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公開日 2007/12/26 14:56
話題のH.264録画はどっちが便利? DMR-BW900とBDZ-X90で頂上対決(前編)
ハイビジョン番組の記録方式として、急速に普及しているBlu-ray Discレコーダー。2007年冬モデルでは、ソニーとパナソニックがHD解像度のまま長時間録画を実現できるMPEG4 AVC/H.264方式に対応した製品を発売し、注目を集めている。
これまでHD録画と言えば、HD放送をそのままの信号で記録する「DRモード」が主流だった。このDRモードは画質が良いものの、使い勝手はいまひとつだった。まずデータ容量がSD放送に比べて格段に大きく、現在のBDレコーダーが搭載する250GBから500GB程度のHDDの容量では存分に録画できなかった。そのためにHD画質の番組でも、DVD画質に落として録画することもしばしばだった。
DRモードは放送波をそのまま記録するので、BSと地上波などビットレートが違うデジタル放送を録画すると、録画できる時間に違いが出る。例えば25GBのBD-Rにビットレート24Mbpsで放送されるBSハイビジョン番組を録画する、と約2時間10分録画できる。しかしSD放送のBSデジタルのビットレートは12Mbpsなので、おなじ25GBでも倍の4時間20分を録画可能だ。地上デジタル放送はHD番組、SD番組ともにビットレートは17Mbpsで固定されているので、25GBに3時間録画できる。
筆者はBDレコーダーを使っていて、この微妙な録画時間に不便を感じていた。NHK BS-HiやデジタルWOWOWなどBSのハイビジョン放送は可変ビットレートなので、2時間の映画を録画しても25GBになることは少ない。だいたい1作の容量が、15GB~20GB以下なので、空きが出来る。安くなったとはいえ、まだBD-Rメディアは1枚あたり700円ぐらいはするので、この“空き"が気になって仕方がない。これが従来のアナログ放送ならDVDの容量に合わせて録画モードを指定できたが、これまでのHD放送で容量の空きを無くすには、DVD画質まで落とさなければいけなかったのだ。
今回ソニーとパナソニックが搭載してきたMPEG4 AVC/H.264方式での録画は、HDの解像度を保ったまま、アナログ録画のように、最終的に保存するBDの容量に合わせて録画できる画期的な機能だ。この機能を使うことでHDDやBDへ、HD画質で長時間録画することが可能になった。貧乏性の筆者としては「1枚のBDに映画を3本保存する」など、BDに空きをつくらずにHD画質のアーカイブを出来ることに注目している。
この冬モデルで、HD画質で長時間録画をするなら、ソニーのBDZシリーズかパナソニックの“DIGA”シリーズのどちらかを選ぶことになるだろうと筆者は考えている。ではどちらを選ぶべきなのかを知るために、両シリーズの最上位モデルでH.264録画の使い勝手を比べてみた。実際のテストに入る前に、各機種のプロフィール紹介をしたいと思う。ただし普通に製品のプロフィールを紹介しても面白みに欠けるので、各メーカーの担当者から開発にあたって注力した点や苦労話などのコメントをいただいた。
ソニー「BDZ-X90」開発者コメント
まずはソニーBDZシリーズ全体の開発を担当したソニー (株) ビデオ事業本部 ビデオ事業部門 商品企画MK部 商品企画1課の永井規浩さんに、開発者ならではの“親ばか"コメントをいただいた。
「BDZ-X90」は、「圧倒的な臨場感、多彩なハイビジョン映像の楽しみ、モノとしての美しさ」を、高画音質化技術、ハードウェア・ソフトウェア技術、デザインなど、あらゆるソニーの独自技術を駆使して、徹底追求したモデルです。
BDZ-X90のために専用設計したオーディオ回路には、AVアンプのESシリーズなどの高画音質技術を惜しみなく投じています。開発時には最新のAVアンプであるTA-DA5300ESなどの製品とマッチングを行うことで、圧倒的な臨場感を体感できる実力を備えました。ホームシアターは、映画館やライブ会場をある意味越えたプライベートな空間です。プライベートなハイビジョンシアターだからこそ、とことんこ映像と音声にだわれるレコーダーになっています。
機能面や操作面にも注目してください。形態素解析技術や独自の検索アルゴリズムで実現した新感覚の高速番組検索機能「気になる検索」を新搭載して番組を探す楽しみを加えました。また、自動録画機能の先駆けでもあるHDDレコーダー“コクーン”から脈々と継承される学習機能つき自動録画機能「x-おまかせ・まる録」や、“スゴ録”時代から培われた特徴点抽出技術による「おまかせチャプター」もバージョンアップして搭載しています。録画番組をPSPに高速で転送して、移動中に楽しめるとご好評いただいている「おでかけ・おかえり転送」にも対応しています。
「気になる検索」や「x-おまかせ・まる録」で、多チャンネルの海原から好みの番組をピックアップして録画、大量に録画した番組は「おまかせチャプター」で見どころをズバッと再生、そして移動中はPSPに録画番組を転送して番組を楽しむ。BDZ-X90ならテレビを快適に楽しむスタイルを提供できます。
今度のBDZシリーズは思い出を残すことも得意です。"ハンディカム"開発チームとの連携開発により、すべての形式の“ハイビジョン"ハンディカム"への対応を実現しました。ハイビジョンハンディカムで録画した映像をBDZ‐X90で思いのままに編集し、BDメディアに残せます。BDに記録すれば先ごろ低価格版が発売されたPLAYSTATION3で再生できます。思い出をハイビジョンで残す時代にふさわしい機能を備えたといえるでしょう。
デザインにもこだわりました。スタイリッシュな天面にはホームシアターに映える5mm厚の高光沢塗装1枚板を使用しました。前面扉を開けるとブルーのアクリルに、LEDでブルーレイディスクロゴが浮かび上がります。最高級のハイビジョンレコーダー所有する演出にまで、心を砕いてデザインしています。ソニーの最高の技術を惜しみなくつぎ込んだ、BDZ-X90の画質、音質、操作感、デザインはぜひ店頭でお確かめください!
【画質で注力したところ】
画質についてはビデオ事業本部ビデオ事業部門AVシステム設計部1課 統括課長 太田正志さんからコメントをいただいている。
BDZ-X90では、ソニーが持つ高画質化技術を惜しみもなく投入しました。ソニー独自の高画質AVCエンコード技術により低レートでも解像度感があり安定した映像を楽しめます。ノイズリダクション技術は映像の特性に合わせ、自動的に映像のノイズを除去する機能を備えています。BDZ-X90のみが搭載するDeep Color技術はデイーテールを失うことなく平坦部の階調をクリエーションし、なめらかな映像を表現します。BRAVIAエンジンプロにも搭載されているDRC-MFv2.5回路では、高精細なハイビジョン映像を更に鮮鋭感豊かに映し出します。デジタル放送を録画映像やBDビデオだけでなく、ハイビジョンハンディカムの映像までも、美しく再生できる。それがソニーの高画質化技術を集結してまとめあげたBDZ-X90の実力です。
【音質で注力したところ】
サウンドについてはビデオ事業本部 ビデオ事業部門 2部 1課 桑原邦和さんからコメントをいただいた。
今回最も力を注いだのはドルビーTrueHDとDTS-HD MasterAudioのロスレスオーディオ対応です。ただ機能的にロスレス対応するだけではなく、TA−DA5300ES開発チームと一緒に、アンプとレコーダーを組み合わせて実際のロスレスの音を聴きながらチューニングをしました。ロスレスは新しい技術ですから、設計の段階からレコーダーの技術者と、AVアンプの技術者がひざを突き合わせて新しい技術に取り組みました。
その成果は大きかった!AVアンプのチームにはオーディオ事業本部 ホームオーディオ事業部 主幹技師の金井主幹技師がいたので、とにかく両機種のマッチングには時間と技術を惜しまずにつぎ込みました。金井主幹技師に相談してBDZ-X90の音声回路を大幅に設計変更したことも、いまとなってはいい思い出です(笑)。これは音声を送り出す「BDZ-X90」と、その情報を受け取るAVアンプの「TA−DA5300ES」の両方を手がけるソニーならではの強みでした。BDZ-X90とTA−DA5300ESのタッグは強力ですよ!これからホームシアターを構築するなら、ぜひセットでどうぞ!
パナソニック DIGA 開発者コメント
【録画系画質について】
松下電器産業株式会社 PAVC社 ネットワーク事業グループビデオビジネスユニット 商品技術グループ 先行開発チーム 稲垣尋紀氏
新開発のHD長時間モードは、MPEG-4 AVCハイプロファイルの特長をフルに活用し、フルハイビジョン映像信号が持つ本来の精細感を極力損なうことなく、オリジナル映像を忠実に再現する事を目指しました。人の視覚特性を利用し、気になりにくい部分の情報量を削減することによって映像の再現性を高めるなど、随所に工夫を凝らしています。
これまでSD(Standard Difinition)のMPEG2エンコードで培ってきたDIGA独自技術(ハイブリッドVBR、バーチャルマルチエンコーダ等)もハイビジョン映像用に進化させ、高い圧縮率を実現しています。ビットレートが最も低いHEモードでも、ハイビジョンらしい精細感やディテイル表現を充分に楽しんで頂けると思います。
【再生系画質について】
再生画質については、松下電器産業株式会社 PAVC社 ネットワーク事業グループビデオビジネスユニット 商品技術グループ 先行開発チーム 金澤貞善氏からコメントをいただいた。
本商品の再生映像系での特長を2点、ご紹介します。
(1)PHL標準高精度色信号処理
BDには4:2:0と呼ばれる方式で映像が記録されており、出画するには色のアップサンプル処理が必要です。
弊社、PHL(パナソニックハリウッド研究所・Panasonic Hollywood Laboratory)では、エンコーダー開発を通じ、この処理が画質に影響する事を突き止め、独自方式を開発、画質評価に用いています。今回我々は、それと同じ方式をレコーダに搭載しました。
そのため我々は、PHLで連日徹夜の評価を行い、非圧縮の原画に比べ遜色ない再生画を実現しました。原画に迫る「質感」や「透明な空気感」を味わって頂きたいと思います。
(2)DVDの高画質再生
DVDでも、今まで築いてきた高画質技術を基に信号処理を一から見直し、色信号を含めた画素単位プログレッシブ変換と、素材情報を全帯域で引き出すアップコンの開発を行いました。記録されている情報を可能な限り引き出した、新たなDVD画質を堪能して頂きたいと思います。
【音質について】
音質については ネットワーク事業グループビデオビジネスユニット 商品技術グループ HD/BDハード設計チーム梅迫 実氏からコメントをいただいた。
DMR−BW900には、高品位なBDソフト再生のために、ピュアオーディオ用の高音質パーツを随所に使用しています。銅箔フイルムを巻いたコンデンサや、高級オーディオケーブル等で音質的に定評のある高音質素材のポリオレフィンをスリーブに採用した音響用コンデンサ等を随所に採用しています。アナログ出力のオペアンプには、電磁誘導ノイズに強い銅フレームのオペアンプを採用しています。
これらの高音質パーツの性能を十分に引き出すために、オーディオの電源部にもリード線にOFCを使った超低インピーダンスの電解コンデンサや、応答の良いハイスピードレギュレータを採用しています。電源ケーブルもOFCタイプを採用しています。
また、デジタル放送のAACなどの圧縮音声信号の音質改善に有効な「マルチチャンネル デジタル リ.マスター」も搭載し、今回は、対応範囲をBDビデオにまで拡大し、すべてのソースでの効果を実現しています。
今回、HDオーディオのストリーム出力に対応するにあたり、HDMI出力での音質も改善しました。新たに、自社製のHDMI送信LSIを搭載していますが、その開発過程で、ビデオのクロックからオーディオのクロックをアンプ側で生成する際に、音質的に悪い影響のあるジッタが発生しにくい伝送方法を開発し、このLSIに実装しています。BDビデオの映画を1080/24Pでロスレス伝送する際に大きな音質改善効果を実現しました。
以上が実際に開発に携わった方々からいただいたコメントだ。みなさんのコメントは実に熱い!これもわが子のように愛情を注いで設計したレコーダをーを思えばこそだろう。多忙なスケジュールを割いてコメントを寄せていただいた開発者の皆さんに感謝するとともに、人の想いが集まって製品ができるということを、実感できた。
さて、いよいよ次回はH.264で実際に録画してテストを行う。テストでは考えもしなかった発見があったので、次回の公開を楽しみにしていただきたい!
(鈴木桂水)
執筆者プロフィール
元産業用ロボットメーカーの開発、設計担当を経て、現在はAV機器とパソコン周辺機器を主に扱うフリーライター。テレビ番組表を日夜分析している自称「テレビ番組表アナリスト」でもある。ユーザーの視点と元エンジニアの直感を頼りに、使いこなし系のコラムを得意とする。そのほかAV機器の情報雑誌などで執筆中。
>>鈴木桂水氏のブログはこちら
これまでHD録画と言えば、HD放送をそのままの信号で記録する「DRモード」が主流だった。このDRモードは画質が良いものの、使い勝手はいまひとつだった。まずデータ容量がSD放送に比べて格段に大きく、現在のBDレコーダーが搭載する250GBから500GB程度のHDDの容量では存分に録画できなかった。そのためにHD画質の番組でも、DVD画質に落として録画することもしばしばだった。
DRモードは放送波をそのまま記録するので、BSと地上波などビットレートが違うデジタル放送を録画すると、録画できる時間に違いが出る。例えば25GBのBD-Rにビットレート24Mbpsで放送されるBSハイビジョン番組を録画する、と約2時間10分録画できる。しかしSD放送のBSデジタルのビットレートは12Mbpsなので、おなじ25GBでも倍の4時間20分を録画可能だ。地上デジタル放送はHD番組、SD番組ともにビットレートは17Mbpsで固定されているので、25GBに3時間録画できる。
筆者はBDレコーダーを使っていて、この微妙な録画時間に不便を感じていた。NHK BS-HiやデジタルWOWOWなどBSのハイビジョン放送は可変ビットレートなので、2時間の映画を録画しても25GBになることは少ない。だいたい1作の容量が、15GB~20GB以下なので、空きが出来る。安くなったとはいえ、まだBD-Rメディアは1枚あたり700円ぐらいはするので、この“空き"が気になって仕方がない。これが従来のアナログ放送ならDVDの容量に合わせて録画モードを指定できたが、これまでのHD放送で容量の空きを無くすには、DVD画質まで落とさなければいけなかったのだ。
今回ソニーとパナソニックが搭載してきたMPEG4 AVC/H.264方式での録画は、HDの解像度を保ったまま、アナログ録画のように、最終的に保存するBDの容量に合わせて録画できる画期的な機能だ。この機能を使うことでHDDやBDへ、HD画質で長時間録画することが可能になった。貧乏性の筆者としては「1枚のBDに映画を3本保存する」など、BDに空きをつくらずにHD画質のアーカイブを出来ることに注目している。
この冬モデルで、HD画質で長時間録画をするなら、ソニーのBDZシリーズかパナソニックの“DIGA”シリーズのどちらかを選ぶことになるだろうと筆者は考えている。ではどちらを選ぶべきなのかを知るために、両シリーズの最上位モデルでH.264録画の使い勝手を比べてみた。実際のテストに入る前に、各機種のプロフィール紹介をしたいと思う。ただし普通に製品のプロフィールを紹介しても面白みに欠けるので、各メーカーの担当者から開発にあたって注力した点や苦労話などのコメントをいただいた。
ソニー「BDZ-X90」開発者コメント
まずはソニーBDZシリーズ全体の開発を担当したソニー (株) ビデオ事業本部 ビデオ事業部門 商品企画MK部 商品企画1課の永井規浩さんに、開発者ならではの“親ばか"コメントをいただいた。
「BDZ-X90」は、「圧倒的な臨場感、多彩なハイビジョン映像の楽しみ、モノとしての美しさ」を、高画音質化技術、ハードウェア・ソフトウェア技術、デザインなど、あらゆるソニーの独自技術を駆使して、徹底追求したモデルです。
BDZ-X90のために専用設計したオーディオ回路には、AVアンプのESシリーズなどの高画音質技術を惜しみなく投じています。開発時には最新のAVアンプであるTA-DA5300ESなどの製品とマッチングを行うことで、圧倒的な臨場感を体感できる実力を備えました。ホームシアターは、映画館やライブ会場をある意味越えたプライベートな空間です。プライベートなハイビジョンシアターだからこそ、とことんこ映像と音声にだわれるレコーダーになっています。
機能面や操作面にも注目してください。形態素解析技術や独自の検索アルゴリズムで実現した新感覚の高速番組検索機能「気になる検索」を新搭載して番組を探す楽しみを加えました。また、自動録画機能の先駆けでもあるHDDレコーダー“コクーン”から脈々と継承される学習機能つき自動録画機能「x-おまかせ・まる録」や、“スゴ録”時代から培われた特徴点抽出技術による「おまかせチャプター」もバージョンアップして搭載しています。録画番組をPSPに高速で転送して、移動中に楽しめるとご好評いただいている「おでかけ・おかえり転送」にも対応しています。
「気になる検索」や「x-おまかせ・まる録」で、多チャンネルの海原から好みの番組をピックアップして録画、大量に録画した番組は「おまかせチャプター」で見どころをズバッと再生、そして移動中はPSPに録画番組を転送して番組を楽しむ。BDZ-X90ならテレビを快適に楽しむスタイルを提供できます。
今度のBDZシリーズは思い出を残すことも得意です。"ハンディカム"開発チームとの連携開発により、すべての形式の“ハイビジョン"ハンディカム"への対応を実現しました。ハイビジョンハンディカムで録画した映像をBDZ‐X90で思いのままに編集し、BDメディアに残せます。BDに記録すれば先ごろ低価格版が発売されたPLAYSTATION3で再生できます。思い出をハイビジョンで残す時代にふさわしい機能を備えたといえるでしょう。
デザインにもこだわりました。スタイリッシュな天面にはホームシアターに映える5mm厚の高光沢塗装1枚板を使用しました。前面扉を開けるとブルーのアクリルに、LEDでブルーレイディスクロゴが浮かび上がります。最高級のハイビジョンレコーダー所有する演出にまで、心を砕いてデザインしています。ソニーの最高の技術を惜しみなくつぎ込んだ、BDZ-X90の画質、音質、操作感、デザインはぜひ店頭でお確かめください!
【画質で注力したところ】
画質についてはビデオ事業本部ビデオ事業部門AVシステム設計部1課 統括課長 太田正志さんからコメントをいただいている。
BDZ-X90では、ソニーが持つ高画質化技術を惜しみもなく投入しました。ソニー独自の高画質AVCエンコード技術により低レートでも解像度感があり安定した映像を楽しめます。ノイズリダクション技術は映像の特性に合わせ、自動的に映像のノイズを除去する機能を備えています。BDZ-X90のみが搭載するDeep Color技術はデイーテールを失うことなく平坦部の階調をクリエーションし、なめらかな映像を表現します。BRAVIAエンジンプロにも搭載されているDRC-MFv2.5回路では、高精細なハイビジョン映像を更に鮮鋭感豊かに映し出します。デジタル放送を録画映像やBDビデオだけでなく、ハイビジョンハンディカムの映像までも、美しく再生できる。それがソニーの高画質化技術を集結してまとめあげたBDZ-X90の実力です。
【音質で注力したところ】
サウンドについてはビデオ事業本部 ビデオ事業部門 2部 1課 桑原邦和さんからコメントをいただいた。
今回最も力を注いだのはドルビーTrueHDとDTS-HD MasterAudioのロスレスオーディオ対応です。ただ機能的にロスレス対応するだけではなく、TA−DA5300ES開発チームと一緒に、アンプとレコーダーを組み合わせて実際のロスレスの音を聴きながらチューニングをしました。ロスレスは新しい技術ですから、設計の段階からレコーダーの技術者と、AVアンプの技術者がひざを突き合わせて新しい技術に取り組みました。
その成果は大きかった!AVアンプのチームにはオーディオ事業本部 ホームオーディオ事業部 主幹技師の金井主幹技師がいたので、とにかく両機種のマッチングには時間と技術を惜しまずにつぎ込みました。金井主幹技師に相談してBDZ-X90の音声回路を大幅に設計変更したことも、いまとなってはいい思い出です(笑)。これは音声を送り出す「BDZ-X90」と、その情報を受け取るAVアンプの「TA−DA5300ES」の両方を手がけるソニーならではの強みでした。BDZ-X90とTA−DA5300ESのタッグは強力ですよ!これからホームシアターを構築するなら、ぜひセットでどうぞ!
パナソニック DIGA 開発者コメント
【録画系画質について】
松下電器産業株式会社 PAVC社 ネットワーク事業グループビデオビジネスユニット 商品技術グループ 先行開発チーム 稲垣尋紀氏
新開発のHD長時間モードは、MPEG-4 AVCハイプロファイルの特長をフルに活用し、フルハイビジョン映像信号が持つ本来の精細感を極力損なうことなく、オリジナル映像を忠実に再現する事を目指しました。人の視覚特性を利用し、気になりにくい部分の情報量を削減することによって映像の再現性を高めるなど、随所に工夫を凝らしています。
これまでSD(Standard Difinition)のMPEG2エンコードで培ってきたDIGA独自技術(ハイブリッドVBR、バーチャルマルチエンコーダ等)もハイビジョン映像用に進化させ、高い圧縮率を実現しています。ビットレートが最も低いHEモードでも、ハイビジョンらしい精細感やディテイル表現を充分に楽しんで頂けると思います。
【再生系画質について】
再生画質については、松下電器産業株式会社 PAVC社 ネットワーク事業グループビデオビジネスユニット 商品技術グループ 先行開発チーム 金澤貞善氏からコメントをいただいた。
本商品の再生映像系での特長を2点、ご紹介します。
(1)PHL標準高精度色信号処理
BDには4:2:0と呼ばれる方式で映像が記録されており、出画するには色のアップサンプル処理が必要です。
弊社、PHL(パナソニックハリウッド研究所・Panasonic Hollywood Laboratory)では、エンコーダー開発を通じ、この処理が画質に影響する事を突き止め、独自方式を開発、画質評価に用いています。今回我々は、それと同じ方式をレコーダに搭載しました。
そのため我々は、PHLで連日徹夜の評価を行い、非圧縮の原画に比べ遜色ない再生画を実現しました。原画に迫る「質感」や「透明な空気感」を味わって頂きたいと思います。
(2)DVDの高画質再生
DVDでも、今まで築いてきた高画質技術を基に信号処理を一から見直し、色信号を含めた画素単位プログレッシブ変換と、素材情報を全帯域で引き出すアップコンの開発を行いました。記録されている情報を可能な限り引き出した、新たなDVD画質を堪能して頂きたいと思います。
【音質について】
音質については ネットワーク事業グループビデオビジネスユニット 商品技術グループ HD/BDハード設計チーム梅迫 実氏からコメントをいただいた。
DMR−BW900には、高品位なBDソフト再生のために、ピュアオーディオ用の高音質パーツを随所に使用しています。銅箔フイルムを巻いたコンデンサや、高級オーディオケーブル等で音質的に定評のある高音質素材のポリオレフィンをスリーブに採用した音響用コンデンサ等を随所に採用しています。アナログ出力のオペアンプには、電磁誘導ノイズに強い銅フレームのオペアンプを採用しています。
これらの高音質パーツの性能を十分に引き出すために、オーディオの電源部にもリード線にOFCを使った超低インピーダンスの電解コンデンサや、応答の良いハイスピードレギュレータを採用しています。電源ケーブルもOFCタイプを採用しています。
また、デジタル放送のAACなどの圧縮音声信号の音質改善に有効な「マルチチャンネル デジタル リ.マスター」も搭載し、今回は、対応範囲をBDビデオにまで拡大し、すべてのソースでの効果を実現しています。
今回、HDオーディオのストリーム出力に対応するにあたり、HDMI出力での音質も改善しました。新たに、自社製のHDMI送信LSIを搭載していますが、その開発過程で、ビデオのクロックからオーディオのクロックをアンプ側で生成する際に、音質的に悪い影響のあるジッタが発生しにくい伝送方法を開発し、このLSIに実装しています。BDビデオの映画を1080/24Pでロスレス伝送する際に大きな音質改善効果を実現しました。
以上が実際に開発に携わった方々からいただいたコメントだ。みなさんのコメントは実に熱い!これもわが子のように愛情を注いで設計したレコーダをーを思えばこそだろう。多忙なスケジュールを割いてコメントを寄せていただいた開発者の皆さんに感謝するとともに、人の想いが集まって製品ができるということを、実感できた。
さて、いよいよ次回はH.264で実際に録画してテストを行う。テストでは考えもしなかった発見があったので、次回の公開を楽しみにしていただきたい!
(鈴木桂水)
執筆者プロフィール
元産業用ロボットメーカーの開発、設計担当を経て、現在はAV機器とパソコン周辺機器を主に扱うフリーライター。テレビ番組表を日夜分析している自称「テレビ番組表アナリスト」でもある。ユーザーの視点と元エンジニアの直感を頼りに、使いこなし系のコラムを得意とする。そのほかAV機器の情報雑誌などで執筆中。
>>鈴木桂水氏のブログはこちら