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公開日 2002/10/22 15:47

シャープと半導体エネルギー研究所、ガラス基盤上へのCPU形成に成功−Q&A紹介つき−

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<左>発表を行うシャープ(株)代表取締役副社長 技術開発統轄 三坂重雄氏 <右>ガラス基盤上に形成されたZ-80
●シャープ(株)と(株)半導体エネルギー研究所は、共同開発したCGシリコン技術により、世界で初めて、液晶用ガラス基盤上にCPUを形成することに成功した。

今回ガラス基盤に形成したのは、1976年にザイログ社が開発し、シャープも1977年に生産した8ビットCPU「Z80」。

本日東京都内にて同技術の発表会が開催され、実際にCPUを駆動するデモも見ることができた。

CGシリコン技術は、1998年に両社で共同開発した次世代の機能デバイス“システム液晶”の中核技術。結晶流界で原子レベルの連続性を持たせることにより、電子の移動スピードが、従来のアモルファスシリコンの約600倍、多結晶シリコンに比べても約3倍と、極めて高速になる。

このため、液晶制御回路や電源回路、入出力インターフェース回路、信号処理回路などのLSIを液晶ディスプレイと同一のガラス基盤上に形成することができ、実装面積や外付け部品を大幅に削減できる上、セット商品の小型化・軽量化にも寄与する。

今回、CPUのガラス基盤上への形成に成功したことにより、メモリ、画像のDAC回路などを同一ガラス基盤上に一体成形することが見込め、将来的にはシートコンピューターやシートテレビなど、様々な用途への応用が考えられる。

今回のCPUは3ミクロンルールで作られているが、同社では今後もさらなる集積化を進め、同技術を活かせるアプリケーションを提供していく考えだ。

以下、本発表会の席上で行われた質疑応答の質問と回答をご紹介する。

Q:以前、「2005年にシステム液晶で3,000億円の売上げを目指す」というアナウンスがあったが、今回の技術によってその規模は変わったか?
A:計画に変わりはない。

Q:「2005年頃に商品化」という話があったが、どんな商品を作るのか?
A:現在、液晶とCPUを組み合わせることで、どんな商品が作れるか検討しているところだ。製品を投入する時期の市場環境に合わせ、ユーザーにとって意味のあるソリューションを提供していきたい。ただ、実用的なアプリケーションを作るには、もっとCPUの速度を上げなければいけないと考えている。

Q:メモリーもガラス上に形成できるのか?
A:CPUにはI/Oやメモリーも集積されている。すでに可能であり、実現している。

Q:シートコンピューター、シートテレビはいつ頃実現するのか?
A:3年後にはガラス基盤上CPUのプロセスルールも0.8ミクロンに達する。2010年には相当なレベルのものが作れるのでは。その頃には従来のシリコン上CPUの集積化も格段に進んでいると思われるが、ガラス基盤上CPUで、シリコン上CPUの処理速度を追い越そうと考えているわけではない。あくまで、「ガラス上に色々なものを形成できる」という魅力を、シリコンにはないものとしてアピールしていきたい。

Q:初歩的な質問だが、どうしてガラス上にCPUを形成するのは難しいのか。
A:ガラスにはナトリウムが多く含まれている。このナトリウムは、LSIにとって非常にポイズナス(毒性の強い)なものだ。しかも、ガラスの中の分子は常に動いており、流動的である。このため、高音にするとすぐ溶けるという難点もある。このため、CPUをガラス基盤上に形成するのは、ドロドロの地盤の上にビルを建てるような、極めて難しい技術となる。

Q:本技術の知的所有権はどのような状況にあるのか。
A:特許は、シャープと半導体エネルギー研究所で共願したもの、シャープで単願したもの、半導体エネルギー研究所で単願したものと3通りに分かれる。全て合計すると1250件程度の特許を申請した。シャープとしてはこの技術を“オンリーワン”のものとして独占したいという思いもあるが、セカンドソースが必要だという声があれば、OEMなどを含めて検討したい。

Q:ガラスサイズが大きいと難しいとか、小さいと難しいとか、そのようなサイズによる制限はあるのか。
A:これから生産設備を整えていくところで、その設備の規模による。

Q:これからどんなCPUを載せていくのか? たとえばARMシリーズなどは?
A:意味あるアプリケーションを作るためには、どのくらいの処理速度が必要か検討していきたい。ARM7や9なども、もちろん候補に入るだろう。

Q:電子の移動スピードは理論的にはどこまで達する? ポリシリコンTFTでも500程度出ているようだが。
A:05年に、移動度400程度を量産レベルで実現したい。ポリシリコンの500は研究室レベルでの数値であり、我々も研究室ではもっと速度が出ている。

Q:CGシリコンが今後もポリシリコン液晶に対して優位性を保てると考えているか
A:ポリシリコンでは、結晶を変形させて移動度を高くしたり、様々な研究が進んでいるようだが、各結晶の方向性が揃っていないので、高集積な素子を実装するのは難しい。様々なデバイスを形成できる点において、CGシリコンに揺るぎない自信を持っている。

(Phile-web編集部)


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