公開日 2017/04/29 12:10
Sonoma Acousticsの静電型ヘッドホン「Model One」の詳細を開発者が明かす
革新的な特許技術を採用
既報の通り、エミライは米Sonoma Acousticsの製品取り扱いを開始。同社の静電型ヘッドホンシステム「Model One」を発売する。本日、「春のヘッドフォン祭」において製品発表会が開催され、開発者がその詳細を自ら説明した。本記事では、同様の内容で前々日に行われたプレス向け説明会の模様をお伝えしたい。
Model Oneは、静電型ヘッドホンおよび専用のDAC内蔵アンプで構成された、静電型ヘッドホンアンプ・システム。現時点で価格と発売日は未定とのことだが、国内での実売価格は60万円台前半、発売日は5月中旬を目処に調整中とのことだった。
発表会には、Sonoma Acoustics社の中心メンバーであるDavid Kawakami氏、そして今回Model Oneに採用されたHPELトランデューサーを開発した英Warwick Audio Technologies Ltd.(以下、Warwick社)のCTOであるDan Anagnos氏が登場した。
Sonoma Acousticsは、その名前が示す通り、ソニーの有名なDSD録音用ワークステーション「SONOMA」を手がけた開発チームが再結集して立ち上げたブランドだ。
設立における中心メンバーであるDavid Kawakami氏は、1978年から2005年までソニーに在籍。DVD-AudioやSACDの規格策定に携わり、Sonomaワークステーションの開発チームの1人としてその開発も担当した。
同氏はソニー退社後、通信業界や自動車業界でコンサルタントとして活動していたが、いずれオーディオのプロジェクトがやりたいと考えていたという。そんな中、旧知の仲であったDan Anagnos氏から「静電型ヘッドホン用の理想的な振動板を開発できた」という連絡を受けた。これを使えばハイレゾ再生に最適なヘッドホンが開発できると確信したKawakami氏は、Sonomaチームのメンバーに連絡。賛同したメンバーとともに、このHPEL振動板を搭載した静電型ヘッドホンを製品化するためにSonoma Acousticsを設立した。
Dan Anagnos氏は米ソニーに在籍していた時代に、SACD再生のためのリファレンスとして位置付けられたハイエンドスピーカー「SS-M9ED」の開発・設計を担当。David Kawakami氏はこのSS-M9EDの音に強く惹かれていたという。その後、Dan Anagnos氏はオーディオメーカー各社でエンジニアとして活躍。2015年には、Warwick社においてHPEL振動板の開発に携わった。
Model Oneの心臓部を担うWarwick社のHPEL(高精度静電)トランスデューサー(トランスデューサーは「変換器」の意味で、振動板を含む発音システム全体を指すためにこう呼ぶ)は、60Hz以上の周波数応答特性と高い過度応答特性を実現し、さらには分割振動も最小限に抑えている。軽量化を実現したことも特筆できる。
HPELトランスデューサーには大きく3つのポイントがある。1つ目は、シングルエンドデザインの採用だ。一般的な静電型ヘッドホンの振動板はその両側に振動板を駆動する電極を備えるが、本機は特許技術により片側のみに電極を備えている。これにより振動板の耳側から音響的な遮蔽物を取り除くことができ、再生における干渉や反射の問題をクリアできたという。
2つめは、平面振動板を蜂の巣形状のグリッドによって、実質的に8個に分割して駆動することだ。このグリッドで分割された各部はそれぞれ形状や大きさが異なっている。1つの大きな振動板では共振点が1ヶ所に集中して音質を損なうが、この方法では共振周波数を分散させることができ、さらには高域の伸びを向上させることもできるという。
3つめは、有限要素法を用いた音響設計の採用だ。例えば上述した共振を分散するための構造は、有限要素法による高度な演算によって形状をシミュレーションすることで、はじめて実現できるものといえる。なお、本機には航空機や自動車の設計にも用いられる、COMSOL社の非常に高度な解析が用いられているという。
イヤーカップ部にはマグネシウムを採用。これは高い剛性、優れた遮音性、優れたRFI/EMI遮蔽性を備えることから、HPELを収容するのに理想的な材料として選ばれたとしている。また、イヤーパッドはエチオピア原産のカブレッタ・ヘア・シープ・レザーから手作りされている。
またアンプとヘッドホンをつなぐケーブルには、米Straight Wireとの共同開発による超低キャパシタンス銀メッキOFHC銅製導体ケーブルを採用。発泡ポリエチレンによる絶縁およびケブラー繊維により強化され、コネクターは分極4接点タイプの左右独立自己ラッチ式Remoコネクターを備える。ケーブル長は2.0m。本体質量は303g。
DAC内蔵アンプ部では、最適なマッチドペアとして構成された高性能なディスクリート設計のFET Class-Aアンプを、高精度のCNC加工が施されたソリッド・アルミニウム製筐体に搭載する。全高調波歪率+ノイズは0.05%未満で、再生周波数帯域は65kHz以上。
ESS Technology社製の32bitリファレンスグレードDACを左右独立で合計2基搭載し、USB入力は最大384kHz/32bit PCM、5.6MHz DSDに対応。またS/PDIF入力では最大192kHz/24bit PCMまでの対応となる。
また、カスタム設計の64bit倍精度固定小数点演算用DSPを内蔵しており、すべての信号をデジタル領域で処理する方式を採る。そのため、入力されたアナログ信号は、マルチチャンネル対応の384kHz/32bit AKMプレミアムADCにより、DSP処理の前段階でデジタル信号に変換される。
付属のUSBケーブルにも配慮。Straight Wireと共同開発した、伝送用導体に銀メッキ高純度銅を使用し、金メッキ処理高品質端子を採用した特別仕様のケーブルを採用している。入力端子にはUSB-B、S/PDIF、RCA、3.5mmステレオミニを備える。
カスタム設計されたユニバーサル対応の電源部は、オーディオ帯域幅内で低ノイズになるよう最適化された固定周波数発振タイプの設計を採用。DC電源コネクターにはロック式タイプを使用し、アンプユニット内のすべてのオーディオ回路には、超低ノイズ・高電圧リニアレギュレーター回路の2段階で電力を供給する。外形寸法は190W×58H×290Dmm、質量は2.45kg。
追って情報を追加する。
Model Oneは、静電型ヘッドホンおよび専用のDAC内蔵アンプで構成された、静電型ヘッドホンアンプ・システム。現時点で価格と発売日は未定とのことだが、国内での実売価格は60万円台前半、発売日は5月中旬を目処に調整中とのことだった。
発表会には、Sonoma Acoustics社の中心メンバーであるDavid Kawakami氏、そして今回Model Oneに採用されたHPELトランデューサーを開発した英Warwick Audio Technologies Ltd.(以下、Warwick社)のCTOであるDan Anagnos氏が登場した。
Sonoma Acousticsは、その名前が示す通り、ソニーの有名なDSD録音用ワークステーション「SONOMA」を手がけた開発チームが再結集して立ち上げたブランドだ。
設立における中心メンバーであるDavid Kawakami氏は、1978年から2005年までソニーに在籍。DVD-AudioやSACDの規格策定に携わり、Sonomaワークステーションの開発チームの1人としてその開発も担当した。
同氏はソニー退社後、通信業界や自動車業界でコンサルタントとして活動していたが、いずれオーディオのプロジェクトがやりたいと考えていたという。そんな中、旧知の仲であったDan Anagnos氏から「静電型ヘッドホン用の理想的な振動板を開発できた」という連絡を受けた。これを使えばハイレゾ再生に最適なヘッドホンが開発できると確信したKawakami氏は、Sonomaチームのメンバーに連絡。賛同したメンバーとともに、このHPEL振動板を搭載した静電型ヘッドホンを製品化するためにSonoma Acousticsを設立した。
Dan Anagnos氏は米ソニーに在籍していた時代に、SACD再生のためのリファレンスとして位置付けられたハイエンドスピーカー「SS-M9ED」の開発・設計を担当。David Kawakami氏はこのSS-M9EDの音に強く惹かれていたという。その後、Dan Anagnos氏はオーディオメーカー各社でエンジニアとして活躍。2015年には、Warwick社においてHPEL振動板の開発に携わった。
Model Oneの心臓部を担うWarwick社のHPEL(高精度静電)トランスデューサー(トランスデューサーは「変換器」の意味で、振動板を含む発音システム全体を指すためにこう呼ぶ)は、60Hz以上の周波数応答特性と高い過度応答特性を実現し、さらには分割振動も最小限に抑えている。軽量化を実現したことも特筆できる。
HPELトランスデューサーには大きく3つのポイントがある。1つ目は、シングルエンドデザインの採用だ。一般的な静電型ヘッドホンの振動板はその両側に振動板を駆動する電極を備えるが、本機は特許技術により片側のみに電極を備えている。これにより振動板の耳側から音響的な遮蔽物を取り除くことができ、再生における干渉や反射の問題をクリアできたという。
2つめは、平面振動板を蜂の巣形状のグリッドによって、実質的に8個に分割して駆動することだ。このグリッドで分割された各部はそれぞれ形状や大きさが異なっている。1つの大きな振動板では共振点が1ヶ所に集中して音質を損なうが、この方法では共振周波数を分散させることができ、さらには高域の伸びを向上させることもできるという。
3つめは、有限要素法を用いた音響設計の採用だ。例えば上述した共振を分散するための構造は、有限要素法による高度な演算によって形状をシミュレーションすることで、はじめて実現できるものといえる。なお、本機には航空機や自動車の設計にも用いられる、COMSOL社の非常に高度な解析が用いられているという。
イヤーカップ部にはマグネシウムを採用。これは高い剛性、優れた遮音性、優れたRFI/EMI遮蔽性を備えることから、HPELを収容するのに理想的な材料として選ばれたとしている。また、イヤーパッドはエチオピア原産のカブレッタ・ヘア・シープ・レザーから手作りされている。
またアンプとヘッドホンをつなぐケーブルには、米Straight Wireとの共同開発による超低キャパシタンス銀メッキOFHC銅製導体ケーブルを採用。発泡ポリエチレンによる絶縁およびケブラー繊維により強化され、コネクターは分極4接点タイプの左右独立自己ラッチ式Remoコネクターを備える。ケーブル長は2.0m。本体質量は303g。
DAC内蔵アンプ部では、最適なマッチドペアとして構成された高性能なディスクリート設計のFET Class-Aアンプを、高精度のCNC加工が施されたソリッド・アルミニウム製筐体に搭載する。全高調波歪率+ノイズは0.05%未満で、再生周波数帯域は65kHz以上。
ESS Technology社製の32bitリファレンスグレードDACを左右独立で合計2基搭載し、USB入力は最大384kHz/32bit PCM、5.6MHz DSDに対応。またS/PDIF入力では最大192kHz/24bit PCMまでの対応となる。
また、カスタム設計の64bit倍精度固定小数点演算用DSPを内蔵しており、すべての信号をデジタル領域で処理する方式を採る。そのため、入力されたアナログ信号は、マルチチャンネル対応の384kHz/32bit AKMプレミアムADCにより、DSP処理の前段階でデジタル信号に変換される。
付属のUSBケーブルにも配慮。Straight Wireと共同開発した、伝送用導体に銀メッキ高純度銅を使用し、金メッキ処理高品質端子を採用した特別仕様のケーブルを採用している。入力端子にはUSB-B、S/PDIF、RCA、3.5mmステレオミニを備える。
カスタム設計されたユニバーサル対応の電源部は、オーディオ帯域幅内で低ノイズになるよう最適化された固定周波数発振タイプの設計を採用。DC電源コネクターにはロック式タイプを使用し、アンプユニット内のすべてのオーディオ回路には、超低ノイズ・高電圧リニアレギュレーター回路の2段階で電力を供給する。外形寸法は190W×58H×290Dmm、質量は2.45kg。
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