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公開日 2007/09/10 14:18
BD-Rメディアが1枚500円に!? − Blu-rayの新規格“LTH”の真相を富士フイルムに聞く
ドイツのベルリンで開催された、IFA2007会場のBlu-ray Disc Associationブースにて試作品が展示された有機色素タイプのBD-Rメディア(関連ニュース)。「BD-R LTH type」という名称で、従来の無機材料を使ったBD-Rとは明確に区別されている。今回はIFAの会場で有機色素タイプのBD-Rメディア試作品を展示していた富士フイルムに取材を行い、新メディアへの疑問をぶつけてみた。
●有機色素を使うことでコストダウンが可能なLTHタイプメディア
まず最初の疑問は、LTHタイプ、有機色素タイプのメディアとは一体何なのか、従来からあるBDメディアとは何が違っているのか、ということだろう。
「LTHタイプのディスクは、現時点では有機色素を使ったBD-Rディスクです。LTHタイプはBDAで2007年3月に追加規格されたもので、従来からあるBD-Rと識別できるよう、『BD-R LTH TYPE』とメディアに表示されています。有機色素はDVD-R、CD-Rで実績のあるもので、BD-Rにも、そういった実績を反映することができます」。
ディスクに使用している記録面の素材の何が問題になるのか、と思う方もいるかもしれない。例えばDVDでは、DVD-Rで用いられている素材は有機(色素)素材、DVD-RW、DVD-RAMで用いられている素材は無機と明確に分けられている。この違いは追記型、書換型という機能のほかに、店頭に行けば分かるとおり、DVD-RW、DVD-RAMとDVD-Rでは販売価格にも差がある。今回のBD-R LTH規格の承認により、DVD-Rメディアを作ってきたメーカーによる、BD-Rメディアへの参入が容易になる。これまでの積み上げてきた技術やノウハウが投入できること、また今まで有機色素を使ったディスクが、無機型より割安で販売してきた経緯を考えると、有機素材を使ったディスクの登場はディスクの低価格化に繋がるものだと考えて良いと思われる。
●従来の機器との互換性は基本的になく新しいハードで対応予定
それでは、従来通りのBD-Rメディアと区別して「LTHタイプ」という呼称が用いられた意味はどこにあるのだろうか。
「光ディスクでは、データ読み取りにレーザー反射光を利用しており、反射光量の多い少ないでデジタル情報を読み取ります。このときの反射光量は『反射率』により表されます。LTHタイプは『LOW TO HIGH』の略で、ディスク反射率が、記録することにより、低い反射率から高い反射率に変わることを意味しています。従来はHIGH TO LOWの方式で記録していたので、記録極性がちょうど逆ということになります」。
くわしい説明は省くが、技術的に従来とはまったく逆の記録極性(磁石のN/Sに似たもの)で記録を行うというのが重要なポイント。LTHタイプのディスクは、現在発売されている機器とは基本的に記録互換性がなく、これから登場する新しいハードでサポートされることになる。規格自体は2007年3月に承認されているので、対応機器は今年中の登場が見込まれる。既存の機器についても、アップデートなどを行うことで、一部製品で読み取り、再生などに対応できる可能性もあるため、メディアが出回り次第検証したい。
●BD-R LTHタイプのBD規格はBD-R VER.1.2
今回登場したBD-R LTHタイプは、BDメディアの規格としても新しいディスクとなるため、新たな規格番号が振られている。
「BD-R LTHタイプの規格番号は、BD-R規格 VER.1.2という番号になっています。なお、従来HIGH TO LOWタイプのBD-Rの1-4xメディアについても同じBD-R VER.1.2という番号が振られています。同じ規格バージョンのなかに違うものが共存していて、ディスクの種類と1:1対応ではないため、ユーザーさんには『LTH TYPE』と表示することで対応してゆきます」。
今回IFAで発表されたメディアは「BD-R LTHタイプ」で、書き込み速度は1-2xのみに対応している。もう一つ、この秋、従来からあるHTLタイプのBD-Rにも、高速タイプにあたるBD-R 1-4x書き込みのメディアが登場する予定だ(PC向けメディアは発売済み)。規格が込み入っているため、購入の際にはしっかりと区別する必要があるが、IFAモデルを見る限り、しっかり表示されていることがわかった。
●パッケージには従来タイプは明確に分けられるデザインを採用
BD-R LTHタイプは、従来機器と互換性のないメディアであるだけに、発売後は混乱を招かないための工夫が求められる。
「BD-R LTHタイプのメディアでは、BDAにメディアメーカーが提案し、ガイドラインが定められました。メーカーを問わずに『LTH』」の文字が明記されています。国内出荷の製品については、パッケージに日本語で『色素』と書く予定です。2つ目の特徴としては、全メーカー縦長のパッケージデザインを採用します。こうすることで、店頭で一目見て、今までのディスクとは違うと分かるような工夫を行う予定です」
現在国内では、パナソニック、ソニー、シャープのBDレコーダーとPC向けのBDドライブが発売されている。新しい「BD-R LTHタイプ」メディアを従来製品のユーザーが誤って購入してしまう可能性を避けるため、LTH タイプのメディアを発売するメーカーは最大限の注意を払って臨むということだ。今回見せていただいたサンプル版のパッケージを確認したところ、「LTH」「色素」という表記や縦型パッケージによって従来品とははっきり区別されているように感じた。現在BDレコーダーなどを購入する層は先進的なAVファンが中心ということを考えると、導入にあたってのトラブルはある程度避けられるだろう。
●BD-R LTHタイプの登場によって来年にはBD-Rが500円に!?
今回説明してきたBD-R LTHタイプ。登場する時期は「今年中に発売したい」とコメントを貰えたにとどまったが、将来的な価格イメージについては、ある程度の見通しを聞くことができた。
「DVDレコーダーは、10万円のレコーダー発売時、店頭売価500円のDVDが販売されました。レコーダーの発売サイクルは年1度程度となっていますし、今年秋にはコピーワンス見直しの内容も確定し、不確定要素がなくなるため、確実にコストダウンができるようになるはずです。そう考えると、個人的にはここらへんのタイミングで10万円レコーダーが登場するのでは、という感じがします」。
これには私も同意見で、10万円レコーダーが登場するタイミングに、メディアは1/200の価格。つまり、来年中にはBD-Rが1枚500円になる可能性があると思う。
また、BD-R LTHタイプの登場によって、従来からある無機材料を使ったメディアはどうなるのだろうか。これについても従来とは違った位置づけとなると予想される。
現時点でBD-R LTHタイプが1層25GBの1-2xのみとなっていることを考えると、2層50GBメディア、1-4xといった大容量・高速タイプについては従来からある無機材料のメディアが技術的にも有利であることは確かだろう。また、BD-REメディアについても今後は無機材料で作られ続ける。
そう考えると、今後は低価格な1層25GBメディアは有機色素のBD-R LTHタイプで統一され、大容量・高画質のハイエンドメディアは無機材料で、という棲み分けが行われるのが自然な流れとなるのではないだろうか。
BD-R LTHタイプの登場は、BDメディアの価格を一気に押し下げるだけのインパクトがあると期待される。今後ユーザーが手頃な価格でハイビジョンアーカイブを揃えられるようにするためにも、BD-R LTHタイプメディアと対応ハードの登場を期待して待つとしよう。
(折原一也)
執筆者プロフィール
埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。
●有機色素を使うことでコストダウンが可能なLTHタイプメディア
まず最初の疑問は、LTHタイプ、有機色素タイプのメディアとは一体何なのか、従来からあるBDメディアとは何が違っているのか、ということだろう。
「LTHタイプのディスクは、現時点では有機色素を使ったBD-Rディスクです。LTHタイプはBDAで2007年3月に追加規格されたもので、従来からあるBD-Rと識別できるよう、『BD-R LTH TYPE』とメディアに表示されています。有機色素はDVD-R、CD-Rで実績のあるもので、BD-Rにも、そういった実績を反映することができます」。
ディスクに使用している記録面の素材の何が問題になるのか、と思う方もいるかもしれない。例えばDVDでは、DVD-Rで用いられている素材は有機(色素)素材、DVD-RW、DVD-RAMで用いられている素材は無機と明確に分けられている。この違いは追記型、書換型という機能のほかに、店頭に行けば分かるとおり、DVD-RW、DVD-RAMとDVD-Rでは販売価格にも差がある。今回のBD-R LTH規格の承認により、DVD-Rメディアを作ってきたメーカーによる、BD-Rメディアへの参入が容易になる。これまでの積み上げてきた技術やノウハウが投入できること、また今まで有機色素を使ったディスクが、無機型より割安で販売してきた経緯を考えると、有機素材を使ったディスクの登場はディスクの低価格化に繋がるものだと考えて良いと思われる。
●従来の機器との互換性は基本的になく新しいハードで対応予定
それでは、従来通りのBD-Rメディアと区別して「LTHタイプ」という呼称が用いられた意味はどこにあるのだろうか。
「光ディスクでは、データ読み取りにレーザー反射光を利用しており、反射光量の多い少ないでデジタル情報を読み取ります。このときの反射光量は『反射率』により表されます。LTHタイプは『LOW TO HIGH』の略で、ディスク反射率が、記録することにより、低い反射率から高い反射率に変わることを意味しています。従来はHIGH TO LOWの方式で記録していたので、記録極性がちょうど逆ということになります」。
くわしい説明は省くが、技術的に従来とはまったく逆の記録極性(磁石のN/Sに似たもの)で記録を行うというのが重要なポイント。LTHタイプのディスクは、現在発売されている機器とは基本的に記録互換性がなく、これから登場する新しいハードでサポートされることになる。規格自体は2007年3月に承認されているので、対応機器は今年中の登場が見込まれる。既存の機器についても、アップデートなどを行うことで、一部製品で読み取り、再生などに対応できる可能性もあるため、メディアが出回り次第検証したい。
●BD-R LTHタイプのBD規格はBD-R VER.1.2
今回登場したBD-R LTHタイプは、BDメディアの規格としても新しいディスクとなるため、新たな規格番号が振られている。
「BD-R LTHタイプの規格番号は、BD-R規格 VER.1.2という番号になっています。なお、従来HIGH TO LOWタイプのBD-Rの1-4xメディアについても同じBD-R VER.1.2という番号が振られています。同じ規格バージョンのなかに違うものが共存していて、ディスクの種類と1:1対応ではないため、ユーザーさんには『LTH TYPE』と表示することで対応してゆきます」。
今回IFAで発表されたメディアは「BD-R LTHタイプ」で、書き込み速度は1-2xのみに対応している。もう一つ、この秋、従来からあるHTLタイプのBD-Rにも、高速タイプにあたるBD-R 1-4x書き込みのメディアが登場する予定だ(PC向けメディアは発売済み)。規格が込み入っているため、購入の際にはしっかりと区別する必要があるが、IFAモデルを見る限り、しっかり表示されていることがわかった。
●パッケージには従来タイプは明確に分けられるデザインを採用
BD-R LTHタイプは、従来機器と互換性のないメディアであるだけに、発売後は混乱を招かないための工夫が求められる。
「BD-R LTHタイプのメディアでは、BDAにメディアメーカーが提案し、ガイドラインが定められました。メーカーを問わずに『LTH』」の文字が明記されています。国内出荷の製品については、パッケージに日本語で『色素』と書く予定です。2つ目の特徴としては、全メーカー縦長のパッケージデザインを採用します。こうすることで、店頭で一目見て、今までのディスクとは違うと分かるような工夫を行う予定です」
現在国内では、パナソニック、ソニー、シャープのBDレコーダーとPC向けのBDドライブが発売されている。新しい「BD-R LTHタイプ」メディアを従来製品のユーザーが誤って購入してしまう可能性を避けるため、LTH タイプのメディアを発売するメーカーは最大限の注意を払って臨むということだ。今回見せていただいたサンプル版のパッケージを確認したところ、「LTH」「色素」という表記や縦型パッケージによって従来品とははっきり区別されているように感じた。現在BDレコーダーなどを購入する層は先進的なAVファンが中心ということを考えると、導入にあたってのトラブルはある程度避けられるだろう。
●BD-R LTHタイプの登場によって来年にはBD-Rが500円に!?
今回説明してきたBD-R LTHタイプ。登場する時期は「今年中に発売したい」とコメントを貰えたにとどまったが、将来的な価格イメージについては、ある程度の見通しを聞くことができた。
「DVDレコーダーは、10万円のレコーダー発売時、店頭売価500円のDVDが販売されました。レコーダーの発売サイクルは年1度程度となっていますし、今年秋にはコピーワンス見直しの内容も確定し、不確定要素がなくなるため、確実にコストダウンができるようになるはずです。そう考えると、個人的にはここらへんのタイミングで10万円レコーダーが登場するのでは、という感じがします」。
これには私も同意見で、10万円レコーダーが登場するタイミングに、メディアは1/200の価格。つまり、来年中にはBD-Rが1枚500円になる可能性があると思う。
また、BD-R LTHタイプの登場によって、従来からある無機材料を使ったメディアはどうなるのだろうか。これについても従来とは違った位置づけとなると予想される。
現時点でBD-R LTHタイプが1層25GBの1-2xのみとなっていることを考えると、2層50GBメディア、1-4xといった大容量・高速タイプについては従来からある無機材料のメディアが技術的にも有利であることは確かだろう。また、BD-REメディアについても今後は無機材料で作られ続ける。
そう考えると、今後は低価格な1層25GBメディアは有機色素のBD-R LTHタイプで統一され、大容量・高画質のハイエンドメディアは無機材料で、という棲み分けが行われるのが自然な流れとなるのではないだろうか。
BD-R LTHタイプの登場は、BDメディアの価格を一気に押し下げるだけのインパクトがあると期待される。今後ユーザーが手頃な価格でハイビジョンアーカイブを揃えられるようにするためにも、BD-R LTHタイプメディアと対応ハードの登場を期待して待つとしよう。
(折原一也)
執筆者プロフィール
埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。