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公開日 2004/01/01 01:10
座談会「ホームシアターという『家庭環境』をめぐって」全長版(5)
ホームシアターが家族に愛され続いていく秘訣について語る
大橋 うちの場合は、リフォームしたときにいったん落城の危機がありましたけれども、何とかそれをしのいで、天吊りにして、いろいろなソフトを入れる機械を作っていくうちに家内もだいぶ軟化して、今では、私がマンションに帰っても1人で見ているんですね。自分が一緒に見たくない映画だと今はこそこそと寝るしかなかったり、あるいはご飯を食べていなくても、近くに行って済ませるとか。ですから、1本見た後の充実感というのを知ってしまうと、ホームシアターというのは、だれにでもアピールするようですね。ただ家族が使う場合、今はAV機器の煩雑さというか、使いにくさがあると思うんですけれども、栗山先生から見て、もうちょっとここはこうならないのかしらとか、こうなったらもっと自分たち、あるいは娘さんもどんどん使うのに、ということはありませんか? ホームシアターの操作面で。
栗山 ピッピとやったときに、遮ってしまうと、そこに無理ですよね。例えば、センサーが受けるところの前にちょっとしたコップがあったりするともう行かなくて、それをどかさなくてはいけないとか。あれが、何とかアームみたいな物が出てくるなり、物があっても電波が通り越してくれるとかなるといいなと、ずっと思っています。あのせいで行かないのかと思うと。特に人と電話をしていて、自分では絵だけ替えたいとか、音がうるさいから音だけ消したいとかいうときに、「ちょっと待って」と、(電話を)置いてから行きたくないことがたくさんあるんです。仕事先の電話だったりするので。何とかうまく電波が回ってそこに届いてくれるとか、技がないものかなというのを常日ごろ感じています。
大橋 インストーラーが全部やってくれれば違うんでしょうけれども、バラバラの機械を使っている限りは、なかなかそれは難しいですよね。それから、DVDをご覧になっていて、リージョンコードがじゃないですか。おそらくアメリカから買ってきたら見られなかったとか、どうしてこんなものがあるんだろうというようなものはありません?
栗山 ありますけれども、うちは逆に、外国で買ってきたものは、何でスースーこんなにうまく行っちゃうんだろうと思いますよ。違うおかげで、ロックがかからないで済むというのかな。日本のメーカーさんが、そこまでを予定していないんですよね。だから止めが効かなくて、これもうまく行っちゃったみたいなのが結構あって、夫と「儲かっちゃったね」とか言っているのが結構あります。
大橋 それは、たまたまソフトがそうだったんですかね。
栗山 たまたまソフトがそうだったんじゃないですかね。
新作、旧作、何でも知っているビデオのソムリエがいるといいなあ
大橋 飯塚さんは、購入はどうされているんですか。ホームシアターを続けていく上で、ホームシアターを生かすも殺すも、新しいソフトが潤沢に入ってくるということにあると思うんです。下条さんは、ご自分で買われてそれを家族みんなでご覧になるという話でしたが、飯塚さんはヘビーユーザーだから、どういう買い方をされているんですか。購入の方法とか、あるいはネット通販というのもあるし、セカンドハンド(中古品)もあるし、買わなくても今いろいろなレンタルも登場してきていますよね。
飯塚 うちの場合は、基本的にネット通販のセルソフトを中心に購入するという方針でやっています。僕はちょっと衝動買いしやすいたちなのでついつい手を出してしまうんですが、ネットショップや、ネットショップで受け付けなければ普通のお店で買ったりもします。前は、DVDの情報番組を自分で作っていたというのがありまして、それができるとカミさんに見せて、「あれも出るんだよ、これも出るじゃん」と言って、カミさんがそれを見て、「えっ、これもう出るの」「じゃあ買っておこうか」と、家計の方から少しヘルプしてもらったりしてバランスを取っていたんですけれども、最近はなかなか引っ掛からないというか、財布のひもをきっちり締めるようになってきたので、だんだんこっちの負担が大きくなってきて、たまたま「これを見たいな」と言うと、「じゃあ半額ね」とか言って、微妙に調整しながら、家庭が破綻しない程度にやろうかなという感じでやっています。
栗山 家計の中に、「ホームシアター費」というのが入るといいのにね。月に何千円でもいいから。そうするとソフトも買いやすいでしょうしね。
飯塚 あとは、置き場所的な問題もちょっと。ひたすら増え続けると、場所の問題も結構ありますね。たぶん下条さんのところもレーザーディスク(LD)をお持ちだと思いますが、僕もLDをたくさん持っているので、なかなか。最近はさすがに増えないんですけど。DVDも、一見小さいんですが、あれもボックスとかどんどん増えていくとアッという間に場所を取るので、その辺の収納の問題も、これから購入の上で大きな問題になっていくかな。最近メーカーさんは非常にマニア向けのものが多くて、フィギア付きボックスとか何とかとか、箱が大きくなるようなものばかり出してくるんです。そういったものも出していいんですけれども、もうちょっとコンパクトにまとまった、商品のフィギアがないものもボックスで出します、みたいな形でやってくれると買いやすいかな、というのもあります。なかなかその辺が悩ましい。そういったものが欲しいところもあるんです。
大橋 レンタルはあまりご覧にならないですか?
飯塚 レンタルしか出ていないものとか、セルよりひと月ぐらい前にレンタルで出るものもあるので、そうした場合は使ったりします。
大橋 ネットを使って申し込んだりするようなものではなくて、「TSUTAYA」とかに行っても、レンタルの品揃えってあまりよくないじゃない。飯塚さんは業界通ですからご存じだと思いますけれども、どうしてDVDは新譜はあんなにダーッと入るけど、古いものは網羅されていないでしょ。何か事情があるんですかね、ビデオ会社との関係とか。
飯塚 レンタルの場合は、基本的に一定期間過ぎたらメーカーに返却するという大原則があるので、ポニーキャニオンさんのグリーンマイルの「シックスセンス」が「TSUTAYA」に並ばないという問題があったりしましたけれども、それも当然あると思うんですが、それ以前に、ショップの方がまだレンタルユーザーの人たちがDVDをそれほど使っていないだろうと思い込んでいるふしがあった。最近はかなり増えてきたと思うんですよ。新しいショップができると、大体VHS3のDVD1ぐらいの比率にはなってきているので、以前よりは随分なってきたと思うんですけれども、でもショップ側の店員さんたちの映画知識がまだまだ至っていないから、棚作りがきちんと充実したものにならないとか、その辺が大きいところなんじゃないですか。大型店ができるにしたがって、商売優先と言ったらなんですけれども、メジャー作品を大量に仕入れて、売れそうにないものは、よくて1枚、下手すれば入れないみたいな傾向がすごく多いので、そうなってくると、ここにあるだろうと思って行ったところに全然ないという状況が、実際に起きていますよね。僕は都心で、新宿とか渋谷の大きい店があるんですけれども、ちょっと沿線で離れたところとか、実家の方でレンタルショップをのぞいてみたりすると、本当にこのお店の人たちは映画が好きなんだろうか、と思うような並びになっていたりすることがありますから、その辺は難しいところではありますね。もちろん、映画をどんどん店の人たちにも見て知ってもらいたいけれども、お店の人たちは商売優先になってしまう傾向があるので、「ハリー・ポッター」は100枚入れるけれども、サスペンス系の未公開ものとか、ちょっと癖があって見れば面白いんだけど、といったものまで手が回らないという状況があります。昔は、映画好きなおやじさんがどこかでビデオ屋をやるみたいなのが一般的だったんですけれども、今はビジネスマンとしてある大きなレンタル業界に入ってきて、いかに回転を良くして店の売り上げを伸ばすかという方向に。それは間違った方向性ではもちろんないんですけれども、そういった方向にシステム全体が動いているところに、ショップの面白さみたいなものが欠けていってしまっている気はありますね。
栗山 うちも息子は「TSUTAYA」にはしょっちゅう行っていますけど、行って帰ってくると、文句があるの。店員さんがソフトに詳しくないって。「それは見ちゃったんだけども、2話はなかったのか」とか、「それの音がそうじゃないものが欲しい」とか、「だれさんが出ている方のバージョンの何々を」と言ってもわからないとかで、息子がぶつぶつ怒って帰って来て私にワーッと文句を言うんですけれども、「それは気の毒だったわね」と言うしかないんです。そういう、ソフトで彼が尊敬するような定員さんがいてくれれば入り浸りになると思うんですけれども、そういう人に巡り会えないんだろうなと思うんです。
下条 図書館の司書みたいな人ですよね。ソムリエとかコーディネーターみたいな。
栗山 はるかに知識があって、「それが好きだったら、このラインはきっと好きだよ」みたいなことを言ってくれるような方が名物店員さんでいてくれれば、どんなにうれしいだろうなと思うんです。
飯塚 映画というのは、ビデオもあって、DVDもあって、劇場もあるわけですけれども、そういった全体像を見ていないとチャンスを逃してしまうみたいなことがあったりして、今年のあたまにホラー映画で「呪怨」という映画がヒットしたんです。それは劇場版なんですけれども、その前にオリジナルビデオで昔作られていたんです。それがじわじわと人気を集めて劇場版になって、それがすごく大ヒットして今年の夏には2も公開されるんですけれども、その劇場公開で大ヒットしたときに、もう置いていないビデオ屋がすごく多かったんです。店に行って、「今映画館であれ大ヒットしているんだけれども、ビデオで随分出たのに無いの?」と言っても、ほとんどの店が無かったですね。僕の近所の店には。無いものだから、あるお店にはみんなが行ってすぐ借りてしまう。しかも旧作だから1週間レンタルになっていて、なかなか返ってこないんです。そういう困った状況があったりしたけど、でもDVDを買うとなると1万5000円近くの金を払わなければいけないし、そこまでは信用度が高くないと思ってレンタルでしたいと思ったんだけど、そういうところが店員さんはわかっていないんですね。それで、熱がちょっと冷めたころに、「随分聞かれたから」と言って1本か2本ぐらい仕入れたりしていたけど、もう遅いよ、みたいなときがあったりしますね。
大橋 もしDVDで出ていたら、あるいは出たら、ぜひ娘さんと見たいと栗山さんが思う映画はありますか?
栗山 そういうのは、一緒に見に行っちゃっていますからね。ただ、私は自分が子供のときに、親とこういう共有の仕方はできなかったなと。映像の共有と言うんですか、小さなテレビで「水戸黄門」とかああいうのを見ていて、「父親はどうしてこんなものを好きなんだろう」と思いながら私はお付き合いをしていたんですけれども、そういう思いを今の自分の子供と共有というのは……、今は映画館に一緒に行っちゃいますからね。
〜座談会「ホームシアターという『家庭環境』をめぐって」全長版(6)へ続く〜
(ホームシアターファイル編集部)