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公開日 2006/06/07 11:12

ここが知りたい!次世代光ディスク<前編> BD/HD DVDのコンセプトとテクノロジー

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HD DVD-ROMが発売され、HDパッケージソフトの映像が姿を現しはじめた。HD映像のパッケージソフトが世に出てくることは、高画質ファンとしては素直に歓迎したい。この稿は”高画質”を支える次世代光ディスクの技術や最新動向をご紹介していきたい。

コンセプト/次世代光ディスクの容量はいかにして決められたか?

CDの容量を決めるとき、ソニーの大賀氏がクラシック界の帝王ヘルベルト・フォン・カラヤンに、どの位の長さが必要か聞いたという話がある。ここでカラヤンはベートーヴェンの交響曲は全て1曲1枚に入れたいとの要望を出し、交響曲の中で最も長い第9番「合唱」の平均演奏時間が74分だったことから、CDの容量が74分になったという説である。この話の真贋はさておき、コンテンツがディスク容量を決めるという見本のような話であり、興味深い。

ではDVDの容量はどうか? DVDは、「片面一層のディスクで135分の映画をSD画質(640×480画素)で綺麗に見ることができる」というのがコンセプトである。このコンセプトから、DVDは映画をターゲットにし、4.7GBという容量が決められたことが分かる。

さて、それに比べて次世代光ディスクのうち、先行して開発2003年4月に商品化されたBlu-ray Discは、「片面一層のディスクで、HD放送が2時間録画できる」ことをターゲットにして容量が決められた。HD放送で最も記録容量を必要とするのは、BSデジタルで採用されているフルHD放送。具体的には1920×1080i、画像フォーマットMPEG-2、音声フォーマットAAC、転送レートは最高24Mbpsと定められており、計算すると2時間で約21.6GBとなる。このため、その当時可能だった最高の技術で容量を引き上げ、23.3GBで規格化されたのである。現在はさらに高容量化され、25GBになっている。

では、HD DVDはどうかと言うと、コンセプトはDVDの延長で、「片面一層のディスクでHDコンテンツが2時間再生できる」というもの。メインコンテンツはあくまで映画を想定している。ポイントは再生専用の規格を中心に決められているところで、コンセプトで映像フォーマットを規定していないところにある。

HD DVDはこのコンセプトを具現化するため、2003年5月に規格化されたH.264を基本フォーマットとして採用、ディスクを開発した。H.264はMPEG-2の1.5〜2倍の圧縮が可能であり、MPEG-2であれば21.6GB程度が必要な情報を、10.8〜14.4GBで記録できるのがポイントである。

  DVD Blu-ray HD DVD
コンセプト 片面一層で135分のSD画質の映画再生 片面一層でHD放送120分の記録 片面一層で120分のHD画質のコンテンツ再生
基本画像フォーマット MPEG-2 MPEG-2 H.264
画質 SD(720×480) HD(1920×1080) HD(1920×1080)
容量(片面一層) 4.7GB 25GB 15GB

大容量化技術/高容量へのアプローチ

大容量化の技術ポイントを簡単に言うと、「いかにして光を集光させ、小さなスポットを作り出すか」である。

小さなスポットを作り出すのは、(1)集光させるレーザー波長を短くする、(2)焦点距離を短くすることが大きい要素として上げられる。

HD DVDはDVDと同じ焦点距離を採用しているため、主には(1)の技術を、Blu-rayは(1)(2)の技術を両方も採用し、焦点距離をDVDの0.6mmから0.1mmと近くすることにより、25GBの高容量を実現している。

HD DVDに導入された技術は3つ。1つ目は波長の短い「青(紫)色レーザー」の導入である。次世代のことを「ブルー系ディスク」という人がいるが、それはレーザーの色から付けられた愛称である。

2つ目は集光レンズの開口数(NA、開口数が大きければ大きいほど短距離集光できる)の採用。HD DVDはDVDと集光距離は変わらないが、青色レーザーを使用したためNAをやや大きくする必要がある。

3つ目は高精細スタンパーの導入である。上記2つの技術はピックアップ側の話だが、それに対応するディスクも当然必要になるわけだ。

Blu-rayは、HD DVDが採用した技術に加え、0.1mmの距離の集光に対応するディスク技術を採用している。0.1mmカバー層の採用である(同じ言い方をするとDVDは0.6mm基盤と0.6mmカバー層の組合せ)。0.1mmカバー層は技術的難易度が高く、安価に生産することはできないとの説もあったが、5月17日にBD-ROMの量産化の発表がなされ、ある程度の目途が付いたものと考えられる。

また、集光レンズのNA=0.85はレンズの限界と言われる領域に近く、スタンパーにもより優れた精度が要求されるなど、Blu-rayの技術難易度は高い。

  DVD Blu-ray HD DVD
レーザー波長(nm) 650 405 405
レーザー種類 赤色レーザー 青紫色レーザー 青紫色レーザー
レンズNA 0.6 0.85 0.65
焦点距離(mm) 0.6 0.1 0.6

ディスク規格の注意点 - HD DVDを録画に使用した場合、ユーザーは混乱する?

6月に発売されるVAIO(関連ニュース)は、デジタル放送(ハイビジョン放送)をムーブすることができる。デジタル放送を録画する時に必要なCPRMは、Blu-ray、HD DVD共に採用している著作権保護技術である「AACS」に内包されているため、次世代の記録ディスクは全てのディスクがCPRM対応と言える。また次世代光ディスクは、ムーブを前提としてシステムが構成されていると聞く。今まで、ムーブのトラブルで苦労している人に朗報となることを期待したい。


BDドライブを搭載した「VAIO typeA」
さて、日本のデジタル放送は、地上デジタル、BSデジタル、110°CSの3種類あるが、画質としては2つに大別される。1,440×1,080の地デジ、1,920×1,080のBSデジタル/110°CSである。

放送 画像/音声フォーマット 最大画素数 転送レート 2時間の情報量
地上波デジタル MPEG-2/AAC 1440×1080 最大17Mbps 15.3GB
BSデジタル MPEG-2/AAC 1920×1080 最大24Mbps 21.6GB
110°CS

同上

同上 同上 同上

このため上記の表の通り、2時間録画することを想定した場合、地上波デジタルとBSデジタルで必要な容量は、15.3GB、21.6GBとなり、DVD-R 1枚分も違う。

Blu-rayはHD放送を録画することを基本コンセプトとしており、片面一層で録画できる。つまりユーザーは、BD-R/REの片面単層品で基本的に対応できるのである。

しかし、HD DVD-R/RWであるRAMは片面一層で15GB、20GBであるため、BSデジタル/110°CSのフルHD放送:21.6GBには対応できない。このため片面二層の30GBで対応することになる。ユーザーは自分が録画したい放送毎に一層/二層を選択しなければならない。現在問題になっている「デジタル放送だから一律CPRM」より更に分かりづらい。

しかもBSデジタル/110°CSでも番組によってフルHDだったり、そうでなかったりする。もしかしたらユーザーは片面一層で良かったのに、片面二層を買ってきてホゾを咬むことになったりする。もしこの通り商品化が進むとすると、ユーザーにかなりの混乱を招くことになりかねない。ユーザーへの認知を積極的に進めると共に、良い対応策をお願いしたい。

カートリッジ型BD-REは新ドライブで使えるのか?

結論から言うと「全く使えない」が答え。同じBDの技術で作られたディスクではあるが、全くの別物と捉えた方が良さそうである。

BDZ-S77などで録画したBD-REディスクは、今後のプレーヤーでは再生できない

カートリッジ型BD-REは、VER.1.0規格。新型のカートリッジがないBD-REはVER.2.0規格である。通常、VER.2.0はVER.1.0を内包するが、今回はそうなっていない。理由は、規格化時期にありそうである。VER.1.0が商品化されたのは2003年4月。ということは、現在の主な技術が出揃っていない時期である。

例えば、画像フォーマットのH.264、VC-1も規格成立していない。著作権保護技術のAACSもできていない。AACSに必須のデジタル接続端子:HDMI端子もできてない…。要するにVER.1.0とVER.2.0ではサポートしているものが違いすぎ、ディスク技術は共通でも中身は別物というレベルに達しているのである。このため残念ながら、BD-REはVER.2.0で仕切り直す形を取らざるを得なくなり、互換性を断ったのである。

(波瀬洸一)

後編「H.264/VC-1/MPEG-2、それぞれの実力を検証する」に続く

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