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公開日 2019/06/13 11:00

東芝、“4K有機ELレグザ Pro”「X930」。新パネルとエンジンで高画質化、全録機能も

プロ向け映像調整メニューも一般開放
編集部:小野佳希
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東芝は、2019年仕様の有機ELパネルや新映像処理エンジンを搭載して画質を高めながら、HDR10+/HDR10/Dolby Vision/HLGという4つのHDR規格に対応。さらにタイムシフトマシンによる全録機能も搭載した有機ELテレビ“4K有機ELレグザ Pro”「X930シリーズ」を7月中旬に発売する。65型と55型の2サイズ展開で、65型の「65X930」が55万円前後、55型の「55X930」が35万円前後での実売が予想される。

X930(左)とX830(右)の2種類の4K有機ELテレビを投入

■画音質強化、全録にも対応する4Kダブルチューナー有機ELテレビ

新4K衛星放送(BS 4K放送)チューナーを2基、地デジ/BS/110度CSチューナーを3基搭載。USB-HDDへの録画にも対応し、4K放送の裏番組録画も行える。いわゆる全録機能の「タイムシフトマシン」も備え、別売の対応USB-HDDを利用することで同機能を利用できる。

X930シリーズ

有機ELレグザPro専用にチューニングした、2019年仕様の有機ELパネルと新映像処理エンジン「レグザエンジン Professional」を搭載。深層学習などのAI超解像技術を活用することで、「4K放送や地上デジタル放送などをノイズの少ないきめ細かな高画質映像で再現する」とアピールしている。

レグザエンジン Professional

スタンド部。後述新機能「リビングAIピクチャー」用の色温度センサーを搭載

HDR規格では、Ultra HD Blu-rayなどで採用されているHDR10、4K放送などで採用されているHLGに加え、新たにHDR10+ 規格とドルビービジョンにも対応。また、映像制作者向けに、様々な映像情報の表示やマニュアル設定ができる 「プロユース映像分析・設定機能」を搭載した。このことから、今回同社では本機を“レグザ Pro”と呼んでいる。

プロ向けの設定ツールを一般ユーザーにも開放

ドルビービジョンは「ブライト」と「ダーク」を選択可能

新映像処理エンジン「レグザエンジン Professional」では、深層学習などの人工知能を活用して高画質を追求した。そして本機専用にガンマ特性と輝度特性をチューニングし、コントラスト性能、および階調を大きく向上させたという2019年仕様の新世代有機ELパネルも搭載し、高画質化を図っている。

加えて、視聴環境の照度や照明色の違い、視聴しているコンテンツに合わせて画質を自動調整する新機能「リビングAIピクチャー」を搭載。色温度センサーによって、昼の太陽光なのか照明をつけているのか、その照明は昼白色なのか電球色なのかなどといった視聴環境の状況をリアルタイムに検出し、自動でホワイトバランスや輝度をコントロールする。また、映画やスポーツなど視聴しているコンテンツの種類もAI技術で判別する。

様々な明かりの下でも同じような色味でコンテンツを楽しめるようにする「リビングAIピクチャー」を搭載

なお、同機能は従来の画質モードでの「おまかせ」に代わるもの。本機能の搭載を受けて、従来の「室内環境設定」メニューがなくなった。また、本機能は画質設定などにあまり詳しくない層を想定したもので、映画コンテンツの場合でも色温度を8000ケルビン程度にまでしか下げないとのこと。よりこだわった設定を行いたいユーザーは「映画プロ」などのメニューで細かくマニュアル設定をすることを想定しているという。

色温度センサー

■プロ向けマニュアル設定機能を一般ユーザーにも開放

「プロユース映像分析・設定機能」では、マニュアルでの色空間の設定や、 輝度推移、周波数ヒストグラムなどの映像情報をリアルタイムに表示可能。「EOTFモード」をオート/SDR/ST 2084/HLGから選択できたり、「色空間モード」をオート/BT.709/BT.2020から選択するなど、様々な項目を細かく設定できる。たとえば色空間をBT.2020に設定し、入力信号がBT.709だと不自然な映像になるが、そういったモードの強制設定も行える。これにより、「映像制作にかかわるプロフェッショナルから映像にこだわりのあるユーザーまで様々なニーズに対応する」としている。

設定メニューの「プロ調整」から「プロモニター設定」をオンにすることでEOTFモード、色空間モード、MaxCLLモードを変更できるようになる

映像分析情報をリアルタイム表示させることも可能

そのほか、高画質技術では5層の「ニューラルネットワーク」で映像の精細さを深層学習した結果をもとに、通常のシーンとエッジのぎらつきが目立つシーンを自動判別し適切な超解像処理を行う「AI超解像技術 深層学習超解像」などの技術も従来から引き続き搭載。

映像の種類と動き量に応じ複数の適切なフレームを用いて超解像処理することでシーンにあわせてノイズを抑える「AI超解像技術バリアブルフレーム超解像」や、同一素材をもとに、SDRでグレーディングした映像とHDRでグレーディングした映像をAIで機械学習させ。得られたパラメーターをもとに、従来の映像を高精度に HDRクオリティに変換する「AI機械学習HDR復元」も引き続き搭載している。

そしてハイスピード18Gbps対応のHDMI入力端子を7系統搭載するなど、端子類を充実させたのも特徴のひとつ。光オーディオ出力端子に加えて同軸デジタルオーディオ出力も搭載し、様々なオーディオシステムと接続できるようにも配慮している。

HDMI端子は背面に4系統(HDMI 1/5/6/7)、側面に3系統(HDMI 2/3/4)を配置し、背面の「HDMI 1」端子がARCに対応。なお、HDMI CEC規格上の問題から、本機が認識できるHDMI連動対応機器の台数はオーディオ機器1台、録画機器(レグザリンク対応レコーダーなど)3台、再生機器(東芝製BDプレーヤーなど)3台までに制限される。

側面端子部

背面端子部

■「有機ELレグザオーディオシステムPRO」で音質も強化

音質面も強化し、「有機ELレグザオーディオシステムPRO」を新たに搭載。ボックスの振動を抑えてS/N感の高い低域再生が可能という対向型パッシブラジエーター方式の新型ボックスを搭載した上で、パッシブラジエーター方式に最適化した新型フルレンジスピーカーと耐久力を向上させた新型シルクドームトゥイーターを内蔵。このスピーカーを総合出力50Wのマルチアンプで駆動している。

新型フルレンジスピーカーと耐久力を向上させた新型シルクドームトゥイーターを内蔵

高精度に全帯域補正を行うというイコライザー「レグザサウンドプロセス VIR」も引き続き搭載。フラットで明瞭な音質と自然な音像定位を実現するとしている。また、放送などの音声圧縮時に失われた微小信号を復元する「レグザサウンドリマスター」も従来から引き続き搭載している。

イコライザー「レグザサウンドプロセス VIR」も引き続き搭載

ユーザーの好みに合った録画番組やこれから放送される番組をおすすめする「みるコレ」に、AIレコメンドシステムを搭載する点も従来モデルから継承。ユーザーの好みにあわせた番組をレコメンドする、「みるコレAIのおすすめ!」機能も備えており、視聴履歴や録画履歴を機械学習で解析することで 、ユーザーの興味がありそうな番組を自動録画することもできる。

番組を視聴しながら放送中の地上デジタル放送最大6チャンネル同時にチェックできる「まるごとチャンネル」 と、 番組を見ながら、他のチャンネルを表示できる「ダブルウインドウ」も搭載。ボイスコントロール機能も装備し、リモコンの「ボイス」ボタンを押して、見たい番組名やシーン名を話しかけるだけで該当の番組やシーンを探すことができる。

本機のリモコン

そのほかNetflix、YouTube、AbemaTV、Hulu 、dTV、U-NEXT、DAZN などの動画配信サービスにも引き続き対応。Googleアシスタント、Amazon Alexa、LINE Clovaを搭載したスマートスピーカーとの連携機能も備えている。

■「間違いなく有機ELが最高画質と言えるようになった」

東芝映像ソリューションで営業本部長を務める中牟田氏は「今回の新モデルのポイントを一言で言うと『有機ELシフト』だ」とコメント。「これまでは『こういう部分は液晶のほうが優れている』という点があったが、これからは間違いなく有機ELが最高画質だと言えるようになった」と語る。

東芝映像ソリューション 中牟田氏

レグザの企画開発に長年携わっているブランド統括マネージャーの本村氏は、その理由は3点あると説明。「有機ELパネルの輝度が大きく向上して、昼間のリビングで有機ELを見ても暗く感じることはほとんどなくなった」「パネルメーカーと我々側のシステムでの技術が進化し、焼付きリスクに対しての改善がかなり進んだ」「価格も徐々にこなれて、10年前の液晶テレビくらいの価格になった」。「これから先を考えたときに、有機ELテレビが当たり前になってくるだろうと考えた」と述べた。

東芝映像ソリューション 本村氏

また、本村氏は「映像制作にも使えるプロスペックのモデルだ」と、「プロユース映像分析・設定機能」を搭載した点もアピールした。

「いままではこういった機能を特別に入れてスタジオに納品していたが、今回は映像制作のプロが編集に必要な機能を最初から搭載し、それを一般ユーザーにも開放している」とし、「映像制作のプロが『この画質で』と作ったコンテンツを、リビングでそのまま見られる」とアピールした。

樋口真嗣監督のプライベートスタジオなど映像のプロの現場への導入がすでに決定している

なお、開発段階で一部の映像制作関係者に実機を事前に披露。実際にスタジオのモニター機材として、すでに採用を決定している企業が複数存在しているという。

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