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公開日 2020/11/11 10:30

まだまだ油断ならないモバイルバッテリー事故。リコール製品や誤った使い方へ注意が必要

購入時にはPSEマークを必ず確認
PHILE WEB ビジネス編集部・竹内純
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■事故の7割が火災発生

肌身離さず持ち歩くアイテムとしてすっかり身近な存在になったモバイルバッテリー。電車の中でカバンの中に入れておいたモバイルバッテリーから突然煙が上がるなど、その発煙、発火事故が報道でも頻繁に取り上げられたのが2016年のことになる。

モバイルバッテリーの事故品(NITE提供)

モバイルバッテリー事故の発生件数を見てみると、2013年度15件、2014年度20件、2015年度25件、そして2016年度に52件と最多を記録、その後は2017年度38件、2018年度45件、2019年度(12月31日まで)24件と減少傾向にある。前記のような事故がテレビなどで報道されたことでモバイルバッテリーの危険性に対する認知が進むと同時に、モバイルバッテリーが電気用品安全法の規制対象製品となり、2019年2月1日以降、PSEマークおよび製造・輸入事業者名などが表示されていない製品の販売ができなくなったことで、減少に転じたものと推測される。

しかし、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)製品安全センター 広報担当・佐藤秀幸氏は「引き続き注意して使用してほしい」と訴える。モバイルバッテリーの事故が発生する主な原因は、製品の製造過程でバッテリーパックのセル内部に金属片の混入や電極板の不良などが生じた不具合品が混入していたため、充放電を繰り返すうちに内部ショートが生じ、異常発熱し、焼損に至るというもの。また、落とす・ぶつけるなどの衝撃で内部ショートが起きる例も見られ、取り扱いには注意が必要だ。「2013年度から2017年度に起きた150件のモバイルバッテリー事故のうち、実に106件が火災を伴っています。リチウムイオン電池の中には可燃性の電解液が用いられており、小さいからと過信できません」と危険性を指摘する。

独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センター 広報担当・佐藤秀幸氏

■リコール製品の見逃しに注意。廃棄のルールも順守

モバイルバッテリー事故にはいくつかの特徴が見られる。まず、事故発生件数の35%をリコール対象製品が占めていること。「リコール製品とは知らずに使用されていたケースも少なくありません。リコール製品については、新聞やDMで告知が行われていますし、消費者庁やNITEのホームページにも情報が掲載されています。『自分は関係ない』『自分は大丈夫』ではなく、リコール情報を積極的に入手し確認するようにしてください」と注意を促す。

また、非純正互換バッテリーの事故について先日お届けしたが、その購入先において9割以上をネット通販が占める顕著な傾向が見受けられた。モバイルバッテリー事故においても、2014年度から2019年度(12月31日まで)のモバイルバッテリー事故208件のうち、購入先が判明しているの131件において、55件がネット通販で購入したものだった。「非純正互換バッテリー事故の約9割まではいかないものの、高いウエイトと言えます。購入する際にはぜひ、販売事業者の連絡先を確かめてください。火災で賠償責任が生じる可能性もあります」。

事故発生時の使用状況では、2013年度から2017年度の150件の事故のうち、62件の41%を「充電中」が占める。次いで「使用中」が39件で26%、「保管中」が31件で21%、「持ち運び中」が15件で10%と続く。「特に、常にカバンなどに入れて持ち歩くものなので、電車内などで事故が発生すると、運行遅延など社会的に大きな影響を与えてしまうことも想定されます。実際に、飛行機の中で発生した例もありました」。衝撃に対する注意も必要なため、ズボンのポケットの中に入れて持ち運びなどの行為は避けなければならない。

モバイルバッテリーの発煙、発火の実験映像(NITE提供)

最近、モバイルバッテリーの新たな問題として注目されているのが充電容量にまつわるインチキ表示。テレビ番組でも取り上げられ話題になった。NITEでも実際に事故を起こしたものと同等品で調査・実験等を行う際に、製品に表記されている容量より少ないものや電極体の巻きずれなど品質の悪いものが見受けられるという。

佐藤氏は事故を防ぐための正しい使い方を心掛けてほしいと語る。「充電中の事故が多く発生しています。充電する際には可燃物を周りに置かないこと。特に就寝時は事故に気付きにくく、周囲にふとんなどの可燃物が多くあることから大変危険です。落として破損したものは使用しない。充電ができない、充電中に熱くなる、外観が膨張してきた、充電中に不意に電源が落ちる、変な臭いがするといった状況が認められる場合は、使用せずに製造・販売事業者の窓口まで相談してください。また、濡れた手で操作するのもよくありません」。

さらに、「最近問題となっているのが、モバイルバッテリーを燃えるごみとして廃棄してしまうケースが増えていること。ごみ収集車やごみ処理施設で火災が発生していると消防、自治体から報告されています。コロナ禍の断捨離でさらに危険が高まるのではないかと心配されています。自治体等で小型電池の回収などを行っておりますので、自治体の指示に従って正しく処分してください」。

■PSEマークのついてない商品は販売不可

モバイルバッテリーは電気用品安全法の規制対象製品となり、2019年2月1日以降は、技術基準の適合を確認されていないPSEマークの表示されていないものは販売できなくなった。しかし、ネット上ではPSEマークがない商品が販売されている例もまだ見受けられ、どれも安心・安全とは限らない。それら法律で定められたルールを知らないために危険にさらされてしまうこともある。

また、このような事故に対して改めて注目が高まるのが安心・安全の目印「Sマーク」。PSEマークにも菱形PSEと丸形PSEがあり、菱形PSEは国が認定した検査機関による適合性検査で認定を受けなければならないが、丸形PSEは自主確認のみ。モバイルバッテリーにつけられているのは丸形PSEで、安全性に対する消費者の不安が拭い切れないことも事実。Sマークは第三者機関が公正・公平に安全を確認した安全・安心のマーク。事故減少のためにも製造事業者間でのより幅広い運用が待望される。

電気製品の安心・安全の目印となるSマーク

Sマークを運営する電気製品認証協議会(SCEA)事務局長・平井雄二氏は「Sマークは任意の認証であるため、認証を受けるための費用や工場審査に対し、特に海外事業者で敬遠されるケースも少なくありません。そこで、輸入製品の安全性を確保するための認証制度として、より現実的な仕組みを目指し、制度の見直しを進めていきます」と説明する。佐藤氏も「安全性の面からは、本来は“第三者の目”というのは理想的。コスト面の問題などから一筋縄ではいきませんが、利用促進を願いたいですね」と語る。

モバイルバッテリーによる事故件数は確かに減少しているが、その分、リチウムイオン電池を用いた他の商品での事故が増えるなど、身の回りの危険性が低くなっているわけではない。商品競争力と安全性という二律背反の課題に対する製造事業者、販売事業者の対応をはじめ、電気製品の安全性を高めていくために、消費者自身にもより厳しい目が求められる。

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