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公開日 2006/12/29 11:28
WEB版 飯塚克味のコレクター魂 − 全米大ヒット!なのに日本では劇場未公開のなぜ?
2006年、久々に邦画の興行収入が洋画を上回ったといわれている。『海猿 LIMIT OF LOVE』、『THE有頂天ホテル』や『ゲド戦記』、『涙そうそう』、『武士の一分』といった大ヒット作の他、中規模で公開された『かもめ食堂』や『寝ずの番』、『嫌われ松子の一生』なども好成績を収めたのがその要因だろう。片や洋画の方は『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』が興行収入100億円突破の大ヒットを記録したが、『キング・コング』『ジャーヘッド』、『GOAL!』、『ポセイドン』、『カーズ』といった期待作が軒並み予想を下回る成績となった。もちろん邦画のヒットは望ましいことなのだが、映画の王様たるハリウッド映画に元気がないのは何とも悲しいこと。だが全米で話題になっている作品は果たして本当に日本できちんと公開されているのか? 私が演出を担当しているWOWOWの『HOLLYWOOD EXPRESS』という番組では毎週全米の最新映画情報をお送りしているのだが、2006年は特に全米で大ヒットとなった作品が日本未公開となっているケースが多かった。
『恋するレシピ 〜理想のオトコの作り方〜』。全米で初登場1位。『男を変える恋愛講座』という邦題で日本公開も予定していたが、結局劇場公開は見送られた(Copyright (c) 2006 by Paramount Pictures.All Rights Reserved. TM, (R) & Copyright (c)2007 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.)
マシュー・マコノヒーとサラ・ジェシカ・パーカーという人気も知名度も高い二人が共演した『恋するレシピ 〜理想のオトコの作り方〜』(ユ07/2/9DVD発売)という邦題になったこの作品は全米では初登場1位の大ヒット! その後もランクを落とすことなく興行収入を上げていった。内容は趣味もセンスもいい男性をゲットしたと思った三十路の女性が、実はその男性がパラサイト(つまり親と同居)状態であることにショックを受けつつも、彼を一人前のオトコにすべく奮闘するというラブコメだ。全米でヒットしていた当時は配給会社も公開するつもりで、『男を変える恋愛講座』という立派な邦題まで決定していた。中身も上質な仕上がりで決して悪くはない。それなのに劇場公開が見送られたのは、公開しても中級程度のヒットしか見込めないからだろう。シネコンの隆盛と共に各配給会社は大ヒット確実な作品にどんどん的を絞って公開するようになり、正に映画そのものに成果主義が要求されるようになってきた。その結果、大作か単館興行向けの作品以外は劇場にかからないという珍現象が起き始めている。以前はもっと多種多様な作品を観ることができた映画館という空間は、ハリウッド映画にとって間口が狭くなってきているというのが本当のところだ。
20世紀フォックスも『12人のパパ2』や『ビッグママ・ハウス2』といったヒット作をいきなり低価格DVDで発売して驚かせてくれた。確かにコメディ映画は笑いのツボも違うし、大ヒットは難しいだろう。しかし応援しているファンもいることを忘れないでほしい。『ガーフィールド2』をシネコンオンリーとはいえ劇場公開するなら、前述の2作は是非ともやってほしいところだった。
2005年、全米で2億ドルを超える猛ヒットとなった『ウェディング・クラッシャーズ』(DVD発売中)も結局未公開に終わった。こちらは日本では全くといっていいほど知名度のないヴィンス・ヴォーンとオーウェン・ウィルソンの主演作だ。結婚式場に現われてはナンパを繰り返す二人の男の軽いコメディだが、劇場未公開は何とももったいない。脇に今後伸びが期待される『きみに読む物語』のレイチェル・マクアダムスや、名優の域に入り始めたクリストファー・ウォーケンも出ていた。この作品で主演の二人にスポットを当てられなかったことが響き、ヴィンス・ヴォーンが(元ブラピ妻の)ジェニファー・アニストンと共演し、二人の恋仲が噂になった『THE BREAK-UP』も、オーウェン・ウィルソンがマット・ディロンとケイト・ハドソンの新婚夫婦をお邪魔する『YOU,ME AND DUPREE』も劇場未公開になってしまった。それぞれの日本のDVDタイトルは『THE BREAK-UP』が『ハニーvs.ダーリン 2年目の駆け引き』に、『YOU,ME AND DUPREE』は『トラブル・マリッジ カレと私とデュプリーの場合』になった。
ヴィンス・ヴォーンとジェニファー・アニストンの恋仲が噂になった『THE BREAK-UP』。邦題は『ハニーvs.ダーリン 2年目の駆け引き』。残念ながらこれも劇場未公開(発売元・販売元:UNIVERSAL PICTURES(JAPAN)INC)
全米ではインディペンデント作品として公開されながらも女性同士の友情を描き高い評価を受け、スマッシュヒットとなった『FRIENDS WITH MONEY』もジェニファー・アニストン、ジョーン・キューザック、フランシス・マクドーマンドという豪華キャストだがDVDストレートになった。DVDタイトルは『セックス・アンド・マネー』。思わずジェニファー・アニストンが出ていたのは『フレンズ』でしょ? と突っ込みを入れたくなるようなタイトルだが、監督のニコール・ホルフセナーが『セックス・アンド・ザ・シティ』の人だったことからこのタイトルになったようだ。
DVDストレートの場合、分かりやすい邦題にならざるを得ないのだが、オリジナルタイトルに親しんで公開を待っていた者にとっては何ともわびしいことだ。だがタイトルが軽そうだからといっても、内容は大ヒットに相応しいしっかりしたものなので、偏見の目を持たずにチェックすることを薦めたい。ファンがしっかり存在していることをアピールし続けなければ、その内、観たい映画を劇場で全く観ることができなくなってしまう時期がきてしまうかもしれないのだ。
(飯塚克味)
マシュー・マコノヒーとサラ・ジェシカ・パーカーという人気も知名度も高い二人が共演した『恋するレシピ 〜理想のオトコの作り方〜』(ユ07/2/9DVD発売)という邦題になったこの作品は全米では初登場1位の大ヒット! その後もランクを落とすことなく興行収入を上げていった。内容は趣味もセンスもいい男性をゲットしたと思った三十路の女性が、実はその男性がパラサイト(つまり親と同居)状態であることにショックを受けつつも、彼を一人前のオトコにすべく奮闘するというラブコメだ。全米でヒットしていた当時は配給会社も公開するつもりで、『男を変える恋愛講座』という立派な邦題まで決定していた。中身も上質な仕上がりで決して悪くはない。それなのに劇場公開が見送られたのは、公開しても中級程度のヒットしか見込めないからだろう。シネコンの隆盛と共に各配給会社は大ヒット確実な作品にどんどん的を絞って公開するようになり、正に映画そのものに成果主義が要求されるようになってきた。その結果、大作か単館興行向けの作品以外は劇場にかからないという珍現象が起き始めている。以前はもっと多種多様な作品を観ることができた映画館という空間は、ハリウッド映画にとって間口が狭くなってきているというのが本当のところだ。
20世紀フォックスも『12人のパパ2』や『ビッグママ・ハウス2』といったヒット作をいきなり低価格DVDで発売して驚かせてくれた。確かにコメディ映画は笑いのツボも違うし、大ヒットは難しいだろう。しかし応援しているファンもいることを忘れないでほしい。『ガーフィールド2』をシネコンオンリーとはいえ劇場公開するなら、前述の2作は是非ともやってほしいところだった。
2005年、全米で2億ドルを超える猛ヒットとなった『ウェディング・クラッシャーズ』(DVD発売中)も結局未公開に終わった。こちらは日本では全くといっていいほど知名度のないヴィンス・ヴォーンとオーウェン・ウィルソンの主演作だ。結婚式場に現われてはナンパを繰り返す二人の男の軽いコメディだが、劇場未公開は何とももったいない。脇に今後伸びが期待される『きみに読む物語』のレイチェル・マクアダムスや、名優の域に入り始めたクリストファー・ウォーケンも出ていた。この作品で主演の二人にスポットを当てられなかったことが響き、ヴィンス・ヴォーンが(元ブラピ妻の)ジェニファー・アニストンと共演し、二人の恋仲が噂になった『THE BREAK-UP』も、オーウェン・ウィルソンがマット・ディロンとケイト・ハドソンの新婚夫婦をお邪魔する『YOU,ME AND DUPREE』も劇場未公開になってしまった。それぞれの日本のDVDタイトルは『THE BREAK-UP』が『ハニーvs.ダーリン 2年目の駆け引き』に、『YOU,ME AND DUPREE』は『トラブル・マリッジ カレと私とデュプリーの場合』になった。
全米ではインディペンデント作品として公開されながらも女性同士の友情を描き高い評価を受け、スマッシュヒットとなった『FRIENDS WITH MONEY』もジェニファー・アニストン、ジョーン・キューザック、フランシス・マクドーマンドという豪華キャストだがDVDストレートになった。DVDタイトルは『セックス・アンド・マネー』。思わずジェニファー・アニストンが出ていたのは『フレンズ』でしょ? と突っ込みを入れたくなるようなタイトルだが、監督のニコール・ホルフセナーが『セックス・アンド・ザ・シティ』の人だったことからこのタイトルになったようだ。
DVDストレートの場合、分かりやすい邦題にならざるを得ないのだが、オリジナルタイトルに親しんで公開を待っていた者にとっては何ともわびしいことだ。だがタイトルが軽そうだからといっても、内容は大ヒットに相応しいしっかりしたものなので、偏見の目を持たずにチェックすることを薦めたい。ファンがしっかり存在していることをアピールし続けなければ、その内、観たい映画を劇場で全く観ることができなくなってしまう時期がきてしまうかもしれないのだ。
(飯塚克味)