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公開日 2023/12/20 10:00
Noble Audio、xMEMS Labsとパートナーシップを締結。MEMSドライバー搭載イヤホンを国内投入へ
「FALCON MAX」と「XM-1」にMEMSドライバー「Cowell」を採用
エミライは、同社が取り扱うイヤホンブランドのNoble Audioと、MEMSドライバーを手掛けるxMEMS Labsがパートナーシップを締結したことを発表した。本稿では、メディア向けに開催されたイベントの模様をレポートする。
Noble Audioは複数のBAドライバーを搭載するインイヤーモニター(IEM)タイプの高級イヤホンを皮切りに、国内のオーディオファンからも高い知名度と人気を獲得したブランド。片側10基のBAドライバーを搭載するプレミアムモデル「Kaiser 10」をはじめ、数多くのファンを有する製品を生み出してきた。
長年マルチBAモデルを手掛けていた同ブランドだが、2019年には新しい方針として、ピエゾドライバーとダイナミックドライバーのハイブリッド構造を採用した「KHAN」を開発。それ以降も、各種ドライバーの特性を活かした音作りを積極的に行い、さらなる進化を追求しているという。
今回、Noble AudioがxMEMS Labsの戦略的パートナーシップを組むことになった背景について、エミライの島 幸太郎氏は「さまざまなドライバーの長所を活かした、Noble Audioならではの製品開発へのマインドが、このパートナーシップという取り組みに結実したものだと感じている」と語る。
今年1月に米ラスベガスで行われた国際展示会CES2023にて、Noble Audio創業者のジョン・モールトン博士をはじめ、兄であるジム・モールトン氏にxMEMS Labsのプライベートブースに連れられ、MEMSドライバーのサウンドを聴かせてもらったところ、従来のイヤホンサウンドにはない新たな高音質体験を実感したという。
「また、xMEMS Labsのメンバーは音楽を高音質で楽しむという“オーディオファンの気持ち”を感じられる方が多かった。そういったこともあり、今回の取り組みは大変光栄であり、喜ばしいことでもある」と、島氏は説明した。
そして、今回の戦略的パートナーシップによって、国内で登場予定の完全ワイヤレスイヤホン「FALCON MAX」やUSB-DAC内蔵のケーブルを導入した有線イヤホン「XM-1」に、MEMSドライバー「Cowell」の導入が叶ったという。
xMEMS Labsの概要、MEMSドライバーの詳細については、xMEMS Japan合同会社 副社長のマーク・ウッド氏が解説した。xMEMS Labsは、2018年の1月に設立されたブランドであり、MEMSドライバーを補聴器や完全ワイヤレスイヤホン、IEMなどに活用してクオリティアップを図ることをミッションとしている。また、130以上の特許技術を有していることも同社の特徴だという。
2020年にMEMSドライバーの第1弾「Montara」を開発し、2021年から量産を開始。半導体製造大手のTSMCので生産され、8インチのシリコンウェハーからダイシング(切り分け)され、シリコンパッケージに納められている。
MEMSドライバーの振動板にはピエゾとシリコンが用いられている。ピエゾに電圧をかけるとシリコンが動作し、15Vのバイアス電圧で平らとなる。そして音楽信号に応じた電圧を掛けることでスピーカーの動きになり、シリコンの開き具合が変わって音が出力されるという仕組みだ。パッケージは2種類あり、トップにポートが開いているものと、サイドにポートが開いているものがラインナップされている。ちなみに、このピエゾのプロセスは2015年に誕生したそうだ。
MEMSドライバーについてウッド氏は、品質やパーツ間の一貫性、ドライバーの応答速度やサウンドの正確性、重さや耐久性など、従来のボイスコイルドライバーが抱えていた課題をカバーしたソリューションと位置づけ、それ以外にも多数のメリットがあると説明する。
生産面で言えば、大手の専業半導体ファウンドリーTSMCに製造してもらっているため安定しており、コスト面も生産数が増えれば着実に下げることができる。半導体のプロセスを使用しているため、感度や周波数特性、歪率やS/Nなど、細かい部分までコントロールできるのも特徴であり、パートナーブランドにとっても使いやすいことがアピールされた。
位相特性が優れている点も魅力的であり、どの周波数帯域においてもほぼフラット。そしてレスポンスの速さも、一般的なボイスコイルドライバーであれば1ms程だが、MEMSドライバーであれば10μsという速度を実現している。小型で軽くて薄いことも利点である。
低周波数の感度に対しては、最新技術を用いたMEMSドライバーであれば1基でフルレンジ対応が可能であり、より高感度なものも現在開発中。これが実現すれば、1基のMEMSドライバーだけで、ノイズキャンセリングイヤホンに必要なスペックを満たせるそうだ。
MEMSドライバーは、堅牢性の高さも備えている。3年間という長期間駆動させても周波数特性などのパフォーマンスが低下することなく、10、000gの耐衝撃性、1.8mからの落下試験にも耐えうる。また、ドライバー単体でもIP58の防塵・防水規格をクリアしているとのこと。
現在、MEMSドライバーは、先述した第1弾モデルの「Montara」をはじめ、世界で最も小型な「Cowell」、そしてMontaraよりも感度を高めた「Montara Plus」をラインナップする。
Cowellは、完全ワイヤレスイヤホンに最適な小型のモデルで、そのサイズは1.9W×0.6H×1.9Dmm。Aptosというアンプチップが用意されている。他のドライバーと組み合わせた2ウェイ・ドライバーとして使用されるほか、補聴器でも採用しやすく、省電力な点も特徴だ。
Montara Plusは、200Hzで120dBの感度を実現したフルレンジモデル。パッケージサイズは大きくコストもかかるが、音質を追求したハイエンドIEMに好適で、オーディオファンからも強く支持されているという。また、DSP制御で開閉できる“ダイナミックベント”を備えたモデルも展開しており、イヤホンのポートの裏に配置することで、通気性/遮音性を調節できるそうだ。
同社ではMEMSドライバーを採用したレファレンスデザインとして、フルレンジまたはハイブリッド構成のイヤホンや、Montara Plusとダイナミックドライバーの2ウェイ構成を採用したオーディオグラス、トゥイーターとして16基ものMontaraを敷き詰めたブックシェルフ型スピーカーなどを用意。さまざまな活用方法も提案している。
最後に、「Cypress」という新型MEMSドライバーについても紹介された。超音波を活用した振幅変調・復調技術を搭載していることが大きなトピックで、低周波数の感度が非常に高く、20Hzで140dBを達成。Montana Plusの117dBを上回り、またCowellと比べて40倍も高いが、パッケージサイズはMontana Plusより45%も小型化を実現している。そしてひとつのドライバーで、20Hz - 20kHzのフルレンジに対応できるのだという。
Cypressは2024年1月に開催される「CES2024」でもプライベートブースを用意する予定で、2024年6月に量産開始、2025年に製品化に向け開発中だという。
これらMEMSドライバーを採用した、Noble Audioのイヤホンの今後の展開に注目が集まる。
■「ドライバーの特性を活かす」Noble Audioの音作りの思想がマッチ
Noble Audioは複数のBAドライバーを搭載するインイヤーモニター(IEM)タイプの高級イヤホンを皮切りに、国内のオーディオファンからも高い知名度と人気を獲得したブランド。片側10基のBAドライバーを搭載するプレミアムモデル「Kaiser 10」をはじめ、数多くのファンを有する製品を生み出してきた。
長年マルチBAモデルを手掛けていた同ブランドだが、2019年には新しい方針として、ピエゾドライバーとダイナミックドライバーのハイブリッド構造を採用した「KHAN」を開発。それ以降も、各種ドライバーの特性を活かした音作りを積極的に行い、さらなる進化を追求しているという。
今回、Noble AudioがxMEMS Labsの戦略的パートナーシップを組むことになった背景について、エミライの島 幸太郎氏は「さまざまなドライバーの長所を活かした、Noble Audioならではの製品開発へのマインドが、このパートナーシップという取り組みに結実したものだと感じている」と語る。
今年1月に米ラスベガスで行われた国際展示会CES2023にて、Noble Audio創業者のジョン・モールトン博士をはじめ、兄であるジム・モールトン氏にxMEMS Labsのプライベートブースに連れられ、MEMSドライバーのサウンドを聴かせてもらったところ、従来のイヤホンサウンドにはない新たな高音質体験を実感したという。
「また、xMEMS Labsのメンバーは音楽を高音質で楽しむという“オーディオファンの気持ち”を感じられる方が多かった。そういったこともあり、今回の取り組みは大変光栄であり、喜ばしいことでもある」と、島氏は説明した。
そして、今回の戦略的パートナーシップによって、国内で登場予定の完全ワイヤレスイヤホン「FALCON MAX」やUSB-DAC内蔵のケーブルを導入した有線イヤホン「XM-1」に、MEMSドライバー「Cowell」の導入が叶ったという。
■従来のコイルドライバーのデメリットをカバーする「MEMSドライバー」
xMEMS Labsの概要、MEMSドライバーの詳細については、xMEMS Japan合同会社 副社長のマーク・ウッド氏が解説した。xMEMS Labsは、2018年の1月に設立されたブランドであり、MEMSドライバーを補聴器や完全ワイヤレスイヤホン、IEMなどに活用してクオリティアップを図ることをミッションとしている。また、130以上の特許技術を有していることも同社の特徴だという。
2020年にMEMSドライバーの第1弾「Montara」を開発し、2021年から量産を開始。半導体製造大手のTSMCので生産され、8インチのシリコンウェハーからダイシング(切り分け)され、シリコンパッケージに納められている。
MEMSドライバーの振動板にはピエゾとシリコンが用いられている。ピエゾに電圧をかけるとシリコンが動作し、15Vのバイアス電圧で平らとなる。そして音楽信号に応じた電圧を掛けることでスピーカーの動きになり、シリコンの開き具合が変わって音が出力されるという仕組みだ。パッケージは2種類あり、トップにポートが開いているものと、サイドにポートが開いているものがラインナップされている。ちなみに、このピエゾのプロセスは2015年に誕生したそうだ。
MEMSドライバーについてウッド氏は、品質やパーツ間の一貫性、ドライバーの応答速度やサウンドの正確性、重さや耐久性など、従来のボイスコイルドライバーが抱えていた課題をカバーしたソリューションと位置づけ、それ以外にも多数のメリットがあると説明する。
生産面で言えば、大手の専業半導体ファウンドリーTSMCに製造してもらっているため安定しており、コスト面も生産数が増えれば着実に下げることができる。半導体のプロセスを使用しているため、感度や周波数特性、歪率やS/Nなど、細かい部分までコントロールできるのも特徴であり、パートナーブランドにとっても使いやすいことがアピールされた。
位相特性が優れている点も魅力的であり、どの周波数帯域においてもほぼフラット。そしてレスポンスの速さも、一般的なボイスコイルドライバーであれば1ms程だが、MEMSドライバーであれば10μsという速度を実現している。小型で軽くて薄いことも利点である。
低周波数の感度に対しては、最新技術を用いたMEMSドライバーであれば1基でフルレンジ対応が可能であり、より高感度なものも現在開発中。これが実現すれば、1基のMEMSドライバーだけで、ノイズキャンセリングイヤホンに必要なスペックを満たせるそうだ。
MEMSドライバーは、堅牢性の高さも備えている。3年間という長期間駆動させても周波数特性などのパフォーマンスが低下することなく、10、000gの耐衝撃性、1.8mからの落下試験にも耐えうる。また、ドライバー単体でもIP58の防塵・防水規格をクリアしているとのこと。
■MEMSドライバーはラインナップも豊富。超音波技術採用モデルも開発中
現在、MEMSドライバーは、先述した第1弾モデルの「Montara」をはじめ、世界で最も小型な「Cowell」、そしてMontaraよりも感度を高めた「Montara Plus」をラインナップする。
Cowellは、完全ワイヤレスイヤホンに最適な小型のモデルで、そのサイズは1.9W×0.6H×1.9Dmm。Aptosというアンプチップが用意されている。他のドライバーと組み合わせた2ウェイ・ドライバーとして使用されるほか、補聴器でも採用しやすく、省電力な点も特徴だ。
Montara Plusは、200Hzで120dBの感度を実現したフルレンジモデル。パッケージサイズは大きくコストもかかるが、音質を追求したハイエンドIEMに好適で、オーディオファンからも強く支持されているという。また、DSP制御で開閉できる“ダイナミックベント”を備えたモデルも展開しており、イヤホンのポートの裏に配置することで、通気性/遮音性を調節できるそうだ。
同社ではMEMSドライバーを採用したレファレンスデザインとして、フルレンジまたはハイブリッド構成のイヤホンや、Montara Plusとダイナミックドライバーの2ウェイ構成を採用したオーディオグラス、トゥイーターとして16基ものMontaraを敷き詰めたブックシェルフ型スピーカーなどを用意。さまざまな活用方法も提案している。
最後に、「Cypress」という新型MEMSドライバーについても紹介された。超音波を活用した振幅変調・復調技術を搭載していることが大きなトピックで、低周波数の感度が非常に高く、20Hzで140dBを達成。Montana Plusの117dBを上回り、またCowellと比べて40倍も高いが、パッケージサイズはMontana Plusより45%も小型化を実現している。そしてひとつのドライバーで、20Hz - 20kHzのフルレンジに対応できるのだという。
Cypressは2024年1月に開催される「CES2024」でもプライベートブースを用意する予定で、2024年6月に量産開始、2025年に製品化に向け開発中だという。
これらMEMSドライバーを採用した、Noble Audioのイヤホンの今後の展開に注目が集まる。