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公開日 2008/02/19 13:48
【会見動画・質疑応答追加】東芝、HD DVD撤退を正式発表 − BD製品は「現状発売する予定ない」
(株)東芝は、同社が中心になり開発した次世代DVD規格「HD DVD」に基づく製品の開発・製造から撤退することを発表した。本日、同社代表執行役社長の西田厚聰氏が出席し、都内で記者会見を行った。
以下に記者会見の動画レポートを掲載する。
HD DVDプレーヤーとレコーダーの新商品の開発、生産は中止する。また、今後、同社からの製品出荷は縮小し、今年3月を目途に事業を終息させる。
さらにPCやXbox 360向けのHD DVDドライブについても、「顧客企業の需要に配慮しつつ」、量産を終了するという。HD DVDドライブ搭載の同社製ノートPCについては、「今後の市場ニーズをふまえ、PC事業全体の中での位置づけを検討する」としている。
また、既存のユーザーに対しては、サポートとアフターサービスを今後も継続する。具体的には、コールセンターを強化し、HD DVDインフォメーションセンターの体制を強化するとともに、光ディスクを今後も供給できるよう、製造メーカーと協議を行い、場合によってはオンラインショップでの販売も検討する。海外についても、国内に準じた対応を行うという。
なお、現行のDVDプレーヤーとレコーダーについては、従来通り事業を継続する。
西田氏は今回の発表について「年初来の事業環境の急変を受け、1日も早い意志決定が不可欠と判断した」と説明。「たびたび質問をもらい、一部先行して報道されている内容でもあるので、会社が意志決定したタイミングで発表する必要があると考え、今回発表の機会を設けた」と述べた。
撤退の理由について西田氏は「1991年に資本提携を行い、緊密な関係にあったワーナー・ブラザーズから年始に突然の方針変更が説明され、残念ながら、競争環境が大きく変わってしまった」とし、「HD DVDの規格としての優位性についての自信は依然変わっていない。既存ユーザーやパートナー企業のことを考えると苦渋の決断ではあるが、複数規格が併存することによる消費者の混乱の問題なども鑑み、事業の終息を決めた」とした。
同社がHD DVDから撤退を検討しているとの動向は先週末から複数メディアによって報じられていたが(関連ニュース)、本日の正式なアナウンスにより、次世代DVD規格はソニーやパナソニックなどが推進するBlu-ray Discに一本化。長きにわたる規格戦争に幕が引かれることになる。
年明けからワーナーがBDでの独占販売移行を表明したことに続き、今月に入ってから米大手家電小売店の「Best Buy」や「Wal-Mart」が相次いでBDフォーマットの支持を宣言。今回の撤退はこれらの動向を受けたものとなる。
■「現時点ではBD製品の開発・販売予定ない」 ー 当面はNAND型フラッシュメモリなどに注力
今後の事業展開について西田氏は「現時点では、BDをベースにしたレコーダーやプレーヤーを開発・販売する計画は全くない」とコメント。「市場動向を見極めながら、NAND型フラッシュメモリやHDDストレージ技術、次世代CPUなどを最大限に活かし、新たなデジタルコンバージェンス時代に適した次世代映像事業の中長期的な戦略を再構築したい」と語った。
なかでもNAND型フラッシュメモリは、需要の拡大を受け、三重県四日市市にある同社四日市工場内、および岩手県北上市の岩手東芝エレクトロニクス(株)敷地内に新製造棟を建設し、生産能力の増強を図る。両製造棟とも2009年春より着工し、竣工は2010年を予定。生産計画などの詳細は「今後の市場動向や建設準備作業を踏まえ、改めて決定する」とし明言を避けたが、生産キャパシティは15〜20万枚程度になるとのことである。
さらに、サンディスクコーポレーションと、NAND型フラッシュメモリ新合弁会社設立について基本合意。新製造棟に300mmウェハーに対応した共同生産ラインを整備し、生産量を両者で均分することとする。
以下、発表会で執り行われた質疑応答の主な内容を掲載する。
Q.Blu-ray対HD DVDという規格争いが、今回のように東芝の意に沿わぬ結果になった理由はどこにあったと考えるか。
A.やはりワーナーの方針転換だろう。12月の終わりから1月のはじめまでは、プレーヤーやPC搭載ドライブなどを合わせ、HD DVDの方が高いシェアを占めていた状況があり、これから大きく力を伸ばしていこうという状況だった。しかしそこにワーナーの方針転換という寝耳に水の動きが起こり、アメリカの小売業者の反応を促した。これ以上規格競争を継続することは消費者の利益にならないし、もはや勝ち目はないと考え、HD DVD事業からの撤退を決断するに至った。
Q.現在HD DVD関連製品を製造している工場は今後どうなるのか。
A.東芝グループ全体の中には様々な事業があるので、何らかの東芝製品を作ってもらうことになるだろう。最終的にどういうかたちにするかは現状では決まっていないが、なるべく早く決定したいと考えている。
Q.HD DVDのみを支持しているユニバーサルスタジオやパラマウントは今後どのような対応をとっていくのか。
A.両社に撤退方針の説明は既に行っているが、その上で今後どういう展開をするかという決定権はスタジオにあるため、私からは説明できない。
Q.ワーナーの方針転換は寝耳に水だったとのことだが、DVD時代からの長いつきあいであり、HD DVD支持契約もしていたことに油断していたのではないか。
A.油断と言えば油断かもしれない。しかしまさか、契約が切れる前のタイミングでああいった決断がなされるとは思わなかった。
Q. パラマウントから契約金は返ってくるか?
A.この件に関してはあくまで憶測に過ぎないため、お答えできない。
Q.HD DVD開発に携わった技術者といった社員の処遇はどのようになるのか。
A.HD DVD開発チームに所属していた社員はみな高い技術力を持っている。そのため今後は東芝の映像事業など、適材適所に配置し従事してもらいたいと考えている。
Q.米国市場において、事業を終息する製品、再生するソフトのない製品を売ったということで訴訟を起こされるリスクがあるのではないか。
A.米国は訴訟社会であり、訴訟のリスクは常に有るものだ。しかし万一訴訟を起こされた場合でも、我々はメーカーとしてハードを売ってきただけであり、ソフトも含めた責任を全て負うわけではない。そのため訴訟に敗訴するリスクは低いのではないかと考えている。
Q.BD再生機能を搭載したマルチドライブを開発する可能性はあるのか。
A.現在のPC向けHD DVDドライブは、現行のDVDスーパーマルチの機能をすべて持っている。全世界で1,000本のタイトルが見られるので、これを見たいというユーザーもいるだろう。
Q.今期考えられる費用項目はどのようなものがあるか。
A.在庫処理など不確定な要素が非常に多く、はっきりとはお答えできない。今後いろいろなシナリオを作って精査していきたい。
Q.来期は営業赤字もなく、次世代光ディスクでの赤字はなく進むのか
A.基本的にはそうだが、詳細はお答えできない。
Q.HD DVD機器はこれまで何台売れたのか?
A.以下のとおりだ。
国内…プレーヤー:約1万台/レコーダー:約2万台
全世界…プレーヤー:約70万台(内訳:北米60万台、欧州10万台)
Xbox 360用HD DVDドライブ:(正確に把握していないが)全世界で30万台程度
HD DVDドライブ搭載PC:国内約2万台/全世界約30万台(内訳:北米約14万台、欧州約14万台)
Q.HD DVDメディアの継続販売で赤字を被る可能性のあるメーカーも存在するだろうが、これにどう対応するのか。
A.将来的には我々がメーカーから買い取り、当社のオンラインショップで販売することも検討している。
Q.既にHD DVDプレーヤーやレコーダーを所有しているユーザーにとって、新たなソフトタイトルが出ないことは非常に不利益となる。HD DVDタイトルの発売を継続するなどといったソフトメーカーへの働きかけは行うのか。
A.これはどうしようもないこと。我々はハードメーカーなので、自分たちで決めることはできない。そもそもHD DVDは、ハリウッドスタジオの意見も採り入れながら規格を作り上げた。そのハリウッドスタジオが、自分たちが中心に入って作り上げた規格を捨て、BDを支持したことは正直に言ってよくわからないが、彼らもビジネスをしているということだ。我々が何らかの補償をするわけにはいかないことだろう。
HD DVDは、DVDソフトとの完全なコンパチビリティーを持っており、HD DVDプレーヤーで現行のDVDソフトを再生すると、アップコンバート機能によりHDにほぼ近い画質で視聴することができる。HD DVDタイトルは現在までにリリースされたものが多数ある。レコーダーについては、HDDを搭載しているため、HDDレコーダーとして今後も使用することができるだろう。
(Phile-web編集部)
以下に記者会見の動画レポートを掲載する。
HD DVDプレーヤーとレコーダーの新商品の開発、生産は中止する。また、今後、同社からの製品出荷は縮小し、今年3月を目途に事業を終息させる。
さらにPCやXbox 360向けのHD DVDドライブについても、「顧客企業の需要に配慮しつつ」、量産を終了するという。HD DVDドライブ搭載の同社製ノートPCについては、「今後の市場ニーズをふまえ、PC事業全体の中での位置づけを検討する」としている。
また、既存のユーザーに対しては、サポートとアフターサービスを今後も継続する。具体的には、コールセンターを強化し、HD DVDインフォメーションセンターの体制を強化するとともに、光ディスクを今後も供給できるよう、製造メーカーと協議を行い、場合によってはオンラインショップでの販売も検討する。海外についても、国内に準じた対応を行うという。
なお、現行のDVDプレーヤーとレコーダーについては、従来通り事業を継続する。
西田氏は今回の発表について「年初来の事業環境の急変を受け、1日も早い意志決定が不可欠と判断した」と説明。「たびたび質問をもらい、一部先行して報道されている内容でもあるので、会社が意志決定したタイミングで発表する必要があると考え、今回発表の機会を設けた」と述べた。
撤退の理由について西田氏は「1991年に資本提携を行い、緊密な関係にあったワーナー・ブラザーズから年始に突然の方針変更が説明され、残念ながら、競争環境が大きく変わってしまった」とし、「HD DVDの規格としての優位性についての自信は依然変わっていない。既存ユーザーやパートナー企業のことを考えると苦渋の決断ではあるが、複数規格が併存することによる消費者の混乱の問題なども鑑み、事業の終息を決めた」とした。
同社がHD DVDから撤退を検討しているとの動向は先週末から複数メディアによって報じられていたが(関連ニュース)、本日の正式なアナウンスにより、次世代DVD規格はソニーやパナソニックなどが推進するBlu-ray Discに一本化。長きにわたる規格戦争に幕が引かれることになる。
年明けからワーナーがBDでの独占販売移行を表明したことに続き、今月に入ってから米大手家電小売店の「Best Buy」や「Wal-Mart」が相次いでBDフォーマットの支持を宣言。今回の撤退はこれらの動向を受けたものとなる。
■「現時点ではBD製品の開発・販売予定ない」 ー 当面はNAND型フラッシュメモリなどに注力
今後の事業展開について西田氏は「現時点では、BDをベースにしたレコーダーやプレーヤーを開発・販売する計画は全くない」とコメント。「市場動向を見極めながら、NAND型フラッシュメモリやHDDストレージ技術、次世代CPUなどを最大限に活かし、新たなデジタルコンバージェンス時代に適した次世代映像事業の中長期的な戦略を再構築したい」と語った。
なかでもNAND型フラッシュメモリは、需要の拡大を受け、三重県四日市市にある同社四日市工場内、および岩手県北上市の岩手東芝エレクトロニクス(株)敷地内に新製造棟を建設し、生産能力の増強を図る。両製造棟とも2009年春より着工し、竣工は2010年を予定。生産計画などの詳細は「今後の市場動向や建設準備作業を踏まえ、改めて決定する」とし明言を避けたが、生産キャパシティは15〜20万枚程度になるとのことである。
さらに、サンディスクコーポレーションと、NAND型フラッシュメモリ新合弁会社設立について基本合意。新製造棟に300mmウェハーに対応した共同生産ラインを整備し、生産量を両者で均分することとする。
以下、発表会で執り行われた質疑応答の主な内容を掲載する。
Q.Blu-ray対HD DVDという規格争いが、今回のように東芝の意に沿わぬ結果になった理由はどこにあったと考えるか。
A.やはりワーナーの方針転換だろう。12月の終わりから1月のはじめまでは、プレーヤーやPC搭載ドライブなどを合わせ、HD DVDの方が高いシェアを占めていた状況があり、これから大きく力を伸ばしていこうという状況だった。しかしそこにワーナーの方針転換という寝耳に水の動きが起こり、アメリカの小売業者の反応を促した。これ以上規格競争を継続することは消費者の利益にならないし、もはや勝ち目はないと考え、HD DVD事業からの撤退を決断するに至った。
Q.現在HD DVD関連製品を製造している工場は今後どうなるのか。
A.東芝グループ全体の中には様々な事業があるので、何らかの東芝製品を作ってもらうことになるだろう。最終的にどういうかたちにするかは現状では決まっていないが、なるべく早く決定したいと考えている。
Q.HD DVDのみを支持しているユニバーサルスタジオやパラマウントは今後どのような対応をとっていくのか。
A.両社に撤退方針の説明は既に行っているが、その上で今後どういう展開をするかという決定権はスタジオにあるため、私からは説明できない。
Q.ワーナーの方針転換は寝耳に水だったとのことだが、DVD時代からの長いつきあいであり、HD DVD支持契約もしていたことに油断していたのではないか。
A.油断と言えば油断かもしれない。しかしまさか、契約が切れる前のタイミングでああいった決断がなされるとは思わなかった。
Q. パラマウントから契約金は返ってくるか?
A.この件に関してはあくまで憶測に過ぎないため、お答えできない。
Q.HD DVD開発に携わった技術者といった社員の処遇はどのようになるのか。
A.HD DVD開発チームに所属していた社員はみな高い技術力を持っている。そのため今後は東芝の映像事業など、適材適所に配置し従事してもらいたいと考えている。
Q.米国市場において、事業を終息する製品、再生するソフトのない製品を売ったということで訴訟を起こされるリスクがあるのではないか。
A.米国は訴訟社会であり、訴訟のリスクは常に有るものだ。しかし万一訴訟を起こされた場合でも、我々はメーカーとしてハードを売ってきただけであり、ソフトも含めた責任を全て負うわけではない。そのため訴訟に敗訴するリスクは低いのではないかと考えている。
Q.BD再生機能を搭載したマルチドライブを開発する可能性はあるのか。
A.現在のPC向けHD DVDドライブは、現行のDVDスーパーマルチの機能をすべて持っている。全世界で1,000本のタイトルが見られるので、これを見たいというユーザーもいるだろう。
Q.今期考えられる費用項目はどのようなものがあるか。
A.在庫処理など不確定な要素が非常に多く、はっきりとはお答えできない。今後いろいろなシナリオを作って精査していきたい。
Q.来期は営業赤字もなく、次世代光ディスクでの赤字はなく進むのか
A.基本的にはそうだが、詳細はお答えできない。
Q.HD DVD機器はこれまで何台売れたのか?
A.以下のとおりだ。
国内…プレーヤー:約1万台/レコーダー:約2万台
全世界…プレーヤー:約70万台(内訳:北米60万台、欧州10万台)
Xbox 360用HD DVDドライブ:(正確に把握していないが)全世界で30万台程度
HD DVDドライブ搭載PC:国内約2万台/全世界約30万台(内訳:北米約14万台、欧州約14万台)
Q.HD DVDメディアの継続販売で赤字を被る可能性のあるメーカーも存在するだろうが、これにどう対応するのか。
A.将来的には我々がメーカーから買い取り、当社のオンラインショップで販売することも検討している。
Q.既にHD DVDプレーヤーやレコーダーを所有しているユーザーにとって、新たなソフトタイトルが出ないことは非常に不利益となる。HD DVDタイトルの発売を継続するなどといったソフトメーカーへの働きかけは行うのか。
A.これはどうしようもないこと。我々はハードメーカーなので、自分たちで決めることはできない。そもそもHD DVDは、ハリウッドスタジオの意見も採り入れながら規格を作り上げた。そのハリウッドスタジオが、自分たちが中心に入って作り上げた規格を捨て、BDを支持したことは正直に言ってよくわからないが、彼らもビジネスをしているということだ。我々が何らかの補償をするわけにはいかないことだろう。
HD DVDは、DVDソフトとの完全なコンパチビリティーを持っており、HD DVDプレーヤーで現行のDVDソフトを再生すると、アップコンバート機能によりHDにほぼ近い画質で視聴することができる。HD DVDタイトルは現在までにリリースされたものが多数ある。レコーダーについては、HDDを搭載しているため、HDDレコーダーとして今後も使用することができるだろう。
(Phile-web編集部)