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公開日 2022/07/23 14:14
走りながらCO2回収するEV、蘭大学が開発。走れば走るほどCO2が減る【Gadget Gate】
運転が環境に優しいと言われる時代が来る?
オランダ・アイントホーフェン工科大学(TUアイントホーフェン)の学生チームが、道路を走行しながら空気中の二酸化炭素を回収・蓄積する電気自動車のプロトタイプを開発した。このプロトタイプは自動車のライフサイクル全体を通じて、CO2の排出量より回収量が多くなると言う。
TUアイントホーフェンは2018年に「Noah」、2020年には「Luca」というコンセプト電気自動車を開発してきており、今回の「Zem(開発コード名はEM-07)」はチームにとって7作目のマシンになるとのこと。
開発においてはとにかくCO2排出を抑えるため、そのボディパネルやモノコックシャシーに積層造形法(アディティブマニュファクチャリング)と呼ばれる技術を採用。わかりやすい言葉で言えば、3Dプリント技術を用いてこれら主要なパーツを形成した。この方法なら、失敗して出た不要なパーツは粉砕して再利用できる。さらにパイナップルレザー(パイナップルの葉の繊維を原料とするサステイナブルな素材)なども積極的に利用しているという。
窓の材料にも、ガラスより環境に優しいというポリカーボネートを採用。照明や電装、エンターテインメントシステムなどはモジュール式にし、他の製品にも流用できるとしている。
駆動系のスペックについては詳述されていないものの、New Atlasが伝えるところでは、電源として2.3kWhバッテリーモジュールを9つ搭載しており、出力22kW(約30ps)のモーターに電源を供給しているとのこと。またデファレンシャルにはアウディ製の中古のものが流用されているという。
車体正面には太陽光電池を搭載し、回生ブレーキとともにいくばくかの航続距離延長に役立てている。少しでも航続距離を伸ばすため、走行時の空気抵抗になるミラーは取り払われ、小さなカメラで代用するデジタルミラーシステムを備えている。
そして目玉となるのが、空気中から二酸化炭素を直接回収する技術だ。チームによると、この技術はボンネットの下にフィルターの格好で搭載されており、フロントのグリルから取り込んだ空気を通過させることでCO2を取り込む。そして平均時速60km、年間2万600kmほど走行すれば、最大2kgのCO2回収が見込めるとのことだ。
この技術を使っても、自動車1台だけでは大した数字にはならない。だが世界中を走るすべての自動車がこれを搭載すると、世界的なCO2排出削減の取り組みに大きく貢献できる可能性があるという。
フィルターは320km走行すれば交換時期となるが、電気自動車の充電ステーションに回収タンクを設置することで充電中にフィルターをリフレッシュ、再び使用可能にすることが提案されている。
回収後のCO2については、コンクリートに混ぜ込んだり、合成燃料、プラスチックの生産などに利用できるという。身近な例では炭酸飲料の生産に使用することもできる。
大学の外部交渉担当者は、チームは8月に米国を訪れ、このCO2回収プロトタイプEVについて学術機関や企業を回る予定だと述べている。「われわれはすでにできることを示すことで、業界に刺激を与えたい」とし、「たった35人の学生が1年足らずでこのほぼカーボンニュートラルな電気自動車を作り上げたのだから、産業界にはもっと大きなチャンスと可能性があるはずだ」と述べている。
チームはこのCO2回収フィルターの特許取得を目指している。そして「まだ概念実証段階だが、今後数年でフィルターの容量を増やせることはわかっている。CO2の回収は、生産およびリサイクル中の排出量を補うための前提条件だ」としており「産業界にこの挑戦を呼びかけ、一緒に考えていきたい」と述べている。
なお、まだZemの開発は終了しておらず、今後は耐用年数を迎えたZemを可能な限り再利用・リサイクルするための方法などを研究していくとのことだ。
自動車といえば、少し前までは大きなCO2排出源のひとつと言われていた。動力がエンジンからモーターに変われば走行中のCO2排出はなくなるが、EVもその生産段階、特にリチウムイオンバッテリーは生産時に大量のCO2排出があるといわれ、単純にエンジン車が電気自動車になったところで、ライフサイクルで考えた場合のCO2排出は削減にならないとの見方もある。だが、すべての自動車が走行中にCO2を回収するようになれば、将来は自動車に長時間乗れば乗るほど、CO2回収効果が高くなる時代が来るのかもしれない。
Source: TU/ecomotive
via: New Atlas
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TUアイントホーフェンは2018年に「Noah」、2020年には「Luca」というコンセプト電気自動車を開発してきており、今回の「Zem(開発コード名はEM-07)」はチームにとって7作目のマシンになるとのこと。
開発においてはとにかくCO2排出を抑えるため、そのボディパネルやモノコックシャシーに積層造形法(アディティブマニュファクチャリング)と呼ばれる技術を採用。わかりやすい言葉で言えば、3Dプリント技術を用いてこれら主要なパーツを形成した。この方法なら、失敗して出た不要なパーツは粉砕して再利用できる。さらにパイナップルレザー(パイナップルの葉の繊維を原料とするサステイナブルな素材)なども積極的に利用しているという。
窓の材料にも、ガラスより環境に優しいというポリカーボネートを採用。照明や電装、エンターテインメントシステムなどはモジュール式にし、他の製品にも流用できるとしている。
駆動系のスペックについては詳述されていないものの、New Atlasが伝えるところでは、電源として2.3kWhバッテリーモジュールを9つ搭載しており、出力22kW(約30ps)のモーターに電源を供給しているとのこと。またデファレンシャルにはアウディ製の中古のものが流用されているという。
車体正面には太陽光電池を搭載し、回生ブレーキとともにいくばくかの航続距離延長に役立てている。少しでも航続距離を伸ばすため、走行時の空気抵抗になるミラーは取り払われ、小さなカメラで代用するデジタルミラーシステムを備えている。
そして目玉となるのが、空気中から二酸化炭素を直接回収する技術だ。チームによると、この技術はボンネットの下にフィルターの格好で搭載されており、フロントのグリルから取り込んだ空気を通過させることでCO2を取り込む。そして平均時速60km、年間2万600kmほど走行すれば、最大2kgのCO2回収が見込めるとのことだ。
この技術を使っても、自動車1台だけでは大した数字にはならない。だが世界中を走るすべての自動車がこれを搭載すると、世界的なCO2排出削減の取り組みに大きく貢献できる可能性があるという。
フィルターは320km走行すれば交換時期となるが、電気自動車の充電ステーションに回収タンクを設置することで充電中にフィルターをリフレッシュ、再び使用可能にすることが提案されている。
回収後のCO2については、コンクリートに混ぜ込んだり、合成燃料、プラスチックの生産などに利用できるという。身近な例では炭酸飲料の生産に使用することもできる。
大学の外部交渉担当者は、チームは8月に米国を訪れ、このCO2回収プロトタイプEVについて学術機関や企業を回る予定だと述べている。「われわれはすでにできることを示すことで、業界に刺激を与えたい」とし、「たった35人の学生が1年足らずでこのほぼカーボンニュートラルな電気自動車を作り上げたのだから、産業界にはもっと大きなチャンスと可能性があるはずだ」と述べている。
チームはこのCO2回収フィルターの特許取得を目指している。そして「まだ概念実証段階だが、今後数年でフィルターの容量を増やせることはわかっている。CO2の回収は、生産およびリサイクル中の排出量を補うための前提条件だ」としており「産業界にこの挑戦を呼びかけ、一緒に考えていきたい」と述べている。
なお、まだZemの開発は終了しておらず、今後は耐用年数を迎えたZemを可能な限り再利用・リサイクルするための方法などを研究していくとのことだ。
自動車といえば、少し前までは大きなCO2排出源のひとつと言われていた。動力がエンジンからモーターに変われば走行中のCO2排出はなくなるが、EVもその生産段階、特にリチウムイオンバッテリーは生産時に大量のCO2排出があるといわれ、単純にエンジン車が電気自動車になったところで、ライフサイクルで考えた場合のCO2排出は削減にならないとの見方もある。だが、すべての自動車が走行中にCO2を回収するようになれば、将来は自動車に長時間乗れば乗るほど、CO2回収効果が高くなる時代が来るのかもしれない。
Source: TU/ecomotive
via: New Atlas
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