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公開日 2019/09/26 18:06

ソニーは長期的な価値をどう育て、維持していくのか? 2019年度ESG説明会レポート

長期視点の価値創出への取り組み
Senka21編集部 徳田ゆかり
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ソニー(株)は、2019年度ESG(Environment=環境、Social=社会、Governance=ガバナンス)説明会を開催。長期視点での持続的な社会価値創出に向けた取り組みを説明した。

ソニーは2018年度から3年間の「第三次中期経営計画」にて、「持続的な社会価値と高収益の創出」を経営方針として掲げている。登壇した同社常務の神戸司郎氏は、「その実現のためには長期視点が重要。長期視点での経営の強化に向けマネージメントチームでさまざまなアクションを実施してきた」と語る。

ソニー(株)常務の神戸司郎氏

その1つめは、吉田社長のイニシアチブで2019年1月に策定された「Sony's Purpose & Values」(存在意義と価値観)。「ひとことで言うと、ソニーは何のために存在するのかを定義したもの」だという。

長期視点での社会価値創出へ向けた取り組み

2つめは、価値創造ストーリーの構築。「多様な事業を抱えるソニーが、長期的にどのように価値を生み出していくか。事業部門と議論を重ねてきた」。長期視点の経営を支えるのがコーポレート・ガバナンスと指摘し、「ソニーは継続的にその強化に取り組んでいる」とも強調。そしてこれらの取り組みを対外的に発信するとともに、ステークホルダーとの対話も、長期視点での社会価値創出には欠かせないとした。その取り組みの1つとして、2019年8月29日にソニーとして初めて統合報告書「Corprate Report 2019」を発行した。

Sony's Purpose & Valuesの策定
Purposeは「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」。これを支え、ソニーグループ全社員の共通規範となり、会社のカルチャーの形成にもつながるのがValuesなのだという。「多様な事業を抱え、多様な人々が集うソニーグループ全体がひとつのベクトルで新たな価値創造に取り組むため、吉田が自ら定め、取締役会で確認のうえ、マネジメントチームが社内外で繰り返しコミュニケーションしている」とした。

ソニーの存在意義

ソニーのValuesは、以下の4つ。
「夢と好奇心」夢と好奇心から、未来を拓く。
「多様性」多様な人、異なる視点がより良いものをつくる。
「高潔さと誠実さ」倫理的で責任ある行動により、ソニーブランドへの信頼に応える。
「持続可能性」規律ある事業活動で、ステークホルダーへの責任を果たす。

ソニーの4つの価値観

ソニーグループとしてどのような価値を、いかに長期的に創出して企業価値を高めるか、経済価値に加え事業を通じた社会価値をどう創出するか。「価値創造のストーリーをグループ全体で議論した。それぞれの事業ユニットにおいて、長期視点のありたい姿、事業の強み、注目する社会・技術変化、戦略を明確にするとともに、各事業の枠組みを超えた新たな顧客価値創造の可能性について横断的に議論した」とし、長期視点での価値創造のためにソニーとして重要な問題が何かを特定するマテリアリティ分析も実施。こうしたプロセスを通じ、長期視点での議論が促進されたとして、「今後は長期視点での考え方をさらに根付かせるために、事業計画策定プロセスへの落とし込みなど、経営の仕組みへの反映を図る」と意欲を示した。

価値創造のストーリー

ソニーの価値創造モデルを提示


存在意義に加え、ソニーのアイデンティティを「テクノロジーに裏打ちされたクリエイティブエンタテインメントカンパニー」と定義。その上でソニーはどこに向かうのかを示す経営の方向性が「人に近づく」。「これらの存在意義、アイデンティティ、経営の方向性のもと、多様な事業がテクノロジーと人材を基盤として新しい価値を創造するのが、ソニーの価値創造モデル」。これを通じてソニーが持続的に創出する価値は以下の3つ。

ソニーが生み出す3つの価値


ソニーのガバナンスモデル
多様な事業を通じたソニーの価値創造を支えるのがコーポレートガバナンスであり、継続的にその強化に取り組んでいるという。現在のソニーのガバナンスモデルは「取締役の大半が社外取締役で構成され、取締役会の監督のもと、ソニーグループの事業運営がCEOを中心とした経営陣に委嘱されている。取締役会の各委員会の議長も社外取締役で、社外取締役に対して独立性の確保につとめている」というものだ。

ガバナンスモデルは執行と監督の分離

「50年以上多様な事業をグローバルに展開してきたソニーが、経営の透明性を確保し、株主、多様なステークホルダーの視点で長期的に企業価値を向上させていくという目的に沿って、こうしたガバナンスモデルが構築されてきた。ひとつの到達点を示すものと考えるが、よりよいガバナンスの追求を継続し、強化改善に取り組む」と強調した。

ソニーのガバナンスの進化

取締役会構成の多様化と実効性向上に向けた取り組み
取締役13名のうち11名が社外取締役。取締役会議長と副議長、そして3つの委員会の議長も社外取締役が務める。リスク管理の取り組みとして、情報セキュリティ担当取締役を設置。今年6月の株主総会で女性2名を含む3名の社外取締役が選任された。

ガバナンス強化の取り組み


取締役の大半が社外取締役で構成されている

今年の新任取締役

役員報酬制度についても説明された。長期視点での経営を実現するため、役員報酬の構成比率において、上位の役員ほど株価連動報酬の比率が高くなるよう設定。「会社全体として、中長期の企業価値向上に向けたインセンティブが働くことを期待している」。事業担当役員の業績連動報酬については、グループ連結業績を組み込み、社員の意識調査結果や品質・環境などの評価軸を考慮することとしている。

上位の役員ほど株価連動報酬の比率が高くなるよう設定

また、重要課題を特定するマテリアリティ分析を実施。分析に際して社内評価と外部有識者のヒアリングを含むステークホルダー視点でのレビューを実施。「その結果、長期的な価値創造に向けてテクノロジーと人材がもっとも重要な項目とされ、取り組みを強化している」。

マテリアリティ分析を実施

人材への取り組み
登壇した同社人事センター長の望月賢一氏は「Sony's Purpose & Valuesのもと、多様な価値観をもつ社員ひとりひとりが有機的に交わることがソニーの持続的成長に欠かせない」とし、人事戦略フレームワークを紹介。個人の技能を最大限に発揮させることがコーポレートカルチャーとなっているという。

ソニー(株)人事センター長の望月賢一氏


人事戦略フレームワーク

個人の技能を最大限に発揮させることがコーポレートカルチャー
ソニーと社員の関係の軸は、個を生かすこと。「個である社員が最大限の力を発揮できる場を会社が提供することで個が成長し、会社が成長する。個性あふれる人材が集まり多様な事業を有するソニーの、重要な成長戦略の軸」と述べた。

個である社員が最大限の力を発揮できる場を会社が提供する

人事戦略の方針のひとつである『Attract』という考え方では、高度技術人材の獲得と、グローバル採用の強化を図っている。エンジニアが活躍する環境を重視し、社内で「Sony Outstanding Engineer Award」を制定し、世界トップレベルのエンジニアを表彰、公表する。これを次世代を担うエンジニアの獲得にもつなげる。人材採用にあたっては、日本のみならずグローバル採用チームを結成。世界のトップ大学とのコンタクトパスを築き、AI、コンピューターサイエンス関連の人材活動を進めている。

高度技術人材の獲得を図る

人事戦略の方針のひとつである『Develop』では、次世代・次々世代のタレントマネジメント、成長する場の提供を行う。「各事業の縦軸のタレントマネジメントだけでなく、グループをリードする次世代・次々世代の経営者候補を育成することを重要項目としている。複数のビジネス領域に精通することを意識したプロセスを展開する」。

次世代・次々世代の経営者候補を育成する

成長する場「PORT」を本社ビル5Fに設置

人事戦略の方針のひとつ『Engage』では、多様な社員の多様なチャレンジを支える。「多様な社員が活躍できる職場環境、企業文化を醸成することが、創業当時から現在に至るまで重要視されている。皆が持つ多様な個性や見解が受容され、ひとりひとりが活躍している組織を目指す」という。

皆が持つ多様な個性や見解が受容され、ひとりひとりが活躍している組織を目指す

そうした仕組みの強化のために、がんや不妊治療、育児や介護と仕事との両立支援を図る「Symphony Plan」を、2020年4月より国内で導入する。


「Symphony Plan」を、2020年4月より国内で導入






環境への取り組み
昨年のESG説明会でRE100への加盟、つまり2040年に再エネ電力100%へのコミットメントを発表した。「達成に向け、今年初めにメガソーラー設備の稼働を開始した熊本とタイの自社事業所で、太陽光発電設備によるCO2削減効果が合計約2000トンを見込む」という。またJARED大井川センターにも約1.7メガワットの太陽光発電設備を設置するという。余剰電力は静岡プロダクションセンターに供給する。この太陽光発電自己託送エネルギーサービスを、2020年2月に運用予定とする。さらに複数の事業所で太陽光発電設備の導入を進めている。

2040年に再エネ電力100%達成を目指す


海洋プラスチック問題へのアプローチでは、プラスチックの使用量削減や河川や海岸などでの回収・清掃に取り組む「One Blue Ocean Project」を開始した。「2050年までにグループの事業活動、製品のライフサイクルを通じた環境負荷をゼロにすると定めた、長期環境計画Road to Zeroのもと、積極的な環境活動を継続する」。

海洋プラスチック問題へのアプローチ

社外からソニーへの評価

さらに「ソニーは地球、社会の一員であり、その事業は地球環境や社会があってこそ成り立つ。環境や人権に対する取り組みをソニーの事業所だけでなく、サプライチェーン全体で進める」とした。

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