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ガジェット 公開日 2024/03/19 10:53
「nubia」ブランドで再始動を図るZTE、低価格折り畳みスマホで勝負をかける
【連載】佐野正弘のITインサイト 第100回
去る2024年2月29日、ソフトバンクはやや意外な製品を発売している。それは折り畳みスマートフォンの新機種「Libero Flip」だ。
Libero Flipは、大画面のスマートフォンを折り畳んでコンパクトにできる、縦折り型のスマートフォンの一種。縦折り型のスマートフォン自体は日本でもいくつか販売されているので、珍しいものではない。だが意外なのは、販売するのがメインブランドの「ソフトバンク」ではなく、サブブランドの「ワイモバイル」であるということだ。
その価格も非常に安く、ワイモバイルのオンラインショップでの販売価格は6万3,000円。新規契約または番号ポータビリティによる乗り換えで、指定の料金プランに加入して購入すると4万円を切る価格を実現できる。10万円を超えるモデルが大半を占める折り畳みスマートフォンとしては、破格の安さだ。
もちろん実際に触れてみると、低価格である理由もいくつか見えてくる。その1つはサイズで、開いた状態での厚さが7.3mmと、スマートフォンとしては一般的だが折り畳みスマートフォンとしては厚みがある。重量も214gなので、折り畳んだ状態でポケットに入れると厚さと重さを感じてしまう。
搭載するチップセットも、クアルコム製のミドルハイクラス向けとなる「Snapdragon 7 Gen 1」に抑えられているほか、対応する周波数帯も、主にソフトバンクが使っているものに限定。4Gに関してはNTTドコモやKDDIのプラチナバンドである800MHz帯に対応していないことから、ソフトバンク以外のSIMを挿入すると、快適に通信できないと考えられる。
それでも、折り畳みスマートフォンで6万円台という価格を実現したことには驚きがあるのだが、実はこのスマートフォンを開発した企業が、2024年3月14日に発表会を実施している。それが中国ZTEの日本法人であるZTEジャパンだ。
同社は発表会で、新たに「nubia」ブランドのスマートフォンを日本のSIMフリー(オープン市場)向けに展開することを明らかにした。実際同社は日本市場に向けて、「nubia Flip 5G」「nubia Ivy」の2機種を投入することを発表しており、折り畳み型のnubia Flip 5Gは2024年2月26日から実施されていた「MWC Barcelona 2024」で発表されたばかりのモデル。Libero Flipよりは高額だが、それでもメーカー希望小売価格は7万9,800円と、折り畳みスマートフォンとして見れば非常に安い。
だが実は、これら2機種はいずれもワイモバイルから、「Libero」ブランドを冠して発売されたスマートフォンとベースが共通している。実際、nubia Flip 5Gは先に触れたLibero Flip、nubia Ivyは2023年末にワイモバイルから発売された「Libero 5G IV」がベースとなっており、本体カラーやプリインストールアプリ、メモリや対応する周波数帯などいくつか違いはあるものの、かなりの部分で共通していることは確かだ。
携帯大手に供給している端末をベースとすることで、国内でのスケールメリットを生かし、オープン市場に向けても端末を投入してブランドを確立させたいというのがZTEの狙いといえるだろう。ただ同社は、nubiaブランドでオープン市場向けにスマートフォンを提供したのは確かに初めてなのだが、2017年頃までは「ZTE」ブランドで、やはりオープン市場に向けてスマートフォンを販売していたことがある。
それがなぜ今、新しいブランドでオープン市場に再チャレンジしているのかというと、やはり大きく影響したのは米国による制裁だろう。ZTEはスマートフォンだけでなく、携帯電話のネットワークを整備する通信機器も提供しており、そちらの事業で米国の輸出規制対象となっているイランや北朝鮮に通信機器を輸出していたことから、2018年に米国から制裁を受け、一時は事業の継続が困難な状況にまで追い込まれた。
その影響は端末事業にも及び、日本でも大きな混乱が生じたことから、日本法人でも一時事業の大幅な縮小を余儀なくされている。だが、同様に米国から制裁を受けている中国のファーウェイ・テクノロジーズとは異なり、ZTEに対する制裁は同年のうちに解除されている。そこで同社は、データ通信端末を中心として徐々に日本での事業を徐々に再開、元々取引のあったKDDIやソフトバンクだけでなく、最近では楽天モバイルへの端末供給も実現している。
加えて、実はZTEはnubiaブランド以前にもオープン市場向けの端末販売を再開しており、ゲーミングスマートフォンとして国内に継続投入されている「REDMAGIC」シリーズがそれに当たる。ZTEが制裁後、地道に事業を拡大してきていることが理解できるだろう。
そして、米国による制裁から5年以上が経過したことから、再び自社ブランドで勝負に出るべくオープン市場への製品投入に至ったといえそうだ。現在は円安と政府による端末値引き規制で、スマートフォン市場は非常に厳しい環境にあるが、日本への参入が遅く携帯大手との取引が少ないOPPOやXiaomiなどと比べ、2008年から日本市場に参入していたZTEは携帯大手各社と太いパイプがあり、日本でのスケールメリットをオープン市場向けの製品にも生かせることが、競争上優位に働くと判断したのではないだろうか。
とはいえZTEは、米国による制裁の影響もあってブランド認知は進んでいないだけに、オープン市場での販売拡大に向けては課題が少なからずある。
国内メーカーの相次ぐ撤退により、モバイルWi-Fiルーターや子供・シニア向け端末などのニッチな端末開発を支えるメーカーとしての存在感は高まってきたZTEだが、独立したスマートフォンメーカーとしての市場開拓に向けた道のりは、まだまだ険しいというのが正直なところだ。
Libero Flipは、大画面のスマートフォンを折り畳んでコンパクトにできる、縦折り型のスマートフォンの一種。縦折り型のスマートフォン自体は日本でもいくつか販売されているので、珍しいものではない。だが意外なのは、販売するのがメインブランドの「ソフトバンク」ではなく、サブブランドの「ワイモバイル」であるということだ。
その価格も非常に安く、ワイモバイルのオンラインショップでの販売価格は6万3,000円。新規契約または番号ポータビリティによる乗り換えで、指定の料金プランに加入して購入すると4万円を切る価格を実現できる。10万円を超えるモデルが大半を占める折り畳みスマートフォンとしては、破格の安さだ。
もちろん実際に触れてみると、低価格である理由もいくつか見えてくる。その1つはサイズで、開いた状態での厚さが7.3mmと、スマートフォンとしては一般的だが折り畳みスマートフォンとしては厚みがある。重量も214gなので、折り畳んだ状態でポケットに入れると厚さと重さを感じてしまう。
搭載するチップセットも、クアルコム製のミドルハイクラス向けとなる「Snapdragon 7 Gen 1」に抑えられているほか、対応する周波数帯も、主にソフトバンクが使っているものに限定。4Gに関してはNTTドコモやKDDIのプラチナバンドである800MHz帯に対応していないことから、ソフトバンク以外のSIMを挿入すると、快適に通信できないと考えられる。
■ZTEジャパン、「nubia」スマートフォンをオープン市場向けに投入
それでも、折り畳みスマートフォンで6万円台という価格を実現したことには驚きがあるのだが、実はこのスマートフォンを開発した企業が、2024年3月14日に発表会を実施している。それが中国ZTEの日本法人であるZTEジャパンだ。
同社は発表会で、新たに「nubia」ブランドのスマートフォンを日本のSIMフリー(オープン市場)向けに展開することを明らかにした。実際同社は日本市場に向けて、「nubia Flip 5G」「nubia Ivy」の2機種を投入することを発表しており、折り畳み型のnubia Flip 5Gは2024年2月26日から実施されていた「MWC Barcelona 2024」で発表されたばかりのモデル。Libero Flipよりは高額だが、それでもメーカー希望小売価格は7万9,800円と、折り畳みスマートフォンとして見れば非常に安い。
だが実は、これら2機種はいずれもワイモバイルから、「Libero」ブランドを冠して発売されたスマートフォンとベースが共通している。実際、nubia Flip 5Gは先に触れたLibero Flip、nubia Ivyは2023年末にワイモバイルから発売された「Libero 5G IV」がベースとなっており、本体カラーやプリインストールアプリ、メモリや対応する周波数帯などいくつか違いはあるものの、かなりの部分で共通していることは確かだ。
携帯大手に供給している端末をベースとすることで、国内でのスケールメリットを生かし、オープン市場に向けても端末を投入してブランドを確立させたいというのがZTEの狙いといえるだろう。ただ同社は、nubiaブランドでオープン市場向けにスマートフォンを提供したのは確かに初めてなのだが、2017年頃までは「ZTE」ブランドで、やはりオープン市場に向けてスマートフォンを販売していたことがある。
それがなぜ今、新しいブランドでオープン市場に再チャレンジしているのかというと、やはり大きく影響したのは米国による制裁だろう。ZTEはスマートフォンだけでなく、携帯電話のネットワークを整備する通信機器も提供しており、そちらの事業で米国の輸出規制対象となっているイランや北朝鮮に通信機器を輸出していたことから、2018年に米国から制裁を受け、一時は事業の継続が困難な状況にまで追い込まれた。
その影響は端末事業にも及び、日本でも大きな混乱が生じたことから、日本法人でも一時事業の大幅な縮小を余儀なくされている。だが、同様に米国から制裁を受けている中国のファーウェイ・テクノロジーズとは異なり、ZTEに対する制裁は同年のうちに解除されている。そこで同社は、データ通信端末を中心として徐々に日本での事業を徐々に再開、元々取引のあったKDDIやソフトバンクだけでなく、最近では楽天モバイルへの端末供給も実現している。
加えて、実はZTEはnubiaブランド以前にもオープン市場向けの端末販売を再開しており、ゲーミングスマートフォンとして国内に継続投入されている「REDMAGIC」シリーズがそれに当たる。ZTEが制裁後、地道に事業を拡大してきていることが理解できるだろう。
そして、米国による制裁から5年以上が経過したことから、再び自社ブランドで勝負に出るべくオープン市場への製品投入に至ったといえそうだ。現在は円安と政府による端末値引き規制で、スマートフォン市場は非常に厳しい環境にあるが、日本への参入が遅く携帯大手との取引が少ないOPPOやXiaomiなどと比べ、2008年から日本市場に参入していたZTEは携帯大手各社と太いパイプがあり、日本でのスケールメリットをオープン市場向けの製品にも生かせることが、競争上優位に働くと判断したのではないだろうか。
とはいえZTEは、米国による制裁の影響もあってブランド認知は進んでいないだけに、オープン市場での販売拡大に向けては課題が少なからずある。
国内メーカーの相次ぐ撤退により、モバイルWi-Fiルーターや子供・シニア向け端末などのニッチな端末開発を支えるメーカーとしての存在感は高まってきたZTEだが、独立したスマートフォンメーカーとしての市場開拓に向けた道のりは、まだまだ険しいというのが正直なところだ。