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公開日 2021/12/15 13:15
パナソニック、画質・音質追求した“究極の4Kレコーダー”「DMR-ZR1」【レビューあり】
「UB9000を大きく超える再生性能」
パナソニックは、高画質・高音質を追求した4Kディーガのハイエンドモデル「DMR-ZR1」を2022年1月28日に発売する。価格はオープンだが、税込36万円前後の実売が予想される。
同社レコーダーのプレミアムモデルとして、「ディーガ史上最高グレードの高音質・高画質設計」による “究極のレコーダー” を追求。最上位プレーヤー「DP-UB9000」と同様の高剛性・低重心筐体を使用するほか、新開発の電源・デジタル回路を採用している。なお、記事後半ではAV評論家 鴻池賢三氏の実機インプレッションもお届けする。
過去のプレミアムモデルとしては、2015年発売の「DMR-UBZ1」があるが、Ultra HD Blu-rayに対応するものの、レコーダーとしては4K放送に対応せず、ハイビジョン画質までだった。またUBZ1のUHD BD再生画質についても、その後発売されたUB9000の方が上回っていることもあり、今回の新プレミアムモデルを開発したという。
また近年はディスプレイの表現力が4Kで向上し、Dolby Atmosにより音響環境も良くなっていることも、開発の経緯となる。ZR1はこのような時代でシステムの中心に置き、あらゆるコンテンツを扱う録画&再生機を目指している。また、開発にあたり「UB9000を超えよう」という思いがあったという。
結果、同社は本機について「UB9000を大きく超える再生性能を備えた究極の4K録画再生機」を実現したと説明。2006年発売のブルーレイディーガ「DMR-BW200」から15年間積み上げてきた、自社開発のLSIといったキーデバイスの技術に加えて、同社の高級プレーヤー/UniPhier/ハリウッドとの連携/テクニクスとの連携で培ったDNAを活かしている。
レコーダーとしては、3基の地上波/BS/CS兼用チューナーにより、4K放送の3番組同時録画に対応する。HDD容量は6TBで、4KDRで約390時間、4K 8-12倍で約4,680時間の録画が可能。録画番組数の上限については10,000タイトルとなる。YouTubeとDisney+には対応しないものの、NetflixやAmazon Prime Video、hulu、U-NEXTなど主要インターネットサービスもカバーする。
また、2021年秋の4Kディーガで採用された新機能を各種搭載。ドラマ・アニメの90日間「お録りおき」、表示領域や情報量をアップした「ジャンル別録画一覧」、1.3/1.6倍速再生を備える。また、4K解像度のお部屋ジャンプリンク、4Kお引越しダビングに対応。HDRではHDR10+やDolby Visionもサポートする。
■UB9000を超える基本画質・音質
筐体については、UB9000と共通で、2層構造のトップパネル、センタードライブ構成の3層構造ドライブベース、7mm厚フロントパネル、4層構造ベースシャーシを採用する。外形寸法についても同様で、430W×87H×300Dmm。質量はUB9000より重い13.6kgになっている。
全体構成は大きく変更された。ZR1はUB9000と同様の4ブロック独立構成を採用しつつも、アナログ専用電源とアナログオーディオ基板を削除。アナログ出力を廃することで、そのために必要だった部分をデジタル/ドライブ系に集中投下している。
具体的には、UB9000ではデジタル/ドライブ兼用電源&アナログ専用電源となっていたところ、ZR1ではデジタル専用電源&ドライブ専用電源という構成に。光ディスクとHDDを駆動する電源を分離させることで、回転によって発生するノイズがデジタル回路に回り込まないようにしている。またデジタル部の電源容量は従来と同様のため、回路負荷を下げる効果もある。電源の余裕が上がることで、SN比が改善されるなど、余裕のある画質と音質に寄与するとしている。
なお開発においては、技術者が音を追い込んでいく中で、映像の技術者が画も良くなっているか確認していくという、これまでにない進め方を行ったとのこと。最初にUB9000をベースにしてデジタル/ドライブの電源を分離させた際、余裕のある音が出たことで「これならUB9000を凌駕すると確信をもった」という。アナログ部分がなくなったことで、同軸回路やドライブ系電源の強化、グラウンド周りの電源強化など、デジタル部分に多くの改善が行われている。
デジタル回路の強化で行われたのが、クロックの精度の向上。システム用クロックでは、超低位相ノイズ水晶発振器により、UB9000比で約15dBの改善が行われている。これは軍事転用できるほど性能が高いため、輸出規制があるものだという。またクロックの電源についても、ローカルレギュレーターに加えて、アナログのDAC周りで使われるチップフィルムコンデンサを活用することで、高域のノイズを押さえている。
またAV用のクロックについては、通常のpsオーダーよりも精度が高い、fsオーダーの超低ジッターPLLを使用。こちらも電源が強化されており、ローカルレギュレーターとチップフィルムコンデンサが採用される。
回路のSN比改善として、ルビーマイカコンデンサと炭素皮膜抵抗によるUSBパワーコンディショナー回路を内蔵。前機種のUBZ1で付属品したUSBメモリ型のものと同じ回路だ。UB9000では1個だったところを4個に増やしており、USBのフロントとリアに各1個、映像/音声用HDMIに1個、音声用のHDMIに1個備えている。
さらにHDMI端子には、ノイズ対策を徹底。映像端子を介してデジタルノイズが音声に周り込んで音が悪くなるという経路があり、これを電源の経路見直しや、チップビーズ/チップフィルムコンデンサで高周波ノイズを落とすことで対処している。なおノイズを落としすぎると音がおとなしくなることから、部品と回路を最適化しながら、力強さとノイズの少なさの両立を目指したという。
LAN端子の強化により、Netflixやお部屋ジャンプリンクといったネットワーク再生の品質についても配慮した。UB9000ではイーサーネット用ICのクロックを使っていたところ、今作では外部クロックとして超低ジッター水晶発振器を採用。クロックの電源についても、ローカルレギュレーターとチップフィルムコンデンサを採用する。
さらに同軸出力には、テクニクスの高級ネットワークプレーヤー「SU-R1」と同等の出力回路を採用する。出力トランスによってシャーシGNDから分離することで、高周波ノイズの影響を低減。外部DACを組み合わせた際の音質についても向上を図った。
ほかハードウェア部分の取り組みとして、HDDについても高品質のものを採用している。同社の基準を満たすもののなかから、低回転で振動が少なく音質的に良いものを選定。これを3.2mmと0.8mmの鋼板を張り合わせたHDD専用ドライブベースに4点で固定することで、「触ってもほとんど動作しているかわからないほど」の振動に押さえている。
またリアパネルとトップパネルの取り付け方法についても、下穴を切って固定するミリネジによって締結の精度を向上。ドライブベース締結用のビスについても長くすることで音質を最適化するなど、細部まで音質に配慮している。
■独自のデジタルAV信号処理、使いやすさも追求
映像機能については、原画のフレームに戻して出力できる「4K/24p or 30p変換出力」を初搭載。4K放送では4K60pで番組が送られてしまうが、これを映画であれば24p、ドラマであれば30pといったかたちに、ユーザーが好みで選択できる。4:4:4で出力するため、DIGAのクロマアップサンプリング性能をフルに活かすことも可能。また放送以外ではAmazon Prime Videoのみ、24pでの映画出力に対応する。加えてUB9000と同様に、VOD再生時の画質・音質調整に対応。
暗い部屋で暗いシーンを観たときに “字幕が眩しい” という問題を解決する機能として、新開発の「映像字幕の輝度低減機能」を搭載。字幕データが入っているパッケージは従来も調整できたが、4K放送のように映像として一体化した字幕については調整できなかった。今回、映像をリアルタイムで分析することで、4K放送でも明るさが調整できるようになっている。
字幕の輝度低減については2段階から調整可能。字幕の明るさは映像も加味しており、明るいシーンと暗いシーンのそれぞれに合わせた調整が行われている。なお画面下部の字幕に最適化した設計とのことで、右側に縦向きで表示される字幕については、この機能で輝度低減されないという。
これまで調整項目にあった、ダイナミックレンジ/システムガンマを、連動して最適に調整してくれる設定も追加された。たとえばダイナミックレンジを上げて、システムガンマを下げることで、明るく高コントラストな表示が行える。従来はこれを手動で調整する必要があったが、連動設定をオンにすることで、より簡単に使うことができる。またシステムガンマについては、±6段階から±12段階に細かくなっている。
ハードウェア的なSN比の向上にともない、放送/VOD系のデジタル信号処理についても最適化。ノイズリダクション、4K超解像をUB9000よりも弱く適用させることで、よりオリジナルを活かす方向でチューニングが行われている。
また、4K長時間モードについては、画質アルゴリズムを改善している。動きが少ない画像でもビットレートが下がりすぎないように最適化し、さらに解像感やヌケの良い画質を追求。これまでの1.5倍(22Mbps)に加えて、BD-R 1層(25GB)にちょうど2時間ダビングできる1.3倍(25.4Mbps)モードも追加した。
音声面では、MPEG-4AACストリーム出力(2/5.1/22.2ch)に対応。さらに、4K放送の22.2chをDolby Atmosに変換する機能を業界で初めて採用する。22.2ch対応のAVアンプは少ないが、この機能でDolby Atmosに変換することで、多くの機器でイマーシブサウンドの再生が行えるようになる。
Dolbyとパナソニックの共同開発による技術で、変換後も遜色ない音場を再生できることが確認できたという。また同社のレコーダーは過去モデルも含めて、4KDRモードでは22.2chのストリームを記録しているため、ダビングでもDolby Atmos再生が楽しめる。
仕組み的には、22.2chのデータを、22.2chのリニアPCMにデコードし、メタデータと合わせてAVアンプに送るかたち。AVアンプに送られたデータについては、メタデータを用いて、スピーカー構成に合わせてレンダリングするため、再エンコードがなくクオリティも低下しない。なお、これにはDolby Atmosの一規格であるDolby MATを活用しており、Dolby MATのコンテナにPCMを埋め込んで伝送しているという。
使いやすさの面では、通常のディーガとは異なり、マニア視点で改善を実施。メニュー表示を白ベースから黒ベースに変更し、眩しさに配慮した。また画面センターが見えるようなデザインとすることで、映像を確認しながらの調整がしやすくなっている。
情報表示機能も強化され、パッケージディスクだけでなく、放送やダビングディスク、VODでも確認可能に。リモコンのiボタンを押すだけで、簡易表示/詳細表示/詳細表示・メタデータをトグル式で切り替えて表示できるようになった。
リモコンについては、新たに設計された「自照型リモコン」を採用する。ボタン配置も変更されており、押すと再生が終わってしまうような機能を呼び出すボタンが、再生に関する操作ボタンの近くにあったのを移動した。再生中/編集中は一時停止しないと、ホームと番組表が押せないなど、合わせて誤操作の対策も行われている。
■「DMR-ZR1」速攻インプレッション by 鴻池賢三
今回、いち早く、大阪にあるDIGAの開発拠点で、ZR1を体験する機会を得た。設備は、製品の検討に使用されている防音と調音が整った視聴室で、ディスプレイは65型の有機EL「HZ2000」、スピーカーは7.1.4ch構成。加えて同条件でUB9000と比較視聴できたため、違いも明確に分かった。
まず、本機はオーディオDACも内蔵しない割り切りが潔く、「4Kピュアデジタルトランスポーター」と呼ぶべき構成に惹かれる。小手調べにCDを再生して同軸デジタル出力を確認。UB9000はアナログ出力が魅力だが、同軸デジタルについてはZR1が圧勝だ。
ZR1のアナログ出力は情報量が桁違いに多く、特に低域の密度の高さ、そしてそこから醸し出される濃密な空気感はハイエンドオーディオの領域。DACとして接続したWADIA社CDプレーヤーの実力と個性を、遺憾なく発揮させる印象をもつ。
HDMI音声出力も品位の向上が目覚ましいが、同軸デジタル出力は違いがより分かりやすく、だれもがZR1の真価を体感できるだろう。
映像もS/Nが向上し、色数が増えてテクスチャ表現がより精密に。全体としては、空気感や奥行感が増す。UB9000も完成度が高いモデルではあったが、再生専用機をレコーダーが凌駕したのは感慨深い。
ほか、機能面では、22.2ch音声のDolby Atmos変換が新しく、NHK渾身の放送番組は超臨場と呼べる体験で画期的。UHD BDなどとも異なり、映像の世界に身を置いたような音場感に加え、頭上の定位や移動感の明瞭さに感激した。
ZR1によるイマーシブサウンドは、いま一般家庭で体験できる、最高のクオリティと断言したい。
同社レコーダーのプレミアムモデルとして、「ディーガ史上最高グレードの高音質・高画質設計」による “究極のレコーダー” を追求。最上位プレーヤー「DP-UB9000」と同様の高剛性・低重心筐体を使用するほか、新開発の電源・デジタル回路を採用している。なお、記事後半ではAV評論家 鴻池賢三氏の実機インプレッションもお届けする。
過去のプレミアムモデルとしては、2015年発売の「DMR-UBZ1」があるが、Ultra HD Blu-rayに対応するものの、レコーダーとしては4K放送に対応せず、ハイビジョン画質までだった。またUBZ1のUHD BD再生画質についても、その後発売されたUB9000の方が上回っていることもあり、今回の新プレミアムモデルを開発したという。
また近年はディスプレイの表現力が4Kで向上し、Dolby Atmosにより音響環境も良くなっていることも、開発の経緯となる。ZR1はこのような時代でシステムの中心に置き、あらゆるコンテンツを扱う録画&再生機を目指している。また、開発にあたり「UB9000を超えよう」という思いがあったという。
結果、同社は本機について「UB9000を大きく超える再生性能を備えた究極の4K録画再生機」を実現したと説明。2006年発売のブルーレイディーガ「DMR-BW200」から15年間積み上げてきた、自社開発のLSIといったキーデバイスの技術に加えて、同社の高級プレーヤー/UniPhier/ハリウッドとの連携/テクニクスとの連携で培ったDNAを活かしている。
レコーダーとしては、3基の地上波/BS/CS兼用チューナーにより、4K放送の3番組同時録画に対応する。HDD容量は6TBで、4KDRで約390時間、4K 8-12倍で約4,680時間の録画が可能。録画番組数の上限については10,000タイトルとなる。YouTubeとDisney+には対応しないものの、NetflixやAmazon Prime Video、hulu、U-NEXTなど主要インターネットサービスもカバーする。
また、2021年秋の4Kディーガで採用された新機能を各種搭載。ドラマ・アニメの90日間「お録りおき」、表示領域や情報量をアップした「ジャンル別録画一覧」、1.3/1.6倍速再生を備える。また、4K解像度のお部屋ジャンプリンク、4Kお引越しダビングに対応。HDRではHDR10+やDolby Visionもサポートする。
■UB9000を超える基本画質・音質
筐体については、UB9000と共通で、2層構造のトップパネル、センタードライブ構成の3層構造ドライブベース、7mm厚フロントパネル、4層構造ベースシャーシを採用する。外形寸法についても同様で、430W×87H×300Dmm。質量はUB9000より重い13.6kgになっている。
全体構成は大きく変更された。ZR1はUB9000と同様の4ブロック独立構成を採用しつつも、アナログ専用電源とアナログオーディオ基板を削除。アナログ出力を廃することで、そのために必要だった部分をデジタル/ドライブ系に集中投下している。
具体的には、UB9000ではデジタル/ドライブ兼用電源&アナログ専用電源となっていたところ、ZR1ではデジタル専用電源&ドライブ専用電源という構成に。光ディスクとHDDを駆動する電源を分離させることで、回転によって発生するノイズがデジタル回路に回り込まないようにしている。またデジタル部の電源容量は従来と同様のため、回路負荷を下げる効果もある。電源の余裕が上がることで、SN比が改善されるなど、余裕のある画質と音質に寄与するとしている。
なお開発においては、技術者が音を追い込んでいく中で、映像の技術者が画も良くなっているか確認していくという、これまでにない進め方を行ったとのこと。最初にUB9000をベースにしてデジタル/ドライブの電源を分離させた際、余裕のある音が出たことで「これならUB9000を凌駕すると確信をもった」という。アナログ部分がなくなったことで、同軸回路やドライブ系電源の強化、グラウンド周りの電源強化など、デジタル部分に多くの改善が行われている。
デジタル回路の強化で行われたのが、クロックの精度の向上。システム用クロックでは、超低位相ノイズ水晶発振器により、UB9000比で約15dBの改善が行われている。これは軍事転用できるほど性能が高いため、輸出規制があるものだという。またクロックの電源についても、ローカルレギュレーターに加えて、アナログのDAC周りで使われるチップフィルムコンデンサを活用することで、高域のノイズを押さえている。
またAV用のクロックについては、通常のpsオーダーよりも精度が高い、fsオーダーの超低ジッターPLLを使用。こちらも電源が強化されており、ローカルレギュレーターとチップフィルムコンデンサが採用される。
回路のSN比改善として、ルビーマイカコンデンサと炭素皮膜抵抗によるUSBパワーコンディショナー回路を内蔵。前機種のUBZ1で付属品したUSBメモリ型のものと同じ回路だ。UB9000では1個だったところを4個に増やしており、USBのフロントとリアに各1個、映像/音声用HDMIに1個、音声用のHDMIに1個備えている。
さらにHDMI端子には、ノイズ対策を徹底。映像端子を介してデジタルノイズが音声に周り込んで音が悪くなるという経路があり、これを電源の経路見直しや、チップビーズ/チップフィルムコンデンサで高周波ノイズを落とすことで対処している。なおノイズを落としすぎると音がおとなしくなることから、部品と回路を最適化しながら、力強さとノイズの少なさの両立を目指したという。
LAN端子の強化により、Netflixやお部屋ジャンプリンクといったネットワーク再生の品質についても配慮した。UB9000ではイーサーネット用ICのクロックを使っていたところ、今作では外部クロックとして超低ジッター水晶発振器を採用。クロックの電源についても、ローカルレギュレーターとチップフィルムコンデンサを採用する。
さらに同軸出力には、テクニクスの高級ネットワークプレーヤー「SU-R1」と同等の出力回路を採用する。出力トランスによってシャーシGNDから分離することで、高周波ノイズの影響を低減。外部DACを組み合わせた際の音質についても向上を図った。
ほかハードウェア部分の取り組みとして、HDDについても高品質のものを採用している。同社の基準を満たすもののなかから、低回転で振動が少なく音質的に良いものを選定。これを3.2mmと0.8mmの鋼板を張り合わせたHDD専用ドライブベースに4点で固定することで、「触ってもほとんど動作しているかわからないほど」の振動に押さえている。
またリアパネルとトップパネルの取り付け方法についても、下穴を切って固定するミリネジによって締結の精度を向上。ドライブベース締結用のビスについても長くすることで音質を最適化するなど、細部まで音質に配慮している。
■独自のデジタルAV信号処理、使いやすさも追求
映像機能については、原画のフレームに戻して出力できる「4K/24p or 30p変換出力」を初搭載。4K放送では4K60pで番組が送られてしまうが、これを映画であれば24p、ドラマであれば30pといったかたちに、ユーザーが好みで選択できる。4:4:4で出力するため、DIGAのクロマアップサンプリング性能をフルに活かすことも可能。また放送以外ではAmazon Prime Videoのみ、24pでの映画出力に対応する。加えてUB9000と同様に、VOD再生時の画質・音質調整に対応。
暗い部屋で暗いシーンを観たときに “字幕が眩しい” という問題を解決する機能として、新開発の「映像字幕の輝度低減機能」を搭載。字幕データが入っているパッケージは従来も調整できたが、4K放送のように映像として一体化した字幕については調整できなかった。今回、映像をリアルタイムで分析することで、4K放送でも明るさが調整できるようになっている。
字幕の輝度低減については2段階から調整可能。字幕の明るさは映像も加味しており、明るいシーンと暗いシーンのそれぞれに合わせた調整が行われている。なお画面下部の字幕に最適化した設計とのことで、右側に縦向きで表示される字幕については、この機能で輝度低減されないという。
これまで調整項目にあった、ダイナミックレンジ/システムガンマを、連動して最適に調整してくれる設定も追加された。たとえばダイナミックレンジを上げて、システムガンマを下げることで、明るく高コントラストな表示が行える。従来はこれを手動で調整する必要があったが、連動設定をオンにすることで、より簡単に使うことができる。またシステムガンマについては、±6段階から±12段階に細かくなっている。
ハードウェア的なSN比の向上にともない、放送/VOD系のデジタル信号処理についても最適化。ノイズリダクション、4K超解像をUB9000よりも弱く適用させることで、よりオリジナルを活かす方向でチューニングが行われている。
また、4K長時間モードについては、画質アルゴリズムを改善している。動きが少ない画像でもビットレートが下がりすぎないように最適化し、さらに解像感やヌケの良い画質を追求。これまでの1.5倍(22Mbps)に加えて、BD-R 1層(25GB)にちょうど2時間ダビングできる1.3倍(25.4Mbps)モードも追加した。
音声面では、MPEG-4AACストリーム出力(2/5.1/22.2ch)に対応。さらに、4K放送の22.2chをDolby Atmosに変換する機能を業界で初めて採用する。22.2ch対応のAVアンプは少ないが、この機能でDolby Atmosに変換することで、多くの機器でイマーシブサウンドの再生が行えるようになる。
Dolbyとパナソニックの共同開発による技術で、変換後も遜色ない音場を再生できることが確認できたという。また同社のレコーダーは過去モデルも含めて、4KDRモードでは22.2chのストリームを記録しているため、ダビングでもDolby Atmos再生が楽しめる。
仕組み的には、22.2chのデータを、22.2chのリニアPCMにデコードし、メタデータと合わせてAVアンプに送るかたち。AVアンプに送られたデータについては、メタデータを用いて、スピーカー構成に合わせてレンダリングするため、再エンコードがなくクオリティも低下しない。なお、これにはDolby Atmosの一規格であるDolby MATを活用しており、Dolby MATのコンテナにPCMを埋め込んで伝送しているという。
使いやすさの面では、通常のディーガとは異なり、マニア視点で改善を実施。メニュー表示を白ベースから黒ベースに変更し、眩しさに配慮した。また画面センターが見えるようなデザインとすることで、映像を確認しながらの調整がしやすくなっている。
情報表示機能も強化され、パッケージディスクだけでなく、放送やダビングディスク、VODでも確認可能に。リモコンのiボタンを押すだけで、簡易表示/詳細表示/詳細表示・メタデータをトグル式で切り替えて表示できるようになった。
リモコンについては、新たに設計された「自照型リモコン」を採用する。ボタン配置も変更されており、押すと再生が終わってしまうような機能を呼び出すボタンが、再生に関する操作ボタンの近くにあったのを移動した。再生中/編集中は一時停止しないと、ホームと番組表が押せないなど、合わせて誤操作の対策も行われている。
■「DMR-ZR1」速攻インプレッション by 鴻池賢三
今回、いち早く、大阪にあるDIGAの開発拠点で、ZR1を体験する機会を得た。設備は、製品の検討に使用されている防音と調音が整った視聴室で、ディスプレイは65型の有機EL「HZ2000」、スピーカーは7.1.4ch構成。加えて同条件でUB9000と比較視聴できたため、違いも明確に分かった。
まず、本機はオーディオDACも内蔵しない割り切りが潔く、「4Kピュアデジタルトランスポーター」と呼ぶべき構成に惹かれる。小手調べにCDを再生して同軸デジタル出力を確認。UB9000はアナログ出力が魅力だが、同軸デジタルについてはZR1が圧勝だ。
ZR1のアナログ出力は情報量が桁違いに多く、特に低域の密度の高さ、そしてそこから醸し出される濃密な空気感はハイエンドオーディオの領域。DACとして接続したWADIA社CDプレーヤーの実力と個性を、遺憾なく発揮させる印象をもつ。
HDMI音声出力も品位の向上が目覚ましいが、同軸デジタル出力は違いがより分かりやすく、だれもがZR1の真価を体感できるだろう。
映像もS/Nが向上し、色数が増えてテクスチャ表現がより精密に。全体としては、空気感や奥行感が増す。UB9000も完成度が高いモデルではあったが、再生専用機をレコーダーが凌駕したのは感慨深い。
ほか、機能面では、22.2ch音声のDolby Atmos変換が新しく、NHK渾身の放送番組は超臨場と呼べる体験で画期的。UHD BDなどとも異なり、映像の世界に身を置いたような音場感に加え、頭上の定位や移動感の明瞭さに感激した。
ZR1によるイマーシブサウンドは、いま一般家庭で体験できる、最高のクオリティと断言したい。