公開日 2018/09/26 15:00
ヤマハ、フラグシップ・プリアンプ「C-5000」国内発表。90万円で12月上旬発売
ブックマッチ・コンストラクションなど高音質化技術を投入
ヤマハは、IFA2018で海外発表していたフラグシップセパレートアンプ「C-5000」と「M-5000」の国内市場導入を発表。各90万円(税抜)で12月上旬に発売する。カラーはいずれもシルバーとブラックの2色を用意する。本稿ではプリアンプ「C-5000」についてレポートする。
なお、「M-5000」についてはこちらの記事、同時発表された旗艦ターンテーブル「GT-5000」についてはこちらの記事で紹介している。
同社ではC-5000/M-5000について「当社がこれまで蓄積してきた独自オーディオ技術の集大成となるフラグシップHiFiセパレートアンプ」と紹介。フォノ入力を含む全段について、独自のフローティング&バランス方式によるディスクリート構成・全段フルバランス伝送を実現する。
さらにオーディオ回路や電源レギュレーターをL ch/R chごとにワンボード化した上で、2枚の基板を背中合わせに配置して信号経路を最短化する「ブックマッチ・コンストラクション」を採用。低インピーダンス化も徹底して、ノイズと伝送ロスの排除を追求した。
MM/MC対応のフォノ入力もバランス入力対応としたことで、GT-5000との組み合わせにおいてアナログレコード再生のフルバランス伝送を実現。パワーアンプ M-5000も合わせて、5000シリーズで再生システム全段を、よりノイズの影響が少ないバランス伝送とすることが可能となる。
ヤマハは本日、上述の3機種について発表会を開催。C-5000の詳細に加え、フラグシップとなる「5000シリーズ」のコンセプトについても説明が行われた。
■音楽的な低域、響きを表現する音場感を追求
発表会の冒頭では、(株)ヤマハミュージックジャパンのAV・流通営業部部長 野口直樹氏が「Hi-Fiオーディオの“ヤマハの復活”の歩み」として、5000シリーズに至る同社Hi-Fiコンポーネントの流れを改めて紹介した。2006年のHi-Fiスピーカー「Soavo-1」、2007年のCD/プリメイン「CD-S2000/A-S2000」によるHi-Fiコンポーネントへの“再参入”を起点として、2013年には「CD-S3000/A-S3000」などでHi-Fi強化へ舵を切った。2016年にはフラグシップとして5000シリーズのスピーカー「NS-5000」を発売。今回、5000シリーズ3機種追加によって、5000シリーズの入り口から出口までが出そろった。
5000シリーズの製品企画を担当した熊澤 進氏は、5000シリーズに共通するサウンドコンセプトについてまず説明。ヤマハのHi-Fiコンポーネントは「抜けの良い音の開放感」「音楽のエモーショナルさ(特に人の声)」「演奏者のタイム感、グルーブ感(休符・余韻の表現)」の3点を根底とした音作りを行っているとのこと。加えて5000シリーズはフラグシップとして、「響きを表現する音場感」「音楽的な低域に支えられた音像感」を追求されたという。
特にC-5000については、後者の根本を為すという「音楽的な低音」を開発の中心に据えて、部品選定や回路検討を行ってきたと音質設計を担当した森井太郎氏は述べた。また、音楽的な低音とは「芯があって音程感があり、抜けの良い低音が理想的」とも語っていた。
設計を担当した関塚恭好氏は「音楽に没頭できる音質を目指して、過去に例を見ないくらい時間をかけて音質調整や検証を行った」と開発時をふり返った。
上述のような音楽的な低音を実現するために、C-5000(およびM-5000)では低インピーダンス化やメカニカルアースを追求。結果として、以下のような様々なアプローチが導入された。
■「ブックマッチ構造」で信号経路最短化/低インピーダンス化を追求
「C-5000」では、全てのオーディオ回路とそのグラウンドライン、各段へ給電を行うローカル定電流型電源レギュレーターをL/Rごとに1枚の大型基板に配置(片チャンネルあたり1枚)。このL/Rのオーディオ基板を背中合わせに重ねて上下に配置した「ブックマッチ・コンストラクション」を採用する(本の両開きのイメージで2枚の基板が配置されているのでブックマッチなのだそうだ)。この構成は、バイオリンやギターの構造からヒントを得ているとのこと。
この構造により、左右対称系のオーディオ基板をプリントパターン面が向き合うように配置でき、信号の流れを同一方向に揃え、信号および電源経路の「究極的な純化と最短化」が実現できたとする。また、グランドループの最短化とそれに伴うノイズの排除、低インピーダンス化にもこの構造が寄与する。
1枚の大型基板に各回路や電源を配置することで理想的な最短経路を実現できる一方で、基板の大型化によって基板が振動等で「鳴く」という問題が起こりうる。これを防ぐために、背中合わせに配置された基板の間に梁のように金属製のバーを配置。さらに上下からこのバーに向かって基板をネジ止めして締め付けることで、基板の鳴きを排除したという。
電源整流回路についても、左右独立基板を上下二層に配置。これによって給電効率を最大限に高めているという。こうした構造により、チャンネル間の音質差や相互干渉を限りなくゼロに近づけるとのことで、「録音現場の空気までも感じられるほどの生々しい音場感と開放感、正確無比な音像定位を再現する」としている。
電源トランスもLch/Rchで別々に用意。この2つの電源トランスの間に上下2層(上段:左チャンネル用、下段:右チャンネル用)の電源整流回路を置き、各チャンネルのオーディオ基板上のローカル電源レギュレーターへ最短距離で給電する独自のシャーシレイアウトを採用。これによって理想的な左右独立・左右等長給電を実現したとする。
低インピーダンス設計を追求したことは本機の大きな特徴。なお、メインレギュレーター〜ローカルレギュレーター間の各給電ラインには12AWG(3.5スケア)相当の太経ワイヤーと真鍮製ネジを使ったネジ止め配線を使用。筐体の大部分を占めるインナーシャーシに銅メッキを施すなどで電源系の低インピーダンス化を徹底している。
■フォノ回路を含む全段にフローティング&バランス方式を採用
オーディオ回路は全段フルバランス増幅で、ヤマハの特許技術であるフローティング&バランス方式を採用。これは反転回路を排除した独自のバランス回路によって、ノイズの混入源となるアースから“フローティング”して(切り離して)のバランス伝送を実現する技術だ。
C-5000では、MCヘッドアンプやフォノイコライザーを踏むオーディオ回路全段をフローティング&バランス方式でフルバランス化する。これにより、GT-5000とM-5000との組み合わせでは、カートリッジからスピーカー出力までの完全バランス伝送が可能となる。
さらに、フォノイコライザー、入力アンプ、出力バッファーアンプにはプリアンプ回路として初のフローティング&バランス方式を採用。グラウンドを巡るノイズの影響を受けないよう配慮している。
フォノ回路についてはインピーダンス切り替え機能も用意。300Ω/100Ω/30Ω/10Ωでの切り替えが行える。
電源トランスについては、磁束漏洩が少なくレギュレーションに優れるという銅メッキケースに大容量トロイダル電源トランスを封入して左右独立で搭載。容量は25VA×2で、ワイヤーはネジ止め仕様として低インピーダンス化を図っている。さらに、各トランス底面とインナーシャーシの間には3mm厚の真鍮製ベースプレートも挟み込むなど、入念な音質チューニングをおこなっているという。
筐体は9mm厚のアルミ無垢フロントパネルと、6mm厚のアルミ無垢トップパネル、ピアノフィニッシュのサイドウッドを突き合わせた外観デザインによって、「ヤマハらしい清楚さのなかにフラグシップモデルならではの風格を漂わせ、強度や剛性など音響的にも十部な吟味を行っている」とした。
フット部は、スパイクを備えたインシュレーターとベースレッグを一体化させた特許申請中の独自構造・真鍮削り出しレッグを新採用。ピンポイント支持で筐体を支える。
ポインター(指標)を一体化したアルミ削り出しボリュームノブは軸受け部にボールベアリングを採用し、レバースイッチにも新規構造を導入するなどし、フラグシップにふさわしい操作性も追求したという。
入力はフォノ×1、バランスXLRフォノ×1、XLRバランス×2、RCAアンバランス×4、EXT.IN(XLR/RCA)の合計10系統を用意、出力はXLRバランス×1、RCAアンバランス×2、ライン出力×1の4系統を備える。その他ヘッドホン出力も搭載している。外形寸法は435W×142H×451Dmm、質量は19.1kg。
なお、「M-5000」についてはこちらの記事、同時発表された旗艦ターンテーブル「GT-5000」についてはこちらの記事で紹介している。
同社ではC-5000/M-5000について「当社がこれまで蓄積してきた独自オーディオ技術の集大成となるフラグシップHiFiセパレートアンプ」と紹介。フォノ入力を含む全段について、独自のフローティング&バランス方式によるディスクリート構成・全段フルバランス伝送を実現する。
さらにオーディオ回路や電源レギュレーターをL ch/R chごとにワンボード化した上で、2枚の基板を背中合わせに配置して信号経路を最短化する「ブックマッチ・コンストラクション」を採用。低インピーダンス化も徹底して、ノイズと伝送ロスの排除を追求した。
MM/MC対応のフォノ入力もバランス入力対応としたことで、GT-5000との組み合わせにおいてアナログレコード再生のフルバランス伝送を実現。パワーアンプ M-5000も合わせて、5000シリーズで再生システム全段を、よりノイズの影響が少ないバランス伝送とすることが可能となる。
ヤマハは本日、上述の3機種について発表会を開催。C-5000の詳細に加え、フラグシップとなる「5000シリーズ」のコンセプトについても説明が行われた。
■音楽的な低域、響きを表現する音場感を追求
発表会の冒頭では、(株)ヤマハミュージックジャパンのAV・流通営業部部長 野口直樹氏が「Hi-Fiオーディオの“ヤマハの復活”の歩み」として、5000シリーズに至る同社Hi-Fiコンポーネントの流れを改めて紹介した。2006年のHi-Fiスピーカー「Soavo-1」、2007年のCD/プリメイン「CD-S2000/A-S2000」によるHi-Fiコンポーネントへの“再参入”を起点として、2013年には「CD-S3000/A-S3000」などでHi-Fi強化へ舵を切った。2016年にはフラグシップとして5000シリーズのスピーカー「NS-5000」を発売。今回、5000シリーズ3機種追加によって、5000シリーズの入り口から出口までが出そろった。
5000シリーズの製品企画を担当した熊澤 進氏は、5000シリーズに共通するサウンドコンセプトについてまず説明。ヤマハのHi-Fiコンポーネントは「抜けの良い音の開放感」「音楽のエモーショナルさ(特に人の声)」「演奏者のタイム感、グルーブ感(休符・余韻の表現)」の3点を根底とした音作りを行っているとのこと。加えて5000シリーズはフラグシップとして、「響きを表現する音場感」「音楽的な低域に支えられた音像感」を追求されたという。
特にC-5000については、後者の根本を為すという「音楽的な低音」を開発の中心に据えて、部品選定や回路検討を行ってきたと音質設計を担当した森井太郎氏は述べた。また、音楽的な低音とは「芯があって音程感があり、抜けの良い低音が理想的」とも語っていた。
設計を担当した関塚恭好氏は「音楽に没頭できる音質を目指して、過去に例を見ないくらい時間をかけて音質調整や検証を行った」と開発時をふり返った。
上述のような音楽的な低音を実現するために、C-5000(およびM-5000)では低インピーダンス化やメカニカルアースを追求。結果として、以下のような様々なアプローチが導入された。
■「ブックマッチ構造」で信号経路最短化/低インピーダンス化を追求
「C-5000」では、全てのオーディオ回路とそのグラウンドライン、各段へ給電を行うローカル定電流型電源レギュレーターをL/Rごとに1枚の大型基板に配置(片チャンネルあたり1枚)。このL/Rのオーディオ基板を背中合わせに重ねて上下に配置した「ブックマッチ・コンストラクション」を採用する(本の両開きのイメージで2枚の基板が配置されているのでブックマッチなのだそうだ)。この構成は、バイオリンやギターの構造からヒントを得ているとのこと。
この構造により、左右対称系のオーディオ基板をプリントパターン面が向き合うように配置でき、信号の流れを同一方向に揃え、信号および電源経路の「究極的な純化と最短化」が実現できたとする。また、グランドループの最短化とそれに伴うノイズの排除、低インピーダンス化にもこの構造が寄与する。
1枚の大型基板に各回路や電源を配置することで理想的な最短経路を実現できる一方で、基板の大型化によって基板が振動等で「鳴く」という問題が起こりうる。これを防ぐために、背中合わせに配置された基板の間に梁のように金属製のバーを配置。さらに上下からこのバーに向かって基板をネジ止めして締め付けることで、基板の鳴きを排除したという。
電源整流回路についても、左右独立基板を上下二層に配置。これによって給電効率を最大限に高めているという。こうした構造により、チャンネル間の音質差や相互干渉を限りなくゼロに近づけるとのことで、「録音現場の空気までも感じられるほどの生々しい音場感と開放感、正確無比な音像定位を再現する」としている。
電源トランスもLch/Rchで別々に用意。この2つの電源トランスの間に上下2層(上段:左チャンネル用、下段:右チャンネル用)の電源整流回路を置き、各チャンネルのオーディオ基板上のローカル電源レギュレーターへ最短距離で給電する独自のシャーシレイアウトを採用。これによって理想的な左右独立・左右等長給電を実現したとする。
低インピーダンス設計を追求したことは本機の大きな特徴。なお、メインレギュレーター〜ローカルレギュレーター間の各給電ラインには12AWG(3.5スケア)相当の太経ワイヤーと真鍮製ネジを使ったネジ止め配線を使用。筐体の大部分を占めるインナーシャーシに銅メッキを施すなどで電源系の低インピーダンス化を徹底している。
■フォノ回路を含む全段にフローティング&バランス方式を採用
オーディオ回路は全段フルバランス増幅で、ヤマハの特許技術であるフローティング&バランス方式を採用。これは反転回路を排除した独自のバランス回路によって、ノイズの混入源となるアースから“フローティング”して(切り離して)のバランス伝送を実現する技術だ。
C-5000では、MCヘッドアンプやフォノイコライザーを踏むオーディオ回路全段をフローティング&バランス方式でフルバランス化する。これにより、GT-5000とM-5000との組み合わせでは、カートリッジからスピーカー出力までの完全バランス伝送が可能となる。
さらに、フォノイコライザー、入力アンプ、出力バッファーアンプにはプリアンプ回路として初のフローティング&バランス方式を採用。グラウンドを巡るノイズの影響を受けないよう配慮している。
フォノ回路についてはインピーダンス切り替え機能も用意。300Ω/100Ω/30Ω/10Ωでの切り替えが行える。
電源トランスについては、磁束漏洩が少なくレギュレーションに優れるという銅メッキケースに大容量トロイダル電源トランスを封入して左右独立で搭載。容量は25VA×2で、ワイヤーはネジ止め仕様として低インピーダンス化を図っている。さらに、各トランス底面とインナーシャーシの間には3mm厚の真鍮製ベースプレートも挟み込むなど、入念な音質チューニングをおこなっているという。
筐体は9mm厚のアルミ無垢フロントパネルと、6mm厚のアルミ無垢トップパネル、ピアノフィニッシュのサイドウッドを突き合わせた外観デザインによって、「ヤマハらしい清楚さのなかにフラグシップモデルならではの風格を漂わせ、強度や剛性など音響的にも十部な吟味を行っている」とした。
フット部は、スパイクを備えたインシュレーターとベースレッグを一体化させた特許申請中の独自構造・真鍮削り出しレッグを新採用。ピンポイント支持で筐体を支える。
ポインター(指標)を一体化したアルミ削り出しボリュームノブは軸受け部にボールベアリングを採用し、レバースイッチにも新規構造を導入するなどし、フラグシップにふさわしい操作性も追求したという。
入力はフォノ×1、バランスXLRフォノ×1、XLRバランス×2、RCAアンバランス×4、EXT.IN(XLR/RCA)の合計10系統を用意、出力はXLRバランス×1、RCAアンバランス×2、ライン出力×1の4系統を備える。その他ヘッドホン出力も搭載している。外形寸法は435W×142H×451Dmm、質量は19.1kg。