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公開日 2022/08/02 18:13
無制御の中国大型ロケット、大気圏に再突入。残骸がインドネシアなどに落下【Gadget Gate】
安全を運任せにする姿勢に批判も
先週末に人工衛星のモジュール打上げの役目を終えた後、そのまま放棄されていた中国の大型ロケット「長征5B」のコアステージ(大型ブースター)が大気圏に再突入した。中国が同ロケットを放置状態で落としたのは、この2年で3度目のことだ。
長征5Bロケットは、中国の天宮宇宙ステーションのためモジュールを搭載し、7月24日に打ち上げられた。このモジュールは近年軌道に打ち上げられたペイロードとしては、最も重い物のひとつと言える。長征5BはSpaceXのFalcon 9のように上段、下段に分かれておらず、宇宙空間に飛び出し巣のを補助する4機のブースターを切り離した後も、コアステージが2機の水素エンジンを使って、軌道にまでモジュールを送り届けた。
長征5Bのコアステージは、長さ30mで質量22トンもあり、人類がこれまで大気圏に再突入させた物体として6番目に大きいものだと言われている(スペースシャトル除く)。その大きさと重さは、大気圏で完全に燃え尽きず、残骸が地上に到達する可能性が高いことを意味する。その残骸はバラバラに崩壊し、燃え尽きずに残ったものは非常に広範囲に落下するため、人口密度の高い地域に落ちれば、死傷者やその他の物的損害が発生する可能性も否定できない。
しかも長征5Bの軌道は、地球を1周半する間に北緯41.5度から南緯41.5度の間を通過するが、この範囲には世界人口の88%が住んでいる。もちろん、その大半は海であり、地球規模で見ればリスクは十分に低いと言って問題ないレベルだ。しかし宇宙ミッションに関する技術的な研究機関Aerospaceの専門家によれば、いくらリスクが十分に低いとは言っても「わざわざ必要のないリスクを人々に負わせ、なんらかの影響を与える可能性がある」と指摘している。
専門家はまた、長征5Bの場合は質量の20〜40%となる約4〜9トンが、再突入の熱にも耐えて、地表に到達すると推定。Aerospaceは、長征5Bコアステージ再突入の残骸が人に影響を与えるリスクを1/250から1/1,000と見積もった。しかし米国政府の指針では、宇宙ミッション管理者は、再突入による死傷者発生のリスクを1/10,000以下にするよう求めている。今回の長征5Bの再突入は、米国の宇宙ミッションの基準からいえば、少なくとも10倍を超えるリスクがあった。
ロケットはエンジン周りに金属の塊があるため、もともと落下時に燃え残りが地上に到達する可能性が高い。そのため、まともな宇宙機関であれば、設計段階でロケットにペイロードの軌道投入後のための推進剤を残すようにし、万が一再突入で燃え尽きなくても、安全な海域に落下するように機体を制御して再突入させる。
しかし中国の報道官は昨年の会見で「ロケットの上段が再突入で燃え尽きるのは “一般的な慣例” だ」「ほとんどの部品が再突入時に燃え尽きるので、航空施設や地上施設、活動に被害を与える可能性は極めて低い」と述べた。この報道官は長征5Bが上下段に分かれた規模の小さいロケットと勘違いし、さらにほとんどの部品が再突入時に燃え尽きるのが当たり前だと主張した。だが、そうなるのは大きくても数トン以下のロケットステージか人工衛星などで、長征5Bの規模ではない。
軌道上の物体を追跡する米宇宙司令部は、米国東部夏時間7月31日午後12時45分(日本時間8月1日午前1時45分)ごろ、長征5Bロケットステージの大気圏再突入を確認したと発表した。そのころ、ボルネオ上空では再突入によって輝きながら飛散するロケットの姿が目撃され、中国当局はロケットの燃え残りが北緯9.1度、東経119度付近のスールー海(インド洋東部)に落下したと発表した。
一方でSNS上には、インドネシアやマレーシアでロケットの残骸と見られる物体が発見されたとの報告が上がってきている。幸いにも、物体の落下によって死傷者や物的損害があったとの報告はない模様だ。
中国は10月にも長征5号Bロケットで、次の宇宙ステーションモジュールを打ち上げる予定だ。だが、このミッションでもコアステージが、打ち上げから1〜2週間後に再び制御不能状態で大気圏に再突入すると予想されている。
Source: Space.com, Spaceflight Now
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長征5Bロケットは、中国の天宮宇宙ステーションのためモジュールを搭載し、7月24日に打ち上げられた。このモジュールは近年軌道に打ち上げられたペイロードとしては、最も重い物のひとつと言える。長征5BはSpaceXのFalcon 9のように上段、下段に分かれておらず、宇宙空間に飛び出し巣のを補助する4機のブースターを切り離した後も、コアステージが2機の水素エンジンを使って、軌道にまでモジュールを送り届けた。
長征5Bのコアステージは、長さ30mで質量22トンもあり、人類がこれまで大気圏に再突入させた物体として6番目に大きいものだと言われている(スペースシャトル除く)。その大きさと重さは、大気圏で完全に燃え尽きず、残骸が地上に到達する可能性が高いことを意味する。その残骸はバラバラに崩壊し、燃え尽きずに残ったものは非常に広範囲に落下するため、人口密度の高い地域に落ちれば、死傷者やその他の物的損害が発生する可能性も否定できない。
しかも長征5Bの軌道は、地球を1周半する間に北緯41.5度から南緯41.5度の間を通過するが、この範囲には世界人口の88%が住んでいる。もちろん、その大半は海であり、地球規模で見ればリスクは十分に低いと言って問題ないレベルだ。しかし宇宙ミッションに関する技術的な研究機関Aerospaceの専門家によれば、いくらリスクが十分に低いとは言っても「わざわざ必要のないリスクを人々に負わせ、なんらかの影響を与える可能性がある」と指摘している。
専門家はまた、長征5Bの場合は質量の20〜40%となる約4〜9トンが、再突入の熱にも耐えて、地表に到達すると推定。Aerospaceは、長征5Bコアステージ再突入の残骸が人に影響を与えるリスクを1/250から1/1,000と見積もった。しかし米国政府の指針では、宇宙ミッション管理者は、再突入による死傷者発生のリスクを1/10,000以下にするよう求めている。今回の長征5Bの再突入は、米国の宇宙ミッションの基準からいえば、少なくとも10倍を超えるリスクがあった。
ロケットはエンジン周りに金属の塊があるため、もともと落下時に燃え残りが地上に到達する可能性が高い。そのため、まともな宇宙機関であれば、設計段階でロケットにペイロードの軌道投入後のための推進剤を残すようにし、万が一再突入で燃え尽きなくても、安全な海域に落下するように機体を制御して再突入させる。
しかし中国の報道官は昨年の会見で「ロケットの上段が再突入で燃え尽きるのは “一般的な慣例” だ」「ほとんどの部品が再突入時に燃え尽きるので、航空施設や地上施設、活動に被害を与える可能性は極めて低い」と述べた。この報道官は長征5Bが上下段に分かれた規模の小さいロケットと勘違いし、さらにほとんどの部品が再突入時に燃え尽きるのが当たり前だと主張した。だが、そうなるのは大きくても数トン以下のロケットステージか人工衛星などで、長征5Bの規模ではない。
軌道上の物体を追跡する米宇宙司令部は、米国東部夏時間7月31日午後12時45分(日本時間8月1日午前1時45分)ごろ、長征5Bロケットステージの大気圏再突入を確認したと発表した。そのころ、ボルネオ上空では再突入によって輝きながら飛散するロケットの姿が目撃され、中国当局はロケットの燃え残りが北緯9.1度、東経119度付近のスールー海(インド洋東部)に落下したと発表した。
一方でSNS上には、インドネシアやマレーシアでロケットの残骸と見られる物体が発見されたとの報告が上がってきている。幸いにも、物体の落下によって死傷者や物的損害があったとの報告はない模様だ。
中国は10月にも長征5号Bロケットで、次の宇宙ステーションモジュールを打ち上げる予定だ。だが、このミッションでもコアステージが、打ち上げから1〜2週間後に再び制御不能状態で大気圏に再突入すると予想されている。
Source: Space.com, Spaceflight Now
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