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公開日 2006/01/03 13:27
【WEB版 飯塚克味 コレクター魂】よくぞ出してくれた! 北米版のホラーDVD
ふと気が付けば次世代DVDも間もなく商品化が実現、せっせと溜めたDVDソフトもLDと同様の道を辿るのかと不安がよぎるが、こういう時は今までDVD化が実現していなかったマニア向けのソフトがリリースされる時期でもある。
いずれDVDは終焉を迎えるかもしれないが、次世代になったところでソフトになる時期が全く見えないマイナーなタイトルはこの時期にゲットするしかない。今回は2005年に自分が狂喜乱舞した北米版のDVDソフトを紹介したい。
まず何と言ってもうれしかったのは、ピーター・フォンダとウォーレン・オーツ主演の『悪魔の追跡』だ。発売してくれたのはこだわりのソフトを最強仕様で発売するアンカーベイ。物語は新品のキャンピングカーで地方に出かけた二組の夫婦が偶然、悪魔崇拝の儀式を目撃してしまい、どこまで逃げても追われるというものだ。途中、町の人や警官に相談しても信じてくれるどころか、彼らもその一味のような演出が恐怖感を高めている。クライマックスのアクションシーンも含め、極めて完成度の高い一作でファンも多い。
75年製作なので残念ながら劇場では未見だったが、ホームシアターで高画質DVDを再生すれば、劇場と同様の感動を味わえる! リマスターされた映像は予想通りのハイクオリティ! ニュープリントの状態で試写を見ているような感覚を味わえた。また見ていて思ったのは、メル・ギブソンの出世作『マッドマックス』とカーチェイスの場面が似ていることだった。あちらはバイクだが、スピード感の捉え方には共通したセンスを感じられるはずだ。特典も音声解説やピーター・フォンダに取材もしたメイキング、予告やラジオスポット、静止画資料まで収録しているのでファンとしては大満足に仕上がっている。アンカーベイからは同時に『ダーティ・メリー、クレージー・ラリー』もリリース。こちらは5.1chリミックスによる音響が魅力だ。
「悪魔」つながりで言うなら、『吐きだめの悪魔』のリリースにも驚いた。87年のホラーブームの最中、日本でも日本ヘラルド映画がベスト・アクション・シリーズの一作として2本立て公開。若干21歳のジム・ミューロー監督作品と聞いて、『死霊のはらわた』レベルの作品を期待して池袋の劇場に足を運んだ。結果は話が崩壊しているが、映像のインパクトに全てが注がれた印象だった。酒屋の地下にあった腐ったワインを飲むと、体がどろどろに溶けてしまうというネタを中心にやりたい放題。この映画は実はステディカムの専門学校の卒業制作として作られたもので、当時人気絶頂だったアボリアッツ国際ファンタスティック映画祭で上映されたことがきっかけで日本にも入ってきたのだった。
ジム・ミューロー監督はその後、映画監督にはならず、カメラ・オペレーターとして『タイタニック』や『ナチュラル・ボーン・キラーズ』に参加している。DVDはオリジナル・ネガからのテレシネで公開時を上回る発色の良さ。ドロドロに溶けていく人間が極めてカラフルに映し出されるので、汚いはずの映像がポップに見えてしまうほどだ。自主映画を作って将来映画監督を目指す人は是非参考にしてみてはいかがだろう? 私は何の責任も負えないが。
更に「悪魔」作品を挙げるなら『悪魔の植物人間』が挙げられるだろう。72年制作のこの映画は、ある理由で日本では現在ほぼ見ることが不可能な一作で、本国でのリリースにも驚かされた。その理由とは本当の身体障害者が多数出演していることによる。『フリークス』のように善の存在としての扱いならまだしも、マッドサイエンティストの犯罪に荷担し、女性を誘拐したりするのだから内容的にもかなりヤバイ。しかもマッドサイエンティストは自らの研究のため、植物細胞を誘拐した人間に注入し、植物と人間の混合生命体を作っていたのだ。
こんな強烈な映画を作ったのは『黒水仙』『赤い靴』など映画史に輝く名作の撮影を担当したジャック・カーディフ。2000年のアカデミー賞名誉賞も受賞している巨匠だ。しかし、そんな人物がこんな映画を作ってしまうことに「人間はつくづく面白い」と感じざるを得ない。特に中盤、サーカスの見せ物小屋で延々と行われるフリークス(と書くのを許して欲しい)の様々なショーは映画の流れ上、必要とも言い難く、この映画が封印されることの理由に挙げられるほどだ。ラストは当然因果応報の結末が待ちかまえているのだが、一度見たら忘れがたいイメージの数々に現代の映画ファンが見たら卒倒することは間違いないだろう。
昔はこんな映画がよくあったが、臭いものには蓋をしろ的な体質がまかり通り、いつの間にか無かったことにされている。出演していた障害者の方々は自分の役割をわきまえていたはずなので、彼らが映っているからと言う理由で作品を封印する必要はないと自分は思うのだが、いかがだろう? 日本版のDVDが出る確率は極めて低いと思われるが、もし見る機会があれば、一考していただきたい。
この他には『エクソシスト・ビギニング』の別バージョンとして、ポール・シュレーダー監督が演出してボツになった『ドミニオン:エクソシスト』や、PALからの変換マスターでなく、独自にマスターを制作し発色が良くなった『食人族:25周年記念版』、ウエス・クレイヴン監督の傑作ヴァンパイア・ホラー『カースト』などが劇場以上の驚きを与えてくれた。北米版はリージョン1なので、読者が見る機会はかなり低いと思うが、覗いてみるとかなり奥の深い世界なので映画マニアであれば是非楽しんでいただきたい。
(飯塚克味)
いずれDVDは終焉を迎えるかもしれないが、次世代になったところでソフトになる時期が全く見えないマイナーなタイトルはこの時期にゲットするしかない。今回は2005年に自分が狂喜乱舞した北米版のDVDソフトを紹介したい。
まず何と言ってもうれしかったのは、ピーター・フォンダとウォーレン・オーツ主演の『悪魔の追跡』だ。発売してくれたのはこだわりのソフトを最強仕様で発売するアンカーベイ。物語は新品のキャンピングカーで地方に出かけた二組の夫婦が偶然、悪魔崇拝の儀式を目撃してしまい、どこまで逃げても追われるというものだ。途中、町の人や警官に相談しても信じてくれるどころか、彼らもその一味のような演出が恐怖感を高めている。クライマックスのアクションシーンも含め、極めて完成度の高い一作でファンも多い。
75年製作なので残念ながら劇場では未見だったが、ホームシアターで高画質DVDを再生すれば、劇場と同様の感動を味わえる! リマスターされた映像は予想通りのハイクオリティ! ニュープリントの状態で試写を見ているような感覚を味わえた。また見ていて思ったのは、メル・ギブソンの出世作『マッドマックス』とカーチェイスの場面が似ていることだった。あちらはバイクだが、スピード感の捉え方には共通したセンスを感じられるはずだ。特典も音声解説やピーター・フォンダに取材もしたメイキング、予告やラジオスポット、静止画資料まで収録しているのでファンとしては大満足に仕上がっている。アンカーベイからは同時に『ダーティ・メリー、クレージー・ラリー』もリリース。こちらは5.1chリミックスによる音響が魅力だ。
「悪魔」つながりで言うなら、『吐きだめの悪魔』のリリースにも驚いた。87年のホラーブームの最中、日本でも日本ヘラルド映画がベスト・アクション・シリーズの一作として2本立て公開。若干21歳のジム・ミューロー監督作品と聞いて、『死霊のはらわた』レベルの作品を期待して池袋の劇場に足を運んだ。結果は話が崩壊しているが、映像のインパクトに全てが注がれた印象だった。酒屋の地下にあった腐ったワインを飲むと、体がどろどろに溶けてしまうというネタを中心にやりたい放題。この映画は実はステディカムの専門学校の卒業制作として作られたもので、当時人気絶頂だったアボリアッツ国際ファンタスティック映画祭で上映されたことがきっかけで日本にも入ってきたのだった。
ジム・ミューロー監督はその後、映画監督にはならず、カメラ・オペレーターとして『タイタニック』や『ナチュラル・ボーン・キラーズ』に参加している。DVDはオリジナル・ネガからのテレシネで公開時を上回る発色の良さ。ドロドロに溶けていく人間が極めてカラフルに映し出されるので、汚いはずの映像がポップに見えてしまうほどだ。自主映画を作って将来映画監督を目指す人は是非参考にしてみてはいかがだろう? 私は何の責任も負えないが。
更に「悪魔」作品を挙げるなら『悪魔の植物人間』が挙げられるだろう。72年制作のこの映画は、ある理由で日本では現在ほぼ見ることが不可能な一作で、本国でのリリースにも驚かされた。その理由とは本当の身体障害者が多数出演していることによる。『フリークス』のように善の存在としての扱いならまだしも、マッドサイエンティストの犯罪に荷担し、女性を誘拐したりするのだから内容的にもかなりヤバイ。しかもマッドサイエンティストは自らの研究のため、植物細胞を誘拐した人間に注入し、植物と人間の混合生命体を作っていたのだ。
こんな強烈な映画を作ったのは『黒水仙』『赤い靴』など映画史に輝く名作の撮影を担当したジャック・カーディフ。2000年のアカデミー賞名誉賞も受賞している巨匠だ。しかし、そんな人物がこんな映画を作ってしまうことに「人間はつくづく面白い」と感じざるを得ない。特に中盤、サーカスの見せ物小屋で延々と行われるフリークス(と書くのを許して欲しい)の様々なショーは映画の流れ上、必要とも言い難く、この映画が封印されることの理由に挙げられるほどだ。ラストは当然因果応報の結末が待ちかまえているのだが、一度見たら忘れがたいイメージの数々に現代の映画ファンが見たら卒倒することは間違いないだろう。
昔はこんな映画がよくあったが、臭いものには蓋をしろ的な体質がまかり通り、いつの間にか無かったことにされている。出演していた障害者の方々は自分の役割をわきまえていたはずなので、彼らが映っているからと言う理由で作品を封印する必要はないと自分は思うのだが、いかがだろう? 日本版のDVDが出る確率は極めて低いと思われるが、もし見る機会があれば、一考していただきたい。
この他には『エクソシスト・ビギニング』の別バージョンとして、ポール・シュレーダー監督が演出してボツになった『ドミニオン:エクソシスト』や、PALからの変換マスターでなく、独自にマスターを制作し発色が良くなった『食人族:25周年記念版』、ウエス・クレイヴン監督の傑作ヴァンパイア・ホラー『カースト』などが劇場以上の驚きを与えてくれた。北米版はリージョン1なので、読者が見る機会はかなり低いと思うが、覗いてみるとかなり奥の深い世界なので映画マニアであれば是非楽しんでいただきたい。
(飯塚克味)