公開日 2024/07/18 12:57
全国のカーオーディオ市場の火付け役。「第11回ヨーロピアンカーオーディオコンテスト」をレポート
過去最大の参加車両/エントリー数を実現
6月9日(日)、石川県のこまつドームにて、「第11回ヨーロピアンカーオーディオコンテスト」(通称:ユーロコン)が開催された。コロナ禍による中断を挟みながらも、歴史あるコンテストとして着実な発展を続けているこのコンテストの模様をレポートしよう。
参加者両数は過去最大の150台、エントリー数も過去最大規模に達するなど、現在のカーオーディオ市場を牽引する存在となっているユーロコン。ドーム球場のために天候の心配がなく、空調コントロールされた快適な空間で審査が行えるというのも特徴で、参加者にとっても北陸までドライブして、新鮮な海の幸に舌鼓を打てるのもお楽しみのひとつ。
記者もこまつドームを訪問したのは昨年のユーロコン以来1年ぶりとなるが、新たに屋根を白く塗り替えていたようで、ピカピカと輝くこまつドームに近づくだけでコンテストへの期待が高まってくる。
改めてカーオーディオコンテストについて解説すると、毎回課題曲が選定され、その曲を「運転席」に座って審査員が試聴、帯域バランスやタイムアラインメントなど10の項目で点数をつけ、その合計点が一番高かった車両が優勝となる。
ユーロコンの場合は、全国各地のカーオーディオショップがエントリーする「ディーラープロコース」と、ユーザーの車両がエントリーする「ユーザープロコース」(価格ごとにS/A/B/Cと4コースを用意)。それに「エキスパートクラス」として、ユーロコンの事務局であるカーオーディオの輸入商社5社(トライム、ジャンライン、佐藤商事、フェリースソニード、エムズライン)それぞれのコースが設けられている。
さらに、昨年10周年記念として新たに設けられた「アニソンコース」が大好評だったため、今年も継続。審査員は炭山アキラ氏が担当する。50台限定で募集したところ、あっという間にエントリーが埋まってしまったそうで(アニソン “単騎” エントリーもあったそう)、アニソン人気の高さもうかがえる。
「せっかく長時間車を運転して小松までくる以上、精一杯楽しみたい」、あるいは「多くの審査員のコメントを今後の音作りの参考にしたい」と、複数コースにエントリーする参加者も多い。
課題曲のひとつ、「メタバース・シンフォニー」は香港の映画音楽作曲家、エリオット・レオンによる現代の交響曲で、さまざまな楽器を操りながらSF的な壮大な世界観を提示している。弱音部から楽器の数が増え、音圧が増していくさまをどれだけ精緻に描けるかも大きな課題だ。
もうひとつのドリー・パートンは大ベテランのカントリー歌手で、最新アルバム『Rockstar』では数々の大物ロックミュージシャンと共演している。課題曲に選ばれたのはスティングと共演した「Every Breath You Take」。渋みのある声のニュアンスや、スティングとのハーモニー、バックミュージックとのバランス感などが重要な審査ポイントとなる。
エキスパートクラスの課題曲にはJUJUの「ダンシング・オールナイト」、久石譲&ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団から『魔女の宅急便』のテーマソングを選定。
アニソンクラスでは、押井守の映画『イノセンス』から「傀儡謡 陽炎は黄泉に待たむと」(この楽曲は炭山氏がアニソンコースを担当するならぜひ選びたい!と温めていた曲とのこと)と、TVアニメ『魔都精兵のスレイブ』から東日万凛のキャラソン「強くて弱くて愛しくて」。
いくつか注目の車両についてレポートしよう。まずはディーラープロから。各地のコンテストで連勝を続けているAV Kansaiは、今年も天王寺店と京都店の2台をエントリー。
天王寺店のデモカーでは、「メタバース・シンフォニー」の最初の鐘の音がダッシュボードのはるか遠くから聴こえて、3次元的な奥行き表現のうまさに驚かされる。最初は弱音からスタートして徐々に楽器が増えて音圧が上がっていくさまも、ダイナミックかつ躍動的に表現してくる。楽器同士の対話のような掛け合いも面白く、重厚なSF映画を鑑賞したあとのようなずっしりとした満足感。
一方の京都店は、ちょっと意外(?)なDYNAUDIOのスピーカーを配置。“意外” の理由は最新モデルではなく定番的なロングセラーモデルを使っていたことだ。アンプをいれても120万円程度と抑えめの価格だが、なかなかに意欲的なサウンドを聴かせてくれる。物語のダイナミズムを聴かせる表現力の高さは天王寺店とも共通だが、音がより面で迫ってくる印象でパワフルでマッシブ。
鳥取の専門店・ジパングは、国内に新規導入されたAccuton(アキュトン)の3ウェイユニットを組み込んだ新システムで審査に挑む。店長の道祖尾さんも「音のまとめ」にはなかなか苦戦した様子で、「これまで自分が作ってきたカーオーディオの音と全然違ったので、いままでの考えを一回全部捨てて、完全に新しい挑戦として取り組みました」とのこと。
アンプにはQUARTORIGO(クアトロリゴ)の限定アンプモデルにaune(アウネ)のデジタルプレーヤーと、いまの注目のカーオーディオシステムを盛り込んでいる。クラシックのステージ感の作り込みはやはり精緻で繊細。アキュトンのセラミック素材から多少硬質感のある音を想定していたのだが、この車ではウォームで柔らかなサウンドが引き出されていてほっと一息つく。
青森県・イングラフは疾走感のある “早い” 飛び出しが印象的。「今回はあえて凝ったことをせず、ピュアなステレオ再生を追求しました」とのことで、リアスピーカーなどを使わずにフロント5ウェイのユニットで構成。
音が早い、とはこのことを言うのか、と納得するほど前へ前へ音楽を駆動する鮮烈なエネルギー感が新鮮。店長の木村さんも、「今回はお客さんの車も含めた11台エントリーしています。(ハイコンやイングラフカップと違って)ユーロコンは純粋に参加者なので、全国のカーオーディオファンといろいろな情報交換が楽しみです!」と笑顔を見せる。
大阪のカーオーディオクラブも、「メタバース・シンフォニー」の物語性を見事に引き出していた車のひとつ。メタバースの物語性のある展開を、どのようにオーディオとして聴かせるのかという新鮮な楽しさに溢れている。トップクラスのクルマには、帯域バランスなど基礎体力はきちんと確保したうえで、さらにその “一歩先” をゆく提案がいまのカーオーディオの最先端なのだと改めて確認。
一関のカーオーディオショップ・サウンドフリークス。新たにホームスピーカーとしてTADの3ウェイシステム「TAD-GE1」をお店に導入したそうで、「今回の課題曲をGE1で何百回と聴き込み、ステレオ再生イメージを頭に叩き込んだ上で今回のコンテストに臨みました」と気合たっぷり。5ウェイスピーカーの使いこなし、位相やサウンドステージを精緻に練り上げるさまや、丁寧な低域の質感表現はさすがフリークスの強みである。
注目のユーザー車両についてもレポートしよう。イングラフからエントリーの白戸さん。愛車はトヨタ・ランドクルーザープラド、チューニングの目的はズバリ「(PROコースの審査員である)山之内先生の高得点を狙えることを考えて作りました」と気合十分。ダッシュボード上に展開するステージング、良好な帯域バランスと自然な低域表現は何よりも魅力。「カーオーディオの目的はコンテストが全てではないですが、自分の好きな音と高得点を狙える音のバランス考えつつ、音を仕上げていくのは面白いですね」とコンテストにかける想いを語ってくれた。
今年でカーオーディオ歴4年目という宮崎さん。ジパングからのエントリーとなる。コロナ禍の中で時間ができたので、カーオーディオを始めたらすっかり夢中になってしまったと笑みをこぼす。昨年のハイエンドカーオーディオコンテストからコンテストへの出場を始め、ユーロコンには今回初参戦。「Z-Studioのスピーカーの音色感を大切にしつつ音質を追い込みました」とのことで、オーケストラのしなやかで上質な手触りの音色感にはハッと息を呑む。
広島県ケーサウンドからエントリーの沖野さん。自作PCを車に持ち込み、ユニットを収める箱などもすべて自作で手掛けるこだわりのカーオーディオファンだ。「スピーカーはBLAMを使っていますが、新たにスコーカーも追加して、S/Nや分解能などをさらに追求できたかなと思っています。いまのプリウスでのコンテスト参加は今回が最後で、次の車への買い替えを考えていますが、このBLAMのスピーカーは次の車にも持って行きたいと考えています」とのこと。アニソンコースの課題曲であるアニメ映画『イノセンス』から「傀儡謡 陽炎は黄泉に待たむと」では、ドラムの強烈な存在感が楽曲を底支えしてくれていることが改めてよく見えて面白い。
AV Kansaiからエントリーの近藤さんもコンテスト常連のひとり。パワフルでマッシブなサウンドをいつも聴かせてくれる近藤さんだが、今回も夜の街を思わせるエロティックなJUJUのヴォーカル、「メタバース・シンフォニー」のダイナミズム、広い青空をイメージさせるような『魔女の宅急便』のテーマソングと、方向性の違うさまざまな楽曲をそれぞれに “調理” し仕上げているのはなかなかに魅力的。カーオーディオの可能性の広がりをまたひとつ感じさせてくれた。
カーオーディオクラブからエントリーの江口藍里さんも、4月に岩手で開催されたイーストジャパンコンテスト(イーコン)に続いての参戦。「イーコンでいただいた審査員の方々のコメントを参考にしながら追い込みました。でも、前に進んだと思ったらまた戻ったりです」と悩み顔。だが、例えば「メタバース・シンフォニー」ではダイナミズムと余裕感を感じられて、その悩みも含めてカーオーディオを全力で楽しんでいることも伝わってくる。
16時からは表彰式。それぞれのコースごとに上位10台(エントリー数の少ないコースは上位8台/6台の場合も)のエントリーナンバーと名前が読み上げられ、審査員から表彰状もしくはトロフィーが贈られる。1年間の成果をしっかり残せた参加者もいる一方で、残念ながら涙を飲んだエントラントも。コンテストの明暗が分かれるところだ。
ディーラープロコースでは、AV Kansaiが首位に返り咲き。1位・2位を独占し圧倒的な強さを今年も見せつけた。3位にはカーオーディオクラブ(大阪)、4位にはイングラフ(青森)がランクイン。ユーザープロコースでは、イングラフの根本さんが優勝をさらい、2位はAV Kansaiの竹松さん、3位は広島のM.E.I.からエントリーの堀田さんと続く。関西圏と東北が強いのは変わらずだが、カーオーディオのクオリティを追求する情熱は、全国津々浦々に広がっていることを改めて感じさせてくれた。
今回審査員として初参加の飯田さんは、「言語化することが難しい音の世界だからこそ、理屈を超えた感動を与えてくれるということ改めて感じられました」と審査員としての喜びを言葉にする。飯田さんが審査を行ったエムズラインコースも僅差の熾烈な戦いだったというが、「低音の処理能力」が点差に大きく影響した、と改めて振り返る。クラシックとポップス、両方の楽曲で質を高めて欲しいと呼びかけた。
アニソンコースを担当した炭山氏も、「正攻法で追い込んだアキュレートなサウンドと、アニソンを歌うキャラクターをしっかり立てるために作り込んだ楽曲と、どちらを高得点にするか非常に迷いました」としながらも、「結果的にはその両方を兼ね備える情熱を持った人が上位に来ました」と講評を述べる。続けて「空間表現と過渡応答特性についてはまだまだ質を高められる要素があるでしょう」とさらなるクオリティアップへのヒントを提示する。
山之内氏は、着実にカーオーディオ市場全体がレベルアップしている点に触れながらも、「『メタバース・シンフォニー』は最初小さな音で始まり、だんだん大きくなっていくので、最初に音量設定を上げすぎてしまうと、音圧が上がりきったときに飽和したり歪んでしまったりすることがありました」と今回の課題曲ならではの難しさについてコメント。「小さい音なりの音色感を確保して欲しい」と来年に向けての課題について言及した。
回を追うごとに参加車両・エントリー数ともに増え続けているユーロコン。ユーロコンを手本に、自分たちの手でより小規模なコンテストを企画しよう、という事例も増えており、まさに全国のカーオーディオ市場の火付け役として発展を続けている。より学びの深いカーオーディオコンテストとはどのようなものか、次のユーロコンにかけられる期待もますます高まってきていると言えるだろう。
参加者両数は過去最大の150台、エントリー数も過去最大規模に達するなど、現在のカーオーディオ市場を牽引する存在となっているユーロコン。ドーム球場のために天候の心配がなく、空調コントロールされた快適な空間で審査が行えるというのも特徴で、参加者にとっても北陸までドライブして、新鮮な海の幸に舌鼓を打てるのもお楽しみのひとつ。
記者もこまつドームを訪問したのは昨年のユーロコン以来1年ぶりとなるが、新たに屋根を白く塗り替えていたようで、ピカピカと輝くこまつドームに近づくだけでコンテストへの期待が高まってくる。
改めてカーオーディオコンテストについて解説すると、毎回課題曲が選定され、その曲を「運転席」に座って審査員が試聴、帯域バランスやタイムアラインメントなど10の項目で点数をつけ、その合計点が一番高かった車両が優勝となる。
ユーロコンの場合は、全国各地のカーオーディオショップがエントリーする「ディーラープロコース」と、ユーザーの車両がエントリーする「ユーザープロコース」(価格ごとにS/A/B/Cと4コースを用意)。それに「エキスパートクラス」として、ユーロコンの事務局であるカーオーディオの輸入商社5社(トライム、ジャンライン、佐藤商事、フェリースソニード、エムズライン)それぞれのコースが設けられている。
さらに、昨年10周年記念として新たに設けられた「アニソンコース」が大好評だったため、今年も継続。審査員は炭山アキラ氏が担当する。50台限定で募集したところ、あっという間にエントリーが埋まってしまったそうで(アニソン “単騎” エントリーもあったそう)、アニソン人気の高さもうかがえる。
「せっかく長時間車を運転して小松までくる以上、精一杯楽しみたい」、あるいは「多くの審査員のコメントを今後の音作りの参考にしたい」と、複数コースにエントリーする参加者も多い。
課題曲のひとつ、「メタバース・シンフォニー」は香港の映画音楽作曲家、エリオット・レオンによる現代の交響曲で、さまざまな楽器を操りながらSF的な壮大な世界観を提示している。弱音部から楽器の数が増え、音圧が増していくさまをどれだけ精緻に描けるかも大きな課題だ。
もうひとつのドリー・パートンは大ベテランのカントリー歌手で、最新アルバム『Rockstar』では数々の大物ロックミュージシャンと共演している。課題曲に選ばれたのはスティングと共演した「Every Breath You Take」。渋みのある声のニュアンスや、スティングとのハーモニー、バックミュージックとのバランス感などが重要な審査ポイントとなる。
エキスパートクラスの課題曲にはJUJUの「ダンシング・オールナイト」、久石譲&ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団から『魔女の宅急便』のテーマソングを選定。
アニソンクラスでは、押井守の映画『イノセンス』から「傀儡謡 陽炎は黄泉に待たむと」(この楽曲は炭山氏がアニソンコースを担当するならぜひ選びたい!と温めていた曲とのこと)と、TVアニメ『魔都精兵のスレイブ』から東日万凛のキャラソン「強くて弱くて愛しくて」。
いくつか注目の車両についてレポートしよう。まずはディーラープロから。各地のコンテストで連勝を続けているAV Kansaiは、今年も天王寺店と京都店の2台をエントリー。
天王寺店のデモカーでは、「メタバース・シンフォニー」の最初の鐘の音がダッシュボードのはるか遠くから聴こえて、3次元的な奥行き表現のうまさに驚かされる。最初は弱音からスタートして徐々に楽器が増えて音圧が上がっていくさまも、ダイナミックかつ躍動的に表現してくる。楽器同士の対話のような掛け合いも面白く、重厚なSF映画を鑑賞したあとのようなずっしりとした満足感。
一方の京都店は、ちょっと意外(?)なDYNAUDIOのスピーカーを配置。“意外” の理由は最新モデルではなく定番的なロングセラーモデルを使っていたことだ。アンプをいれても120万円程度と抑えめの価格だが、なかなかに意欲的なサウンドを聴かせてくれる。物語のダイナミズムを聴かせる表現力の高さは天王寺店とも共通だが、音がより面で迫ってくる印象でパワフルでマッシブ。
鳥取の専門店・ジパングは、国内に新規導入されたAccuton(アキュトン)の3ウェイユニットを組み込んだ新システムで審査に挑む。店長の道祖尾さんも「音のまとめ」にはなかなか苦戦した様子で、「これまで自分が作ってきたカーオーディオの音と全然違ったので、いままでの考えを一回全部捨てて、完全に新しい挑戦として取り組みました」とのこと。
アンプにはQUARTORIGO(クアトロリゴ)の限定アンプモデルにaune(アウネ)のデジタルプレーヤーと、いまの注目のカーオーディオシステムを盛り込んでいる。クラシックのステージ感の作り込みはやはり精緻で繊細。アキュトンのセラミック素材から多少硬質感のある音を想定していたのだが、この車ではウォームで柔らかなサウンドが引き出されていてほっと一息つく。
青森県・イングラフは疾走感のある “早い” 飛び出しが印象的。「今回はあえて凝ったことをせず、ピュアなステレオ再生を追求しました」とのことで、リアスピーカーなどを使わずにフロント5ウェイのユニットで構成。
音が早い、とはこのことを言うのか、と納得するほど前へ前へ音楽を駆動する鮮烈なエネルギー感が新鮮。店長の木村さんも、「今回はお客さんの車も含めた11台エントリーしています。(ハイコンやイングラフカップと違って)ユーロコンは純粋に参加者なので、全国のカーオーディオファンといろいろな情報交換が楽しみです!」と笑顔を見せる。
大阪のカーオーディオクラブも、「メタバース・シンフォニー」の物語性を見事に引き出していた車のひとつ。メタバースの物語性のある展開を、どのようにオーディオとして聴かせるのかという新鮮な楽しさに溢れている。トップクラスのクルマには、帯域バランスなど基礎体力はきちんと確保したうえで、さらにその “一歩先” をゆく提案がいまのカーオーディオの最先端なのだと改めて確認。
一関のカーオーディオショップ・サウンドフリークス。新たにホームスピーカーとしてTADの3ウェイシステム「TAD-GE1」をお店に導入したそうで、「今回の課題曲をGE1で何百回と聴き込み、ステレオ再生イメージを頭に叩き込んだ上で今回のコンテストに臨みました」と気合たっぷり。5ウェイスピーカーの使いこなし、位相やサウンドステージを精緻に練り上げるさまや、丁寧な低域の質感表現はさすがフリークスの強みである。
注目のユーザー車両についてもレポートしよう。イングラフからエントリーの白戸さん。愛車はトヨタ・ランドクルーザープラド、チューニングの目的はズバリ「(PROコースの審査員である)山之内先生の高得点を狙えることを考えて作りました」と気合十分。ダッシュボード上に展開するステージング、良好な帯域バランスと自然な低域表現は何よりも魅力。「カーオーディオの目的はコンテストが全てではないですが、自分の好きな音と高得点を狙える音のバランス考えつつ、音を仕上げていくのは面白いですね」とコンテストにかける想いを語ってくれた。
今年でカーオーディオ歴4年目という宮崎さん。ジパングからのエントリーとなる。コロナ禍の中で時間ができたので、カーオーディオを始めたらすっかり夢中になってしまったと笑みをこぼす。昨年のハイエンドカーオーディオコンテストからコンテストへの出場を始め、ユーロコンには今回初参戦。「Z-Studioのスピーカーの音色感を大切にしつつ音質を追い込みました」とのことで、オーケストラのしなやかで上質な手触りの音色感にはハッと息を呑む。
広島県ケーサウンドからエントリーの沖野さん。自作PCを車に持ち込み、ユニットを収める箱などもすべて自作で手掛けるこだわりのカーオーディオファンだ。「スピーカーはBLAMを使っていますが、新たにスコーカーも追加して、S/Nや分解能などをさらに追求できたかなと思っています。いまのプリウスでのコンテスト参加は今回が最後で、次の車への買い替えを考えていますが、このBLAMのスピーカーは次の車にも持って行きたいと考えています」とのこと。アニソンコースの課題曲であるアニメ映画『イノセンス』から「傀儡謡 陽炎は黄泉に待たむと」では、ドラムの強烈な存在感が楽曲を底支えしてくれていることが改めてよく見えて面白い。
AV Kansaiからエントリーの近藤さんもコンテスト常連のひとり。パワフルでマッシブなサウンドをいつも聴かせてくれる近藤さんだが、今回も夜の街を思わせるエロティックなJUJUのヴォーカル、「メタバース・シンフォニー」のダイナミズム、広い青空をイメージさせるような『魔女の宅急便』のテーマソングと、方向性の違うさまざまな楽曲をそれぞれに “調理” し仕上げているのはなかなかに魅力的。カーオーディオの可能性の広がりをまたひとつ感じさせてくれた。
カーオーディオクラブからエントリーの江口藍里さんも、4月に岩手で開催されたイーストジャパンコンテスト(イーコン)に続いての参戦。「イーコンでいただいた審査員の方々のコメントを参考にしながら追い込みました。でも、前に進んだと思ったらまた戻ったりです」と悩み顔。だが、例えば「メタバース・シンフォニー」ではダイナミズムと余裕感を感じられて、その悩みも含めてカーオーディオを全力で楽しんでいることも伝わってくる。
16時からは表彰式。それぞれのコースごとに上位10台(エントリー数の少ないコースは上位8台/6台の場合も)のエントリーナンバーと名前が読み上げられ、審査員から表彰状もしくはトロフィーが贈られる。1年間の成果をしっかり残せた参加者もいる一方で、残念ながら涙を飲んだエントラントも。コンテストの明暗が分かれるところだ。
ディーラープロコースでは、AV Kansaiが首位に返り咲き。1位・2位を独占し圧倒的な強さを今年も見せつけた。3位にはカーオーディオクラブ(大阪)、4位にはイングラフ(青森)がランクイン。ユーザープロコースでは、イングラフの根本さんが優勝をさらい、2位はAV Kansaiの竹松さん、3位は広島のM.E.I.からエントリーの堀田さんと続く。関西圏と東北が強いのは変わらずだが、カーオーディオのクオリティを追求する情熱は、全国津々浦々に広がっていることを改めて感じさせてくれた。
今回審査員として初参加の飯田さんは、「言語化することが難しい音の世界だからこそ、理屈を超えた感動を与えてくれるということ改めて感じられました」と審査員としての喜びを言葉にする。飯田さんが審査を行ったエムズラインコースも僅差の熾烈な戦いだったというが、「低音の処理能力」が点差に大きく影響した、と改めて振り返る。クラシックとポップス、両方の楽曲で質を高めて欲しいと呼びかけた。
アニソンコースを担当した炭山氏も、「正攻法で追い込んだアキュレートなサウンドと、アニソンを歌うキャラクターをしっかり立てるために作り込んだ楽曲と、どちらを高得点にするか非常に迷いました」としながらも、「結果的にはその両方を兼ね備える情熱を持った人が上位に来ました」と講評を述べる。続けて「空間表現と過渡応答特性についてはまだまだ質を高められる要素があるでしょう」とさらなるクオリティアップへのヒントを提示する。
山之内氏は、着実にカーオーディオ市場全体がレベルアップしている点に触れながらも、「『メタバース・シンフォニー』は最初小さな音で始まり、だんだん大きくなっていくので、最初に音量設定を上げすぎてしまうと、音圧が上がりきったときに飽和したり歪んでしまったりすることがありました」と今回の課題曲ならではの難しさについてコメント。「小さい音なりの音色感を確保して欲しい」と来年に向けての課題について言及した。
回を追うごとに参加車両・エントリー数ともに増え続けているユーロコン。ユーロコンを手本に、自分たちの手でより小規模なコンテストを企画しよう、という事例も増えており、まさに全国のカーオーディオ市場の火付け役として発展を続けている。より学びの深いカーオーディオコンテストとはどのようなものか、次のユーロコンにかけられる期待もますます高まってきていると言えるだろう。