP3プレーヤーとは違う製品であることを表していると言えるだろう」
Astell&Kern製のスピーカーと真空管アンプ(どちらも製品化は未定)を使ったデモが行われた。デモでは、「mac(再生ソフトはAudirvana Plus)→ラックスマンDA-06→真空管アンプ→スピーカー」という組み合わせと、「AK240→真空管アンプ→スピーカー」という2タイプのシステムを比較試聴。AK240のクオリティをアピールした。AK240と真空管アンプとの接続には、専用のクレードルとバランスケーブルを使用。スタンドは発売時期、価格未定。バランスケーブルは「製品化は予定しているが詳細は未定」(藤川氏)とのこと。本日会場に登場したものも最終版ではなく、ケーブルの導体などが変わる可能性があるという。
また、DSD音源配信を行っているe-onkyo musicとOTOTOYから高橋氏と黒澤氏が登場。高橋氏は「OTOTOYでは2010年からDSD配信を始めた。当初は再生できる機器も限られていたが、最近は対応製品がどんどん増えてきて嬉しい。先日主催したイベントで、ライブ生録&リアルタイムミックスしてDSDで録音するという試みを行ったが、その際モニター機材に苦労した。AK240があればぴったりだったと思う」とコメント。それぞれのサイトからおすすめDSD音源として『Cello Bouquet/溝口肇』(e-onkyo music)、「POWDER SNOW/Suara」(OTOTOY)が再生された。