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公開日 2003/09/04 18:45
<短期集中連載>お蕎麦屋さんでも見られる!「大地の芸術祭」ショートビデオフェスティヴァル大賞決定(3)
ショート・ビデオフェスティヴァル受賞作発表会場の十日町情報館。審査員の中原佑介氏から大賞を授与される揚氏。背後のスクリーンに映っているのは、受賞作。 |
「国際的な美術展でも、ビデオを使った作品が大変増えている。その中で、今回がこのトリエンナーレのビデオ・フェスティバルの第一回だったこともあって非常に多種多様な作品が集まった。あえて、それらを分類すると、1.ドキュメンタリー 2.ドラマ・ストーリー 3.アニメーション ということになる。そのそれぞれのタイプで、各様の作品が集まった。審査は困難で、大賞審査は、非常に接戦だった。」
審査員の中原氏や鈴木志郎康氏のコメントにもある通り、今回のビデオ・フェスティバルは、非常に多様な傾向の作品が集まっており、短くとも、内容の濃い、魅力的な作品を作ることができるショート・ビデオ制作の可能性を感じさせた。また、作品の評価においては、日本人を含むアジア系の審査員が選んだ作品は、どれも、どこかにユーモアを含むものであったが、その他の外国審査員の選んだ作品は、現代の現実世界が抱える暴力やディス・コミュニケーションの問題を直接表現している。このような評価の差も興味深い。
今回のトリエンナーレの目玉でもあるこのフェスティヴァル。各作品が日常の場でも上映されるという試みが新しい。実際にビデオ上映をしている場所の何箇所かに出かけてみた。松之山温泉の公共浴場、「鷹の湯」休息所には二度行ったが、一度はニュース、もう一度は、高校野球の番組に、チャンネルが変わっていた。近くのお蕎麦屋さんでは、ビデオの電源が入っていなかっので、リクエストして見せてもらった。お蕎麦を食べていたおじいさんが、作品の中で流れる天気予報や交通情報を、現実のニュースと勘違いして、「あれれっ」と驚くと、「これは、アートトリエンナーレの作品なんですよ。」とお店の人が説明して、周囲にあははと笑いがおこった。が、英語の字幕が入っている作品を続けて見ている人は、いないようだった。
松代駅につながる道の駅。たまたま上映されていた作品は、暗い雰囲気だ。死体がでてきたりして、これを日常生活の中で、いきなり見るのは、ちょっとしんどいかな、と思う。
日常の生活空間中に作品がある、ということは、日常の意識で作品を見ることができるということではないようだ。日常の意識で見ることができる映像は、テレビの多くのバラエティ番組等だが、このアート・トリエンナーレでアートとして名乗りをあげている作品は、見る人が、日常の意識と離れて、何かを考えようとか感じようという気持ちを持っていないと、最後まで見ることができずに、ただ断片を眼にしただけで、すれちがってしまう。
だからといって、高尚なアート作品だから心して見るように、という高飛車な態度で、アート作品を日常空間においているつもりでもないように思う。
松之山の地元の方が、「この土地の人が当たり前だと思っている自然や景色に、他の人が感動したという話をきいて、私たちも、ここを見直したりしているんですよ。」と話してくれた。
そんな風に、何か変?と思う映像が、見慣れた受像機に映っていることで、日常の場所が、ちょっと変わって見えるようになっているかもしれない。特に、アートって何?と思っている人や、いつもと違う人や場の出会いを求めている人には、日常で触れることができるアートイベントとして、作品の内容も高く、刺激的な試みだったと思う。
ビデオフェスティバル授賞式には、パルコキノシタ氏が小学生と協力して作った特撮映画や、川西町の愛好家たちが三味線を演奏した妻有民謡を題材に、参加作家が作った特別ビデオ作品の上映もおこなわれた。
受賞作を含むショートビデオフェスティバル公募通過全28作品は、大地の芸術祭の終了する9月7日まで、越後妻有地方の会場各所で、上映中。詳細は、下記、大地の芸術祭URLまで。
(山之内優子)