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公開日 2001/12/19 19:10
紅白歌合戦の5.1chサラウンド放送を一足先に体験!
<左>チーフディレクターを務める小林悟郎氏 <右>制作技術センター副部長の亀川 徹氏 |
まず、200インチ超のスクリーンに、11月に放映された香西かおりの歌謡コンサートの模様が映し出された。チャンネル配分はボーカル成分を際だたせたもので、残響音がほのかに感じられる程度。ただ、その控えめな演出によって、逆に会場の雰囲気がリアルに感じ取れた。
次に、8月に放映されたドリフターズのコントの模様をデモ。メンバーが動き回ると、それにあわせて声も左右に移動する。この演出は本番でも体験できるかもしれない。
最後に、ポップスではこうなる、という例をプッチモニの「ぴったりしたいX'mas」でデモ。怒声ともつかないファンの歓声が前面に押し出され、バックチャンネルの存在感が際だっていた。そんな中でもメンバーのボーカルがハッキリ聞き取れたことは特筆に値する。
NHKでは、今回のサラウンド化を、モノラルからステレオへの進化に匹敵する画期的な技術的革新だと捉えているようだ。実際、全国で行われているBSデジタルの体験キャンペーンでも5.1ch音声への反響は高いという。放送技術局 制作技術センターの亀川 徹氏は、「DVDの普及によりホームシアターがクローズアップされ、5.1ch対応機器を所有しているユーザーが次第に増えていることを考えると、BSデジタルでの5.1ch放映はとても意義深い。今後は歌番組だけでなく、ドラマやドキュメンタリーでも積極的にチャレンジしていく」と力強く語ってくれた。
また、同番組のチーフディレクターを務める小林悟郎氏は、「5.1chが可能だから5.1chで放送する、という姿勢ではいけない。『マルチチャンネルで放送する』ということの意味をしっかり考えた上で放送したい。単に残響音や観客の反応を伝えるだけではなく、会場の空気感やアーティストの実在感といったものを伝えたい」と語り、マルチチャンネルの実現によって、表現をより一層深化させる考えだ。
会場内には200本程度のマイクが設置されるというが、その数はステレオ収録時と変わらない。今回の収録について小林氏は、「技術的に難しいのは、ステレオと5.1chを同時にミキシングすること。5.1chがメインであれば、まず5.1chにミキシングし、そのあと自動的にステレオを生成することも可能だが、現段階では主流はステレオなので、こういう形になっている。また、5.1chではノイズ対策も今まで以上に厳しく行わなければならない。一カ所のノイズが全体に影響することもあるからだ」と説明。AAC5.1chの音質については「1年間やってきて確信を持って言えるが、かなり自信がある。ドルビーデジタルやDTSに肉薄しているのではないか」と語ってくれた。
また、ワールドカップの5.1ch放映については、現段階ではまだ未定だという。技術的なポイントは信号の伝送とのことで、高い信頼性が要求されるだけに、慎重に検討しているのだろう。5.1ch放映を行うかどうかは、春以降に決定される。
裏番組では「打倒紅白」を旗印にした『猪木祭』が放送され、視聴率を維持できるか注目される「紅白歌合戦」だが、こと画質と音質に限っては紅白に分がありそうだ。対応機器をお持ちの方は、ぜひ体験してみてほしい。(Phile-web編集部)