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公開日 2007/03/12 18:45
地デジの普及・拡大に伴う家電業界最新動向が明らかに− JEITAデジタル家電セミナー2007レポート
(社)電子情報技術産業協会デジタル家電部会の主催による「JEITAデジタル家電セミナー2007」が、本日都内で開催された。
今回のセミナーは、デジタル家電産業とその関連産業の現状と将来の発展へ向けた課題や展望などを明らかにすることを目的に開催され、同団体デジタル家電部会の活動報告や外部講師を招いての基調講演などが行われた。
本項では、開催されたセミナーからいくつかのプログラムの内容をご紹介しよう。
■地上デジタル放送推進活動の現状と今後の課題 − 総務省 安藤英作氏が語る
この日のセミナーには、総務省を代表して情報通信政策局 地上放送課長の安藤英作氏が出席し、同省が取り組む地上デジタル放送の送受信環境整備支援等の対策内容の紹介を中心とした講演を行った。
国内の地上デジタル放送の現状について同氏は「昨年12月1日より岡山や香川、九州での放送が始まり、全国47都道府県における放送がスタートした。これにより今日の視聴可能世帯のカバー率は約84%となった」と説明。2011年7月24日には地上デジタル放送の完全移行が予定されているが、これまでの地上デジタル放送の推進活動については、特に同省で課題とされていたアナログ周波数変更対策を取り上げ「これまでに648地域の対策に着手し、全国の約99.7%にあたる約468万世帯の対策を終了した。計画に沿って順調に進捗している」と紹介した。また、「完全デジタル元年」に掲げる2011年に向けて「地上デジタル放送が着実に普及するとともに、受信機の多様化・低廉化が進展しつつある」とし、JEITAと日本ケーブルラボの調査によれば、地上デジタル放送受信機の出荷台数について、06年12月末時点で約1,783万台に上るというデータも合わせて示した。
地上デジタル放送の送受信環境整備については、今後の課題として「放送事業者が遅くとも2010年までには送信環境の整備を完了できるよう支援をしていく」と安藤氏は語った。送信環境についてはこれまで順調に整備が進められてきたとしながら、「民間のテレビ放送事業者の自力に委ねたのでは整備が困難であると考えられる地域が存在する」ことを指摘した。この結果として「約1%」の世帯を含む地域が地上デジタル放送の難視聴地域になる見込みがあるが、この課題については「本年から条件不利地域に該当する市町村や第三セクター法人など、当該整備を行う者に向けて国として交付金の発行を検討している」と語った。
またアナログからデジタル放送への移行にともない、受信者環境の整備における課題も安藤氏から指摘された。デジタル放送移行に関する受信機器の整備などの負担については、基本原則として「視聴者国民による負担」とされているが、「国民の方々に負担をご理解いただくのには確かにとても苦労をしているが、今後もねばり強くデジタル放送により提供されるサービスを丁寧に説明していくことが大切と考える」とした。一方で「受信者負担に著しい不公平がある場合は、これを是正することが総務省として必要とも考えている。具体的には、全国に約18,400施設、約164万世帯が利用していると推計される辺地共聴施設のデジタル化を行うにあたり、受信点の新設や改修を行う等の住民の負担が著しく過重になる場合には、これを整備する市町村等に対して国がその費用を一部補助することも検討すべきである」という考えを示した。本件の支援策については現在具体的な内容が検討されており、本年から実施される予定であるという。
また、その他に2011年の地上デジタル放送完全移行に向けた総務省の取り組みについて紹介した安藤氏は「周知広報の必要性が改めて指摘されている。これまで国の広報計画としては、“地デジ”の言葉を国民の間に広め、地上デジタル放送の受信方法を紹介することに注力してきたが、今後は段階的に地デジの受信方法認知を徹底させるとともに、2011年のアナログ放送の終了とデジタル放送への完全移行の周知も徹底させていく必要がある」と語った。新たな広報活動の具体的な展開としては、Webサイトからの情報発信を充実させていくことや、相談体制の整備が挙げられた。また同じく放送のデジタル化を進める諸外国の取り組みを例に挙げながら、「今後視聴者の実態をより正確に把握し、アナログ放送をどのように終了させれば良いのかを具体的に考えていくことも大事だと考えている。少なくとも本年内にはその大まかな画を描いておく必要がある。先に触れた、視聴者国民に受信環境の整備を負担いただく件についても、例えばイギリスではデジタル放送の受信環境整備に関して国から高齢者に向けた支援を行っている。今後さらに視聴者環境の具体的な調査を実施し、例外者への支援措置も含めて検討していくことが必要だ」と考えを述べた。
■サラウンドの現状と普及に向けた課題と期待
午後のセミナーのプログラムとして、オーディオネットワーク事業委員会 サラウンドサウンド専門委員会の主査を務める松下電器産業(株)の江本修氏による「サラウンドの現状と普及に向けた今後の課題と期待」をテーマとした講演も行われた。
江本氏はオーディオ業界の現状について「デジタルオーディオプレーヤーや音楽配信の台頭により、オーディオ、音楽産業ともに縮小こそしていないものの、“いい音楽をいい音で聴く”という本来の健全な姿が失われている」と指摘をする。この現状にあって「今のオーディオはファーストフード化している。このままではやもすればオーディオ業界は崩壊してしまうという危惧を抱いて、今から5年間にJEITA中でホームオーディオ市場研究会を立ち上げ、現在私の所属するサラウンド専門委員会が2005年に誕生した」とし、活動の経緯を紹介した。
続いてサラウンドの国内普及の可能性について触れた江本氏は「日本は世界に比べてサラウンドの後進国だと言える。ただし、一方でこれは日本でも膨大な需要が今後生まれる可能性があるということだと考えている。2010年に予測されているテレビの総需要である1136万5000台に、サラウンドシステムの添付率を先進国並みの15%に高めればサラウンド機器の理論総需要は約170万台にも上る」という試算を紹介し、サラウンドのビジネスとしての魅力を協調した。
江本氏は現状でも「サラウンドの普及は映画やDVDだけでなく、ゲームやカーAV、携帯電話などにも拡大している。今後は地デジのサラウンド放送の普及拡大が大きなインパクトとなって、画と音が一緒に発展していくことが大いに期待できる」とした。また今後の活動については「業界団体や放送事業者、メーカーなどが一体となり、サラウンドに対する取り組みを活発化させ、2011年にはホームエンタテインメント先進国の中に日本の仲間入りを実現したい」と意気込みを語った。
(Phile-web編集部)
今回のセミナーは、デジタル家電産業とその関連産業の現状と将来の発展へ向けた課題や展望などを明らかにすることを目的に開催され、同団体デジタル家電部会の活動報告や外部講師を招いての基調講演などが行われた。
本項では、開催されたセミナーからいくつかのプログラムの内容をご紹介しよう。
■地上デジタル放送推進活動の現状と今後の課題 − 総務省 安藤英作氏が語る
この日のセミナーには、総務省を代表して情報通信政策局 地上放送課長の安藤英作氏が出席し、同省が取り組む地上デジタル放送の送受信環境整備支援等の対策内容の紹介を中心とした講演を行った。
国内の地上デジタル放送の現状について同氏は「昨年12月1日より岡山や香川、九州での放送が始まり、全国47都道府県における放送がスタートした。これにより今日の視聴可能世帯のカバー率は約84%となった」と説明。2011年7月24日には地上デジタル放送の完全移行が予定されているが、これまでの地上デジタル放送の推進活動については、特に同省で課題とされていたアナログ周波数変更対策を取り上げ「これまでに648地域の対策に着手し、全国の約99.7%にあたる約468万世帯の対策を終了した。計画に沿って順調に進捗している」と紹介した。また、「完全デジタル元年」に掲げる2011年に向けて「地上デジタル放送が着実に普及するとともに、受信機の多様化・低廉化が進展しつつある」とし、JEITAと日本ケーブルラボの調査によれば、地上デジタル放送受信機の出荷台数について、06年12月末時点で約1,783万台に上るというデータも合わせて示した。
地上デジタル放送の送受信環境整備については、今後の課題として「放送事業者が遅くとも2010年までには送信環境の整備を完了できるよう支援をしていく」と安藤氏は語った。送信環境についてはこれまで順調に整備が進められてきたとしながら、「民間のテレビ放送事業者の自力に委ねたのでは整備が困難であると考えられる地域が存在する」ことを指摘した。この結果として「約1%」の世帯を含む地域が地上デジタル放送の難視聴地域になる見込みがあるが、この課題については「本年から条件不利地域に該当する市町村や第三セクター法人など、当該整備を行う者に向けて国として交付金の発行を検討している」と語った。
またアナログからデジタル放送への移行にともない、受信者環境の整備における課題も安藤氏から指摘された。デジタル放送移行に関する受信機器の整備などの負担については、基本原則として「視聴者国民による負担」とされているが、「国民の方々に負担をご理解いただくのには確かにとても苦労をしているが、今後もねばり強くデジタル放送により提供されるサービスを丁寧に説明していくことが大切と考える」とした。一方で「受信者負担に著しい不公平がある場合は、これを是正することが総務省として必要とも考えている。具体的には、全国に約18,400施設、約164万世帯が利用していると推計される辺地共聴施設のデジタル化を行うにあたり、受信点の新設や改修を行う等の住民の負担が著しく過重になる場合には、これを整備する市町村等に対して国がその費用を一部補助することも検討すべきである」という考えを示した。本件の支援策については現在具体的な内容が検討されており、本年から実施される予定であるという。
また、その他に2011年の地上デジタル放送完全移行に向けた総務省の取り組みについて紹介した安藤氏は「周知広報の必要性が改めて指摘されている。これまで国の広報計画としては、“地デジ”の言葉を国民の間に広め、地上デジタル放送の受信方法を紹介することに注力してきたが、今後は段階的に地デジの受信方法認知を徹底させるとともに、2011年のアナログ放送の終了とデジタル放送への完全移行の周知も徹底させていく必要がある」と語った。新たな広報活動の具体的な展開としては、Webサイトからの情報発信を充実させていくことや、相談体制の整備が挙げられた。また同じく放送のデジタル化を進める諸外国の取り組みを例に挙げながら、「今後視聴者の実態をより正確に把握し、アナログ放送をどのように終了させれば良いのかを具体的に考えていくことも大事だと考えている。少なくとも本年内にはその大まかな画を描いておく必要がある。先に触れた、視聴者国民に受信環境の整備を負担いただく件についても、例えばイギリスではデジタル放送の受信環境整備に関して国から高齢者に向けた支援を行っている。今後さらに視聴者環境の具体的な調査を実施し、例外者への支援措置も含めて検討していくことが必要だ」と考えを述べた。
■サラウンドの現状と普及に向けた課題と期待
午後のセミナーのプログラムとして、オーディオネットワーク事業委員会 サラウンドサウンド専門委員会の主査を務める松下電器産業(株)の江本修氏による「サラウンドの現状と普及に向けた今後の課題と期待」をテーマとした講演も行われた。
江本氏はオーディオ業界の現状について「デジタルオーディオプレーヤーや音楽配信の台頭により、オーディオ、音楽産業ともに縮小こそしていないものの、“いい音楽をいい音で聴く”という本来の健全な姿が失われている」と指摘をする。この現状にあって「今のオーディオはファーストフード化している。このままではやもすればオーディオ業界は崩壊してしまうという危惧を抱いて、今から5年間にJEITA中でホームオーディオ市場研究会を立ち上げ、現在私の所属するサラウンド専門委員会が2005年に誕生した」とし、活動の経緯を紹介した。
続いてサラウンドの国内普及の可能性について触れた江本氏は「日本は世界に比べてサラウンドの後進国だと言える。ただし、一方でこれは日本でも膨大な需要が今後生まれる可能性があるということだと考えている。2010年に予測されているテレビの総需要である1136万5000台に、サラウンドシステムの添付率を先進国並みの15%に高めればサラウンド機器の理論総需要は約170万台にも上る」という試算を紹介し、サラウンドのビジネスとしての魅力を協調した。
江本氏は現状でも「サラウンドの普及は映画やDVDだけでなく、ゲームやカーAV、携帯電話などにも拡大している。今後は地デジのサラウンド放送の普及拡大が大きなインパクトとなって、画と音が一緒に発展していくことが大いに期待できる」とした。また今後の活動については「業界団体や放送事業者、メーカーなどが一体となり、サラウンドに対する取り組みを活発化させ、2011年にはホームエンタテインメント先進国の中に日本の仲間入りを実現したい」と意気込みを語った。
(Phile-web編集部)