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公開日 2007/12/19 12:05
【特別試聴】ONKYO「TX-SA605」で体験するHDオーディオの世界
ブルーレイディスク、HD DVDに収録される新しい高品位サラウンドにいち早く対応し、次世代AVアンプの主流に踊り出たオンキヨーの新ラインナップ。そのなかでも特に高いコストパフォーマンスを誇るTX-SA605にスポットを当て、HDオーディオが実現する新次元のクオリティをレポートする。
ピュアハイファイへサラウンドは進化する
2007年はAVアンプの年だった。HDMI Ver1.3aへの対応は、ブルーレイディスクやHD DVDに収録されるHDオーディオのビットストリーム再生を実現した。これだけの大きな変化はサラウンドがデジタルになり、ビットストリーム入力が定着した10年前以来である。しかし、ドルビーデジタルに代表されるサラウンドは、音質の向上にのみ意義があったのではなく、誰にでも扱いやすく再生しやすい便宜性が画期的だったのである。今回のHDオーディオへの対応が10年前と性質を異にしているのは、形式の変化でなくそれが「聴くこと」の静かな変革であるからだ。銃撃や爆発音の迫力と移動感表現が中心だった従来のサラウンド再生より一段上の、映画を音楽のように耳を欹てて聴く「映像音響のピュアハイファイ化」が始まったのである。
HDオーディオの魅力を引き出す新AVアンプ
HDMI Ver1.3aへの対応を機にアンプの機構から再構築し、再生音場のスケール感と音質のよさで私たちにHDオーディオが秘めるポテンシャルを存分に知らしめたのが、オンキヨーの新しいAVアンプ、TX-SA05系である。6月に世界の先陣を切って発売が開始され、夏までに早々とラインアップ化を達成、全4機種がHDMI Ver1.3aに対応したのだから、HDオーディオ対応アンプの主流に躍り出るのは当然の結果であった。その05系の中でも最も売れているベーシックモデルが今回紹介するTX-SA605(N/S)である。
84,000円という価格を目にして、HDMI Ver1.3a対応は間違いではないかとリリースを読み返したのは筆者だけではないはず。この価格帯では、後から発売された機種であってもHDMI Ver1.3aを謳っていながら、パススルーのみであったり、テレビ等とのリンクだけのものも混在する。その点本機はHDオーディオにフル対応したデコーダーを搭載し、ドルビーTrueHD、DTS-HDマスターオーディオなどの高品位サラウンドをビットストリーム形式で入力し、再生することができるので安心だ。また、フルスペックハイビジョン映像と36bitディープカラー、xvYCCにも対応するほか、他社プラズマテレビとのリンクも実現しているので、リビングへ設置したときでも操作に対する不安がない。
アンプとしての地力も堅実で、音声信号回路への電源供給ラインをセパレート化、電源回路に銅パスプレートを採用しインピーダンスを下げ、グランド電位の超安定化を図り、瞬時電流供給能力を向上させている。
TX-SA605で体験する高品位サラウンドの世界
TX-SA605には、全く新しい方式でパルス性ノイズを除去するVLSC回路や、再生時音質を重視したワイドレンジ化技術WRATといったオンキヨーの主要なアンプ技術が投入されており、上位モデルと構成上、共通の部分が多い。そうした地力の強さがクラスを越えた音質をもたらした。
高品位96kHz/24bitのドルビーTrueHDで収録された、筆者の必携盤BDソフト、デイヴ・マシューズ&ティム・レイノルズの『Live at Radio City Music Hall』(北米版)では、ボーカルは力強く、マシューズの弾くアコースティックギターD-18とティム・レイノルズのD-28の音色の対比も的確だ。
DTS-HDマスターオーディオで収録された『ダイ・ハード4.0』では、シャープなエッジの効果音、怒涛の動的描写でリスニングルームを街頭の戦場に変える。『スパイダーマン3』では、舞台に立ったメリー・ジェーンの歌唱がリニアPCMらしい、滑らかで伸びやかな響きでセンターから再生される。5.1chのバランスがよく、センターが明瞭なのが本機の完成度を証明している。ビルの谷間を縦横無尽に駆け巡るスパイダーマンの追跡シーンは、アップダウンの動き、風切音の切れ味も上位機に遜色ない。
TX-SA605は、私たちユーザーが求めやすい価格で、HDオーディオがもたらした新しい世界を存分に味わわせてくれる。もっと高価格の製品を狙う手もあるが、筆者は、その分のコストを使って7.1ch再生を試みることを勧めたい。サラウンドフォーマットがHDオーディオになり、移動表現一つをとっても、前から後ろへの単純な移動から空間の中のエネルギーバランスの描写へと向上している。HDオーディオがもたらしたサラウンドの革命の現場へ、TX-SA605があなたをきっと連れて行ってくれるはずだ。
(大橋伸太郎)
執筆者プロフィール
日本初にして現在も唯一の定期刊行ホームシアター専門誌「ホームシアターファイル」の編集長を務め、2006年にオーディオ・ビジュアル評論家へと転身。クラシックからロック、ジャズに至る音楽、新旧問わず豊富な映画知識を生かした評論に大きな期待が集まっている。
ONKYO TX-SA605 SPEC
●定格出力:120W×7ch(6Ω) ●実用最大出力:185W×7ch(6Ω) ●全高調波歪率:0.08%(定格出力時) ●周波数特性:5Hz~100kHz ●S/N:106dB ●スピーカー適応インピーダンス:4Ω~16Ω、または6Ω~16Ω ●映像入力端子:D4×3、RCAコンポーネント×3、S×5、コンポジット×5 ●HDMI端子:入力2/出力1(Ver.1.3a) ●映像出力端子:D4×1、コンポーネント×1、S×2、コンポジット×2 ●音声入力端子:同軸デジタル×2、光デジタル×3、アナログ(LR)×7、アナログ(7.1ch)×1 ●音声出力端子:光デジタル×1、アナログ(LR)×2、アナログ(7.1ch)×1 ●消費電力:450W ●待機時電力:0.1W ●外形寸法:435W×174H×377Dmm ●質量:12.1kg
ピュアハイファイへサラウンドは進化する
2007年はAVアンプの年だった。HDMI Ver1.3aへの対応は、ブルーレイディスクやHD DVDに収録されるHDオーディオのビットストリーム再生を実現した。これだけの大きな変化はサラウンドがデジタルになり、ビットストリーム入力が定着した10年前以来である。しかし、ドルビーデジタルに代表されるサラウンドは、音質の向上にのみ意義があったのではなく、誰にでも扱いやすく再生しやすい便宜性が画期的だったのである。今回のHDオーディオへの対応が10年前と性質を異にしているのは、形式の変化でなくそれが「聴くこと」の静かな変革であるからだ。銃撃や爆発音の迫力と移動感表現が中心だった従来のサラウンド再生より一段上の、映画を音楽のように耳を欹てて聴く「映像音響のピュアハイファイ化」が始まったのである。
HDオーディオの魅力を引き出す新AVアンプ
HDMI Ver1.3aへの対応を機にアンプの機構から再構築し、再生音場のスケール感と音質のよさで私たちにHDオーディオが秘めるポテンシャルを存分に知らしめたのが、オンキヨーの新しいAVアンプ、TX-SA05系である。6月に世界の先陣を切って発売が開始され、夏までに早々とラインアップ化を達成、全4機種がHDMI Ver1.3aに対応したのだから、HDオーディオ対応アンプの主流に躍り出るのは当然の結果であった。その05系の中でも最も売れているベーシックモデルが今回紹介するTX-SA605(N/S)である。
84,000円という価格を目にして、HDMI Ver1.3a対応は間違いではないかとリリースを読み返したのは筆者だけではないはず。この価格帯では、後から発売された機種であってもHDMI Ver1.3aを謳っていながら、パススルーのみであったり、テレビ等とのリンクだけのものも混在する。その点本機はHDオーディオにフル対応したデコーダーを搭載し、ドルビーTrueHD、DTS-HDマスターオーディオなどの高品位サラウンドをビットストリーム形式で入力し、再生することができるので安心だ。また、フルスペックハイビジョン映像と36bitディープカラー、xvYCCにも対応するほか、他社プラズマテレビとのリンクも実現しているので、リビングへ設置したときでも操作に対する不安がない。
アンプとしての地力も堅実で、音声信号回路への電源供給ラインをセパレート化、電源回路に銅パスプレートを採用しインピーダンスを下げ、グランド電位の超安定化を図り、瞬時電流供給能力を向上させている。
TX-SA605で体験する高品位サラウンドの世界
TX-SA605には、全く新しい方式でパルス性ノイズを除去するVLSC回路や、再生時音質を重視したワイドレンジ化技術WRATといったオンキヨーの主要なアンプ技術が投入されており、上位モデルと構成上、共通の部分が多い。そうした地力の強さがクラスを越えた音質をもたらした。
高品位96kHz/24bitのドルビーTrueHDで収録された、筆者の必携盤BDソフト、デイヴ・マシューズ&ティム・レイノルズの『Live at Radio City Music Hall』(北米版)では、ボーカルは力強く、マシューズの弾くアコースティックギターD-18とティム・レイノルズのD-28の音色の対比も的確だ。
DTS-HDマスターオーディオで収録された『ダイ・ハード4.0』では、シャープなエッジの効果音、怒涛の動的描写でリスニングルームを街頭の戦場に変える。『スパイダーマン3』では、舞台に立ったメリー・ジェーンの歌唱がリニアPCMらしい、滑らかで伸びやかな響きでセンターから再生される。5.1chのバランスがよく、センターが明瞭なのが本機の完成度を証明している。ビルの谷間を縦横無尽に駆け巡るスパイダーマンの追跡シーンは、アップダウンの動き、風切音の切れ味も上位機に遜色ない。
TX-SA605は、私たちユーザーが求めやすい価格で、HDオーディオがもたらした新しい世界を存分に味わわせてくれる。もっと高価格の製品を狙う手もあるが、筆者は、その分のコストを使って7.1ch再生を試みることを勧めたい。サラウンドフォーマットがHDオーディオになり、移動表現一つをとっても、前から後ろへの単純な移動から空間の中のエネルギーバランスの描写へと向上している。HDオーディオがもたらしたサラウンドの革命の現場へ、TX-SA605があなたをきっと連れて行ってくれるはずだ。
(大橋伸太郎)
執筆者プロフィール
日本初にして現在も唯一の定期刊行ホームシアター専門誌「ホームシアターファイル」の編集長を務め、2006年にオーディオ・ビジュアル評論家へと転身。クラシックからロック、ジャズに至る音楽、新旧問わず豊富な映画知識を生かした評論に大きな期待が集まっている。
ONKYO TX-SA605 SPEC
●定格出力:120W×7ch(6Ω) ●実用最大出力:185W×7ch(6Ω) ●全高調波歪率:0.08%(定格出力時) ●周波数特性:5Hz~100kHz ●S/N:106dB ●スピーカー適応インピーダンス:4Ω~16Ω、または6Ω~16Ω ●映像入力端子:D4×3、RCAコンポーネント×3、S×5、コンポジット×5 ●HDMI端子:入力2/出力1(Ver.1.3a) ●映像出力端子:D4×1、コンポーネント×1、S×2、コンポジット×2 ●音声入力端子:同軸デジタル×2、光デジタル×3、アナログ(LR)×7、アナログ(7.1ch)×1 ●音声出力端子:光デジタル×1、アナログ(LR)×2、アナログ(7.1ch)×1 ●消費電力:450W ●待機時電力:0.1W ●外形寸法:435W×174H×377Dmm ●質量:12.1kg