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公開日 2018/09/26 15:00

ヤマハ、新旗艦ターンテーブル「GT-5000」を2019年4月に発売。バランス出力端子搭載、60万円

36年振りの“GT思想”を掲げたモデル
PHILE WEB編集部/小澤貴信
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ヤマハは、ベルトドライブ方式のアナログターンテーブル「GT-5000」を、2019年4月より発売することを発表した。価格は600,000円(税抜)。トーンアームが付属し、カートリッジは別売となる。

「GT-5000」

なお、GT-5000のピアノフィニッシュ仕様モデルも会場に展示された。こちらは発売は決定しているが、価格や発売時期については追ってアナウンスされる。

GT-5000のピアノ仕上げモデルもラインナップ予定

音の本質を基本に忠実に追求するという独自の “GT思想”(Gigantic & Tremendous)に基づいて開発されたというベルトドライブ方式のアナログターンテーブル。本機はこれまでも各種イベントにて先行して展示やデモが行われてきたが(関連記事)、今回正式な発売日と価格がついに決定したかたちだ。なお、“GT 思想” を掲げたターンテーブルは「GT-2000」シリーズ以来、およそ36年振りの登場となる。

トーンアーム部

背面部。XLRバランス出力も搭載

すでに度々試作機の披露が行われているにも関わらず発売日が'19年4月とかなり先になる理由については「フラグシップモデルとして妥協のない音の追い込みを現在行っているため」とのこと。また、GT-5000を構成するパーツのほとんどが金型によるものではないため精度や品質を追求するのに相当の手間がかかることも理由とのことだ。

プリ/パワーと共に5000シリーズが発表された

本日、ヤマハは製品発表会を開催。本機と共に、旗艦プリアンプ「C-5000」(関連ニュース)と旗艦パワーアンプ「M-5000」(関連ニュース)を発表した。

これら3機種に、2016年に発売された旗艦スピーカー「NS-5000」(関連ニュース)を加えて、「5000シリーズ」として旗艦ラインナップが完成。プレーヤーからスピーカーという“音の入り口から出口まで”が同一シリーズで揃うのは、ヤマハのHi-Fiオーディオ製品として初となる。

また、GT-5000はバランス出力端子も搭載。フォノ入力も含む全回路をフルバランス構成としたプリアンプ C-5000、やはりフルバランス回路を備えたM-5000と組み合わせて、カートリッジからアンプ出力までをフルバランス伝送することができる。


GT思想に立ち返りつつ最新技術を盛り込む

発表会では、5000シリーズの製品企画を手がけたヤマハ(株)熊澤進氏がGT-5000の詳細について説明を行った。また、設計を行った阿部紀之氏も登壇し、「GTシリーズではレコード盤の情報を素直に取り出すことを目指して、従来のGT-2000とは異なる思想も取り入れている」と述べた。

ヤマハ 熊澤氏

ヤマハ 阿部氏

GT-5000は、「GT=Gigantic & Tremendous(途方もなく巨大な)」というコンセプトの通り、音質的に必要な部分の巨大重量化と、不必要な部分の大胆な省略を設計の基本としており、546W×120H×395Dmm、質量14.3kgの巨大な木製キャビネットを採用した。製品の総質量は26.5kgとなる。

木製キャビネットだけで質量は14.3kgにも及ぶ

熊澤氏はGT-5000で最も重要視したポイントとして「木製」であることと「重量/厚さ」の確保を挙げた。この2点がGT思想の根本であり、先人から引き継いだこれらをベースとした上で、現代の技術を盛り込んでいったという。

ベース部には、高密度パーティクルボードを4層積層で圧着したGTシリーズ伝統の木質系素材を採用。圧着した積層ブロックからターンテーブルなどを収める部分を削り出してベース部としている。これにより、大径プラッターの回転で発生する0.92t・cm2というイナーシャを受け止める質量と剛性を実現した。

また、木質系素材特有の均質さと素早い音の減衰特性を音作りに活かしたとしているとのこと。この点について熊澤氏は「微細な音溝をレコード針で正確にトレースするためには、ボディには重量がありなおかつ内部損失が大きいことが重要だ。無垢材は独特の響きがあるためターンテーブルには向いておらず、適度な内部損失も備えたパーティクルの積層材を採用した」と説明していた。こうしたアプローチは、ヤマハは長年の楽器やスピーカー製造を通して得た、木材への深い知見やノウハウに基づいているという。


なお、GT-5000のベース部は、旗艦スピーカー NS-5000と同様の技術によって木材加工が行われているという。

またベース底面の脚部には、独自の制振ユニットを採用したインシュレーター「Wind Bell」を手がける特許機器(株)と共同開発した新型特製レッグを採用。振動遮断性能はスパイク式と比べて-30〜40dB程低く、さらには特殊3次元バネ構造を採用することで高音域の最適な減衰特性が得られ、低域についても7Hzという低い水平方向共振周波数を得られる。これにより自然な音色と豊かな響きを実現したという。

特許機器(株)と共同開発した新型特製レッグを採用


音抜けを最重要視してベルトドライブ方式を採用

プラッターは直径143mm/2.0kgの真鍮削り出しインナーターンテーブルと、直径350mm/5.2kgのアルミ削り出しメインターンテーブルを重ねた二重構造としている。大径・重量級とすることで回転を安定させて電気的フィードバックを駆動系から排除し、さらには異種素材組み合わせによって素材固有の振動をキャンセルすることで、抜けの良い開放的なサウンドを目指したという。

異素材による2重構造の重量級プラッターを採用

このプラッターは、クォーツ制御によって生成される正確な正弦波を用いた24極2相・ACシンクロナスモーターにより、ベルトドライブ方式で駆動される。

往年のGTシリーズ・ターンテーブルは、ダイレクトドライブ方式を採用していたが、GT-5000についてはベルトドライブ方式を採用した。熊澤氏はベルトドライブ方式を選んだ点についても説明。

GT思想を追求した結果としてベルトドライブ方式を採用

ベルトドライブとダイレクトドライブの回転速度/時間を比較した図

そもそもGTコンセプトの元で重量級のベースやプラッターを採用するのは、音の抜けを悪くする電気的なフィードバック制御を可能な限り少なくするために慣性重量による安定した回転を得ることが目的だったという。

しかしダイレクトドライブ方式においては原理的に、コギングを回避するために電気的なフィードバック制御を行うことになるため、表面的には回転が安定するものの、自然界にない動きが発生。これが音抜けの悪さに繋がるとのこと。一方でベルトドライブは、ベルトにより適度にコギングが吸収され長い周期の変動になり、さらにACモーターによって滑らかな回転が確保できるという。

GT-5000においては、むしろ高精度に制御されたシンクロナスモーターを用いる方がGTコンセプトの本質である音抜けの良さ、アナログの魅力が引き出せるとして、ベルトドライブ方式を採用したのだという。

ショートタイムのピュアストレート型アームを搭載

トーンアームには、ショートタイプのピュアストレート型アームを採用した。アームパイプ部はテーパードカーボンパイプ(外側)と銅メッキアルミパイプ(内側)を組み合わせた2重構造とし、それぞれの素材の特性を活かして高剛性、低共振、高ノイズシールドを実現した。さらに音声配線には、特殊な鍛造製法を用いて伝送性能を高めた銅導体PC-Triple Cを採用している。

トーンアーム&ヘッドシェル部

トーンアームの可動部

トーンアームをショートタイプのピュアストレート型とした理由は「トラッキングにおける追従性の高さ」を追求したためとのこと。ストレート型は力学的バランスにも優れており、1直線なので剛性を高めつつ軽量化を図ることもより容易と熊澤氏は説明する。

ストレート型アームについては、S字型アームに比べてトラッキングエラーが大きいという不利な要素もある。この点について熊澤氏は「トラッキングエラーによるL/Rの位相差と歪みがいずれも音質に影響を与える。しかし、位相差はセッティングによる誤差の範囲であり、歪みもレコード固有の歪みでマスキングされる程度の微小なものだ。それならば、トラッキングエラー対策にこだわるくらいなら、GTコンセプトに沿って開放感や低域の再現を重視したいとストレート型アームを採用した」と述べた。

ストレート型の問題とされるトラッキングエラーの影響は小さいと熊澤氏

出力端子にはRCAアンバランスに加え、XLRバランスを搭載。カートリッジの出力をバランスのまま伝送することを可能とした。

キャビネットの外装は樺天然木黒色塗装で仕上げられ、プラッター外周のストロボスコープをなくし、電源オン/オフと回転/停止、回転数切り替えの3つの真円ボタンを天面に備えたGTシリーズらしいデザインとしている。メインプラッターの右手前側の円柱状の突起はフィンガーレストとなっており、±1.5%の範囲で回転数を微調整できるピッチコントロールノブを内蔵している。

製品には、本体裏面の専用端子に接続して使用するストロボライトとストロボシートを付属。また専用ダストカバーが別売で発売予定となっている。

消費電力は15W。外形寸法は546W×221H×441Dmm(脚部・突起物含む)、質量は26.5kg。

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