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公開日 2007/01/03 11:53
WEB版 飯塚克味のコレクター魂 − DVDメーカーが密かに仕掛けるホラーブーム
自分にとっての2006年の映画業界での最大のニュースは20年間続いた東京国際ファンタスティック映画祭の休止だった。映画祭休止の理由はスポンサー不足による予算の問題だったが、自分が映画業界で働くきっかけになった映画祭であり、現在活躍する映画監督たちも輩出した非常に意義のある映画祭だった。過去形で書くのは本意ではないが、大劇場の大スクリーンでSFホラーやアクションといった娯楽作を中心に上映してくれたことには本当に感謝しているし、心から復活してもらいたいと思っている。そんな東京ファンタの売りは何といっても例年恒例だったホラー・オールナイトだったが、映画祭がない淋しさも手伝ってか、多くのホラーファンがDVDで自分だけのオールナイト上映を行ったのではないだろうか? DVDメーカーもイチオシという程ではないにしろ、様々な形でホラーキャンペーンを行ってくれたのはうれしい出来事だった。
特に目立ったのはソニー・ピクチャーズ エンターテインメントの「ようこそホラーシアターへ」と銘打ったキャンペーンだ。劇場公開とシンクロさせながらDVDでは劇場未公開作も追加してどんどんリリースを開始。これまでDVDになったのは『ザ・フォッグ(2005年版)』、『鬘 かつら』、『マーダー・ライド・ショー2 -デビルズ・リジェクト-』、『ハウス・オブ・ザ・デッド2』、『怨霊の森』、『ザ・ダーク』といったタイトル。『ザ・フォッグ』はホラーの巨匠ジョン・カーペンターが1979年に発表した同名の作品をリメイクしたもの。オリジナルはヨーロッパでも高い評価を受けているだけに、勇気あるリメイクだが、もちろん演出面では及ばない。だが特殊効果と音響のレベルアップは確実で、ホームシアターでサラウンド再生すれば、何度か飛び上がること間違いなしの快作となっている。特に凄かったのが亡霊たちがドアをノックする音。大きなハンマーで打ち鳴らしたのではないか? と思えるようなズシンとした低音が心臓に響いてドキリとしてしまった。
ソニー・ピクチャーズ エンターテインメントの「ようこそホラーシアターへ」キャンペーン。ホラー・オールナイトが恒例だった東京国際ファンタスティック映画祭が休止になり、寂しさを感じているホラーファンにとって、こういうキャンペーンは本当に有難い
『ハウス・オブ・ザ・デッド2』は悪名高い第1作と違って下手にゲームの映像をインサートするような野暮な演出はなく、素直なゾンビ映画になっていてホッとした。ゾンビを壊滅させようとする特殊部隊の女性隊員の勇姿も惚れ惚れするくらいカッコいい。当然のことながらこの作品もサラウンド再生は必須である。
『マーダー・ライド・ショー2 -デビルズ・リジェクト-』は長いこと公開が延ばされ、ファンがヤキモキしていた作品だが、9月の劇場公開に続いてスピードリリース。劇場公開とDVD発売の間隔が短くなっている傾向については賛否両論あるが、そもそも日本公開が待ちきれず輸入版を手に入れてしまうような自分にとっては大歓迎である。内容は前作で暴虐の限りを尽くした主人公一家に思いもがけない危機が迫るもので、できれば一作目を観てからの方が楽しめる。だが作品のトーンは大分変わっているので、続けて観るとロブ・ゾンビという監督の幅の広さに驚かされるだろう。エンディングは完全に『イージー・ライダー』や『明日に向かって撃て』を思い起こさせるアメリカン・ニュー・シネマだ。北米版に入っていたドキュメンタリーが未収録なのが少々残念だが、ソニーは『ベスト・キッド』や『チャイナ・シンドローム』の低価格版でいきなり特典をぎっしり満載した、いい意味での前科があり、この作品でも同様のことが起きることを期待したい。
『ザ・ダーク』は『ヒストリー・オブ・バイオレンス』でヴィゴ・モーテンセンの妻を演じたマリア・ベロ主演のサスペンス・タッチの作品。今回の相手役はショーン・ビーン。ヴィゴとショーン・ビーンのファンはダブっているらしく、ファンサイトも共通のものがあったりする。その二人と共演しているのだからマリア・ベロという女優の存在感もなかなかのものだ。娘と共に、元夫が住むウェールズにやってきたまではいいが、そこで娘が行方不明になってしまう。ベロは必死に娘の捜索を始めるのだがノというのがストーリー。製作には『バイオハザード』や『イベント・ホライゾン』のポール・W・S・アンダーソンが名を連ねており、未公開作品だが安心して楽しめる出来だ。吹替えのキャスティングも一流どころが揃っているので、気楽に見るなら日本語吹替版も薦めたい。
文字数の関係で紹介しきれないが、『鬘 かつら』や『怨霊の森』もホラーファンのツボをつかんだ細工が施されており、観る価値は充分にあるといっておきたい。今後のリリースでは全米大ヒットの衝撃作『ホステル』や地下の洞穴に潜む怪物の恐怖を描いた『地獄の変異』が発売予定されているので、こちらも大いに期待して待ちたいところだ。
日本映画の老舗である松竹も、なんとメギザ恐コレクションモというホラーキャンペーンを行っている。恐らく社内にホラーが好きなスタッフがいたのだろうが、そう易々と実現するものではないことは経験上よく理解できる。この大英断を行った方々にも拍手を送りたい。
私自身、このキャンペーンの代表作と判断するのが日本のゲームを実写化した『サイレントヒル』だ。全米では初登場1位を記録。日本でもホラー映画にしては驚きの規模で公開され、『M:I:III』のような大作とぶつかったにも関わらず興行面でも充分な健闘をみせた。行方不明の娘を探していた母親が霧の町サイレントヒルを彷徨う、というゲームそのままの内容なのだが、映像のスケール感が素晴らしく、堂々たるハリウッド大作に仕上がっていた。監督は『ジェヴォーダンの獣』のフランス人、クリストフ・ガンズ。自身もゲームファンだけに期待を裏切らない作品に仕上がっていた。こちらは2枚組の通常版、3枚組のコレクターズ版、3枚組にブルーレイも同梱したアルティメット・ボックスの3種類が発売された。自分は当然ブルーレイが観たかったので、アルティメットを購入したが、通常のDVDもなかなかの高画質・高音質になっていたことも記しておきたい。
発売されたばかりの『ファイナル・デッドコースター』はメ選べる死に様マルチ版モと題した特別版が楽しめる。ある事故で死ぬはずだった運命の人々が悪魔の導き(のような感じ)で、次々と壮絶な死を遂げる人気ホラーシリーズだ。今回も緩急自在な演出で犠牲者がどんどん血祭りに上げられていく。映画自体何度観ても楽しめるのだが、このマルチ版ではゲーム仕立てになっていて、選択肢によって死に方が変わるのがミソ。中には死なずに助かる人もいるので、劇場版との違いを楽しみつつ観てもらいたい。
松竹のタイトルでは他に金子修介監督の『神の左手悪魔の右手』もDVDになった。梅図かずおの原作コミックが雑誌に連載されていた当時はそれだけが読みたくて買っていたこともあるだけに待望の映画化である。元々は金子監督の師匠である那須博之監督が映画を進めていただけに、冒頭のクレジットには「那須監督に捧ぐ」という一文が載せられている。NHK教育の『にほんごであそぼ』の小林翼君が主人公のソウを演じているので幼い子供は興味を見せるかもしれないが、それは厳禁! 日本映画にしては珍しいほど正面からスプラッター描写を行っているので、子供に見せたら絶対トラウマになってしまうだろう。
この他のメーカーでもエイベックスの『ディセント』や日活の『ブラッドレイン』、角川ヘラルドの『マスターズ・オブ・ホラー』、デックス・エンタテインメントの『スパニッシュ・ホラー・プロジェクト』などがリリースされており、ホラーファンは出費がかさむ日が続くことだろう。だがそうした努力がやがて大きな実を結ぶことも忘れずにホラーを応援していって欲しいと切に願う。
(飯塚克味)
特に目立ったのはソニー・ピクチャーズ エンターテインメントの「ようこそホラーシアターへ」と銘打ったキャンペーンだ。劇場公開とシンクロさせながらDVDでは劇場未公開作も追加してどんどんリリースを開始。これまでDVDになったのは『ザ・フォッグ(2005年版)』、『鬘 かつら』、『マーダー・ライド・ショー2 -デビルズ・リジェクト-』、『ハウス・オブ・ザ・デッド2』、『怨霊の森』、『ザ・ダーク』といったタイトル。『ザ・フォッグ』はホラーの巨匠ジョン・カーペンターが1979年に発表した同名の作品をリメイクしたもの。オリジナルはヨーロッパでも高い評価を受けているだけに、勇気あるリメイクだが、もちろん演出面では及ばない。だが特殊効果と音響のレベルアップは確実で、ホームシアターでサラウンド再生すれば、何度か飛び上がること間違いなしの快作となっている。特に凄かったのが亡霊たちがドアをノックする音。大きなハンマーで打ち鳴らしたのではないか? と思えるようなズシンとした低音が心臓に響いてドキリとしてしまった。
『ハウス・オブ・ザ・デッド2』は悪名高い第1作と違って下手にゲームの映像をインサートするような野暮な演出はなく、素直なゾンビ映画になっていてホッとした。ゾンビを壊滅させようとする特殊部隊の女性隊員の勇姿も惚れ惚れするくらいカッコいい。当然のことながらこの作品もサラウンド再生は必須である。
『マーダー・ライド・ショー2 -デビルズ・リジェクト-』は長いこと公開が延ばされ、ファンがヤキモキしていた作品だが、9月の劇場公開に続いてスピードリリース。劇場公開とDVD発売の間隔が短くなっている傾向については賛否両論あるが、そもそも日本公開が待ちきれず輸入版を手に入れてしまうような自分にとっては大歓迎である。内容は前作で暴虐の限りを尽くした主人公一家に思いもがけない危機が迫るもので、できれば一作目を観てからの方が楽しめる。だが作品のトーンは大分変わっているので、続けて観るとロブ・ゾンビという監督の幅の広さに驚かされるだろう。エンディングは完全に『イージー・ライダー』や『明日に向かって撃て』を思い起こさせるアメリカン・ニュー・シネマだ。北米版に入っていたドキュメンタリーが未収録なのが少々残念だが、ソニーは『ベスト・キッド』や『チャイナ・シンドローム』の低価格版でいきなり特典をぎっしり満載した、いい意味での前科があり、この作品でも同様のことが起きることを期待したい。
『ザ・ダーク』は『ヒストリー・オブ・バイオレンス』でヴィゴ・モーテンセンの妻を演じたマリア・ベロ主演のサスペンス・タッチの作品。今回の相手役はショーン・ビーン。ヴィゴとショーン・ビーンのファンはダブっているらしく、ファンサイトも共通のものがあったりする。その二人と共演しているのだからマリア・ベロという女優の存在感もなかなかのものだ。娘と共に、元夫が住むウェールズにやってきたまではいいが、そこで娘が行方不明になってしまう。ベロは必死に娘の捜索を始めるのだがノというのがストーリー。製作には『バイオハザード』や『イベント・ホライゾン』のポール・W・S・アンダーソンが名を連ねており、未公開作品だが安心して楽しめる出来だ。吹替えのキャスティングも一流どころが揃っているので、気楽に見るなら日本語吹替版も薦めたい。
文字数の関係で紹介しきれないが、『鬘 かつら』や『怨霊の森』もホラーファンのツボをつかんだ細工が施されており、観る価値は充分にあるといっておきたい。今後のリリースでは全米大ヒットの衝撃作『ホステル』や地下の洞穴に潜む怪物の恐怖を描いた『地獄の変異』が発売予定されているので、こちらも大いに期待して待ちたいところだ。
日本映画の老舗である松竹も、なんとメギザ恐コレクションモというホラーキャンペーンを行っている。恐らく社内にホラーが好きなスタッフがいたのだろうが、そう易々と実現するものではないことは経験上よく理解できる。この大英断を行った方々にも拍手を送りたい。
私自身、このキャンペーンの代表作と判断するのが日本のゲームを実写化した『サイレントヒル』だ。全米では初登場1位を記録。日本でもホラー映画にしては驚きの規模で公開され、『M:I:III』のような大作とぶつかったにも関わらず興行面でも充分な健闘をみせた。行方不明の娘を探していた母親が霧の町サイレントヒルを彷徨う、というゲームそのままの内容なのだが、映像のスケール感が素晴らしく、堂々たるハリウッド大作に仕上がっていた。監督は『ジェヴォーダンの獣』のフランス人、クリストフ・ガンズ。自身もゲームファンだけに期待を裏切らない作品に仕上がっていた。こちらは2枚組の通常版、3枚組のコレクターズ版、3枚組にブルーレイも同梱したアルティメット・ボックスの3種類が発売された。自分は当然ブルーレイが観たかったので、アルティメットを購入したが、通常のDVDもなかなかの高画質・高音質になっていたことも記しておきたい。
発売されたばかりの『ファイナル・デッドコースター』はメ選べる死に様マルチ版モと題した特別版が楽しめる。ある事故で死ぬはずだった運命の人々が悪魔の導き(のような感じ)で、次々と壮絶な死を遂げる人気ホラーシリーズだ。今回も緩急自在な演出で犠牲者がどんどん血祭りに上げられていく。映画自体何度観ても楽しめるのだが、このマルチ版ではゲーム仕立てになっていて、選択肢によって死に方が変わるのがミソ。中には死なずに助かる人もいるので、劇場版との違いを楽しみつつ観てもらいたい。
松竹のタイトルでは他に金子修介監督の『神の左手悪魔の右手』もDVDになった。梅図かずおの原作コミックが雑誌に連載されていた当時はそれだけが読みたくて買っていたこともあるだけに待望の映画化である。元々は金子監督の師匠である那須博之監督が映画を進めていただけに、冒頭のクレジットには「那須監督に捧ぐ」という一文が載せられている。NHK教育の『にほんごであそぼ』の小林翼君が主人公のソウを演じているので幼い子供は興味を見せるかもしれないが、それは厳禁! 日本映画にしては珍しいほど正面からスプラッター描写を行っているので、子供に見せたら絶対トラウマになってしまうだろう。
この他のメーカーでもエイベックスの『ディセント』や日活の『ブラッドレイン』、角川ヘラルドの『マスターズ・オブ・ホラー』、デックス・エンタテインメントの『スパニッシュ・ホラー・プロジェクト』などがリリースされており、ホラーファンは出費がかさむ日が続くことだろう。だがそうした努力がやがて大きな実を結ぶことも忘れずにホラーを応援していって欲しいと切に願う。
(飯塚克味)