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公開日 2015/12/01 15:21
映像配信サービス「bonobo」がコンテンツ大幅拡充を発表。パッケージとの相互連携も推進
パケットビデオ・ジャパンが発表会を開催
今秋から国内でサービスが始まったコンテンツホルダー直営型の映像配信「bonobo(ボノボ)」が、“映画の日”である本日12月1日に、サービスの強化・拡充を発表。システム運用のパートナーであるパケットビデオ・ジャパン(株)が記者説明会を開催した。
去る9月30日にスタートしたbonoboは、映画やドラマ、アニメ、音楽などの映像コンテンツを、PCやスマホ・タブレット、Android TVなどの機器で視聴できる動画配信サービス。都度課金システムにより提供されるコンテンツは、1本単位で買い切り、またはレンタル視聴ができる。大手の映画製作、配給会社がコンテンツプロバイダーとなり、パケットビデオ・ジャパンが管理するインターネット上のプラットフォームからそれぞれのコンテンツを直販するサービス形態が特徴。サービスイン当初は国内の大手映画製作会社である松竹、東宝、東映、KADOKAWAのほか、ウォルト・ディズニー・ジャパン、TBSテレビの6社が参加し、300作品から提供を開始していた。
ユーザーは無料で登録できるbonoboの会員になり、PC(Win/Mac)の場合はブラウザ経由、またはスマートフォン・タブレット(iOS/Android)とAndroid TV搭載テレビはアプリを端末にダウンロードして映像コンテンツが楽しめるようになる。ブラウザ、端末は1ユーザーあたり最大5件まで登録できるマルチデバイス対応も実現している。なお提供されている作品の平均価格はレンタルタイトルが400円から500円前後、買い切りのセルタイトルは2,000円から2,500円前後になる。
本日「bonoboの本格スタート」を謳って開催された記者会見では、同サービスのステージアップについて大きく2種類の強化ポイントについて語られた。
ひとつめが「コンテンツの拡充」について。スタート時点で12月をめどに作品数を増やす予定であることは発表されていたが、具体的にコンテンツホルダーが6社から34社へ、作品数も300タイトルから2,500タイトルに増えることが明らかにされた。主な新規参加のコンテンツホルダーはアスミック・エース、ギャガ、日活、テレビ朝日、日本テレビ放送網、フジテレビジョン、東映アニメーション、バンダイビジュアルなど28社。これまで映画を中心としていたラインナップが、アニメやテレビドラマの方向にも裾野が広がった。新作タイトルも100作品を揃える。
本日の記者会見にはコンテンツホルダーを代表して、松竹(株)の迫本淳一氏、東宝(株)の島谷能成氏、東映(株)の多田憲之氏、(株)KADOKAWAの井上伸一郎氏、ウォルト・ディズニー・ジャパン(株)の塚越隆行氏、ソニー・ピクチャーズエンタテインメントの佐野哲章氏、20世紀フォックスのジェシー・リー氏が参列し、それぞれbonoboのサービスにより強くコミットメントしながら人気コンテンツを積極的に投入し、ますます一丸となって映画業界を盛り上げていくことを宣言した。
ふたつめは、「サービス拡大によるプラットフォームの強化」である。パケットビデオ・ジャパンは2010年にNTTドコモが米パケットビデオ・コーポレーション社の買収により取得したグループ会社であり、bonoboのシステム運用を手がけている。今回拡張されるサービスの内容は主に3つの役割を担うものだ。
1つめは、ユーザーの利便性を高めるため、NTTドコモの各サービスとの連携を強めるというもの。現在dメニューでbonoboのコンテンツを連動検索できるが、来年の3月までにはdアカウント(旧:docomo ID)によるbonoboの会員登録が可能になる。さらにNTTドコモの回線ユーザーであれば、dケータイ払いプラス(キャリア課金)を使ってbonoboのコンテンツが購入・レンタルできるようになる。なおdアカウントはマルチキャリア対応なので、他の携帯キャリアのユーザーにとってもbonoboの会員登録が簡易化されることになる。
次に、bonobo自体の宣伝機能を強化するため、「映画情報ポータルサイト」を特設サイト内に立ち上げる。サイトの新しいメインコンテンツになる「STORY」には、映画ライターや有識者がおすすめ映画に関連する読み物を寄稿。これらの記事を「人によるレコメン」として活用しながら、bonoboのユーザーと映像作品を有機的に結びつけていくようなイメージだ
さらにもう一つの強化策として、「ボノボ・コネクト」という仮称が付けられた映画に関連するメディアミックス型プラットフォーム構築のコンセプトが紹介された。
サービスの概略については、図版も参照していただくと概略が掴みやすいと思う。bonoboの配信コンテンツと、映画館、BD/DVDなどのパッケージ、放送、コンサートなどのイベントを“コネクト”するための独自の仕組みをつくろうという試みなのだだ。
bonoboのシステム運用を管理するパケットビデオ・ジャパンは「ボノボ・コネクトナンバー」と呼ぶ、登録ユーザー固有のシリアル番号を発行。このシリアルナンバーを起点に、特定のBD/DVD作品の購入者はbonoboの配信コンテンツが視聴できるようになるなど、互いのサービス・商品間におけるユーザーの回遊を促す。本日の記者会見時点ではまだ具体的なサービスモデルに関連する言及はなかったが、ウォルト・ディズニー・ジャパンでは同社が展開する映画パッケージサービス「MovieNEX」とbonoboを“コネクト”するアイデアを検討しているようだ。同社からは近く正式な発表もあると予想される。
パケットビデオ・ジャパンの取締役社長 最高執行責任者の加藤徹氏は、本日の発表内容を総括しつつ、今後のbonoboに関する映画館上映広告についても補足を行った。これから年末年始にかけてクリスマス・お正月映画の上映が賑わう全国187館の劇場、2,062スクリーンでbonoboのプロモーション動画広告が上映されるほか、109館にてポスターも掲示してユーザー登録を呼びかける。加藤氏は「bonoboのサービスをさらに進化させて、より快適な映像視聴環境を提供しながら映像業界の発展に寄与していきたい」と意気込みを語った。
記者会見で明らかにされた「bonoboの本格スタート」に関連する戦略の内容を振り返ると、確かにコンテンツの数は2,500タイトルへと一気にジャンプアップして、それなりに手応えは感じられる。しかし、一方ではbonoboらしさが十分に見えてこない。今年は秋にNetflixやAmazonプライム・ビデオが国内に上陸し、一方でNTTぷららやdTVが4K高画質のVODサービスをスタートさせ、「VOD元年」における各社の競争は加速していく勢いをみせはじめている。
質疑応答では、「bonoboオリジナル」のコンテンツ製作や、映画作品を劇場公開と同タイミングでbonoboに配信されるようなプレミアム感のあるコンテンツ戦略の有無についても質問が寄せられたが、前出の加藤氏は「ウィンドウコントロール(作品のリリースに関連する戦略)や配信提供の価格コントロールについてはコンテンツホルダーが決定すること」と回答。あくまでパケットビデオ・ジャパンはシステム運用の面でbonoboを支える“いちパートナー”であるという立場を強調した。
国内でも様々な動画配信サービスが群雄割拠する中で、bonoboがより多くのユーザーを獲得するためには、今以上に参加各社が一枚岩になってbonoboならではの独自性を強くアピールする必要があるだろう。それは「他と比べて画質がいい」「価格が安い」といった切り口でも構わないのだが、これから参加企業の間でより明確なビジョンをすりあわせて、誰かがリーダーになって音頭を取りながら、ユーザーに向けて「bonoboを選ぶ理由」を強烈に提示していく必要があるのではないだろうか。
またNTTドコモのグループ会社であるパケットビデオ・ジャパンのサービスでありながら、モバイル端末との連携も現時点ではまだ弱い。例えば、購入した作品をスマホなど端末にダウンロードしてからオフラインで再生したり、ストリーミング再生の画質を選べる機能が実装されていないため、ユーザーにとってはLTE/3G通信環境で視聴すれば、一体どれだけパケットを消費してしまうのか目安がつかないのでリスクが高いと言わざるを得ない。
現時点で外出先でもbonoboのコンテンツを快適に楽しむためには無料Wi-Fiなどを活用する方が無難ということになるが、例えばビジネスマンや学生が通勤・通学、待ち合わせなど“移動中”の可処分時間を有効に使ってbonoboを楽しむための仕組みもぜひ整えて欲しいところだ。本日パケットビデオ・ジャパンの展示説明に当たっていたスタッフに見通しを訊ねたところ「半年以内にまず端末へのダウンロード機能を実装するところから実現したい」という意気込みを聞くことができた。
また記者会見ではNTTドコモから代表取締役副社長の吉澤和弘氏が出席。bonoboとの連携について「ドコモ自身も手がけてこなかった画期的なサービスを、多くのコンテンツホルダー各社と連携して実現できたことには大きな価値がある。ドコモとしてもさらに発展させるイメージを描きながらこれまでの技術的、ビジネス的な資産を投入していきたい」と壇上でコメントした。ドコモ製スマホ・タブレット端末へのインプリメントなども含めて、ぜひユーザーがbonoboのサービスをより魅力に感じられるような仕掛けを可能な限り多く用意して欲しいと思う。
(山本 敦)
去る9月30日にスタートしたbonoboは、映画やドラマ、アニメ、音楽などの映像コンテンツを、PCやスマホ・タブレット、Android TVなどの機器で視聴できる動画配信サービス。都度課金システムにより提供されるコンテンツは、1本単位で買い切り、またはレンタル視聴ができる。大手の映画製作、配給会社がコンテンツプロバイダーとなり、パケットビデオ・ジャパンが管理するインターネット上のプラットフォームからそれぞれのコンテンツを直販するサービス形態が特徴。サービスイン当初は国内の大手映画製作会社である松竹、東宝、東映、KADOKAWAのほか、ウォルト・ディズニー・ジャパン、TBSテレビの6社が参加し、300作品から提供を開始していた。
ユーザーは無料で登録できるbonoboの会員になり、PC(Win/Mac)の場合はブラウザ経由、またはスマートフォン・タブレット(iOS/Android)とAndroid TV搭載テレビはアプリを端末にダウンロードして映像コンテンツが楽しめるようになる。ブラウザ、端末は1ユーザーあたり最大5件まで登録できるマルチデバイス対応も実現している。なお提供されている作品の平均価格はレンタルタイトルが400円から500円前後、買い切りのセルタイトルは2,000円から2,500円前後になる。
本日「bonoboの本格スタート」を謳って開催された記者会見では、同サービスのステージアップについて大きく2種類の強化ポイントについて語られた。
ひとつめが「コンテンツの拡充」について。スタート時点で12月をめどに作品数を増やす予定であることは発表されていたが、具体的にコンテンツホルダーが6社から34社へ、作品数も300タイトルから2,500タイトルに増えることが明らかにされた。主な新規参加のコンテンツホルダーはアスミック・エース、ギャガ、日活、テレビ朝日、日本テレビ放送網、フジテレビジョン、東映アニメーション、バンダイビジュアルなど28社。これまで映画を中心としていたラインナップが、アニメやテレビドラマの方向にも裾野が広がった。新作タイトルも100作品を揃える。
本日の記者会見にはコンテンツホルダーを代表して、松竹(株)の迫本淳一氏、東宝(株)の島谷能成氏、東映(株)の多田憲之氏、(株)KADOKAWAの井上伸一郎氏、ウォルト・ディズニー・ジャパン(株)の塚越隆行氏、ソニー・ピクチャーズエンタテインメントの佐野哲章氏、20世紀フォックスのジェシー・リー氏が参列し、それぞれbonoboのサービスにより強くコミットメントしながら人気コンテンツを積極的に投入し、ますます一丸となって映画業界を盛り上げていくことを宣言した。
ふたつめは、「サービス拡大によるプラットフォームの強化」である。パケットビデオ・ジャパンは2010年にNTTドコモが米パケットビデオ・コーポレーション社の買収により取得したグループ会社であり、bonoboのシステム運用を手がけている。今回拡張されるサービスの内容は主に3つの役割を担うものだ。
1つめは、ユーザーの利便性を高めるため、NTTドコモの各サービスとの連携を強めるというもの。現在dメニューでbonoboのコンテンツを連動検索できるが、来年の3月までにはdアカウント(旧:docomo ID)によるbonoboの会員登録が可能になる。さらにNTTドコモの回線ユーザーであれば、dケータイ払いプラス(キャリア課金)を使ってbonoboのコンテンツが購入・レンタルできるようになる。なおdアカウントはマルチキャリア対応なので、他の携帯キャリアのユーザーにとってもbonoboの会員登録が簡易化されることになる。
次に、bonobo自体の宣伝機能を強化するため、「映画情報ポータルサイト」を特設サイト内に立ち上げる。サイトの新しいメインコンテンツになる「STORY」には、映画ライターや有識者がおすすめ映画に関連する読み物を寄稿。これらの記事を「人によるレコメン」として活用しながら、bonoboのユーザーと映像作品を有機的に結びつけていくようなイメージだ
さらにもう一つの強化策として、「ボノボ・コネクト」という仮称が付けられた映画に関連するメディアミックス型プラットフォーム構築のコンセプトが紹介された。
サービスの概略については、図版も参照していただくと概略が掴みやすいと思う。bonoboの配信コンテンツと、映画館、BD/DVDなどのパッケージ、放送、コンサートなどのイベントを“コネクト”するための独自の仕組みをつくろうという試みなのだだ。
bonoboのシステム運用を管理するパケットビデオ・ジャパンは「ボノボ・コネクトナンバー」と呼ぶ、登録ユーザー固有のシリアル番号を発行。このシリアルナンバーを起点に、特定のBD/DVD作品の購入者はbonoboの配信コンテンツが視聴できるようになるなど、互いのサービス・商品間におけるユーザーの回遊を促す。本日の記者会見時点ではまだ具体的なサービスモデルに関連する言及はなかったが、ウォルト・ディズニー・ジャパンでは同社が展開する映画パッケージサービス「MovieNEX」とbonoboを“コネクト”するアイデアを検討しているようだ。同社からは近く正式な発表もあると予想される。
パケットビデオ・ジャパンの取締役社長 最高執行責任者の加藤徹氏は、本日の発表内容を総括しつつ、今後のbonoboに関する映画館上映広告についても補足を行った。これから年末年始にかけてクリスマス・お正月映画の上映が賑わう全国187館の劇場、2,062スクリーンでbonoboのプロモーション動画広告が上映されるほか、109館にてポスターも掲示してユーザー登録を呼びかける。加藤氏は「bonoboのサービスをさらに進化させて、より快適な映像視聴環境を提供しながら映像業界の発展に寄与していきたい」と意気込みを語った。
記者会見で明らかにされた「bonoboの本格スタート」に関連する戦略の内容を振り返ると、確かにコンテンツの数は2,500タイトルへと一気にジャンプアップして、それなりに手応えは感じられる。しかし、一方ではbonoboらしさが十分に見えてこない。今年は秋にNetflixやAmazonプライム・ビデオが国内に上陸し、一方でNTTぷららやdTVが4K高画質のVODサービスをスタートさせ、「VOD元年」における各社の競争は加速していく勢いをみせはじめている。
質疑応答では、「bonoboオリジナル」のコンテンツ製作や、映画作品を劇場公開と同タイミングでbonoboに配信されるようなプレミアム感のあるコンテンツ戦略の有無についても質問が寄せられたが、前出の加藤氏は「ウィンドウコントロール(作品のリリースに関連する戦略)や配信提供の価格コントロールについてはコンテンツホルダーが決定すること」と回答。あくまでパケットビデオ・ジャパンはシステム運用の面でbonoboを支える“いちパートナー”であるという立場を強調した。
国内でも様々な動画配信サービスが群雄割拠する中で、bonoboがより多くのユーザーを獲得するためには、今以上に参加各社が一枚岩になってbonoboならではの独自性を強くアピールする必要があるだろう。それは「他と比べて画質がいい」「価格が安い」といった切り口でも構わないのだが、これから参加企業の間でより明確なビジョンをすりあわせて、誰かがリーダーになって音頭を取りながら、ユーザーに向けて「bonoboを選ぶ理由」を強烈に提示していく必要があるのではないだろうか。
またNTTドコモのグループ会社であるパケットビデオ・ジャパンのサービスでありながら、モバイル端末との連携も現時点ではまだ弱い。例えば、購入した作品をスマホなど端末にダウンロードしてからオフラインで再生したり、ストリーミング再生の画質を選べる機能が実装されていないため、ユーザーにとってはLTE/3G通信環境で視聴すれば、一体どれだけパケットを消費してしまうのか目安がつかないのでリスクが高いと言わざるを得ない。
現時点で外出先でもbonoboのコンテンツを快適に楽しむためには無料Wi-Fiなどを活用する方が無難ということになるが、例えばビジネスマンや学生が通勤・通学、待ち合わせなど“移動中”の可処分時間を有効に使ってbonoboを楽しむための仕組みもぜひ整えて欲しいところだ。本日パケットビデオ・ジャパンの展示説明に当たっていたスタッフに見通しを訊ねたところ「半年以内にまず端末へのダウンロード機能を実装するところから実現したい」という意気込みを聞くことができた。
また記者会見ではNTTドコモから代表取締役副社長の吉澤和弘氏が出席。bonoboとの連携について「ドコモ自身も手がけてこなかった画期的なサービスを、多くのコンテンツホルダー各社と連携して実現できたことには大きな価値がある。ドコモとしてもさらに発展させるイメージを描きながらこれまでの技術的、ビジネス的な資産を投入していきたい」と壇上でコメントした。ドコモ製スマホ・タブレット端末へのインプリメントなども含めて、ぜひユーザーがbonoboのサービスをより魅力に感じられるような仕掛けを可能な限り多く用意して欲しいと思う。
(山本 敦)