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公開日 2022/07/13 15:35
ウェッブ望遠鏡「最初の写真」が追加公開。宇宙の進化を見せてくれるタイムマシン【Gadget Gate】
これからが楽しみ
バイデン米大統領による、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の初のフルカラー画像の発表に続き、NASAは予告していた、残る4つの被写体を捉えた画像も公開した。
NASA、ESA、CSAが共同運用するジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)からのものとしてバイデン大統領が発表した「SMACS 0723」の画像は、非常に遠い宇宙の一角に無数の銀河が映り込んでいる、とても賑やかな画像だった。
NASAはこの画像が、これまで撮影されたなかで最も深宇宙を捉えた画像だと評価し、このなかに見えるいくつかの銀河の光は、約130億年前に発せられたものだと説明した。
このようにJWSTは、太陽系内の天体はもとより、約130億年以上前に発せられた光を捉えられ、はるか昔の宇宙の姿を鮮明にとらえることができる。
NASAゴダード宇宙飛行センターの上級天文物理学者、ジョン・C・メイザー氏は、JWSTを「ビッグバンの後に何が起こったのか、どうやって銀河が形成されたのか、宇宙初のブラックホールはどのように成長したのか、そしてこれまでに何があったのかを見せてくれるタイムマシンだ」と評した。
イータカリーナ星雲を捉えたものは、今回の目玉となる画像だ。これまでにハッブル宇宙望遠鏡がとらえた画像が非常に美しく、様々な宇宙に関する書籍で紹介されているイータカリーナ星雲だが、JWSTがとらえた新しい画像は、まるでHDが4Kになったときのような美しさをわれわれに見せてくれる。
JWSTの副プロジェクトサイエンティストを担当するアンバー・ストローン氏は、この画像を調べると「これまでまったく見えなかったところに新しい星々が初めて見えてきた」と、その画像の精緻さを伝えるともに「とても美しいばかりか、正直言うと、この画像のどこから調査の手を付ければ良いのかとしばし考え込んでしまった」と感想を述べている。
そして「太陽やその周りを回る惑星、さらには私たち自身が、この画像に美しく見えるガスや塵、それを引き裂くような若い星によるジェットに含まれるものと同じ物質から形成されたのだと思い起こさせる」とした。
ステファンの五つ子銀河の画像は一目瞭然で、五つの銀河が寄り添うようにあり、周囲にも大小の銀河が広がっている。しかし実際は、すべてが同じ近さにあるのではなく、画像左上に見える銀河はかなり手前にあり、残りの4つは約3億光年離れたところで互いに影響を及ぼしあっている。そのため銀河の形状に歪みが生じ、渦巻腕のなかで続々と星が形成される活発さを見せている。
欧州宇宙機関(ESA)NIRSpecユニットのサイエンティスト、ジョヴァンナ・ジャルディーノ氏は「この画像は、銀河の進化を促す相互作用、つまり銀河の成長メカニズムを如実に示しており、非常に重要な研究対象になる」と説明した。
また、この画像は中間赤外線と近赤外線を組み合わせたものだが、中間赤外線だけで捉えた画像を見ると、一番上に見える銀河の中心に、一際明るい光源があるのがわかる。ジャルディーノ氏によれば、これは活動しているブラックホールだという。ブラックホールそのものは見えるものではないが、その強大な重力のために、周囲の物質が渦を巻いて吸い込まれる際、高温になり、明るく輝いて見える。この光の強さは太陽の400億倍だという。
WASP-96 Bは、2013年に発見された太陽系外惑星だ。ほうおう座の方向、約1141光年にある恒星WASP-96を、周期わずか3日で公転している。土星よりわずかに大きいぐらいの質量を持ちながら、主星から約678万kmの非常に近い軌道を回っているため、表面温度は約1012℃に達し、ホットサターンと呼ばれている。
ヨーロッパ南天天文台 (ESO) の超大型望遠鏡VLTによる観測で、大気のスペクトルについて調べたところ、この惑星には雲がほぼ(もしくはまったく)存在していないと推測されている。
しかしJWSTによって得られた大気スペクトルのデータには、非常に高温のこの星の大気中に、水蒸気と見られる化学的特徴が示されていたとのこと。このような過酷な環境のなかでは、生命が存在する可能性はほとんどないが、JWSTによる太陽系外惑星の大気の観測能力を示す事例といえそうだ。
NGC 3132は、太陽系から約2000光年の彼方にある惑星状星雲。大きさは約0.5光年にもおよび、中央にある連星のうち暗い方がこのガスの発生源の白色矮星だ。リングや8の字のように見えるガスは、約15km/sという猛スピードで膨張しているという。JWSTの観測で、これまであまりはっきり見えていなかった、暗い方の白色矮星がより鮮明になった。
NASAはこの星雲を、近赤外線カメラ(NIRCam)および中間赤外線カメラ(MIRI)で捉えた画像を公開し、それぞれの画像に含まれる様々な色が、水素分子や高温の電離ガスなどの物質由来のものであると説明している。
JWSTの最初の画像とスペクトルの公開は、最新の宇宙望遠鏡が科学運用を開始したことを告げるものだ。これから世界中の天文学者は、先を争ってこの宇宙天文台の4つの観測装置を使い、太陽系内の天体からはるか昔の初期の宇宙までを観察していくことになるだろう。
JWSTはこれから約20年にわたり、まだ見たことのない、また想像もしたことがないような宇宙の新しい姿を、われわれに見せてくれるはずだ。
Source: Space Telescope Science Institute,NASA
via: The Verge
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NASA、ESA、CSAが共同運用するジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)からのものとしてバイデン大統領が発表した「SMACS 0723」の画像は、非常に遠い宇宙の一角に無数の銀河が映り込んでいる、とても賑やかな画像だった。
NASAはこの画像が、これまで撮影されたなかで最も深宇宙を捉えた画像だと評価し、このなかに見えるいくつかの銀河の光は、約130億年前に発せられたものだと説明した。
このようにJWSTは、太陽系内の天体はもとより、約130億年以上前に発せられた光を捉えられ、はるか昔の宇宙の姿を鮮明にとらえることができる。
NASAゴダード宇宙飛行センターの上級天文物理学者、ジョン・C・メイザー氏は、JWSTを「ビッグバンの後に何が起こったのか、どうやって銀河が形成されたのか、宇宙初のブラックホールはどのように成長したのか、そしてこれまでに何があったのかを見せてくれるタイムマシンだ」と評した。
イータカリーナ星雲を捉えたものは、今回の目玉となる画像だ。これまでにハッブル宇宙望遠鏡がとらえた画像が非常に美しく、様々な宇宙に関する書籍で紹介されているイータカリーナ星雲だが、JWSTがとらえた新しい画像は、まるでHDが4Kになったときのような美しさをわれわれに見せてくれる。
JWSTの副プロジェクトサイエンティストを担当するアンバー・ストローン氏は、この画像を調べると「これまでまったく見えなかったところに新しい星々が初めて見えてきた」と、その画像の精緻さを伝えるともに「とても美しいばかりか、正直言うと、この画像のどこから調査の手を付ければ良いのかとしばし考え込んでしまった」と感想を述べている。
そして「太陽やその周りを回る惑星、さらには私たち自身が、この画像に美しく見えるガスや塵、それを引き裂くような若い星によるジェットに含まれるものと同じ物質から形成されたのだと思い起こさせる」とした。
ステファンの五つ子銀河の画像は一目瞭然で、五つの銀河が寄り添うようにあり、周囲にも大小の銀河が広がっている。しかし実際は、すべてが同じ近さにあるのではなく、画像左上に見える銀河はかなり手前にあり、残りの4つは約3億光年離れたところで互いに影響を及ぼしあっている。そのため銀河の形状に歪みが生じ、渦巻腕のなかで続々と星が形成される活発さを見せている。
欧州宇宙機関(ESA)NIRSpecユニットのサイエンティスト、ジョヴァンナ・ジャルディーノ氏は「この画像は、銀河の進化を促す相互作用、つまり銀河の成長メカニズムを如実に示しており、非常に重要な研究対象になる」と説明した。
また、この画像は中間赤外線と近赤外線を組み合わせたものだが、中間赤外線だけで捉えた画像を見ると、一番上に見える銀河の中心に、一際明るい光源があるのがわかる。ジャルディーノ氏によれば、これは活動しているブラックホールだという。ブラックホールそのものは見えるものではないが、その強大な重力のために、周囲の物質が渦を巻いて吸い込まれる際、高温になり、明るく輝いて見える。この光の強さは太陽の400億倍だという。
WASP-96 Bは、2013年に発見された太陽系外惑星だ。ほうおう座の方向、約1141光年にある恒星WASP-96を、周期わずか3日で公転している。土星よりわずかに大きいぐらいの質量を持ちながら、主星から約678万kmの非常に近い軌道を回っているため、表面温度は約1012℃に達し、ホットサターンと呼ばれている。
ヨーロッパ南天天文台 (ESO) の超大型望遠鏡VLTによる観測で、大気のスペクトルについて調べたところ、この惑星には雲がほぼ(もしくはまったく)存在していないと推測されている。
しかしJWSTによって得られた大気スペクトルのデータには、非常に高温のこの星の大気中に、水蒸気と見られる化学的特徴が示されていたとのこと。このような過酷な環境のなかでは、生命が存在する可能性はほとんどないが、JWSTによる太陽系外惑星の大気の観測能力を示す事例といえそうだ。
NGC 3132は、太陽系から約2000光年の彼方にある惑星状星雲。大きさは約0.5光年にもおよび、中央にある連星のうち暗い方がこのガスの発生源の白色矮星だ。リングや8の字のように見えるガスは、約15km/sという猛スピードで膨張しているという。JWSTの観測で、これまであまりはっきり見えていなかった、暗い方の白色矮星がより鮮明になった。
NASAはこの星雲を、近赤外線カメラ(NIRCam)および中間赤外線カメラ(MIRI)で捉えた画像を公開し、それぞれの画像に含まれる様々な色が、水素分子や高温の電離ガスなどの物質由来のものであると説明している。
JWSTの最初の画像とスペクトルの公開は、最新の宇宙望遠鏡が科学運用を開始したことを告げるものだ。これから世界中の天文学者は、先を争ってこの宇宙天文台の4つの観測装置を使い、太陽系内の天体からはるか昔の初期の宇宙までを観察していくことになるだろう。
JWSTはこれから約20年にわたり、まだ見たことのない、また想像もしたことがないような宇宙の新しい姿を、われわれに見せてくれるはずだ。
Source: Space Telescope Science Institute,NASA
via: The Verge
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