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公開日 2014/12/16 21:40
NSM、8K/4KテレビでBT.2020を100%カバーできる“量子ドット蛍光体”
広色域を実現する新蛍光体
NSマテリアルズ(株)は、同社が開発した量子ドット技術による、高輝度LED光源用高機能ナノ蛍光体について、テレビやモバイル端末における実用化と有効性に関する発表会を開催した。
NSマテリアルズは、独立行政法人産業技術総合研究所と共同開発した独自のマイクロ空間化学技術によるLED光源用の新しい蛍光体「量子ドット=QD(Quantum Dot)蛍光体」の量産技術を有する会社。
量子ドット蛍光体は、スマートフォン/タブレット、ノートPC、テレビなどの液晶ディスプレイへの適用が期待される蛍光体。NSマテリマルズの今回の発表によれば、特に液晶ディスプレイの分野では、量子ドット蛍光体を採用することにより、8Kテレビなどの高解像度ディスプレイでNTSC規格の色空間を超え、BT.2020規格を100%サポートする色表現が可能になるという。一方、スマートフォン/タブレットなどのモバイル機器に採用した場合は、色再現性とバッテリー寿命の飛躍的な向上が期待できるとのこと。
実際の製品としては、量子ドット蛍光体をスティック状にした「QD Stick」やフィルム状にした「QD Sheet」などをラインナップしている。フィルム状のQD Sheetは導光板の上に設置する形で、スティック状のQD Stickは青色LEDと導光板の間に配置する。
NSマテリアルズによれば、既にテレビやモバイル端末などのディスプレイ製品を手がける複数のメーカーと話し合いが進んでおり、2015年内には同社の量子ドット蛍光体を採用したディスプレイ製品が市場に登場するという。
以下、今回NSマテリアルズが開発した量子ドット蛍光体の詳細を見ていこう。
■従来の蛍光体との違い
液晶テレビやモバイル端末などに採用されている従来の蛍光体は、粒径が数ミクロンメートル〜数十ミクロンメートルの大きさで、使用するレアアースによって蛍光波長が固定されるものだった。
対して量子ドット蛍光体は、ナノメートルサイズの粒径を持つ極小の化合物半導体ナノ粒子によるもの。レアアースを含まず、吸収した光の波長を変換して発光する機能を持っている。発光する色は、粒径の大きさによって決まる。今回NSマテリアルズが発表した量子ドット蛍光体は、従来に比べ約1/1000の大きさとなる数ナノメートル〜数十ナノメートルサイズ。同社では、以下の3つを大きな特徴と説明している。
1つ目は、粒径の大きさで制御が可能であるため発光波長を自在に制御できることで、色純度の高い3原色をコントロールでき、広色域を確保できること。2つ目は、ナノメートルサイズの量子閉じ込め効果により高い吸収係数を確保していることで、輝度の向上と低消費電力を実現できること。3つ目は、急峻な発光ピークが実現できることでカラーフィルターに頼らずRGBの分離が可能で、高い色純度をサポートできる。また、これによっても消費電力を抑えられるメリットがある。
■8Kなど高精細ディスプレイ需要に対応し、広色域化を実現する量子ドット蛍光体
本日の発表会見に登壇したNSマテリアルズ(株)代表取締役 金海榮一氏は、「今年から4K試験放送が始まり、2016年には早くも8K試験放送が始まるとされている。テレビなどディスプレイ製品が高精細化していく中で、ディスプレイの広色域化需要が高くなっている」とコメント。今回の量子ドット蛍光体の開発は、ディスプレイの広色域化を実現し、こうした高精細ディスプレイ需要に対応するものであることを説明した。
なお、8K/4K放送における色再現範囲規格としてBT.2020の採用が見込まれているが、同社では量子ドット蛍光体を採用することで、現行のNTSC規格の色空間を超え、カラーフィルター等の最適化によってBT.2020規格も100%サポートできるようになると説明している。
発表会場では、最終製品を使ったデモも行われた。スティック状のQD Stickを採用した42インチディスプレイと5インチディスプレイ、QD Sheetを採用した23インチディスプレイが用意され、その色再現性の高さがアピールされた。
■他社製の量子ドット蛍光体と比較した場合の優位性
開発に際しては、独立行政法人産業技術総合研究所と共同開発した独自のマイクロ空間化学技術によるナノ材料合成法を採用している。マイクロ空間化学技術とは、簡単にいえば、非常に微小な空間で正確な化学反応を起こさせる環境を実現する技術のこと。今回の量子ドット蛍光体の開発に際しては、最初に中心部のコア粒子を作成するときにこのマイクロ空間科学技術を採用している。
NSマテリアルズは、同社の量子ドット蛍光体を他社製のものと比較した場合の優位性について、この独自のマイクロ空間科学技術を採用したことによる正確性を挙げている。特に、「狙った蛍光波長をコントロールして色再現性を高めていること」「均一な粒径分布による発光ピークを作り出せること」「独自構造による結晶性の高さによるQD自体の信頼性の高さ」の3点をメリットとしてアピールしている。
■カドミウムフリーの量子ドット蛍光体の開発も
一般に量子ドット蛍光体は、素材にカドミウムなどの重金属を含むことが問題点のひとつとして挙げられる。同社ではこの点について、「重金属を含むことについての懸念は承知している」とし、「NSマテリアルズの開発した量子ドット蛍光体は、RoHS規制の範囲内の製品を作ることを心がけている」と述べた。
一方で、同社では同時にカドミウムフリーの量子ドット蛍光体の開発も進めているという。しかし現時点では、カドミウムフリーの量子ドット蛍光体でBT.2020レベルをサポートできるものは製作できなかったとのこと。同社としては、上述の通り8Kなどディスプレイの高精細化ニーズを念頭に置き、ディスプレイ広色域の実現を重要視した。
なお本日、LG Electronicsが、量子ドット蛍光体を採用したテレビ製品を2015年1月に米国ラスベガスで開催される「2015 International CES」で公開すると発表しているが(関連ニュース)、ここに採用されるのはカドミウムなどの重金属を含まないものとのことで、NSマテリアルズの開発した量子ドット蛍光体とは異なるものと思われる。
NSマテリアルズは、独立行政法人産業技術総合研究所と共同開発した独自のマイクロ空間化学技術によるLED光源用の新しい蛍光体「量子ドット=QD(Quantum Dot)蛍光体」の量産技術を有する会社。
量子ドット蛍光体は、スマートフォン/タブレット、ノートPC、テレビなどの液晶ディスプレイへの適用が期待される蛍光体。NSマテリマルズの今回の発表によれば、特に液晶ディスプレイの分野では、量子ドット蛍光体を採用することにより、8Kテレビなどの高解像度ディスプレイでNTSC規格の色空間を超え、BT.2020規格を100%サポートする色表現が可能になるという。一方、スマートフォン/タブレットなどのモバイル機器に採用した場合は、色再現性とバッテリー寿命の飛躍的な向上が期待できるとのこと。
実際の製品としては、量子ドット蛍光体をスティック状にした「QD Stick」やフィルム状にした「QD Sheet」などをラインナップしている。フィルム状のQD Sheetは導光板の上に設置する形で、スティック状のQD Stickは青色LEDと導光板の間に配置する。
NSマテリアルズによれば、既にテレビやモバイル端末などのディスプレイ製品を手がける複数のメーカーと話し合いが進んでおり、2015年内には同社の量子ドット蛍光体を採用したディスプレイ製品が市場に登場するという。
以下、今回NSマテリアルズが開発した量子ドット蛍光体の詳細を見ていこう。
■従来の蛍光体との違い
液晶テレビやモバイル端末などに採用されている従来の蛍光体は、粒径が数ミクロンメートル〜数十ミクロンメートルの大きさで、使用するレアアースによって蛍光波長が固定されるものだった。
対して量子ドット蛍光体は、ナノメートルサイズの粒径を持つ極小の化合物半導体ナノ粒子によるもの。レアアースを含まず、吸収した光の波長を変換して発光する機能を持っている。発光する色は、粒径の大きさによって決まる。今回NSマテリアルズが発表した量子ドット蛍光体は、従来に比べ約1/1000の大きさとなる数ナノメートル〜数十ナノメートルサイズ。同社では、以下の3つを大きな特徴と説明している。
1つ目は、粒径の大きさで制御が可能であるため発光波長を自在に制御できることで、色純度の高い3原色をコントロールでき、広色域を確保できること。2つ目は、ナノメートルサイズの量子閉じ込め効果により高い吸収係数を確保していることで、輝度の向上と低消費電力を実現できること。3つ目は、急峻な発光ピークが実現できることでカラーフィルターに頼らずRGBの分離が可能で、高い色純度をサポートできる。また、これによっても消費電力を抑えられるメリットがある。
■8Kなど高精細ディスプレイ需要に対応し、広色域化を実現する量子ドット蛍光体
本日の発表会見に登壇したNSマテリアルズ(株)代表取締役 金海榮一氏は、「今年から4K試験放送が始まり、2016年には早くも8K試験放送が始まるとされている。テレビなどディスプレイ製品が高精細化していく中で、ディスプレイの広色域化需要が高くなっている」とコメント。今回の量子ドット蛍光体の開発は、ディスプレイの広色域化を実現し、こうした高精細ディスプレイ需要に対応するものであることを説明した。
なお、8K/4K放送における色再現範囲規格としてBT.2020の採用が見込まれているが、同社では量子ドット蛍光体を採用することで、現行のNTSC規格の色空間を超え、カラーフィルター等の最適化によってBT.2020規格も100%サポートできるようになると説明している。
発表会場では、最終製品を使ったデモも行われた。スティック状のQD Stickを採用した42インチディスプレイと5インチディスプレイ、QD Sheetを採用した23インチディスプレイが用意され、その色再現性の高さがアピールされた。
■他社製の量子ドット蛍光体と比較した場合の優位性
開発に際しては、独立行政法人産業技術総合研究所と共同開発した独自のマイクロ空間化学技術によるナノ材料合成法を採用している。マイクロ空間化学技術とは、簡単にいえば、非常に微小な空間で正確な化学反応を起こさせる環境を実現する技術のこと。今回の量子ドット蛍光体の開発に際しては、最初に中心部のコア粒子を作成するときにこのマイクロ空間科学技術を採用している。
NSマテリアルズは、同社の量子ドット蛍光体を他社製のものと比較した場合の優位性について、この独自のマイクロ空間科学技術を採用したことによる正確性を挙げている。特に、「狙った蛍光波長をコントロールして色再現性を高めていること」「均一な粒径分布による発光ピークを作り出せること」「独自構造による結晶性の高さによるQD自体の信頼性の高さ」の3点をメリットとしてアピールしている。
■カドミウムフリーの量子ドット蛍光体の開発も
一般に量子ドット蛍光体は、素材にカドミウムなどの重金属を含むことが問題点のひとつとして挙げられる。同社ではこの点について、「重金属を含むことについての懸念は承知している」とし、「NSマテリアルズの開発した量子ドット蛍光体は、RoHS規制の範囲内の製品を作ることを心がけている」と述べた。
一方で、同社では同時にカドミウムフリーの量子ドット蛍光体の開発も進めているという。しかし現時点では、カドミウムフリーの量子ドット蛍光体でBT.2020レベルをサポートできるものは製作できなかったとのこと。同社としては、上述の通り8Kなどディスプレイの高精細化ニーズを念頭に置き、ディスプレイ広色域の実現を重要視した。
なお本日、LG Electronicsが、量子ドット蛍光体を採用したテレビ製品を2015年1月に米国ラスベガスで開催される「2015 International CES」で公開すると発表しているが(関連ニュース)、ここに採用されるのはカドミウムなどの重金属を含まないものとのことで、NSマテリアルズの開発した量子ドット蛍光体とは異なるものと思われる。